芸のないCD-ROMドライブはいらないテレコム道家元なんて肩書きをもらってるボクですが、実はどういうわけだか、CD-ROMドライブをはじめとする光メディアにご縁がある(詳しいってわけじゃないよ)。思い返せば、はじめて買ったCD-ROMドライブは、東芝のXM-3401Bという内蔵ドライブで、ある雑誌に付録としてCD-ROMが毎号添付されると聞いて購入したものだ。ちょうど、当時アメリカからIBM PC/AT互換機を輸入する準備をしているときで、いっしょにCD-ROMドライブも輸入したわけだ。倍速のキャディ式で、価格は6万円程度だったように記憶している。当時としては、それでもかなり安かったのだ。 その後、より高速なもの、インターフェイスが違うもの、ローディング方式が違うものなど、いろいろなCD-ROMドライブをためしてきた。なかには使わなくなって人に売ってしまったり、処分してしまったものもあるが、継続して愛用している製品もある。たとえば、物欲道修行記の第3講で紹介した多連装CD-ROMドライブ、第7講で紹介したPD、第50講で紹介したDVD-ROMドライブ、物欲道では紹介していないCD-Rドライブなどだ。 これらの製品に共通して言えるのは、単なるCD-ROMドライブではなく、もうひとつの機能が付加されているということだ。他のメディアが読めたり、たくさん読めたりするというわけだ。つまり、CD-ROMドライブには単にメディアが読めるだけでなく、ちょっとした芸が必要だと考えているわけだ。
スロットイン式CD-ROMドライブだ
しかも、DR-501Sは最新の24倍速というスグレモノ。他の24倍速CD-ROMドライブには、実は十分にパフォーマンスが出てない製品もあったりするそうなんだが、こちらは全開バリバリ(死語)の24倍速で、最高回転数は毎分6417回転まで達する。これって、ヘタな乗用車のエンジンより回してるってことだよね。こうなってくると、ドライブ前面にタコメーターとかデジタルメーターでも付けて欲しくなるぞ(笑)。 しかし、CD-ROMドライブはただ単に速けりゃいいってもんでもない。まず第一に、ちゃんとメディアを読むことができなければならない。たとえば、CD-ROMが歪んでいたり、塗装や汚れで重心のバランスが崩れていたとしよう。あるいはヒビが入っていたり、キズがついているメディアを入れてしまったとする。そんな状態のメディアを毎分6000回転もの速度でブンブン回せば、ちゃんとデータが読みとれなかったり、内部でメディアが割れてしまう可能性がある。最悪の場合は破片が外部に飛び散ることもあるそうだ。 そこで、パイオニアではメディアがロードされたときにその状態を調べ、問題がありそうなときは速度を落とすなどの対処をしているそうだ。このあたりの工夫はユーザーにとっても安心感が大きい。だって、雑誌の付録CD-ROMなんて、平積みされてたら、十分歪んでる可能性あるもんねぇ。 ただ、さすがにこれだけの回転数ともなると、動作音の方はちょっと気になる。グォーという低めの音が響いてくる。ま、慣れてしまえば、気にならないというか、それはそれで心地よいのかもしれないけど(笑)。
なぜスロットイン式は便利なのか
話が速度のことに集中してしまったが、やはり注目はスロットインというメカニズムだ。CDメディアのスロットインというと、先ほども触れたように、カーオーディオのCDプレーヤーが思い浮かべられる。当然、誰もが「パイオニアなんだから、カーオーディオのメカニズムを流用したんだろう」と考えるだろう。かく言うボク自身もそう考えていた。
ところが、パイオニアに取材したところ、細かい部品レベルでは共通するものがあるかもしれないが、基本的にコンピュータ用はまったくの別物なんだそうだ。たとえば、カーオーディオ用ドライブはメディアを上下から挟むようにしてローディングしているが、コンピュータ用では記録面に汚れや傷がついてしまうといけないので、メディアを左右から挟むようにしてロード/イジェクトをしているのだそうだ。 つまり、ドライブを設計する上で、根本的に重視するポイントが違うわけだ。ちょっと意外な気もしたが、事業部なども違うのだから、当たり前と言えば当たり前なのかな? ちなみに、カーオーディオ用ドライブと似ている部分もある。たとえば、右の写真にあるスロット部分がそうだ。やはり、ごく柔らかいブラシ状のものが上下についていて、ローディング時にホコリなどを落としているようだ。 実際に動かしてみて驚いたのが、その扱いやすさだ。トレイ式CD-ROMドライブでは、「トレイを引き出す」→「メディアをセット」→「トレイを閉めてメディアをロード」という手順が必要になるが、スロットイン式ならメディアをスロットにあわせて押し込むだけ。とにかく簡単にメディアがロードできるのだ。この手軽さは一度体験すると離れられない。
また、見逃せないのが、メディアをイジェクトしたときの状態だ。ボクのクルマのカーオーディオにはスロットイン式CDが採用されているんだけど、イジェクトボタンを押すと、メディアは途中までしか出てこない。そのため、メディアを外すときに、盤面に触ってしまうことが多い。 これに対し、DR-501Sではメディアをイジェクトすると、センターの穴が見えるあたりまで出てきて停止する。そのため、メディアの記録面に触ることなく、メディアの穴とエッジを指で挟んで持つことができる。なかなかニクい配慮と言えるだろう。
来年はスロットイン式が当たり前になる
そんな環境でもスロットイン式CD-ROMドライブなら、容易にメディアをローディングさせることができる。ちょっと違反かもしれないけど、メディアをやや斜めにしながらスロットに合わせ、徐々に水平にしてローディングさせる方法(って書くと面倒そうだけど)も使えそうだ。前回の物欲道で紹介したDVD-ROMドライブのトレイを引き出した状態と比較してみると、その違いがよくわかる。写真はやや斜めから撮っているので、やや誇張されたように見えるが、イジェクトした状態で5センチ強は前面のスペースが違うのだ。 また、今回はテストしていないが、スロットイン式CD-ROMドライブは縦置きでも威力を発揮しそうだ。現在のトレイ式CD-ROMドライブは、縦置き時にメディアが倒れないようにするため、トレイのエッジにツメが付いている。しかし、スロットイン式なら何もせずに縦置きの環境で使うことができる。デスクトップ機を縦置きにして使っているユーザーは要チェックだろう。 この他にも、いろいろな場面でスロットイン式CD-ROMドライブは効果を発揮しそうだ。こうなってくると、自宅マシンの芸のないCD-ROMドライブをみんなスロットイン式に変えたくなってきてしまいそうだ。でも、これだけ便利なんだから、来年あたりはスロットイン式CD-ROMドライブが当たり前ってことになるのかもしれない。もちろん、DVD-ROMドライブなどでもスロットイン式が開発される可能性もありそう。これでまた物欲の種ができたな(笑)。
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