スタパ齋藤

Windowsサウンド環境もかなりのモンだ
~SoundForge 4.5~



■ Windowsサウンド環境もかなりのモンだ

SoundForge 4.5
SONIC FOUNDY SoundForge 4.5
75,000円。SONIC FOUNDRY社の、Windows用サウンド・エディタ。価格はちょっと高いが、米国では数々の賞を受賞しており、定評あるソフト。国内ではフックアップが発売元となっている
 ここしばらくの間、俺はコンピュータで作るサウンドにハマっている。もともとMIDIとか電子楽器が大好きなのだが、最近ハマっているのはちょっと違う。コンピュータ上でサウンドファイルを直接編集する方向の音楽遊びだ。

 その始まりは、ほんのちょっとしたきっかけ。Windows上で使える、多少強力な波形編集ソフト(サウンドエディタ――サウンドファイルを直接編集するためのソフトですな)はないかなぁ~と探したのだ。俺のコンピュータミュージック系環境はMacintoshを中心にしたもので、まあMacを使えば有名で定番なサウンドエディタが多数利用できる。が、いちいちMacintoshで編集してからWindowsマシンに転送するのも面倒。この際、Windows用のサウンドエディタを買っちゃおう、そう思った。

 で、以前、MacintoshでSoundEdit Proというのを使ったことがあって、あーゆー感じのソフトはないかなと探した。そしたら、SONIC FOUNDRY社とゆーソフトハウスからSoundForge 4.5とゆー有名なソフトが出てることがわかり、それを買ってみた。

 そしたらコレ、かなりスゲェんですよ。何がスゲェかって、まず抜群の使いやすさ。サウンドデータいじりをちょっとやったことのある人なら、インストール直後から速攻で利用できる。例えば、波形表示・再生時のクイックさとわかりやすさ、編集時(範囲選択やスクロールや表示)の使い勝手の良さ、機能の強力さ。サウンドのテスト再生やリアルタイムでのエフェクト試聴など、細かい機能や操作においても実によく考えて作られていると感じた。掛け値ナシでハッキリ言って、SoundForge 4.5はインターフェイスにおいても機能においても、すっっっげー洗練されている。こんなにスゴいソフトがあったのか!! と、わりと感動してしまった。俺は、多くの人と同様“Windowsの音楽系ソフトなんてどうせ……”という偏見を持っていたのだが、このソフトを使ったらそういう意識がガラリと変わった。Windowsサウンド環境について、懺悔。

 SoundForge 4.5の機能は、サウンドファイルの作成から編集からエフェクト処理まで、まあ何でもできるという感じ。詳細については発売元フックアップのWebサイト( http://www.hookup.co.jp )を見ていただきたいが、例えば死ぬほど多くのサウンドフォーマットに対応していたり、AVIファイルを直接開いてそのサウンドを編集できたり、非常に豊富なエフェクトや処理プロセスを使えたり、有名どころのサンプラーを多数サポートしていたり、複数の処理を複数のサウンドファイルに対して自動的に行なえるバッチ処理機構を持っていたり、ACID(後述)対応ファイル(アッシダイズファイル)をダイレクトに作成できたり、強力な特徴が多数ある。



■ ACIDも凄まじい!!

SoundForge 4.5
SONIC FOUNDRY ACID
68,000円。これもSONIC FOUNDRY社のソフト。オーディオ・ループ・シーケンシング・ソフトというようだが、スタパ氏の書いているように、サウンドファイルを並べて曲を作るためのソフトだ。違うテンポを持つファイルを組み合わせても、自動的にテンポをマッチさせてくれる
 SoundForge 4.5のスバラシさに魅了された俺は、なんかWindowsのサウンド環境ってもしかしたらスゴいのかもしんない~、とか思って、さらにWindowsのサウンド系ソフトをいろいろ調べた。

 そしたらACIDというのを発見。非常におもしろそうな内容で、思わずムラムラっとして買ってしまった。で、使った瞬間、SoundForge 4.5よりもずっとスゲェ感動が!! こここ、こんなソフトあってもイイんですか!? キャーッ!! みたいな。ACID(これもSONIC FOUNDRY社のソフトだヨ!!)の詳細については、発売元フックアップのWebサイト(http://www.hookup.co.jp/)を見ていただきたいが、ヒッジョーに興味深いソフトなので少々ご説明。

 ACIDは、ちょっとこれまでにはなかったタイプのソフトで、敢えて言うなら“サウンドファイルを自由に並べて曲を作るためのソフト”。具体的には、ある一定のリズムの枠に区切られたサウンドを、まるでフィルム編集のようにペタペタと並べ、ひとつの曲(サウンドファイル)にするというもの。 MIDIを使うにしても生演奏にしても、多くの曲には同じ楽器の同じフレーズが何度も登場する。あ、クラシックとかジャズとかはそうじゃない場合も多いが、例えばフツーのポップスなら、歌が1番~3番まであるとすると、曲としてはほぼ同じ演奏が3回繰り返される。さらにその繰り返しのひとつを見ると、その中でも繰り返しのパターンがいくつかある。そのパターンをさらに分解して、ドラムとベースとギターと……みたいに分けていくと、各楽器において繰り返しのフレーズがいっぱいあることがわかる。逆に、こういった繰り返されるフレーズを多数連結させたのが、曲だ。

 ACIDは、この“繰り返しフレーズ”(ループと言う)を並べるためのソフトなのだ。各楽器のループを必要な分だけサウンドファイルとして用意し、画面上に(楽器ごとに分類しつつ)並べる。曲を構成するパーツとしてのループを組み合わせることで、1曲作ろうという指向のソフトなのだ。

 なのでACIDは、ヒップホップやハウスやテクノなどの、フレーズが比較的単調なジャンルの曲を作るにはもってこいだ。ていうか、それらのジャンルの曲の多くは、シーケンサやサンプラーやリズムマシンを多用することから発生した、繰り返しフレーズの固まりのようなもので、ACIDもそういうことを楽勝でやるべく作られたソフトなのである。

 ACIDを使った具体的な曲作りは、まずループの用意から始まる。ドラムのループをいくつか、ベースのループをいくつか、それにギターとかキーボードとかヴォーカルなど。全部サウンドファイル(WAV形式やAIFF形式などいろいろ)で用意する。そしてこれらを並べて曲を作る。時間軸に沿ってサウンドファイルを並べればいいのだ。

 でもちょっと待ってくれ、ベースの1フレーズとキーボードの1フレーズのテンポやキー(音階)が合わないような時は? そう、MIDIなら、ベースやキーボードのテンポやキーを自由自在にコントロールできる。譜面の理屈通りにシーケンスソフトで設定すればいいのだ。が、サウンドファイルを“音の源”として扱う場合は、あらかじめそのテンポやキーを合わせておく必要があった。方法としては、サンプラーのピッチシフトやタイムストレッチ等の機能を使って、サウンドファイルのキーやテンポを強引に変えるなど。実際、サンプラーだけを使って音楽をやってる、リミックスな音楽制作者にとって、こういう作業を全部の楽器のサウンドファイルに適用するとなると、すっげー大変なのである。

 ところが!! ACIDを使うと!! 個々のサウンドファイルのテンポや音階は、後から自由自在に変えられる!! 例えば、ドラムのフレーズのテンポに合わせてベースのテンポを変えられるし、ベースのキーに合わせてキーボードのキーを変えられる!! つまり、ユーザー(っていうか作曲者)は、とりあえず必要そうなループをテキトーに選んでおくだけで、ピッチシフトやタイムストレッチの苦労ナシで、リミックスなミュージックをエンジョイ可能!! コレは凄まじく凄いコトであり、サンプラーなんかを使っている人の多くが凄過ぎる!! と思っているゆえ、ACIDは登場した瞬間から超激大人気のソフトとなったのであった!! ACIDを使いたいがためにWindowsマシンを買うという人も少なくない。あ、ちなみに、ACIDもSoundForgeもWindows専用ソフトである。



■ サウンドを直接編集する楽しさ

SoundForge 4.5
Steinberg B.Box
オープンプライス。ドラムマシンソフトで、同時に8つまでのサンプルをプレイバックできる。もともとはHammerHeadというフリーソフトで、これが製品化されたもの
 ともかく、ACIDはすげえおもしろいし、便利だし、楽勝的音楽制作ソフトだ。何より、譜面が読めなくても楽器の操作がわからなくても“音の素材さえあればいい”という、音楽づくりにおける即物的な良さがある。

 コレってちょっとコンピュータグラフィックに通じるところがある。それまでは、絵を描いたりするってことは、画材がないとできないし、画材の使い方や絵の描き方を心得てないとできなかった。絵を描きたいと思っても、道具のことやドローイング・ペインティングテクニックのことなど、実際に描くに至るまでの難関が多々あった。でもコンピュータグラフィックなら、マウスを走らせるだけで油絵っぽいタッチが出せたり、風景や光の様子を生成できたり、あるいは写真を絵画に変換することまでできる。

 サウンドおよびMIDI関連ソフトは、楽器演奏や音楽制作に関わるテクニックやノウハウという壁を、以前よりずっと薄っぺらくて低いものにしてくれたような気がする。目的に辿り着く過程にあった“手段という難関”を、コンピュータがかなり安楽なものにしてくれたのだと感じる。

 結局我々が欲しているのは例えば絵であり音楽であるわけで、その途中にある筆とか楽器じゃないのだ。まあ、筆とか楽器に対する技術が高まれば、そこから出てくる閃きとか芸術性みたいなモンも確かにあると思うが、苦労したからこそコレが得られたってのは成功者だけが語れる美談だ。苦労したからイイってことじゃない。イメージがすぐさまカタチになるというスピードやスムースさは大いなるメリットであり喜びであり、本来あるべき表現の道筋だと言えよう。

 って何か話がつまらねえ方向に行ってしまったが、ACIDのおもしろさにハマった俺は、SoundForge 4.5で独自のループを編集・制作し、そのループをACIDに乗せておもしろおかしく楽勝で音楽を作っているのであった。

 そうしているうちに、もうひとつ欲が。俺はちょっと変わったリズムトラックを作りたくなったのだ。つまり、リズムマシン(ドラムマシン)が欲しい。しかも、ACIDやSoundForge 4.5と同じく、コンピュータ上で完結する、ソフトウェアのリズムマシンが。できれば、音を自由なWAVファイルなどに変えられるソフトがいい。で、探してみたら、最近は探せば何でもあるんですねぇという感じで、お手軽なソフトウェアリズムマシンを発見。STEINBERG社のB.Boxというソフトだ。

 B.Boxは非常にシンプルなリズムマシンで、使い方が非常に簡単。その使いやすさ以上に便利なのは、リズムマシンで作成したリズムパターンをWAV形式ファイルとして保存できる点。つまり、B.Boxで作ったリズムのフレーズは、即SoundForgeでもACIDでも使える。また、B.Boxには往年のビンテージ(!?)リズムマシン十数種類のサウンドセットがあらかじめ用意されている。具体的には、RolandのTR-707、TR-808、TR-909、ViscoのSpaceDrum、Linn 9000ドラムコンピュータなど有名どころばかり。さらに、B.Boxは自分で用意したWAVサウンドをドラムの音源として鳴らせる。リズムのことならコイツに任せろ的ソフトだ。が、最近のリズムマシンやグルーブマシンのような、複雑なシーケンスはできない。

 繰り返すようだが、SoundForge 4.5もACIDもB.Boxも、コンピュータ上で全て完結できるという点がいい。曲作りをほとんどマウスだけでできる。素材は音楽CDとかCD-ROMとかインターネットとかにあるので、やはりコンピュータ上だけでできる。また、作った曲を人に聞かせようという場合は、CD-Rで音楽CDとして焼いちゃったり、MP3データにしてメールしたりできる。そーゆー、コンピュータ内だけで完結できるサウンド処理には、何の煩雑さもないし、気軽で手軽で、楽しいものである。

□フックアップのSoundForge 4.5製品情報
http://www.hookup.co.jp/Sonic%20Foundry/forge.htm
□フックアップのACID製品情報
http://www.hookup.co.jp/Sonic%20Foundry/acid.htm
□カメオのB.Box製品情報
http://www.cameo.co.jp/product/steinberg/bbox/b-box.html

[Text by スタパ齋藤]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp