【イベント】

【Windows World Expo/Tokyo 97レポート】

プロカメラマン山田久美夫の

Windows World Expo/Tokyo 97 デジタルフォトレポート

'97/6/25~28 千葉幕張メッセにて開催


 今年も昨年に続き「Windows World Expo」をターゲットに続々と新製品が登場。実質的に各社とも、今回のショーが初の一般公開というあって、話題のデジタルカメラを展示しているブースはかなりの賑わいを見せていた。

 今回はその中から、主だった製品をピックアップして紹介しよう。



●メモ用デジタルカメラの将来像を見せた「シャープ パワーザウルス」


パワーザウルス

 カラーザウルス発表時からデジタルカメラユニットを用意し、PDAとデジタルカメラという情報ツールとしてのデジタルカメラのあり方を提示していたシャープ。そして今回は、いよいよその本命といえるデジタルカメラユニット付きの「パワーザウルス」を発表。

 ユニット自体はもちろん取り外しができ、別売もされるわけだが、35万画素で2倍ズーム付きというなかなか魅力的な仕様。しかも、本体自体が先代のカラーザウルスよりも大幅に小型化されPI-8000並み(厚みはある)になった。このサイズならPDAとして十分常用できるレベルだし、デジタルカメラユニットを装着すれば、パワーザウルス側のカラー液晶をモニター代わりに使えるので、使い勝手も上々。メモリ容量もかなり大きいため、デジタルカメラのデータをかなりの枚数記録しておくこともできる。ビジュアルを含めたトータル情報機器として、かなり魅力的な存在となっている。

 残念ながら、ブースがかなり混み合っていたこともあって、使うことはできなかったが、完成度いかんでは、かなり魅力的なPDA&デジタルカメラとなりそうな気配を感じた。久しぶりに、「ぜひとも使ってみたい!!」という衝動に駆られてしまった。




●えっ! こんなに薄型で、19,800円!「MITSUBISHI DJ-1000」


T-ZONEブース

 会場の一番端にあるT-ZONEブース(というか即売場)。即売目当ての来場者でごった返していた同社のブースの片隅で、実は正真正銘の本邦初公開モデルがあった。それが超薄型の低価格モデル「MITSUBISHI DJ-1000」だ。本機は、液晶モニターこそないが、超薄型でしかも記録媒体にコンパクトフラッシュ(CF)カードを採用した、低価格モデル。同様のものはすでにCOMPUTEX TAIPEI '97などでも他社ブランドのOEM製品として発表されていたが、ついに国内でも公開されたわけだ。

 詳細は関連記事に掲載されているが、手にしてみると、その薄さには本当にビックリする。よくこの薄さでCFカード付きモデルを作ったもんだと、素直に感心してしまった。これだけ薄いと、常時胸ポケットに入れておいても、全く苦にならないレベルだ。画像サイズはVGAより一回り小さく、コダックDC-20とほぼ同じピクセル数のもので、会場ではその場で撮影したものをプリントアウトするというデモを行っていたが、そこで見る限り、写りはまずまずといったところ。メモ用として考えれば十分なレベル。

 しかも、これが2MBのカードとPCMCIAアダプターまで含めて実販19,800円というから、さらにビックリ!。これなら、オモチャ感覚で気軽に買えそうだ。

DJ-1000正面 DJ-1000側面

カードアダプター  また、そのすぐ後ろで、デモに使われていたのが、以前ビジネスショーで台湾メーカーのブースにあった、パラレルポート用のコンパクトフラッシュ用カードアダプター。発売時期は未定だが、入荷次第、同店の店頭に並ぶという。わりと近々という。価格は1万円以下になりそうだ。スマートメディア用のフロッピードライブアダプターである「フラッシュパス」の発売が今秋以降になりそうなこともあって、このアダプターが安価に入手できれば、ちょっと悔しい思いをしていたCFカードユーザーにとって、かなりの吉報になりそうだ。




●デジタルマビカの貸し出しデモまで展開した積極的なソニー


デジタルマビカ デジタルマビカ
デジタルマビカ デジタルマビカ
 「ソニーデジタルカメラ貸し出し中!」という看板が会場入り口近くを中心にあちらこちらで見られた今回のEXPO。最初は新型Cybershotかな~と思っていたのだが、これがなんと、先日発表されたばかりの記録媒体に3.5インチフロッピーディスクを採用したソニーの新製品「デジタルマビカ」だった。実際にソニーブースでもかなりの台数の同機を目にすることができ、さかんなデモを繰り返していた。

 実は実機を目にするのは今回が初めてだったのだが、そのサイズには結構ビックリ。外観はなんとなく、松下のCradShot風なのだが、サイズはふた回りくらい大きく、迫力は超弩級。なにしろ、女性の顔なら簡単に隠れてしまうほどで、Cybershot系とは全く別系列の製品だ。会場では単焦点レンズ付きモデルと、10倍ズーム付きの両方を手にすることができたが、やはり魅力的なのは10倍ズーム付きのほう。サイズはともかく、価格もまずまず手頃なレベルだし、液晶も大きく、記録媒体も安価なので、ちょっと面白そうだ。もっとも、どうせなら、同じユニットを使って、より小型化したメモリーカード式モデルをぜひとも作って欲しい!と、素直に思ってしまった。




●C-820Lがずらりと並んだオリンパスブース


オリンパスブース  オリンパスは先日発表したばかりの、話題の小型な81万画素モデル「C-820L」をメインにした展示とデモを実施。先代の「C-800L」に比べるとふた回りくらい小型化され、待望の交換式メディア(3.3V専用のスマートメディア)の採用した意欲的なモデルだが、なによりもこのようなイベントでは、液晶モニターに見え味のいい低温ポリシリコンTFTを採用した点も功を奏して、会場での人気も上々。

 いっぽう、ライバルの「エプソン CP-500」は同社ブース内でのセミナー専用という感じで、通りがかりの来場者が気軽にカメラを手にできない展示方法だったのが、とても残念だった。

C-820L正面 C-820L裏面



●カシオペアがメインで、影になってしまった「QV-200」


QV-200 シールプリンターサンプル
デジタル式シールプリンター

 今回のWindows World Expo最大の目玉となったのがWindows CE日本語版の発表ということもあって、カシオブースはカシオペア一色だった。QV-200は、ブースの側面の目立たない場所に展示されていた。QVシリーズはすでに市場に定着したとはいえ、個人的にはちょっと寂しい感じだ。

 また、参考出品として、名刺やカレンダーなどが簡単に作成できる新型のデジタル式シールプリンターが出品されていた。サイズも結構コンパクトで、しかも付属ソフトによりパソコン側で名刺などの文字を入力し、画像と合成して、簡単に出力できる機能を備えており、これはなかなか魅力的。まだ発売時期などは全く未定というが、どうせなら、統一規格になる予定のIrDAの画像転送規格「IrTran-P」を採用した形で製品化して欲しいところだ。そうすれば、カシオだけではなく、将来的にはソニーやシャープのデジタルカメラからのプリントできるようになるため、より魅力的な製品になると思うのだが……。




●プリント環境に充実を図った富士フイルム


富士フイルムブース  富士フイルムブースは今回、DS-300やDS-20など魅力的なデジタルカメラが出揃ったこともあって、結構活気に満ちていた。さらに先日正式発表されたばかりの「FDIサービス」と呼ばれる、一般カメラ店や窓口経由でのデジタルカメラなどのプリントサービスの紹介はもちろん、街角でプリクラ感覚でデジタルカメラのプリントがセルフサービスでできる「あらじんプリント」なども展示。


あらじんプリント プリントハウス

 この「あらじんプリント」は簡単に言えば、同社の画像処理用ワークステーション「アラジン」を中心にタッチパネル式モニター、フラットベッドスキャナーと、PCMCIAとスマートメディア用のカードドライブを装備した一体型プリントマシンで、出力は同社独自のTA(サーモオートクロム)式プリンターでおこなうもの。このプリンターがあれば、あとはPCMCIAカードかスマートメディアに入った、Exifファイル(普通のJPEGファイルは未対応)からのプリントが誰でも簡単にできる。こんなプリンターがコンビニなどに設置されるようになったら、デジタルカメラももっと気軽にプリントできるようになりそうだ(Exifファイルのみしか受け付けないという点は気になるが……)。

 いずれにしろ、富士が積極的に推進しているプリントサービスが、適当な価格で本格稼働し始めれば、これまでデジタルカメラに馴染みが薄かった人でも気軽に使える環境になる可能性が高いため、今後の動向に注目したい(個人的には価格設定次第だと思っているのだが、現時点では結構高価なものになりそうで心配だ)。




●京セラはデータスコープ用通信アダプターを正式発表


データスコープ
データスコープを使った簡易テレビ電話

●京セラはデータスコープ用通信アダプターを正式発表  京セラは今回もビジネスショーと同じく、DR-350とデータスコープでの展開をデモ。しかも、いつの間にか、ビジネスショーで参考出品されていたデータスコープ用通信アダプターを正式に発表していた(16,000円)。これはDR-350で撮影した画像をデータスコープ経由でPIAFSで画像通信するもの。価格も安く、なかなかユニークなものだが、ブースでもデモを見る限り、一枚一枚マニュアル操作で転送するもので、操作が面倒な上、ソフトウエア側の作り込みが浅く、あまり現実的なものではなかった。もっとも、このあたりはソフトウエアのバージョンアップで解決できることだと思われるが、画像通信では、データスコープ内のメモリーのユーザーエリアが極端に少ないのが仇になっているのは事実。初期段階からもう少しシステム化した展開ができなかったものだろうかと、ひとりのデータスコープユーザーとして、正直に思ってしまった。

 また、参考出品ながらも面白かったのが、データスコープを使った簡易テレビ電話。こちらはデータスコープの下側にCCDカメラをユニットごと装着し、モノクロ液晶に画像を表示するもの。もちろん、モノクロ液晶なので画像は不鮮明だが、将来的にはかなり楽しみな分野といえる。もっと実用的でお洒落なモデルに成長すれば、テレビ電話機能付きPHSとして、コギャルの間で大ブレイクする可能性すらあり、今後の動向に大いに注目したい。




●話題のCMOSカメラを出品した東芝


アレグレット アレグレット転送
ビデオキャプチャーカード

 東芝は先日発表したばかりのCMOSカメラ「アレグレット」をデモ。薄型でノートPCのPCMCIAスロットに直接さして転送できるのが大きなメリットで、リブレットをはじめとしたノートPCの大手である東芝らしいカメラといえる。もっとも、CMOSカメラ自体の性能はまだ未知数の部分もある(製品版が入手でき次第、実写レポートをお届けする予定)。

 また、変わったものではPCカード式のビデオキャプチャーカードと、27万画素CCDユニットのセットが展示されていた。これからはノートPCでも画像を扱うことが日常的になる可能性が高いだけに、このようなカードやCCDユニットが今後続々登場するのではないかという予感がした。




●カラーモデルを追加した「九州松下 COOLSHOT」、超ユニークな「ニコン COOLPIX300」


COOLPIX300
【ニコンブース】
COOLPIX300
【ニコンブース】
COOLSHOT
【COOLSHOT】
アタッチメントレンズ
【レイノックス アタッチレンズ】

●超ユニークな「ニコン COOLPIX300」、カラーモデルを追加「九州松下 COOLSHOT」  このほか、ニコンブースでは先日発表されたばかりの「COOLPIX300」のデモを盛んにおこなっており、なかなか好評を博していた。また、知らぬ間に九州松下は「COOLSHOT」のシルバーメタリックモデルを追加。すでに市場に出回っているという(個人的にはオリジナルよりこちらの方がカッコイイ!と思った)。

 また、デジタルカメラ用のアダプターレンズメーカーであるレイノックスは、今回「NEC Picona」用や「キヤノン Powershot 350」用のアタッチメントレンズなど、さらに対応機種を増やしていた。




 今回のWindows World Expoで、この夏の新製品はいちおう、一通り出揃ったわけだが、以前にも増して大混乱状態が続いていることには変わりない。だが、今回の「シャープ パワーザウルス」や「MITYUBISHI DJ-1000」「ニコン COOLPIX300」のような個性的な機種が続々登場してきたことで、高画素化とは違った、ビジュアルメモとしてのデジタルカメラの存在がより現実的な形でクローズアップされてきたのが、今回のイベントの大きな動きといえる。今後の展開が大いに注目される。


□関連記事
デジタルカメラ関連記事インデックス
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/digicame/dindex.htm

('97/6/27)

[Reported by 山田 久美夫]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp