今回は、このSocket 7対応最新CPU K6-IIIを試用レポートする。
K6-III/400。コア電圧2.4V、FSB 100MHz、内部倍率4倍で動作する。 |
今回、K6-IIIを動作させたマザーボードは、ASUSTekのP5Aだ。FSBを60MHzから120MHz、動作電圧も2.0Vから3.5Vまで設定でき、チップセットにはALIのAladdin 5 AGPsetを採用している。このマザーボードに、PC-100仕様のSDRAMを128MB搭載。また、手に入れたK6-IIIはバルク版なので、別途CPUファンも用意した。用意したファンは、特別なものではなく、自作系PCショップでみられる標準的なサイズのものだ。そして、OSにはWindows 98をインストールした。
まず最初にチェックしたのは、内部倍率の設定である。とりあえずFSBを100MHzにして、3.5倍の設定(350MHz動作)から始めてみた。当然ではあるが、この設定では問題無くWindows 98が起動。次はメーカー推奨の400MHzで起動。これも、Windows 98が起動し、アプリケーションも問題無く動作した。さらに、メーカ保証外の450MHz(内部4.5倍)に設定してみた。これも、あっけなくWindows 98、アプリケーションともに正常動作した。そこで5.0倍設定(500MHz)も試してみたが、エラーとなり起動できなかった。
ASUSTek P5A。FSB 60MHz~120MHz、動作電圧 2.0V~3.5Vまで設定できる | ASUSTek P5Aは、チップセットにAladdin 5 AGPsetを採用している。 |
次に、K6-IIIのパフォーマンスを調べるために、数種類のベンチマークソフトで計測してみた。比べてみたのは、Celeron 300AをFSB 100MHzのオーバークロックで動作させた450MHz動作のものである。これでK6-IIIを450MHz動作させた場合と内部倍率、FSB、コアクロック周波数が同じ条件になる。なお、Celeronのシステムは、マザーボードにAbit BH6、ビデオカードにはATI XPERT 98を選択した。
CPU | 時間(分) |
---|---|
K6-III 400MHz 3rd無し | 6:34 |
K6-III 400MHz 3rdあり | 6:46 |
K6-III 450MHz 3rd無し | 6:08 |
K6-III 450MHz 3rdあり | 6:04 |
Celeron 450MHz | 4:04 |
まずは、円周率の計算を行なう「スーパーπ Ver 1.1」の結果を見て欲しい。3rdキャッシュ有りと記述しているものは、マザーボード上の512KBのキャッシュメモリを有効にしているもの、3rdキャッシュ無しとは、マザーボード上のキャッシュを無効にしたものだ。これを見る限りではK6-III 450MHzがCeleron 450MHzの1.5倍の時間を要しており、AMDがいうようなPentium IIIと同程度のパフォーマンスがあるとは思えない。
しかし、他の2つのベンチマークソフト「WinTune98」、「HDBENCH」の結果を見ると、どちらも整数演算に関しては、同クロックのCeleronよりも2~4割程度優れた結果となっている。それに反して、浮動小数点演算に関してはCeleronより結果は悪く、その差はWinTune98では僅かだが、HDBENCHでは大きな差になっている。また、このベンチマーク結果で特徴的なのはWinTune98のMMXの項目で、K6-IIIのほうが45%も速いとでている。
CPU | Dhrystone time(秒) | Whetstone time(秒) | Integer time(秒) | Floating time(秒) | MMX time(秒) |
---|---|---|---|---|---|
K6-III 400MHz 3rdあり | 1.9 | 0.021 | 4.3 | 6.9 | 5.3 |
K6-III 450MHz 3rdあり | 1.7 | 0.019 | 4.0 | 6.2 | 4.9 |
Celeron 450MHz | 1.5 | 0.019 | 7.5 | 6.5 | 8.8 |
CPU | 浮動小数点 | 整数演算 |
---|---|---|
K6-III 400MHz 3rdあり | 25,124 | 31,074 |
K6-III 450MHz 3rdあり | 28,272 | 34,967 |
Celeron 450MHz | 37,489 | 29,750 |
なぜ、スーパーπの結果が、Celeronに大きく水をあけられたか原因を調べてみると、メモリのパフォーマンスが比較的低く、これが足を引っ張っているようだ。CPU自体というよりは、マザーボードやチップセットでの差ともいえるが、AMDの性能評価で使用されているマザーボードでの動作結果であり、単にマザーボードの問題だといって無視することはできない。今回使用したP5Aよりも、K6-IIIのパフォーマンスを引き出せるマザーボードが存在すればいいのだが……。
さて次に、K6-IIIの一般的なアプリケーションのパフォーマンスはどうだろうか。当然のことながら、ExcelやWordといったオフィスアプリケーションを動作させるには全く問題のないパフォーマンスであった。そこで、よりCPUパワーの必要なアプリケーションを動作させてみた。最近話題になっているソフトウェアDVDプレーヤーである。ビデオカードは最新ではないものの、動画再生では定評のあるATI XPERT@Play(PCI版)を使用した。プレーヤーはCyberLinkのPowerDVD体験版だ。まずは、K6-III 400MHz動作でDVD再生を行なったところ、再生はできるものの多少ギクシャクしてしまうところがある。450MHz動作になると、まったくコマ落ちがないわけではないが、鑑賞していて気になるようなところは無くなった。ビデオカードの問題もあるにせよ、ソフトウェアDVDプレーヤーを動かすには、450MHz以上での動作が望ましいという結果となった。ちなみに450MHz動作のCeleronでは、PowerDVDでコマ落ちを感じることはなかった。ビデオカードに搭載されているビデオチップが同等であることを考慮すると、Celeronのシステムのほうが、多少ではあるがDVD再生に有利そうだ。ただ、筆者は、AV機器のDVDプレーヤーでの再生画面を見慣れているために、評価が全体的に辛目であることを付け加えておく。
つまり、今Socket 7対応マザーボードを使っているから、“Socket 7対応CPU「K6-III」を選択しなければならない”という図式にはならないということだ。
まぎれもなくK6-IIIは、Socket 7対応CPUでバツグンのパワーを持ったCPUである。ただ、既にSlot 1に移行していれば、わざわざSocket 7システムを組む人は少ないだろう。つまり、現在のSocket 7ユーザーがK6-IIIを受け入れるか否かが、K6-IIIとSocket 7の将来を左右するのではないだろうか。
もちろん、現在パワーのあるSocket 7対応CPUを探しているのであれば、K6-IIIを積極的に購入するのは正しい選択だ。しかし、すぐに飛びつかずに、販売価格の値下がりも期待しつつ自分の使っているPCをどのようにパワーアップしていくのか十分検討してから、購入するのも一つの方法だろう。
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http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990223/amd.htm
[Text by 一ヶ谷兼乃]