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(自分のホームワールドに他のプレーヤーを招く場合)
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RPGの楽しみって、レベルアップすること?
ゲーム画面。各ウィンドウは自由に配置することができるし、表示のオン/オフも指定できる。パソコンゲームらしい洗練されたスタイル |
しかしその一方で「RPG」、つまり「ロールプレイングゲーム」としての本質が失われつつあると感じることも少なくない。決められたシナリオどおりに敵と戦い、経験値と金貨を稼ぎ、よい装備を身につける。最後はボスキャラを倒して世界に平和をもたらし、英雄としての大団円。……もちろん、このスタイルが悪いとは思わない。起伏のあるストーリーを追うのは楽しいし、またそうでなければドラマチックなシナリオにはならないからだ。出会いと別れ、生と死、敵と味方、敗北と勝利。苦難を乗り越え、目標のために突き進むからこそ、最後に大きな感動を呼ぶ。
だが、一度でもテーブルトークRPGをプレイした経験がある人なら、レベルアップや金貨集めがRPGのすべてではないことを知っているはずだ。ロールプレイングとは、「自分ではない誰か」を演じること。別の人格、架空の人物として、ゲームマスターの作り上げた世界の中で生活し、様々な冒険に挑む。解決の方法は必ずしも1つではなく、また結末も1つとは限らない。自分なりの方法で道を切り拓き、自分なりの結末を導き出すのが、ロールプレイングゲームの楽しみなのだ。突き詰めていえば、ゲームマスターとプレーヤーが共同でシナリオを作る過程そのものが、RPGのエッセンスなのだと思う。そういう意味でいえば、現在のコンピュータRPGは「一人称でドラマを楽しむ、リアルタイムアドベンチャーゲーム」ではないかと感じることも多い。
今回紹介するアートディンクの「ルナテイックドーンIII」は、プレーヤーに与えられた自由度の高さといい、シナリオメーキングのあり方といい、本来のRPGにとても近いスタイルの作品だ。他のコンピュータRPGのように、目指さなければならない結末も、倒さなければならないボスキャラも存在しない。寄り道OK。英雄にならなくてもOK。自分の思うままに生活し、キャラクターを演じる楽しみを満喫できる。
「ルナティックドーンIII」は、まるで人生の縮図
他のキャラクターとの会話の中で、イベントが提示される。引き受けるかどうかはプレーヤーの気分次第。序盤は軽めのものから始めよう |
ゲームを始めると、まず最初に新しい世界の構築を行なわなければならない。「ルナティックドーンIII」はマップジェネレータを内蔵し、舞台となる世界をランダムに作成する。したがって同じゲームでありながら、プレーヤーごとに世界の形も町の名前も、まったく違うものになってしまう。プレーヤーはその世界の住民として思うままに生活し、好きなイベントに参加する。怪物を倒して英雄になってもいいし、逆に自分が悪の首領になっても構わない。どう生きるか、何を目指すかに決まりはなく、結末もまちまちだ。
「ルナティックドーンIII」には様々なイベントが用意されていて、他のキャラクターとの会話や、酒場でその情報を仕入れることができる。「○○を××さんに届けてほしい」という運搬の仕事や、「○○に棲む××を倒してほしい」という退治の依頼。「○○を××まで送ってほしい」という護衛の仕事や、「○○で行方不明になった××さんを探してほしい」という捜索願いなど、ジェネレータによって次々と新しいイベントが生成される。難易度の高いものほど報酬も大きく、また達成したときに得られる名声も高い。……かと思えば窃盗や暗殺の依頼など物騒なイベントも混じっていて、どれをいつ引き受けるかはプレーヤーの胸次第。自分の力量に見合ったイベントを探しては、少しずつこなしていくというのが、このゲームの基本である。
イベントは単独でプレイしても構わないし、他のキャラクターを誘ってパーティを組んでも構わない。編成も自由。町の中だけで完結するようなイベントなら単独でこなしたほうが多くの収入が得られるが、ダンジョンの探索や怪物退治の場合は、ある程度強力な仲間と組んだほうが楽だろう。同じ相手と長くパーティを組むことによって信頼が増し、より戦闘力が高まる。相手が異性の場合は、結婚し、子供が産まれるかもしれない。逆に悪辣なことを繰り返すと信頼が失われ、仲間が離反していく場合もある。なんだか人生の縮図を見ているような気がするが、つまりそこが、ロールプレイングというわけだ。
ちなみに今回は、用意されたイベントだけでなく“シナリオエディット”を使って自分でシナリオを作り上げることも可能だ。基本的にはプレーヤーに対してどのような依頼をするかを設定していくのだが、“誰”が“どのような形”で“何”をといった基本的なことから、登場人物の台詞や街の住人のうわさ話や敵キャラクタの設定まですることができる。イベント単体は短いものだが、連鎖させることができるので壮大なストーリーだって作成可能だ。作成したシナリオはファイルとして保存され、プレーヤー同士で交換もできるので、お互い作成して楽しむのもいいだろう。
まず最初に、舞台となる世界を創造する。信仰と属性によって、マップやイベントの内容が微妙に変わる | 続いて、プレーヤーの分身となるキャラクターを設定。他のRPGほどパラメータは多くないが、多少スキルに個性を持たせることはできる | ダンジョン(建物)の中。歩いたところが自動的にマッピングされるので、地図を描く手間がかからない |
操作性は良好、マッピングの手間も掛からない
ゲーム画面はいくつものウィンドウに別れて表示され、ユーザーの遊びやすいように移動させたり、消してしまうことができる。デスクトップが広ければ広いほど一度に表示できる情報が多くなるので、ゲームを遊びやすい。できれば1,024×768ドット以上の環境が望ましいとだろう。
プレイ画面は、まるで「ディアブロ」のような雰囲気。キャラクターの移動はマウスを使って行ない、操作は良好だ。建物の影や森の中など視界の悪いところに入ると、周囲が半透明になるよう工夫されている点も高く評価したい。ダンジョンや建物の中に入ると、自分が歩いたところ(視界の範囲も含む)が自動的にマッピングされていく。
舞台となる世界はかなり広く、いくつもの町やフィールド、ダンジョンが連なって構成されている。他のキャラクターとの会話を通じて「世界」に関する情報を集め、何がどこにあるのか、少しずつ解明していかなければならない。
報酬(金貨)は、イベントの達成や、モンスターを倒すことによって手にすることができる。金貨を貯めれば、より質のいい武器やアイテムを揃えることができるので、難易度の高いイベントを達成しやすくなる。もちろんアイテムの輸送や発見など直接戦闘に関係ないイベントを中心にプレイするのなら、がむしゃらに装備を整える必要はない。何を目的にするかはプレーヤー次第だし、金貨はそのための手段に過ぎないからだ。
イベントは酒場でも仕入れることができる。目的の人物やアイテムがどこにあるかという情報も知ることができる | 引き受けたイベントを達成することができれば、報酬が貰える。社会にとって役立つイベントなら名声が高まり、住民から尊敬されることも | どんな一生を送ったかで、エンディングのメッセージも変わる。悪事に身を染めて破滅した冒険者の最後は、諸行無常 |
プレーヤー自身がシナリオメーカーとなる
自分のパソコンをサーバーとして、インターネットやLAN経由で公開することができる。気分はゲームマスターだ |
逆に、ゲーム全体のメリハリが欠けるぶん、ドラマチックではないかもしれない。はっきりとした目的が与えられないので、序盤、何をすればいいのか戸惑う人も多いだろう。「ルナティックドーンIII」は、「A列車で行こう」と同じように、自分で遊び方を発見するタイプのゲーム。そこがわからないと、いったい何がおもしろいのか理解できないまま、行き詰まってしまう恐れもある。
気負わずに、その日の気分で遊び流す感覚。架空の人物を徹底的に演じきる芝居っ気。プレーヤーが自ら進んでシナリオを創ろう思ったとき、「ルナティックドーンIII」は最高におもしろいRPGになるはずだ。
ところで「ルナティックドーンIII」は、プレーヤーが1人で楽しむだけでなく、ネットワークを通じて自分の世界を他のプレーヤーに公開することもできる。自分のマシンをゲームサーバーにすることができるのだ。
複数のプレーヤーが乗り入れるマルチプレイRPGとなることによって、ゲームの遊び方は大きく変わる。他のプレーヤーと協力してイベントをクリアすることもできるし、逆に競合相手となる可能性もあるだろう。自分より先にイベントをクリアされてしまったら、手柄も報酬もすべて持っていかれてしまい、せっかくの努力がムダに終わるかもしれない。
しかし、それがまた楽しい。RPGは、筋書きの無いドラマ。どうなるかわからないからこそ、本気で楽しむことができるのだから。
ゲーム中には様々なアイテムが用意されている。戦闘イベント中心で進めるのなら、早めにいい武器と鎧を揃えたい | 武器や鎧に魔法を掛けて、より強力なものにすることもできる。何をどう強化するかが、質のいい装備を手にするコツ | マップのどこかに置かれている「リングゲート」を使って、キャラクターを他の世界に移すこともできる。現在のマップに飽きたら、別な世界で生きてみるのも楽しい |
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【筆者紹介】
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