スタパ齋藤

CASSIOPEIA FIVAの実用性



■ Librettoの頃は良かった!?

 考えてみると、東芝のLibrettoが登場してから、俺はいつも、いわゆる“サブノートマシン”を持っていた。そーんなにハードに使うわけでもないのだが、常に欠かさず1台はサブノートを持っていた。

 最初はLibretto20CT。その次はLibretto30CTA。Libretto時代はけっこう携帯して利用した。“利用した”というよりも“おもしろがって使った”という感じかもしれない。移動中ちょっと一息つける場所につくと、ソッコーでLibrettoを取り出し、携帯電話とつなげ、メールを読んだり出したりした。ちょっと原稿を書いたこともあった。

 次は松下のLet's note mini。コレもLibrettoと似たように使ったが、同時期にVAIOの505があったので、Let's note miniばっかり持ち歩くという感じではなかった。miniと505を似たような頻度で持ち歩いたのであった。が、それでもLibrettoほど頻繁に持ち歩かなかった。もはや“小さなパソコンを外で使う”という行為に、それほどのおもしろさはなかったのだ。

 その次はVAIOのC1。CCDカメラ付きのアレだ。これは買った当初かなりおもしろがって持ち歩いたが、わりとすぐに飽きた。実用的かつオモシロいマシンだったのだが、なんつーかLibrettoの頃のようなドキドキ感というかワクワク感というか、おもしろみに欠けた。C1がダメとかイマイチということではなく、なんでしょう、Libretto時代の冒険的モバイルのおもしろみがない時代(ていうか現代ですな)になっていたという感じだ。

 もう、外でメールを見たり、小さなパソコンを取り出して使ったりすることは、まあ大したことじゃなくなったというか、マニア的興味を持って取り組むほど刺激的じゃなくなったというか。つまりモバイルという行為は、もうわりとフツーで当たり前のことになったような気がして、俺は「あ~あの頃はおもしろかったなぁ最近は刺激が足りねえなあ」と、元気を失ったオヤジモードに突入してしまっていた。



■ FIVAとMC-P100

CASSIOPEIA FIVA
カシオ CASSIOPEIA FIVA
オープンプライス。Cyrix MediaGX 200MHz搭載。自社開発の6.7インチ、SVGA表示の高精細HAST液晶採用。825g(モデム非内蔵タイプ)、標準バッテリで約3時間駆動。スタパ氏は発表当時、「770X買うのでさすがにそこまではお金が~」とおっしゃっておられたのだがやはり購入していた……
 でもなーんか俺はいつも小さなコンピュータを持っていたかった。その理由は、恐らく説明してもイマイチ伝わらない、マニアックな心情であろう。でも試しに説明すると、かつてラジオ製作少年だった人が、現在ではもう半田付けなんかほとんどしないのに、一応いつでも使えるように半田こてとニッパーとラジオペンチなどを常備しているような気分。ていうか夏しか活躍しないダイバーが腕時計にOリングはめてる状態? ていうかカメラマンがオフタイムでも高性能コンパクトカメラ持っちゃう気持ち? ていうかギタリストがなぜかピックをサイフに入れたり、サックス吹きがサックスを装着する首輪みたいなのをいつも付けてる気分? ていうか最後に“?”を付けるな“?”を>俺。言ってることに自信がないのか>俺。ていうか、自信が? ありません? あ~語尾上がりの口調は無責任感いっぱいでラクだなあ。ともあれ、そんな雰囲気で、俺はいつも持ち歩けるサイズの小さなコンピュータを持っていたかったのだ。

 なので、去年の暮れには、カシオのCASSIOPEIA FIVA(MPC-101M32)を購入。やっぱコレだよコレしかねえんだよ!! という内容だったので、“最近わしはあんまりモバイルしなくなった”ということを忘れて買っちゃったのであった。ついでに、イカスというウワサであったPHSのデータリンクカード(SIIのMC-P100/DDIポケット)も買った。

 そしたら!! そしたら我ながら驚いたことに!! FIVAとMC-P100を使って、けっこう頻繁にモバってるんですよ俺ったら。もうモバりまくり。モバり中。モバリング。え!? 造語はよせってか。ともかく、Librettoの頃よりずっと頻繁に、いろんな場所でこのサブノートパソコンを使っているのだった(……とは言ってもまあ、ハードにモバイルしている人に比べれば低頻度ですけどね)。

 いきなりFIVA&MC-P100に関する結論を書いてみると、どこに居てもWebがわりと快適に使えるっちゅートコロがすげえ楽しい。いや、楽しいっていうよりも便利という感覚の方が強い。かつての俺は、外に出てまでWebなんか使わねえよ~とか思っていた。Webなんて出先で使うもんじゃねえだろ、みたいな。何を見るんだよ何を、みたいな。だが実際快適にWebができちゃうモバイル環境を作り、ソレをやってみたところ、我ながらけっこうWebを使う人であることがわかった。

 これは俺が“我慢できない人”であることに由縁する。例えば人に新製品の情報を聞いたり、おもしろそーなハード・ソフトの話を聞いたりすると、速攻でその詳しい内容を知りたくなる。そんな時、手元にWeb端末があると、オウチまで我慢することなしに、Webで製品情報を読める。また最近のWebには、デジタル寄りの製品情報っつーモンが豊富で、捜したい情報にヒットできないことの方が少ないとキているから便利。ウッと思ったらパカッと開いてアクセス!! 数十秒後には情報を読んでる俺。たまらねえのである。同時にたまらねえ点として、その新製品がWeb通販で売られてたりして、しかもカード決済だったりして、ついでに即日発送だったりすること。FIVA&MC-P100のWeb端末は、俺にとってある種の魔の手であり、出費増幅装置とも言えよう。



■ 簡単なMC-P100、快適なFIVA

PHS DATA LINK MC-P100
SII製PCカード型PHS。SIIからは、姉妹品と言えるTwo LINK DATA(通話相手先限定サービス)対応の「MC-P110/TD」も発売されている
 ウワサに聞いたMC-P100だが、これはすげえ快適だ。なんか、PHSを使ったデータ通信は、何種類かあって、俺はあんまりよく知らないっていうか、面倒臭そうなので知りたくないのだが、DDIポケットのαDATAっつー方式は、そーゆー面倒なコトをほとんど知らなくてもどうにかなるシクミになっている。具体的には、αDATA無線インターネット方式だと、MC-P100をほぼ何も気にしないでTAと同じように扱える。ダイヤルアップネットワークの設定で、電話番号の末尾に“##2”を付け加えるだけで、あとはTAと同じ(速度は32Kbps未満ですが)に扱えるのだ。つまりこれだけで、たいていのプロバイダに問題なく接続できる。この簡単さが気に入った。なお、FAXとして使ったり、PIAFSのアクセスポイントにつないだりする場合も、この末尾の呪文をちょっと変えるだけでOK。なお、MC-P100にイヤホンマイクをつなげれば、PHSとして通話することもできる。

 で、このMC-P100をFIVAのPCカードスロットに挿すだけでWeb端末になるのだ から有り難い。FIVAの詳細についてはココ を見ていただきたいのだが、全体的にかなりバランスのいいマシンだと思う。コンパクトさと軽さと処理速度において、実用的なモバイルマシンになっている。加えて、800×600ドットの6.7型HAST液晶。Webを使うに十分広いサイズだ。

 そしてこのマシン、意外なほどバッテリがよくもつ。メーカー公称では、標準バッテリ装着時が約3時間、標準バッテリの倍の蓄電容量を持つ大容量バッテリ(FIVAのお尻が出っ張るんダ!!)装着時だと約6時間もつ。実際使った感じは、だいたいまあこの7~8割程度みたいな感じな雰囲気(計測してません)。MC-P100などのモデム系のカードを使うともっと短くなる。Librettoとモデムカードを併用していた時はだいたいトータルで30~40分程度しかバッテリーがもたなかったので、高速で大画面のわりにはすげえバッテリーの持ちがよく感じる。実際、俺はいつもFIVAに大容量バッテリを装着し、MC-P100を挿して使っているのだが、PC Watchのめぼしい記事を読んだりメールを送受信したりする程度(だいたい10~20分程度)なら全然バッテリの消耗が気にならない。よく使う時でもコレを3~4回繰り返す程度なので、これまでバッテリ切れは経験していない。実用上ノープロブレムの駆動時間だと思う。

 ちなみに、外出時はFIVA&大容量バッテリ&MC-P100のセットで使うのだが、ACアダプタでの使用も比較的多い。それは例えば、常用端末がある部屋以外で、おもしろがりつつWebを使うなんて時。コタツでWeb、ベッドでWebなど、寒い冬は暖かい状態でWebするのがけっこうイイのである。酒を飲みつつちょっとWeb、なんて時にも、仕事机から離れた場所で気軽に使えるMC-P100とFIVAは便利なタッグだ。Webを使うための結線がACアダプタコードのみ(もしくはナシ)という点も気分がいい。そう言えば、船田戦闘機という人にこのMC-P100とFIVAでのWebの良さを超オススメしたら、彼はパナソニックのレッツノートミニとMC-P100の組み合わせでやり始めたらしい。リビングでワイヤレスな通信をして暖かな冬を過ごしているらしい。けっこうハマっているらしい。



■ FIVAの実用性

 俺の場合、FIVAは主にWeb・メール端末として動いているわけだが、一般的な“モバイル”にもよく適していると思う。

 ひとつは、やはり画面の広さ。800×600ドットあると、メールやWebはもちろん、EXCELデータのように一画面になるべく多くのデータが出た方が有り難いアプリもわりと快適に使える。テキストエディタで長文を読むのもラクだ。ただ、液晶自体は6.7インチと小型なので、表示される文字も“細かい”。視力が低い人はちょっと疲れるかも。俺の視力は怒濤の2.0なので疲れないが、イマイチの視力の人にFIVAでWebページを見せたら「頭痛くなってきた」と言われた。まあ、システムフォントのサイズを大きくすれば済むことではあるが、ともあれこの液晶の広さについては十分実用的だ。

 それから、キーボードがかなりイイ。ちょっと慣れればタッチタイピングできるサイズがある。キーストロークも十分あり、また、キーの押下感も若干硬めでコキコキいう感じなので、わりと心地よい。長文のメールを書くのもさほど苦でない。

 ポインティングデバイスのサムパッドもイイ。サムパッドは画面右部分にあり、ここを右手の親指や人差し指などで操作し、矢印カーソルを移動させる。右・左クリックボタンは、キーボード左上部にある。これらのクリックボタンを左手の親指などで押す。いわば両手で操作。立ったままでも操作できるようにと工夫されていて、実際、立ったままでもちゃんと使える。が、机上に置いて使う場合は、なんかちょっと不便。机上に置く場合はやはり超小型USBマウスなどが便利と言えよう。ていうか俺はいつもUSBマウス派。

 サムパッドには、他にちょっとおもしろい機能がある。それはSensivaという常駐ソフト(プレインストール済み)と併用したとき、右クリックボタンを押したままサムパッド上で特定の軌跡を描くと、その軌跡に対応した処理ができるということ。いわゆるゼスチュア機能だ。例えば、デフォルトでは“W”の軌跡ならワードパッドが起動し、“S”の軌跡ならデータの上書き保存ができるようになっている。ゼスチュアの内容はユーザーが自由に設定できるので、応用もきく。使ってみると予想を超えて便利に機能するので、最近は俺もいろいろ独自のゼスチュアを登録して使っている。

 あとこのマシン、剛性がかなり高い。ていうかやたら高い。特に液晶パネル部分。例えば液晶パネル部分の端を持っても、決して液晶部に滲みが出ない。液晶パネル部分だけを持って操作してもビクともしない。液晶パネルと本体を接続しているヒンジ部分も強く、液晶パネル部分だけを持って操作しても、本体が自然にぐにょ~っと垂れ下がるようなこともない。けっこう乱暴にバッグに入れておける雰囲気(乱暴にして大丈夫かどうかは試してませんが)なので、つまり、安心して持ち歩ける。

 バッテリがもつ、立って使える、剛性も高い。なるほど、カシオが言っているFIVAのコンセプトはダテじゃなかった。かなりイイじゃんFIVA、という感じで俺は久しぶりにけっこうモバってるのであった。え!? “モバってる”って言うなって? じゃあ“モバイっるてる”なんつったりして。



■ 追伸、ThinkPad770X

 さて、史上最強のノートことThinkPad770Xのその後だが、もはや書くことがなくなった。全然問題が起きない。ある意味全然おもしろくないが、メインマシンがそういう意味でおもしろかったりするとタイヘンなので、これでオッケーと言えよう。またなんか状況が変わったりしたら報告します。



□カシオのCASSIOPEIA FIVA製品情報
http://www.casio.co.jp/mpc/
□関連記事
【'98/9/21】カシオ、A5サイズミニノート「CASSIOPEIA FIVA」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980921/casio.htm
【'98/11/16】週刊スタパトロニクス:日本人の繊細さと超小型PC CASSIOPEIA FIVA
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/981116/stapa23.htm

[Text by スタパ齋藤]


【PC Watchホームページ】


ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp