初代Cyber-shotを踏襲したデザイン。右下にある「2.1 MEGA PIXELS」の文字と、「メモリースティック」のロゴが新時代のマシンであることを告げている。 |
200万画素モデルの先陣を切ったのは、なんとソニーだった! しかも、あの大ヒット商品である初代「Cyber-shot」のサイズとデザインをほぼ踏襲した高品位なボディに、ドイツの名門「カールツァイス」社の名レンズ「Distagon」(ディスタゴン)を採用。さらに、記録時間も約2秒という超高速で、最長10分40秒ものMPEGムービーまで撮影できるという、きわめて魅力的なモデルとして登場した!
今回は実写不可ながらも、ベータ版モデルにふれることができたので、まずはその感触だけでもお伝えしよう。
【編集部注】仕様の詳細については、関連記事をご覧ください。
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【1月28日】ソニー、ツァイスレンズ搭載の211万画素サイバーショット
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990128/sony.htm
■ポケットサイズで高品位!
富士写真フイルム「FinePix700」と比較。縦持ち、横持ちの違いはあるがほぼ同じ大きさ。 |
「う~ん、こう来たかあ~」というのが、本機を初めてみたときの第一印象。
昨秋のCOMDEXでもメモリースティック搭載機の例として「Cyber-shot DSC-F2」ベースのモデルが出品されていたが、まさか本当に従来とほとんど同じデザインとサイズで、200万画素モデルが登場するとは思わなかった。
遠目に見ると、まさに従来のCyber-shotそのもの。もちろん、角形のレンズフードが一体化されているため容易に見分けはつく。さらに細部を見ていくと、厚みも増し結構デザインも変わっているのだが、イメージはきちんと踏襲されている。
Cyber-shotは、従来からデザイン面では高い評価を獲得していたモデルであり、メーカー側もこのデザインをレンズ回転式の液晶ファインダー機の理想型と捉えていることもあって、あえてこのデザインを採用したという。
実際に現物を手にすると、アルミ外装ということもあって、ヒンヤリとした感触が手に伝わってくる。しかも、意外なほど軽く、サイズ的にも十分にコンパクトなものに仕上がっている。厚み以外はほぼ「富士フイルムFinePix700」と同サイズ。高機能化のために、従来のDSC-F3に比べると厚みが増してはいるが、それでも分厚いというほどではなく、十分に許容範囲。ちょっと無理をすれば、ワイシャツの胸ポケットにも収まる。
正直なところ、私が思っていた“200万画素モデル”というイメージよりも小さめで、個人的には一安心した。そして、このサイズなら、いつでも気軽に持ち歩ける。200万画素モデルが常用機として成り立つことを証明してくれた感じだ。
Cyber-Shot「DSC-F3」と外観比較。レンズの位置が左よりから右よりに変更されたのがわかる。 DSC-F55Kではレンズが前に飛び出し、少し分厚くなっているが、全体的な大きさはそれほど変わらない。言われなければ211万画素とは気づかないだろう。 |
■2秒台の高速記録
シャッターを切ってみて驚くのはその速さ。200万画素モデルながらも、記録時間は1,600×1,200ピクセルの標準圧縮モードでも、3秒以下、ほぼ2秒台で記録してしまう速さを実現している。起動時間は約4秒かかっていたが、こちらは今後のチューニングでさらに高速化されるという。
もともと、Cyber-shotは初代から高速なことが大きな特徴になっていたが、本機でもその伝統はきちんと受け継がれている。もちろん、記録時間に関しては、速いに越したことはないが、現時点でも十分にストレスなく撮影できるレベルに達している。
正直なところ、200万画素クラスで最初に登場したモデルがこの速さを実現してしまうと、今後登場するモデルにもこの速さを期待してしまう。“軽快”という感覚はやはり記録が3秒以下のモデルの特権という感じだ。また、各社とも200万画素クラスはかなり本気で高速化に取り組んでいることを考えると、200万画素クラスといえども、記録時間が5秒を越えるモデルでは明らかに遅さを感じそうだ。
■整理された操作感
本機の基本的な操作感は、旧Cyber-shotよりもむしろデジタルマビカに近い雰囲気だ。特に、十字パッドと液晶モニタ下側のメニュー表示による詳細設定などは、デジタルマビカとほぼ同じであり、メーカー内での統一性はある。だが、基本的に業務用途メインのデジタルマビカシリーズと、パーソナルユースを重視したCyber-shotの操作感が、必ずしも同じである必要はなく、むしろ、Cyber-shotらしい新たなインターフェイスを採用して欲しかった。
さらに、メインスイッチをONにしたときの起動音や、サンプリングによるシャッター音などまで、デジタルマビカと同じ音が採用されているのには、少々ガッカリ。やはりCyber-shotシリーズにはCyber-shotらしい起動音やシャッター音を新規に用意するべきだろう。
以上のように多少の不満はあるが全体の操作感は、各種モード切り替えはもちろん、再生時の画像表示なども、なかなか高速で小気味いい。
また、本機には再生時にソフト的に画像を拡大表示する再生時用のデジタルズーム機能がある。しかも、デジタルズーム時にもきちんとソフト的な輪郭補正機能が働くため、ジャギーが目立たず、きれいな輪郭での拡大表示ができる点は従来機にない大きな魅力。しかも、デジタルズーム表示時には、拡大表示したまま画面をスクロールすることができ、その拡大部分だけを別ファイルとして切り出して保存することができる点も便利だ。
本体正面向かって左側にモード切り替えスイッチがある。 このスイッチで「PLAY」、「STILL」、「MOVIE」を切り替える。「MOVIE」では、MPEG-1形式で音声も同時に記録できる。16MBメモリースティックに、160×112ピクセルのビデオメールモードで最大約10分40秒(連続最大1分)の録画が可能となっている。ビデオメモとしては実用十分だろう。 |
■日中でも見やすい反射/透過両用液晶
Cyber-shotは初代から一貫して、光学ファインダーを持たない、液晶ファインダー専用機となっている。さらに今回は、世界で初めて、反射式と透過式の両方の機能を備えた「ハイブリッドLCD」を搭載している。
この液晶モニタは、周囲が比較的暗いシーンでは通常の液晶パネルと同じくバックライトによる透過式液晶モニタとして働く。外光が強い場合には反射型としての機能が有効に働き、明るい場所でも液晶モニタの視認性が大きく低下しないという。
残念ながら、屋外の日中光下では試せなかったが、かなり明るい場所でも液晶の視認性は十分に高く、バックライトをOFFにしても液晶ファインダーとして、実用レベルの表示品質が得られた。もちろん、バックライトを消すことで約20%程度の省エネ化が図れ、撮影時間や枚数を増やすこともできる。だが実際は、どんなシーンでも、液晶ファインダーのみで安心して撮影できるというメリットのほうが大きい。これなら光学ファインダーがなくても、さほど不便を感じないレベルの使用感といえそうだ。
光学ファインダーは搭載されず、2インチのTFT液晶モニタのみとなっている。透過式と反射式の両方の機能を持つハイブリッドLCDを採用しているので、周囲の明るさに応じて切り替えることができる。 駆動時間は液晶バックライトON時で約50分、バックライトOFF時で約1時間となる。 |
■注目のツァイスレンズ
レンズは「Carl Zeiss (Distagon)」。この名前だけで、物欲をくすぐられる人も多いことだろう。 F2.8、35mmフィルム換算で37mm相当の単焦点。光学ズームを備えていないのがさびしいところだ。デジタルズームは2.5倍を備えている。 |
レンズは世界最大の光学機器メーカーであるドイツのカールツァイス財団が、本機用に新設計したものを採用している。カールツァイスといえば、コンタックスやハッセルブラッドといった世界の名機に採用されているレンズであり、その描写力の高さには定評がある。さらに、同社はあらゆる分野の特殊光学機器を手がけており、半導体製造に用いられるステッパー用レンズなどでもかなりの実績がある。銀塩カメラ分野はもとより、近年はCCD撮像用レンズを数多く手がけているメーカーだ。
とくに、本機が搭載している1/2インチの211万画素CCDの場合、画素ピッチがかなり細かく、1画素あたり4ミクロン弱となる。そのため、130万画素クラスに比べ、レンズ性能が画質を左右する部分が格段に大きい。その点、今回搭載されたレンズは最初からこのCCDの性能をフルに生かせる性能を備えたレンズとして設計されており、ツァイス自身もCCDの特性を熟知しているため、その描写力は大いに期待される。
■ついに登場16MBメモリースティック
本体底面左側にメモリースティックスロットを搭載している。 メモリースティックスロット専用機は業界初。ソニーはことあるごとにメモリースティックを使用したコンセプトモデルをアピールしてきたが、やっとそれが製品化された。 |
本体右側にバッテリを装着する。 「Ruvi」などと同じ「NP-F10」を使用可能。駆動時間はバックライトOFF時で約1時間となっている。 |
記録媒体はもちろん、同社開発のメモリースティックだ。従来から4MBと8MBタイプが発売されていたが、今回本機と同時に、16MBのメモリースティックが同時発表されている。価格は7,700円と同容量のスマートメディアやコンパクトフラッシュと同程度か、少し安価に設定されている。
さすがに200万画素モデルになると、データ容量が大きくなる。そのため、付属の4MBタイプの場合、撮影枚数はスタンダードモードで10~15枚、ファインモードでは5~8枚と少ない。だが、16MBタイプであれば、その4倍の枚数が撮影できる。
それでも十分な枚数とはいえないが、メディアの価格が安いため、まずまず実用レベルといえる。スマートメディアのように何年もかかって、ようやく16MBカードが登場したのとは違い、今年中には64MBタイプの発売も予告されているので、容量の点ではさほど心配ないだろう。
■画質はまだ未知数
今回手にしたモデルは、実写不可というもの。そのため、残念ながらその画質については、まだ未知数といえる。だが、メーカー側で撮影された実写画像を見る限り、少なくとも「さすが200万画素!」と感心してしまうレベルであることは確かだ。
特にレンズ側に起因する画質に関しては、相当なレベルだ。単焦点レンズであることもあって、レンズの解像度はもちろん、コントラストの高さ、画面の歪み(歪曲収差)や色の滲み(色収差)などについては、十分に期待できる。
ただ一つ、不安材料があるのは、シャッター速度。なにしろ、スローシャッター側が1/60秒までしかない。露出不足になるシーンは、おそらくゲインアップ(ソフト的な感度向上)によってまかなうスタイルのようだ。これは既発売の「デジタルマビカ」や「Cyber-shot PRO」なども同じスタイルを採用していることからも容易に想像できる。そのため、暗いシーンでは画面がザラついた感じになることが予想される。スペック的にはこの点が一番心配な点といえるが、発売までに改良されるかもしれない。
もっとも、画質面はまだチューニング中ということで、CCD本来の性能をフルに発揮できているかどうかわからない。このあたりは、実写可能なモデルが入手出来次第、追ってレポートしたい。
■この春の目玉になる超注目モデル!
ソニーがいよいよ本腰を入れてデジタルカメラ市場に参入してきた! そんな感想だ。なにしろ、DSC-F3以来1年以上もVGAで通してきただけに、今回の200万画素モデルに賭ける意気込みは相当なもの。
個人的には、いくらツァイスレンズ付きの200万画素モデルとはいえ、単焦点モデルで115,000円という価格設定は、少々高いのでは……という感じもする。だが、小型軽量で質感もよく、さらにソニーやツァイスのブランド力、MPEG動画まで撮影できるという楽しさまで考えると、この価格でも、かなりの大ヒット作になる可能性を秘めている。
しかし、その一方で本機は200万画素機の第1号機であり、これから超強力なライバル機が続々登場することが予想される。発売日が4月1日と当分先であることを考えると、これだけの魅力を備えながらも、意外に苦戦する可能性もあり、今後の展開が楽しみなモデルでもある。
そして、なによりも楽しみなのが、実写時の実力。はたして、200万画素モデルの実力は? 名門ツァイスレンズを搭載したことによるメリットが本当に感じられるのか? 暗いシーンでの写りはどうか? ストロボの調光レベルは? 実際の電池の持ちは? 起動時間はどこまで短縮化されるのか? など、本当に興味は尽きない。
だが、少なくとも今回、短時間ではあるが本機に触れ、その実力の一端を垣間見た感じでは、十分に期待していいレベルの製品になる予感がする。とにかく今は、200万画素モデルの第1弾である本機の実力を、一刻も早く、フィールドでの実写で確かめたい! もちろん、実写可能なβ版モデルが入手出来次第、なるべく早期に実写レポートをアップするので、大いに期待してほしい。
□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/index-j.html
□ニュースリリース
http://www.sony.co.jp/soj/CorporateInfo/News/199901/99-014/index.html
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【1月28日】ソニー、ツァイスレンズ搭載の211万画素サイバーショット
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990128/sony.htm
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http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/digicame/dindex.htm
■注意■
('99年1月29日)
[Reported by 山田久美夫]