その後、NTTパーソナルから正式に発表されたが、発売が8月上旬とアナウンスされたまま、何も情報が流れていなかった。そして、先週末、ようやく家電量販店などの店頭にモックアップが並び、わずかながら製品が出荷された。幸いにもファーストロットをゲットすることができたので、早速、試用レポートをお届けしよう。ちなみに、インターネットパルディオの標準小売価格は59,800円だが、購入価格は29,800円だった。
インターネットパルディオ本体 |
メインメニュー |
ビジネスショウで公開されたときは試作品ということもあり、シャンパンゴールドのようなボディカラーだったが、製品では黒が採用されている。右側にある青い丸は上面のパネルを開けるときに指を引っ掛けるためのもののようで、デザイン上のアクセントになっている。
パネルを開くと、液晶ディスプレイが見える。パネルにはタッチペンが収納できるようになっており、右側にはコード巻き取り式のイヤホンマイク、右側面に電源スイッチなどが配されている。イヤホンマイクは通話をするためのものだが、多少の気恥ずかしさこそ残るものの、東芝のGENIOや松下電器のピノキオのように本体をグワシとつかんで、耳に当てて電話をするよりは違和感が少ない。ちなみに、イヤホンマイクのケーブルを巻き取るときは、底面にある巻き取りスイッチをスライドさせる。底面にはPHSとしての機能をOFFにするためのスイッチも付いているが、これはPHSの待ち受けなどで電力消費を避けたいときに利用する。
イヤホンマイク |
コード巻き取りスイッチ |
専用リチウムイオン電池 |
電源は本体底面に装着した専用リチウムイオン電池を利用する。このリチウムイオン電池は3.6V・1350mAhというかなり強力なもので、太さ・長さともに単三乾電池よりひと回り大きい。充電は本体に添付されているACアダプタを利用する。バッテリ駆動時間はフル充電の状態で、連続待ち受け200時間、連続通話時間3時間を実現している。他のPHS端末に比べると、駆動時間は短いが、実用上は何ら問題を感じない。利用頻度にもよるが、見せびらかすことが多いここ数日でも1~2日に1回程度、フル充電するだけで利用できている。
そして、インターネットパルディオで最も注目なのが液晶ディスプレイだ。通常、PDAなどの液晶ディスプレイは階調表示が少なく、写真などをほとんど見ることができないが、インターネットパルディオの液晶ディスプレイは16階調表示ができる反射型タイプのものを採用しているため、WWWページの写真なども十分見ることができる。バックライトがなく、フォントが小さいのは慣れが必要だが、実用上は何ら問題を感じない。反応速度も必要にして十分なものだ。
WWWブラウザ画面 |
写真表示もOK |
メール受信画面 |
インターネットパルディオはパルディオEメールによる電子メールの送受信が可能だ。基本設定は登録済みなので、パスワード(最初は何でもOK)を入力し、センター(メールサーバー)にアクセスすれば、すぐに利用開始となる。2週間、センターに読み出しをしないと、自動的にメールボックスは削除されるが、再び読み出しをすれば、メールボックスが作成され、利用を再開できる。つまり、最低でも2週間に1回は読み出しをすれば、継続して利用できるということになる。
インターネットパルディオのメールソフトは、PDA用としてはなかなか高機能で、CC(Carbon Copy)ができたり、JPEG及びGIF形式の画像ファイル、TEXT及びHTML形式のテキストファイルを添付したメールを受信することができる。受信できるメールは3KBまでで、本体には最大50件のメールを保存することができる。使い勝手もなかなか良好だが、パルディオEメールは着信通知の機能がないため、まめにセンターに読み出しをする必要がある。
情報サービス画面 |
パルディオEメールにイラスト送受信機能を付加したものだが、やり取りできる相手がインターネットではなく、対応PHSに限定されているのが難点だ。インターネットパルディオ上には簡単なグラフィックツールが含まれているため、地図などを作成して送信することができる。しかし、実際にはFAX送信に利用するのがベターだろう。
NTTパーソナルではこの機能を使い、情報サービスを提供している。今のところ、天気予報と週間予報などだけだが、お買い物情報やイベント、レストラン情報なども地図の案内付きで配信されるようになると面白いかもしれない。
ブックマークも可能 |
フレーム表示対応 |
インターネットパルディオにはフレーム表示にも対応したHTML3.2準拠のWWWブラウザが搭載されている。メインメニュー上のパルディオネットサーフィンのアイコンをクリックすれば、自動的にパルディオネットサーフィン経由でインターネットに接続し、WWWページが表示されるようになる。ブックマークを登録したり、起動ページも変更することも可能だ。
この他にも、既存のプロバイダのPIAFS対応アクセスポイントを2つまで登録できたり、NIFTY SERVEなどのパソコン通信サービスと接続するための通信ソフトが搭載されているなど、インターネットを中心とした通信機能の充実ぶりは他のPDA一体型PHSを圧倒している。
そして、これらの通信機能のうち、パルディオEメール、パルディオIメール、パルディオネットサーフィンについては、一切の追加契約などをすることなく、購入してすぐに使えるようになっているのが最大のメリットだ。現に、筆者も購入して30分後にはPC Watchのページをパルディオネットサーフィン経由で見ていた。他社からもPDA一体型PHSがいくつか提供されているが、プロバイダとしてのサービスが提供されていないため、既存のプロバイダの契約をPDA一体型PHSに設定する必要があった。インターネットパルディオは自社で提供するプロバイダサービスを組み込んでおくことにより、それらをまったく不要にしている。買ってすぐにインターネットができるという点に限れば、これ以上、すばやくインターネットに接続できる製品はないと言い切れるだろう。
インターネットパルディオには、スケジュール管理、アドレス帳、電卓、ToDoリスト、メモ帳などの機能が搭載されている。これらのうち、スケジュール管理とアドレス帳、ToDoリストはHTMLベースで記述されているようで、見た目は非常にそっけないが、ひと通りの項目は提供されている。
スケジュール管理画面 |
このあたりはユーザーのPDAに対する考え方次第なのだが、よく参照する範囲の情報を見ることができれば良いというユーザーなら不満を感じることはないだろう。逆に、何でもかんでもPDAに詰め込んで、「オレのすべての情報はコイツで管理している」などと言ってしまえる人には明らかに不足ということになる。いずれにせよ、インターネットパルディオのPDA機能は必要最小限ということは覚えておいてもらいたい。
ただ、残念なのがパソコンとの連携機能がまったくないという点だ。アドレス帳のデータをパソコンから転送することはもとより、スケジュールの同期、メールアドレスの転送、受信したメールのバックアップなどの機能は一切ない。受信したメールのバックアップはForwardなどを利用すればそれほど気にならないが、アドレス帳のデータを転送したり、スケジュールをパソコン上のPIMと同期させるといった機能は欲しかった。この点だけは非常に残念だ。
入力方法はタッチペンを採用しているため、手書き入力がメインかと思いきや、インターネットパルディオはソフトウェアキーボードと、区点入力もサポートしている。しかもソフトウェアキーボードは、ABC配列、50音配列、JISキーボード配列が用意されており、ローマ字かな変換もサポートしている。
ソフトウェアキーボード管理画面 |
慣れるまでは少々入力に戸惑うが、定型文を登録しておくこともできるため、それほど使い勝手は悪くない。筆者も何通かテストメールを送信したが、それほどの長文でなければ、ヒョイヒョイと送ることができた。もっともPDAで長文のメールを送ることはまずないのだが……。
また、動作については、筆者が以前利用していたGENIOよりもはるかに快適で、スムーズに操作することができた。ネットサーフィン中、ごくまれに引っかかるような動作をすることもあるが、数秒待てば、すぐに動き出す。通信時以外の動作は軽快で、ハングアップするようなこともまったくない。安定度と速度という点については、及第点をつけられるだろう。
逆に、PDAとして見た場合は、パソコンとの連携機能がないため、今ひとつと言わざるを得ない。パソコンを使っているユーザーであれば、何らかの形でパソコン上にアドレス帳などのデータを持っているわけで、それをソフトウェアキーボードで入力し直さなければならないというのは厳しい。また、ゲームや占いといった遊びの機能がないのも残念な点だ。PDAは常時携帯するものだが、実務のみに利用するものではない。やはり、遊びの部分があってこそ、本当の意味でのPersonal Digital Assistantsと言えるのではないだろうか。ネットサーフィンがその代用という見方もできないわけではないが、もうひと工夫が欲しかった。
また、実売価格で約3万円をどう捉えるかも選択のポイントだ。筆者の知人でも「えー、3万円もするのぉ?」という人がいた。しかし、冷静になって考えてみると、同様のスタイルを採用したGENIOやピノキオの実売価格が5~6万円だったのだから、半額でそれ以上のものが手に入るということになる。筆者自身はこれだけの機能で3万円なら安いと見ている。
総合的には、お手軽にインターネットを楽しむための端末というのが正しい見方だろう。「インターネットはしたいけど、パソコンまで買う気は……」といった人には、購入価格もランニングコストもそれほど高くないので、安心しておすすめできる。設定もほとんど必要ないので、まったくの初心者でも気軽に使えるハズだ。インターネットに興味を持ち始めた彼女や奥さんにプレゼントしちゃうというのも面白いかもしれない。カエルコール(やや死語)はパルディオEメールで……というわけだ。
と、ここで本来なら「ぜひ店頭で触ってみて……」と締めの文句を書いたりするわけだが、残念ながら店頭に展示されているインターネットパルディオはモックアップであるため、実際の操作感を知ることができない。ぜひ店頭デモを行なうなどの配慮をNTTパーソナルにお願いしたい。
「モバイルコンピューティングはしたいけど、デカいノートは持ち歩きたくない」、「外出先でお手軽にインターネットを使いたい」というユーザーには、ぜひ試してもらいたい製品と言えるだろう。
□NTTパーソナルのホームページ
http://www.nttphs.co.jp/
□インターネットパルディオ製品情報
http://www.nttphs.co.jp/chuo/service/terminal/ip-1d.htm
□「パルディオEメール」サービスの情報
http://www.nttphs.co.jp/chuo/service/nw/p_email.htm
□「パルディオIメール」サービスの情報
http://www.nttphs.co.jp/chuo/service/nw/p_imail.htm
□「パルディオネットサーフィン」サービスの情報
http://www.nttphs.co.jp/chuo/service/nw/surfin.htm
[Text by 法林岳之]