後藤弘茂のWeekly海外ニュース
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Cyrixの「6x86MX(M2)」は6月2日発表か?


●IDTのMMX Pentium対抗MPUはノートに最適?

 Pentium II登場で加熱する一方のx86 MPUウォーに、また新たなプレイヤが加わった。すでにPC Watchでも伝えられている通り、MIPSアーキテクチャのMPUなどで知られる米Integrated Device Technologyが先週PC TECH FORUMで、MMX Pentiumクラスのx86互換MPU「IDT-C6」を発表したのだ。このMPUの特徴はMMX PentiumやAMD-K6と比べるとダイサイズが極めて小さいこと。「Intel and upstart Centaur struggle over CPU power」(Electronic Engineering Times,5/23)によると、コアが小さいこのMPUはノートパソコンにも向いているという。IDT-C6の駆動電圧は3.3Vだが、それでも2.5Vの現行のMMX Pentiumより低消費電力だという。市場的には米Intel社の次世代ノート用MMX Pentium「Tillamook」と競合することになる。しかし、x86では実績のないIDTは、PCメーカーに採用させるのに結構苦労しそうだ。


●Cyrixの6x86MXは6月2日発表か?

 飛び入りのIDTに先を越されてしまったが、米Cyrix社もいよいよ次世代Pentium IIクラスMPUを出すらしい。このMPUはコード名「M2」と呼ばれていたが、「News briefs: IBM set to announce M2 processor」(InfoWorld Electric,5/23)によると正式名称は「6x86MX」に決まったらしい。「Cyrix Scores Another Design Win」(Electronic Buyer's News,5/22)によると発表日はどうやら6月2日、つまり、Cyrixのいつものパターン通り「COMPUTEX」に合わせたスケジュールになるようだ。性能はまだ公表されていないが「Cyrix to take on Pentium II」(CNET NEWS.COM,5/22)によると、166/200/233MHz相当の性能レイティングで登場するという。6x86MXは、同一の動作周波数での性能を比べればかなり性能の高いMPUになる可能性があるが、問題はどこまで高い周波数の製品を潤滑に出せるかという点。さてどうなるか。


●DVD再生ソフトのライセンス問題は膠着状態に

 さて、米Intel社がPentium IIを発表したことで、少しはDVDタイトルのソフト再生への道も見えてきた。すでに、加ATI Technologies社などはPentium IIと組み合わせればソフトDVD再生ができるグラフィックスチップ(動き補償などの機能を取り込んだ)を発表している。ところが、DVDソフト再生という話はいっこうに盛り上がらない。その理由は、ハリウッドとPC陣営の間で合意がまとまらないため、DVDタイトルにかけられているコピープロテクションContent Scrambling System (CSS)のデコードアルゴリズムのソフトライセンスを受けられないからだ。「Copy-protect logjam stalls DVD-PC debut」(Electronic Engineering Times,5/26)によると、この問題を協議している「Copy Protection Technical Working Group (CPTWG)」の会議は、今年初めから行き詰まったまだだという。ただ、デジタルすかし技術を使った新しい提案が出されていて、業界はそれに希望をつないでいるとか。それでも、今年のクリスマスまでに、ソフトDVD PC登場させるのは難しいと見られているようだ。やれやれ。


●AppleがNewtonを独立させる狙いは?

 先週の大きな話題のひとつは米Apple Computer社によるNewton部門独立の発表。一昨年Apple危機が騒がれ始めた時から、Newtonを切り捨てるのではというウワサは、同社のリストラのたびにささやかれていた。Apple再建での最大のポイントのひとつとして注目されていたわけだが、今回ようやくそれに対して結論を出した格好だ。そこで、Newton独立はどんな意味があるのかの分析記事が多数登場した。「Apple to Overhaul Newton Unit To Be Independent Subsidiary」(The Wall Street Journal,5/23)は、この策はAppleの取れるうちでもっともリスクの少ない道とアナリストの言葉として伝えている。完全子会社ながら法的には独立した存在にすることで、Newtonに対する外部からの投資やパートナーを集めやすくするのが狙いだという。新会社のビジネスがうまくいけば株主であるAppleは利益が得られるし(その場合はApple内部に戻すこともできるかも)、もし新生Newtonが失敗した場合は、距離を置いているので閉鎖やレイオフにかかる莫大なコストを直接かぶらずにすむという。「Apple to spin-off Newton into independent unit Apple to consider selling to outside investors or offering stock」(MSNBC)は、Appleが半年くらいしたらNewtonを他社に売るか、株を公開する可能性もあると指摘している。いずれにせよ、一般ニュース系のサイトでは、それほどポジティブな展開としては受け止められていないようだ。


●Scalability Dayでは、またまたMicrosoftのコード名が多数登場

 米Microsoft社の先週の話題は、先週開催したエンタープライズ向けの製品のカンファレンス「Scalability Day」。Windows NTとBackOffice戦略に関して、一気に公開したわけだが、面白いのはまたまたコード名のオンパレードだったこと。16GB以上のデータベースを扱えるようになるExchange Serverの次のバージョンは「Osmium(オスミウム、金属名)」と報じているのは「Microsoft's Scalability Push」(COMPUTER RESELLER NEWS,5/20)。テラバイトをサポートするSQL Server 7.0のコード名「Sphinx(スフィンクス)」は、「NT scalability lures skeptical customers」(Computerworld,5/20)など多数のニュースに登場。それから、スモールビジネス版Windows NTは「SAM」とレポートしているのは「Microsoft pitches NT as mainstay of enterprise servers」(InfoWorld,5/20)だ。しかし、Osmiumとかになると、これはもう、へんな音の単語をいい加減につけたとしか思えない。


●MicrosoftのTalismanはいつ実現する?

 ところで、先週伝えた米Microsoft社のグラフィックスアーキテクチャ「Talisman」の動向だが、「Trident ties 3-D bid to Talisman, testing Microsoft architecture」(Electronic Engineering Times,5/20)によるとMicrosoftのライセンス形態は2レベルあるらしい。レポートによると、米S3社や加ATI Technologies社は、Talismanアイデアの一部をピックアップして自社の次世代グラフィックスチップに入れ込むつもりだという。一方、Talismanチップを作るという米Trident Microsystems社などはより深いレベルで関わり、TalismanのCコードシミュレータやVerilogモデルにフルアクセスできるという。ただし、Talismanをワンチップで実現するのは次世代の製造ラインである5層メタル0.25ミクロンプロセスが必要だろうとアナリストは予測している。うーん、まだまだ先が見えない。


●IBMのVLIWチップDAISY

 次も先週の続き。米IBM社のVILWチップ構想は「IBM rushes to build Java-enabled chip for NCs」(InfoWorld,5/23)でも取り上げられた。コード名「DAISY(Dynamically Architected Instruction Set from Yorktown)」と呼ばれるこの構想は、IBMのTJワトソン研究所のホームページの「DAISY」のページにもっと詳しい情報が載っている。興味があればどうぞ。


●スマートカードの標準化が進展か

 次世代クレジットカード/マネーカード/IDカードなどなどとして、EコマースやNC (Network Computer)に欠かせないスマートカード。これまでの問題はカードのソフトウェアなどの規格の標準化で、複数の団体や企業が標準化に動いていて先が見えなかった。しかし、「PC, smart-card vendors team up to work on industry standards」(InfoWorld,5/24)によるといよいよ出口が見えてきたらしい。PCとスマートカードのための規格を作っているMicrosoft主導のPC/SC Workgroupは、今週のCardTech/SecurTechカンファレンスで、Gemplus社、米IBM社、米Sun Microsystems社、東芝、米VeriFone社といったNC (Network Computer)やEコマースにかかわる企業をメンバーに加えるという。「PC, smart card standard nears」(CNET NEWS.COM,5/20)によると、PC/SC Workgroupは年内にPCでスマートカードを利用できるようにするスペックをリリースする予定で、NC (Network Computer)メーカーによるスマートカード標準化団体OpenCard Frameworkとも協力するという。しかし、いつもあれだけいがみ合っているのに、本当に協力できるのだろうか。


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('97/5/26)

[Reported by 後藤 弘茂]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp