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Microsoftは9月29日にWindows CE関連の新戦略を発表か


Microsoftは9月29日にWindows CE関連の新戦略を発表か

 先週の金曜、7月4日は米国の独立記念日。米国ではこの日が夏休み入りというイメージがあるが、どうやら気ぜわしいPC業界もようやくホリディ気分になったらしい。先週は新奇なニュースが少なかった。その中で目を引いたのが「Microsoft To Launch NC Attack With Windows CE Upgrade, Universal Virtual Machine」(InformationWeek News,6/30)だ。この記事によると、米Microsoft社が9月29日にWindows CE関連の製品や戦略を発表、モバイルネットワークコンピューティングデバイスで一気に攻勢をかける予定だという。発表予定のなかに含まれているのは、Windows CEの次期バージョン2.0、「Visual Basic(VB) for CE」、それに「Universal Virtual Machine(UVM)」(!)だそうだ。このUVMというのは、Visual C++かVisual BasicかVisual J++で一度書いたプログラムが、一切手を加えることなくWindows CEのサポートする6つのMPU上のどれでも走るというシロモノ。詳細はまだわからないが、Java VMをモデルにしたものだという。これはもしかするとMicrosoftのWindows用次期RAD(rapid application development)ツール「Vegas(コード名)」とも関係あるかも知れない。ちなみに、現在のWindows CE用アプリの開発は、Visual C++で書いて、各MPUごとにリコンパイルしている。そのため、企業ユーザーが手軽に業務向けカスタムアプリケーションを書くことが難しかったわけだが、VB for CEが登場すれば、状況は一変することになる。モバイルNCに先手を打たなければと、急ぎ始めたのだろうか?

 Windows CEがらみではもうひとつニュースがある。「Microsoft Developing Software For Car Computers」(The Wall Street Journal,6/30,http://www.wsj.com/から検索、有料)は、Microsoftがダッシュボードにマウントするコンピュータのソフトを開発していると伝えている。「Apollo Project」と呼ばれるこの構想に関しては、Microsoftがすでに多くの大手自動車メーカーに話をしているという。そういえば、先月来日したビル・ゲイツ氏が、東京の次に訪れたのは“名古屋”だったが……。


●滑り込みセーフのMemphis β版

 4月に開催された米Microsoft社のカンファレンス「WinHEC」で、同社のWindows Operating System Divisionジェネラルマネージャ、カール・ストーク氏は、次期Windows 9x「Memphis」のβ1版を第2四半期中に出すと確約した。Memphisのβテストが6月末日に始まったことで、ストーク氏はかろうじて約束を守ることができた。締め切りぎりぎりにアップするという、駆け込みスケジュールからは、あわただしい開発状況がかいま見えるようだ。もっとも、このβ版は一般ユーザー向けではないので、開発者やマスコミ関係者以外はレビューを待つしかない。すぐに概要を知りたければ、速攻で評価記事をアップしているCNET.COMがおすすめだ。「Memphis makes things easier」(CNET.COM,6/30)では、画面キャプチャも合わせたレポートを読むことができる。コンパクトにまとまった記事なので、この記事と続く「Windows on the Web」(CNET.COM)を読めば、Memphisのポイントはつかめる。フォローアップの最新情報は、「Latest MEMPHIS and IE4 news」(Memphis97.com)あたりをウォッチしていればいいだろう。


●Memphisの遅れでメーカーが独自の動きも

 しかし、ようやくβ版が出たと思ったら、Memphisに対して渋い記事が目立ち始めた。これは日本ほど甘くない米国のテクニカル系マスメディアの通常のパターンで、モノが出たら容赦なくクエスチョンの記事が登場する。「Memphis delay causing hardware hardships」(Computer Retail Week,6/30)では、Memphisが当初の予定より遅れているため、ハードウェアメーカーが大弱りだと報じている。DVDやAGP、USB(一部のドライバを除く)、デジタル衛星TV放送などなど、Memphisでのサポート待ちのインターフェイスや機能が山ほどあるためだ。そこで、メーカーは中間的な手段として、今年の年末商戦向けにはドライバを独自に開発して対応するところも出るという。また、「Convenience Tops the List of Memphis Features」(PC World,7/2)は、Memphisの意味そのものにクエスチョンをつけている。Memphisの新フィーチャの多くは、OSR2やアドオンで提供されたりされる予定があるものだし、目玉のInternet Explorer 4.0にしても、無料ダウンロードで入手できるようになるというわけだ。確かに、それ以外の要素は新ハードウェアのサポートが主体だから、既存のマシンでのアップグレードでは魅力が薄いというのも説得力がある。


●MicrosoftがCBSを買う?

 このほか、先週は、Microsoftが米国3大TVネットワークのひとつCBSを買収しようとしているというニュースが流れた。しかし、これは「Microsoft Denies Report It's Looking To Buy CBS」(The Wall Street Journal,7/1,http://www.wsj.com/から検索、有料)などと、あっさり一蹴されてしまった。マスコミが冷静なところを見ると、実際に動きは見えないのだろう。しかし、この1~2年のMicrosoftの買収・投資攻勢は、こういう憶測を生み出すのも当然と言える。


●Tillamook登場でノートPCの価格は下落?

 夏枯れの状況を示し始めたニュースだが、Intel関連では次期ノートパソコン用MMX Pentium「Tillamook」がらみで新しい話題があった。「Notebook Price Drop May Accompany Next Intel Mobile Chip」によると、IntelはTillamookを10月の比較的早い時期に投入するつもりで、その前後からノートPCの価格がドラマティックに下落するという。ただし、「Notebook prices sink as product pipeline bulges」(Computer Retail Week,6/30)は、233MHz版Tillamookは年内は限られた量しか出荷されず、大量に出回り始めるのは'98年第1四半期になるというアナリストの予測を伝えている。また、メーカーのなかにはAMD製MPUをノートパソコンに採用するところもあるようだ。いずれにせよ、今年後半はノートパソコンのMPUと価格にかなりの変動がありそうだ。


●MPUのバグをBIOSでフィックス

 もうひとつIntel関係のニュース。「Technology allows processor bugs to be fixed via BIOS chip」(InfoWorld Electric,7/3)によると、Intelは夏の後半にCPUのバグをBIOSの変更でカバーする技術を発表するという。これは「Encrypted Microcode」と呼ばれるもので、CPUを交換することなくBIOSアップデートだけでバグフィックスができるそうだ。こういう手を思いついたのも、やっぱり、バグであれだけ悩まされたから?
 今後、MPUの設計はますます複雑化して、その分バグの危険も多くなるわけで、論理的な解決策だと言える。


●サブ1000ドルPCブームはどうなる?

 ところで、米国でこのところ猛威を振るっていたサブ1,000ドルパソコン旋風がようやく収まり、MMX Pentium PCが売れ始めたと伝えるニュースもある。「MMX PC sales up; sub-$1,000 PCs down」(Computer Retail Week,7/1)だ。背景を簡単に説明しておくと、米国の小売りマーケットではMMX Pentiumへのシフトが進まず、MMXなしPentiumやx86互換MPUを搭載した1,000ドル以下のPCの売れ行きが急成長する現象が今年に入ってから起きていた。それが、ようやく5月に入り、MMXシフトが始まったという調査結果が出てきたというのだ。しかし、これはMMX Pentium PC自体の価格がIntelの価格政策により急激に下がってきたというのも大きい。「Compaq Line Includes Multimedia Systems Priced Below $1,000」(The Wall Street Journal,6/30,http://www.wsj.com/から検索、有料)などが報じるように、米Compaq Computer社はこの夏から799ドルPCを出すわけで、PCの価格下落自体はますます進む可能性が高いだろう。


●ジョブズ氏がApple株を売った?

 先々週から先週にかけては、Apple Computer株が揺れた。一時は85年以来で最低の13ドルをつけた。そのきっかけとなったのは、150万株の同社株が売りに出されたこと。「Apple stock hits ten-year low」(NEWS.COM,7/1)などによると、これだけまとまった株を売りに出すのはスティーブ・ジョブズ氏ではないかという疑惑が集中、ジョブズ氏がAppleを見限ったという観測もあって株価が急落したらしい。まだ真相は明らかになっていないが、まだまだ揺れるAppleというところか。


●NetscapeはCompassを来週リリースか

 最後は米Netscape Communications社のニュース。「Netscape Readying Beta Version Of Compass Server」(InformationWeek,6/30)によると、同社は7/14に「Netscape Compass Server」のβ版をいよいよリリースするらしい。これは、Catalogue Serverの後継だが、あらゆるWebページやEメール、ニュースグループ、さらにファクシミリやカレンダー、ボイルメールまであらゆるインフォメーションソースをモニターして、フィルタリングしてくれるらしい。Netscapeのイントラネット戦略の強力な武器だ。

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('97/7/7)

[Reported by 後藤 弘茂]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp