プロカメラマン山田久美夫の

フォトキナレポート
「キャノン PowerShot Pro70ワーキングモデルなど」



●キヤノン「PowerShot Pro70」ワーキングモデルを公開

 発売が大幅に延期され、その動向が心配されていた「PowerShot Pro70」だが、フォトキナ前日のプレス・パーティーでワーキングサンプルを公開。同社ブースでは一般の来場者でも、実機を手にとって操作できるスタイルで展示されている。また、今回は実写画像をプリントやディスプレイ上でみることもできた。
 本機は今年後半の注目機種であり、同社初のメガピクセル機となるだけに、そのポテンシャルには注目が集まるところ。そこで今回は、プレスパーティーやブースでのファーストインプレッションをお届けしよう。

 外観上では発表時から大きな変更点はないようだが、細部はかなりリファインされている。もちろん、ブースにあるモデルはきちんと動作するとはいえ、まだまだベータ版の段階といえる。
 手にした感じはやや大柄で、手の小さな私には若干グリップ部が大きいように感じた。また、今回取材用に持ち歩いている「ソニー Cyber-shot PRO」と比べると、サイズ的には際だった差はないものの、かたや5倍ズームの一眼レフファインダであり、Pro70はストロボも内蔵されていないことを考えると、もう少しコンパクトに収まってもいいのでは……というのが正直な感想だ。

 操作性はよく考えられており、基本的に撮影・記録の各モードが1ボタン1機能になっているので、その点ではわかりやすい。だが、機能が多いこともあって、ボタンの数がやや多めで、ちょうど電子ダイアルを採用する以前のEOS(同社の35mm一眼レフ)のような雰囲気があり、操作は若干慣れを要する感じがある。やはり、同じメーカーの製品であれば、最新のEOS系の洗練された操作性をPowerShotシリーズにも導入してほしい。

 シャッターの感触は、なかなか軽快。オートフォーカスの速度もPowerShot 600Nほどの遅さはなく、PowerShot A5よりもスピーディ。実用十分な測距速度といえる。

 記録時間は約3秒。大容量のバッファを備えているので、秒間3コマレベルの高速連写もできて、その点は安心だ。

 ファインダは一眼レフタイプではなく、光学式ビューファインダを採用している。これは、画質を最優先するために、レンズとCCDとのあいだに必要以上の光学系を配置したくないという考え方から採用されたものだという。基本的な考え方には同意できるが、15万円以上の価格になることが予想されるだけに、物足りなさを感じてしまう。もっとも、ファインダの出来はなかなかよく、適度に明るくて見やすいものとなっているので、この点は安心だ。

 本体には液晶モニタが搭載されており、横に開いた状態で利用したり、くるりと回転させてボディ背面にセットして、液晶ファインダとして利用することもできる。とくに、横に開いた状態では角度を自由に変えることができるので、ハイアングルやローアングルでの撮影にも便利だ。
 だが、今回出展されたベータ機では、液晶モニタの表示品質がいまひとつなのが気になる。液晶のレスポンスは十分に高速で、ほぼリアルタイムだが、モニタ表示の色調がかなりグリーンがかっており、ハイライトが飛んだように表示される点が気になる。PowerShot A5でも同じ傾向はあるが、この表示品質のまま製品化されるならば、大きな不満になるだろう。せめて、大きめのボディにあわせて2.5インチ液晶を採用するといった配慮ができなかったのだろうか?

 ストロボは内蔵されておらず、外付け式。EOSシリーズとの互換性が図られており、同シリーズのTTL調光式ストロボが利用できる。だが、これだけのボディサイズでストロボがないというのは、なんとも釈然としない。また、ストロボを装着した状態での携帯性はかなり悪く、この点は感心できない。
 記録媒体はCFカード。しかも、CFカードを2枚同時にさして、ボディ上面にあるボタンで適時切り替えながら使うこともできるうえ、先だって発表されたばかりのCF Type2のカードも利用できる。そのため、カードの記録容量は十分なレベルといえる。

 電池は基本的に専用形状の充電式バッテリの使用が推奨される。もちろん、汎用のバッテリ(2CR5)でも撮影できるが、後記のハードディスク「microdrive」を使うことまで考えると、消費電力の点では厳しいものがありそうだ。

 画質は現時点では未知数だが、会場でのサンプルプリントは十分すぎるほどキレイで、A4版にプリントしても画質面ではなんら心配のないレベルなのは立派なもの。また、同社のスタッフが会場周辺を撮影した生データをディスプレイ上でみせてもらった感じでも、写りは想像以上によく、解像度と階調性に関しては、現行モデルのなかでも明らかにトップレベルの実力という印象だった。もっとも、詳細に見てゆけば、まだまだ不満な点もあったが、本機は画質最優先での設計がなされているモデルであり、今回もベータ版であることを考えれば、発売までにかなりの画質向上が見込まれる。

 本来は今夏発売のモデルであり、その後のアナウンスで年内発売に変更されたPowerShot Pro70。もちろん、その間にも「ソニー Cyber-shot PRO」や「オリンパス C-1400XL」といったライバル機が続々発表され、本機よりも前に発売されるわけだ。そんな中で、本機のポジションはなかなか難しいものとなってきている。しかも、ライバル機が一堂に会す今回のフォトキナでは、実写サンプルを含めて、もう少しきちんとしたスタイルでの出展を期待していただけに、ちょっと肩すかしを食った感じもある。年内というアナウンスであり、年末商戦を考えると、残された時間はかなり短い。それだけに、今後の動向が大いに気になるモデルといえる。

□PowerShot Pro70のニュースリリース
http://www.canon-sales.co.jp/Whatsnew/1998-kami/pr_ps5a-70.html

●IBMはキヤノンブースでmicrodriveをデモ

 PowerShot Pro70の展示スペースのすぐ横では、話題のCFカードサイズハードディスクである「microdrive」のデモが行なわれていた。PowerShot Pro70は、このCF Type2をきちんとサポートしている唯一の製品ということで、同ブースでのデモとなったという。
 実際にmicrodriveの現物を目の当たりにすると、実に小さく、精密感がある。このサイズで340MBあれば、かなり利用範囲の広い記録媒体になるのは確実だ。また、同ブースではCF Type2カードを、普通のPCMCIA Type2スロットで利用できるアダプタも展示されており、これが利用できればより利用範囲が広がる。だが、消費電力が普通の半導体メモリよりもかなり多くなるため、装着できてもきちんと稼働しないハードがあるそうだ。
 価格的にも、さほど高価なものにならないということなので、この点でも安心だ。
 しかし、今世紀中に1GBまでアップするというmicrodriveは、個人的にはPowerShot Pro70よりも、インパクトのある製品であった。

 このほか、同ブースでは、水中ハウジングなどのPowershot A5用のアクセサリが多数展示されている。

□microdriveのニュースリリース
http://www.ibm.com/News/1998/09/09.phtml(英文)

□関連記事
【3月12日】「キヤノン、超小型81万画素と168万画素のデジタルカメラ」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980312/canon.htm
【9月10日】「IBM、コンパクトフラッシュType2に対応した超小型HDD」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980910/ibmhdd.htm
デジタルカメラ関連記事インデックス
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/digicame/dindex.htm

('98年9月22日)

[Reported by 山田久美夫]


【PC Watchホームページ】


ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp