スタパ齋藤

1台だけ持つ場合に理想的なノート
~Let's note ace A44~



■ デスクトップマシンの不思議な定説

 数年前まで、パソコンユーザーの間にちょっとした定説があった。それは、パソコン買うならまず1台目はデスクトップで、ノートは2台目以降のマシンだ、というもの。これには、各種の不思議な理由があった。

 結論から言うと、こうだ。デスクトップマシンは安定性に優れ、初心者がパソコンを利用する上で戸惑いがない。しかも、拡張性に優れているので、スキルアップに伴ってマシンもアップグレードしていける、と。一方ノートパソコンは、コストパフォーマンスが悪く、拡張性も低く、機種ごとに特殊なクセがある、と。要は、デスクトップマシンはコンピュータとして将来性がありかつ素直、ノート型は買ったらそれっきりだし異端だし割高、ということになっていた。
 少々調べたり考えたりすれば、現在ではこの定説はほぼ意味をなさないことがわかる。ノートもデスクトップも、まあ、おおよそだいたい同等なパソコンとして考えられる時代だ。

 ところが、この、かつては多少説得力があった“定説”が、現在においても信じ込まれているフシがある。ていうか「初心者ならまずデスクトップでしょノートはやっぱりサブ機だから」とか平気で言う人が、案外多い。理由はやはり「デスクトップには拡張性がある」とか「デスクトップならパーツ交換で先々まで使える」とか「ノートはグレードアップできない」とか「ノートは拡張できない」といったこと。まあ、ある側面でこれらの理由は正しいのだが、考えれば考えるほど正しとは思えなくなる。でも意外なほど信じられている“定説”なのだから、不思議だと言えよう。

 この定説を裏付ける不思議な力は、例えば深夜の通販番組の説得力に似ている。「この万能ドライバーがあればどんなネジでも片手で回せて、手が届かない場所にあるネジもラクラク!! しかもトラックに踏まれてもビクともしない耐久性!! プラスとマイナスと六角のすべてのサイズのビットをセットにして9,800円のご提供!!」とか、「トマトからスチール缶まで何でも切れる包丁を3本セットにして、さらにキッチンハサミと万能フタ開けグッズと料理ブックをセットにして12,800円!!」とか、「64種類の運動が手軽にできて簡単に折り畳めるのでクローゼットにしまえます」など。

 俺の場合、こういった不思議な説得力に対して強い納得力を示す奴なので、いつも買っちゃうわけだが、後から考えるとやはりこれらは正しい説得力とは言えまい。そうだ俺は別に片手でネジを回したいわけではなかったし、手が届かない場所にあるネジを回す必要もないし、ドライバーをトラックに踏まれるようなヘマもしない。そう言えば包丁だって大根あたりまで切れるのが1本あれば十分であって、ハサミやグッズや本は不要で、1本4,000円相当は割高な気がしてきた!! さらに64種類の運動をする時間も根気もないし、クローゼットなんかねえ!! 押入だっていっぱいだ!! あ~なんで俺は納得してしまったんだろう!! くぅ~っ、おバカな俺。

 つまり、さっきの“定説”も同じだ。今時のパソコンにおいて、張性とか交換可能なパーツとかいった、“もしかするとユーザーが必要とするかもしれない性能”は要らない。今必要だと思われる性能が備わっていさえすれば十分だ。どうせ来年にはもっとパワフルで安価なマシンが出まくっている。去年20万円で買ったマシンに20万円分のパーツと労力をつぎ込んでも、今買える20万円のマシンに及ばない。先のコトを考えるのは無駄ッ!! 無駄無駄無駄ッ!!

 だってそれじゃあ齋藤さん、20万円で1年間もたないなんて、パソコンってずいぶん高価で短命なキカイじゃないですかぁ。なんて言われそうだ。そうだそのとおりだ!!パソコンは高いわりにすぐに時代遅れになる装置なんだ!! と同時に!! 安くて便利でたまらねえ装置でもある!! くわッ!! 買ってからすたれるまでに、その代価以上の価値を見い出せないなら、最初から買わないことだ!!

 って何の話をしてたのかよくわかんなくなってきたがとにかく、初心者はデスクトップで、ノートは2代目以降に、とかいう“定説”は信じない方がいい。もう、そういう時代じゃなくなったし、そういう考え方が通用する状況でもなくなった。



■ これからのノートとは!?

Let's note ace/A44 Let's note ace/A44
オープンプライス。薄型オールインワンノート。CD-ROM内蔵で1.58kg、オプションの拡張バッテリ使用時最大9.5時間の駆動が可能で、XGA表示のTFT液晶搭載。ポートリプリケータも標準添付
 ふつーにパソコンを使うにあたって、デスクトップとノートの違いは、もはやカタチだけのものになりつつある。そんなことを考えつつノートを使っている俺だが、最近ではサブノートとノートの違いにも疑問を持ちつつある。

 それは、どーしてサブノートがサブで、ノートがノートなのだろうか、ということ。大雑把に見て、ノートにはデスクトップとおんなじパフォーマンスがある。また、最近ではノートとサブノートのパフォーマンスも紙一重になった。CPU、メモリ、HDD、それから周辺機器。どれもだいたいおんなじ性能のものが使われる(使える)ようになったので、やや乱暴な話、デスクトップもノートもサブノートも、違うのは所詮、ガワだけじゃねえかよ、と。まあ、ガワのサイズからくる機能・性能的制約もあるが、基本的には一緒だ。

 だったら1台に絞っていきたい!! コレさえありゃぁ原稿執筆からゲームからモバイル用途まで全部イケる1台だけを使ってスッキリしてえし安心してえ!! そして時代は1999年!! 空からアイツが降臨して世の中どうにかなっちまうかもしれねえ!! そうじゃなくても北のアイツがまた太いミサイル発射するかもしれねえ!! 弾頭付きでだ!! それか関東大震災の再来で築50年木造の俺んちが滅亡するかもしれねえ!! そうだ滅亡するに決まってる!! 今でさえ部屋が斜めだからな!! マウスの玉なんか部屋の隅まで転がっちまうのさ!! だからそんなイザって時にパッと手にして逃げ出せるマシンが欲しいんだよ!! 俺の全デジタルデータを記憶してる常用マシンと共に逃げてえんだよ!!

 とか理想論と末世思想が合体するとロクな結論は出ないのだが、たまにはそういう考えに走ってみたい。え? こないだから言ってる最強マシンことThinkPad 770Xでイイじゃんって!? ダメですコレは。このマシンの話はもう書き尽くしたし、再度このマシンの話をするとPC Watch的にもおもしろくないし、持ち歩くときっと椎間板ヘルニアだし。てなわけで、別のマシン。

 ところで、俺は知人らとよく“パソコンはひとり1台だけという法律ができたらどんなのを買うか”という話をする。もし1億円あったら何を買うか的で、なんか小学生みたいな空想だが、考えてみるとけっこうおもしろい。また、今後よりいっそう、パソコンなんてどこにでもあるつまらねえ当たり前のキカイになると予想され、そんな状況で“究極の1台”を考えるのは身近でリアルだ。必須だけど1台あればいいという、いわば常備品としのパソコンを合理的に考えるには、この小学生みたいな空想は案外奥が深い。

 この件について、俺はいつも似たような答えを出していた。俺がたった1台限り所有できるマシンの条件だ。それは、大雑把に言えば、室内でも屋外でも都合良く使えるという内容で、デスクトップリプレイスノートとしても、サブノートとしても使えるような性能を持っているということである。逆に言えば、サブノートを机上で使う時のようなぎこちなさがなくて、ノートを屋外で使うときのようなフットワークの悪さがない、ということ。突き詰めると、意外に大したコトではなく、バッテリがすげえ長持ちして、画面が広くて、キーボードもデカくて、薄くて軽くて剛性があって、さらにCD-ROMドライブも内蔵しているノートパソコン、ということになる。



■ そーゆーノートが出た

薄型ながらCD-ROMドライブを内蔵、ポートリプリケータも標準で付属する
 で、俺的に理想としているノートが、去年の暮れに登場。おおっコレはと思った瞬間気絶し、気づいた時には既にそのマシンが俺の机上に置かれていたというから驚く。

 その理想的ノートとは、松下のLet's note ace/A44。詳細については、松下のLet's noteのサイト( http://www.pcc.panasonic.co.jp/letsnote/ )を参照して欲しい。なお、つい最近このA44の新型であるA44Eが発表されたが、基本的にはA44もA44Eも同じマシン。A44にMicrosoftOffice系アプリをプリインストールしたのがA44Eだ。

 さて、このマシンのとても気持ち良いところと言えば、一連の銀パソ(B5ファイルサイズノート)の中では最も充実した機能を持っていること。特にスゲエのが、CD-ROMドライブを内蔵していて、しかもXGA(1,024×768ドット)解像度の液晶ディスプレイを搭載している点。XGAですよXGA!! VAIOノートの505RXの時もビビったが、やはりこのサイズでXGAというのは、まずインパクトがあり、間もなく凄く実用的であることに驚かされる。

 このテの薄型ノートは、買ってすぐに“意外に面倒な点”が浮き出てしまう。それはCD-ROMドライブをどうにか接続しないとイケナイという点。さあさあ買ったゼまずは常用ソフトのインストールだ!! あっそうかCD-ROMドライブつながなきゃ!! どうせCD-ROMドライブ使うならキッチリとドライブメーカーの純正のドライバ入れないとネ!! 純正ドライバはフロッピーの中!! FDDもつなげなきゃ!! という順番で、さっきまでスリムでコンパクトだった薄型ノートにタコ足配線状態で周辺機器がつながっちまうのだ。もちろんその後もコトあるごとにCD-ROMドライブを外付けするハメになる。

 ところが、A44は、最初から本体にCD-ROMドライブが入っている。買ったその日、電源を入れたその瞬間から、即、各種ソフトをインストールしまくれる。これは快適だ。また、HDDの内容を工場出荷状態に戻すCD-ROM(いわゆるリカバリCD)も、苦労や工夫をなんらせずとも使えるのがイイ。

 また、このCD-ROMドライブは、スコッと抜ける。抜くとデカい空洞ができ、ソコにはダミーパックか拡張バッテリパックを入れられる。とことん軽く持ち歩きたいならダミーパックを、外でびしびし駆動させたいなら拡張バッテリパックを、という気の利いたギミックだ。ちなみに、俺の使い方だと、標準バッテリのみの場合は1時間チョイ、拡張バッテリを追加した場合は5~6時間ほどの使用が可能という感じだった。MMX Pentium 266MHzのノートとしては、かなりタフに動いてくれるなぁと思った。なお、本体重量は、ダミーパック装着時が約1.38kg、CD-ROMドライブ装着時が約1.58kg、拡張バッテリ装着時が約1.78kg。ふつーに持ち歩ける重量だ。ともかく、このコンパクトな筐体にCD-ROMドライブを内蔵したというだけでナイスなのに、CD-ROMドライブをマルチベイ方式として拡張バッテリと交換できるようにもしているあたりは、非常に現実的な工夫だと言えよう。



■ 使い勝手もオッケー

 このマシンの使い勝手は、かなりいい感じ。XGAの液晶でCD-ROMドライブというだけで、他の薄型ノートとは一線を画するのだが、ピッチ・ストロークともに十分余裕がありかつ異常に小さいキーがないキーボードや、アプリの一発起動などが驚くほど簡単にできちゃうスマートポインタ(ポインティングデバイス)も使いやすい。 あと、筐体にけっこうな剛性がある。液晶パネル部分やそのヒンジ部分が、きゃしゃに見えるわりにはがっしりしていて安心だ。ヘンな突起やカーブがない筐体も、全体的にしっかりした作り。パームレスト部もキーボード部(キー自体じゃなくて基盤部分)もカタいので、使用上、神経質にならずにすむ。

 本体表面はキレイに磨き上げられており、他の“銀パソ”とはひと味違った触り心地。ツルッとしていて気持ちいい。このキレイな光沢のボディ、最初は傷つきやすいかなぁと思っていたのだが、それほどでもない。また、傷がついてもそんなに目立たなかった。が、お外でホコリがついた手で触っちゃうと、何となくキタナい感じの曇りが目立つ。この曇りは、喫茶店のおしぼりとかで拭けば消えるのだが、店員の視線が「てめぇウチのおしぼりで変なモン拭いてんじゃねえよ」と言っているようで心苦しい。見つからないようにやろう。

 あっと、それから付属のポートリプリケータとFDD。最近のサブノート系マシンではメジャーになってきたスタイルだが、FDDがポートリプリケータ経由で接続されるのは便利だ。つまり、本体とポートリプリケータはケーブルで接続され、ポートリプリケータとFDDは任意に合体・分離できる。細かいことだが、本体とポートリプリケータを接続するケーブルが十分柔らかいのも使いやすい。

 個人的に残念だったのは、キーボードの色。俺はLet's noteの白いキーボードがかなり好きだったのだが、コレはグレー。なーんかつまんない感じ。それと、PCカードスロットがType2×1なのが、ほんの少し残念。Type2×2にすれば超スゲエと思ったであろう。

 それから、このマシン、電源を切って置いておくと、凄く小さい音で「キィ~、キィ~」という高い音がする。電気が流れている音だ。真夜中、耳をすまさないと聞こえない程度なのだが、何の音だろう。気になると言えば気になる。

 ところで最近の俺は、机上ではIBMのThinkPad 770Xを、ちょっとした外出時にはカシオのFIVAを使っている。なのでこのA44は、購入当初「もももも、もしかしたらコレって無駄!? 全然使わないマシンになっちゃうの!?

 俺っておバカ!? ダメ!? ヘボ!?」と、自分の購入行動に対して少々不安を抱いたのだが、数日程度の外出や気合の入った外出時にはヒジョーに役立つ。例えば、デスクトップ(っつってもノートですけど)と同じように違和感なくマシンを使える。さすがXGA。全然問題ナシ。重ねて、XGAであってなおかつバッテリー切れを心配せずに使えるのも快適。マジメ度が高い打ち合わせや出張時に持って行くにはベストのマシンだと感じる。もちろんマジメ度が高い室内仕事においてもかなりイイ。外でも内でも“快適に使える”という点では、抜きん出たノートだと言えよう。

□松下電器のLet's note ace A44製品情報
http://www.pcc.panasonic.co.jp/letsnote/prod/a44/index.html

[Text by スタパ齋藤]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp