【リレー連載 物欲道修行記】


リレー連載 物欲道修行記

第42講 こもの派 師範:広野忠敏

 PC業界には、お会いするたびに違う腕時計をしている人が少なくない。もちろんそれは文字盤ダイヤのロレックスとかではなく、古くはカシオのDATABANKに代表されるような、いろいろな機能を盛り込んだモデル。こういう人は、モバイルマニアに多い傾向が見られます。つまりモバイル好き、こもの好きのPCユーザーにとっては、腕時計も楽しい電子オモチャのひとつといえるようです。
 こもの派の広野師範も当然、そんな腕時計コレクションをたくさんお持ちです。全部で何個くらいお持ちかは残念ながら存じあげないのですが(ご本人も把握してないかも)、きっとカシオの時計だけでも10個くらいはお持ちだと思います。今回はそんな中から、マルマンの標準電波腕時計のご紹介です。
(原稿を読んで欲しくなったけど、このテの時計には、女持ちの小さいのがないのが不満な編集担当)

正確な時間をゲットするのだ

 実は忙しくて物欲のために秋葉原に通っているヒマがない。本当は東芝GENIOを買ってネタにしてやろうと思ってはいたのだが、残念ながらいまだに発売されていない(6月10日現在)。速く発売してください>東芝さん。また、PHSにも面白そうな端末があるが、コイツも発売はまだ先だ。という話はとりあえず置いておいて、今回も前回に引き続いて時計ネタで攻めてみよう。

 世の中の時計好きには2種類の人種がいると思う。一方は機械時計の魅力に魅せられた人達。限定モデルのスピードマスターが発売されると聞けば西に走り、ロレックスの掘り出し物のアンティークがあると聞けば東に走る人達だ。他方は、時計のギミックや機能に魅せられた人達だ。時計に付いているセンサーの数を競ったり、飛行機の中で気圧を計ったり、ソバ屋のTVのチャンネルを時計で変えちゃったりする人達ね。

 僕はどちらかといえば後者。もちろん、機械時計も好きだしいくつか所有しているが、あやしい機能を持つ時計が出ると聞くとすぐに買っちゃうクセを持ってたりする。今回のネタはそんな時計のひとつだ。


一家に一台マスタークロック

 「電波時計」って知ってる? 時刻情報が含まれている標準電波を時計で受信して、標準電波の時刻情報によって自動的に時刻を修正してくれる時計のコトだ。標準電波に含まれている時刻情報は原子時計がベースになっているため(原子時計の誤差は30万年に1秒以下といわれている)、こいつを受信する時計は正確無比な時を刻むことになるのだ。

 僕が最初に買った電波時計はマルマンの「グリニッジ」という置時計。たしか、7~8年前に4万程度で購入したような記憶がある(記憶が定かじゃないから、間違っているかもしれないけど)。この時計を買ったときははっきりいってちょっと感動した。

 まず、時計の時刻を合わせるためのギミックがないのだ。普通の時計の時刻を合わせるときは、ダイヤルなり竜頭なりをぐるぐる回して(デジタルならボタンだね)合わせるんだけど、「グリニッジ」にはこういう操作は必要ない。時計の前面に付いているボタンを押すと、勝手に標準電波を受信して、勝手に時刻を合わせてくれるというわけだ。

 ちなみに、コイツは一日一回自動的に標準電波を受信して時刻を合わせる機能があるため、まず時計が狂うということはない。時計自体は普通のクォーツなので月差+/-10秒程度の狂いはあるが、毎日正確な時間に自動的に合わせてくれるため。ほとんど誤差がないといっても過言ではないだろう。

 自宅に一台正確な時計(マスタークロック)があると、非常に便利。たとえば、他の時計の時刻合わせは普通はどのようにするだろうか。NHKの時報や、NTTの時報を聞いて合わせるかな。でも、マスタークロックがあればいちいちNHKの時報をチェックしたり、NTTの時報を聞く必要もない。家中の時計をこのマスタークロックに合わせて直しちゃえばいいわけだ。もちろん、パソコンの内蔵時計を合わせるのにも使えるハズだ。


腕時計もあるぞ

 置時計が正確だと、普段身につける腕時計の誤差も気になるところだ。マスタークロックに合わせて腕時計を調整すれば、どんな時計でもいいんだけど元来不精の僕としてはこれが面倒くさい。電波時計が出始めのころには腕時計タイプの電波時計もあったが、3万~4万程度の値段だった(ちなみに、10万を越えるものもあった)。なんか、機械時計を買うのに10万以上払うのは全然平気なんだけど、クォーツの時計を買うときは1万円以上のものはなるべく買いたくないんだよね。

 ところが、最近はとっても安い値段の電波腕時計があるのでした。最近買ったのは「グリニッジ」と同じくマルマンの「Get Wave」という腕時計。消費税(5%)込みで8,977円也でした。コイツは腕時計の中にアンテナを内蔵し、「グリニッジ」と同じように標準電波を受信して時刻を合わせてくれる。きっと電波を受信するから「Get Wave」って名前なんだろう。

 「Get Wave」は毎正時に標準電波を受信して時刻を調整してくれる腕時計だ。マニュアルで標準電波を受信して時刻を調整することも、もちろん可能。ちなみに、時計本体はクォーツだ。つまり、「グリニッジ」と同じようにいつでも正確な時刻を知ることができるわけだ。ただし、腕時計ということで、受信感度は非常に弱い。置き時計タイプの「グリニッジ」ではたとえパソコンの横に置いて有ろうと、きっちり標準電波を受信して時計を勝手に合わせてくれるが、「Get Wave」はパソコンなどが近くにあるとダメ。受信に関しては結構シビアな作りになっている。とはいえ、時刻の調整は毎正時に行われるので普段腕につけている限りは、問題ないハズだ。

 また、電波の感度を表示してくれる機能や、何日間電波を受信できなかったかを表示する機能もあるので、しばらく電波を受信していないようなら、受信感度の良い場所を見付けて調整するという使い方をすることもできるようになっている。


ちょっとウンチク。標準電波ってなんだ

 ちょっとここで標準電波について書いておこう。標準電波(JJY/JG2AS)は郵政省通信総合研究所周波数標準課が運用する電波で、時間と周波数の標準を示すためのものだ。無線やBCLをやったことがある人ならば、きっとJJYを受信したことがあるハズだ。

 この標準電波には短波帯を利用したJJY(5/8/10MHz)と長波帯を利用したJG2AS(40KHz)があり、どちらも茨城県のNTT名崎無線送信所から発信されている。ちなみに、電波時計が受信する標準電波はJG2AS(40KHz)が利用されている。

 標準電波には原子時計がベースになっている日本標準時(JST)に関する情報が乗っているため、電波時計は正確に時刻を合わせることができるわけだ。ちなみに、放送電波やNTTの時報などは、すべてこのJSTがベースになっている。

 ただし、JG2AS(40KHz)の標準電波はカバーエリアが約500Kmと狭いため、中部地方より南や東北地方より北では受信することは困難だ。もちろん、カバーエリア内でも発信地より遠ければ遠いほど感度が落ちることになる。そのため、郵政省では平成9年から10年にかけて、長波標準電波送信施設の建設を計画しているようだ。この施設は福島県に建設が予定され、現在のJG2ASの10倍の出力で計画されるため、実現されれば日本全国どこででも標準電波を受信することができるハズだ。


パソコン用のマスタークロックも欲しいぞ

 というわけで、今回は全然パソコンとは関係ありませんでしたね。このままじゃなんなんで提案を一つ。それは「電波時計にパソコンとのインターフェースを付けて欲しい」こと。特にネットワークでたくさんのパソコンがつながっていると切実なのが、パソコンの内蔵時計のずれ。あるマシンと別のマシンでファイルを更新するとタイムスタンプがずれてしまうなんてのは非常に気持ち悪い。

 インターネットにはNTP(Network Time Protcol)を使った標準時サーバもあり、そのサーバに接続すれば正確な時刻を知ることはできるが、ダイヤルアップでいちいち接続するのも面倒。やっぱ、電波時計のように勝手に時刻を合わせてくれるのが理想だ。もし、電波時計にパソコンへのインターフェースがあれば、電波時計の情報を読み取ってパソコンの時計を合わせるということも簡単にできるハズ。どこかで、商品化してくれれば絶対買うんだけどどうでしょうか……。

[Text by 広野忠敏]



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