中古販売業者が全面的にゲームの頒布権を認める
ACCSが全面勝利宣言

中古ソフト訴訟記者発表会 '99年3月9日 発表




久保田氏
ACCSの声明を読み上げる理事・事務局長の久保田氏
 社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)は9日、東京霞ヶ関の弁護士会館で記者会見を開き、'98年6月から続いている中古業者との訴訟の経過を説明した。
 今回の訴訟は、家庭用ゲームソフト大手5社が中古ゲーム販売ショップ“ファミコンショップDo-!”を経営している株式会社ドゥーを相手取り、メーカーに無断で行なっている中古ゲームソフト販売は著作権法に違反するとして、販売差し止めを求める訴えを東京地裁に起こし、口頭弁論が継続されていた。

 ACCSによれば、3月9日に行なわれる予定だった第6回口頭弁論において、ゲームソフトが“映画の著作物”に該当するか、また頒布権の消尽(注1)について論議される予定だったが、被告側が事前に書面の提出を行なわず、原告側の請求を認諾(全面的かつ無条件に原告の申し出を認めること)することを申し出たため、今回の訴訟に関しては判決は行なわれず審議が終了することとなった。

 結果についてACCS側は、「今回の訴訟では“判決”というすっきりとした決着をつけたかったので多少残念ではあるが、調書として記録されるため確定判決と同様の効果を得ることになり、我々の主張が認められる大きな一歩となった」としており、「全面勝利宣言ととってもらってもいい」と発言。現在、同様の訴訟が大阪地裁でも審議されており、結果に影響を与えることになると思われる。
 また訴訟では、ゲームソフト5作品(バイオハザード2[カプコン]/ツインビーRPG[コナミ]/パラサイト・イブ[スクウェア]/鉄拳3[ナムコ]/グランツーリスモ[ソニー・コンピュータエンタテインメント])が対象となったが、ACCSでは「被告は訴訟の早い段階で5作品の中古商品取り扱いを取りやめているが、それだけでは裁判対策ととられても仕方ない。今回認諾されたということで、他商品に関しても頒布しないということと理解している」としており、ファミコンショップDo-!が中古ゲームソフトの販売を継続するかどうか、動向が注目される。

 会見の最後にACCS理事・事務局長の久保田裕氏は「我々は中古市場を壊滅させるために訴訟を起こしているわけではない。中古市場を含めた市場のルール作りをする上で、ゲームには“頒布権がない”とする傾向があったため訴訟を起こし明確にする必要があった」とし、著作権を保護することで文化に貢献することが目的で、“中古市場全面禁止”ではないことを強調した。


注1:頒布権の消尽
 著作権法の第2条によれば、「この法律にいう『映画の著作物』には映画の効果に類似する視覚効果または視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物を含むものとする」とされており、ゲームがこれに当てはまるかどうかが第1の論点となっている。今回原告は条文の解釈に加え、制作形態が映画と酷似している点を新たに主張している。

 ゲームが「映画の著作物」と認められた場合、公に上映または著作者が複製して専有的に頒布する「頒布権」が発生する。この場合、第1譲渡で頒布権が消尽するかどうかが第2の論点となる。頒布権が第1譲渡で消尽するかは現行の法律では明文化されておらず、論議されていた。特許権がこれまでの判例では第1譲渡で消尽するため、今回の被告側は頒布権も同様に消尽するという主張を行なっていた。

 頒布権は“公共の頒布”が対象となるため、中古販売などのビジネスには適応されるが、友人と交換するなどの個人的な行為に関しては適応されないという。

□関連記事
テレビゲームソフトウェア流通協会(ARTS)による訴訟関連資料の公開ページ
http://www.arts.or.jp/judge/judge_do/select.html
【'98年6月12日】家庭用ゲーム会社5社が、中古ゲーム販売業者を告訴
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980612/game.htm

('99年3月9日)

[Reported by funatsu@impress.co.jp]


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