【リレー連載 物欲道修行記】


リレー連載 物欲道修行記

第34講 業界通情報講座 講師:一ヶ谷兼乃

 今回の一ヶ谷講師のお題は、ダイヤルアップルータ。講師は、ネットワークについても深い造詣をお持ちですが、SOHOで使うものだけに、ダイヤルアップルータの設定は初めてだそうです。今年に入って、低価格で簡単設定が売りの、個人市場も意識したルータがいくつか発売されており、ダイヤルアップルータはいま注目の製品。ISDNを導入済みで、自宅にLANをひいている方は、要チェックです。一ヶ谷講師も本講で述べておられるように、いったん使い始めると、その便利さが手放せなくなることうけあいです。
(プロバイダー勤務のダンナをもち、社内で「回線玉の輿」といわれる編集担当)


ダイヤルアップルータのすすめ

最近の物欲

 気候も春めいて、だんだん暖かくなってくると、どうも買い物に出かける機会が増えてくるのが、困りものだ。というのも前回、プリンタサーバを取り上げてからというものの、物欲に加速度がついてしょうがない。

 コンピュータ関連では、メインマシンを430TXチップセットを使ったASUSTeK Computerの「TX97-X」に移行した。このマザーボードにひかれた点は、単に430TXを使っているというだけでなく、CPUファンやCPU温度をモニタリングし、異常値に達すると警告してくれるといった機能があること。この手の機能が自分の環境にどれだけ役に立つかは、疑問ではあるが、新しいモノはとりあえず触ってみないと気が済まない。また、これまでは、ベースクロックが最高66MHzまでにしか設定できないなどの個人的な趣味で、ATX仕様のマザーボードを意識的に避けてきたが、TX97-Xは75MHzの設定が可能で、最初からUSBのコネクタが装備されており、PC97仕様に準拠している点に、魅力を感じた。もちろん、メモリもASUS純正SDRAMを購入し、使用している。最初は、PnP関連でトラブルを抱えていたが、先日TX97-XのBIOSがアップデートされ、問題も解決し、いまのところ絶好調だ。

 その他にも、PentiumPro(200MHz)のCPUや激安TA、デジカメなども購入したが、既に細かなモノは何を購入したのか記憶さえおぼつかないような状況だ。ただ、物欲連載を担当している他の方々には、まだまだ追いついていないところが、せめてもの救いだと信じて疑わない。


ダイヤルアップルータへの蠢き

富士通NetVehicle-1

 前回のプリントサーバと同様に、気になっていたのが、ダイヤルアップルータ。LANがあって、インターネットを常用するようになれば、何時の日か購入を考えてしまうのが、ダイヤルアップルータだ。インターネットプロバイダとの契約がダイヤルアップ接続でも、使用できる製品が登場してきて、気になる製品がなかったわけでもないが、なんとなくTAでしのぐことができてしまっているので、実際に購入するところまではいかなかった。その一番の原因は製品の選択肢が狭いところにあったためだ。昨年秋の時点で、気になっていた機種としては、YAMAHART100iBUGROUTE101の2機種だけだった。
 今年に入ってダイヤルアップルータ事情は一転して、実売価格で10万円を切った製品が次々に発表され、店頭でも見かけることができるようになってきた。


あまりに薄いマニュアル

NetVehicle-1の内部基板
NetVehicle-1の背面コネクタ部

 そうこうしていると、ぽかぽかと暖かい陽気に誘われて、西新宿を闊歩していると、目についたのが「NetVehicle-1」。ちょっと前に、テレコム道家元の法林先生から富士通の「NetVehicle-1(以下、NV-1)」がなかなか良いとの情報があったことを思い出し、価格も5万円を切った価格のこともあって、その場で購入。インターネットプロバイダへダイヤルアップ接続時に、LAN上の複数端末から同時にインターネット上への通信がサポートはないことは知っていたが、必要な機能はサポートされていて、当面困ることもないと判断した。
 NV-1の箱を開けてみると、まず驚いたのがマニュアルの薄さだ。表紙も含めて、40ページ弱のボリュームだ。そのほとんどは、インジケータやコネクタの説明が記述されており、通信に必要な設定に関しては、数ページしかさかれていない。NV-1を使用するのに必要な、Windows95やMacOSでの設定に関しては、まったく記述がない。
 また、NV-1に関しての設定についても、「かんたん設定」と呼ばれている極めて一般的な使い方の内容にしか触れられておらず、デジタル専用線やOCNでの使用方法に関しては、これまた一文字も説明がない。
 「低価格な商品」イコール「一般向け製品」というイメージがあったため、このマニュアルの内容には驚かされた。もしも、一般向けに発売されているTAやモデムと同じ感覚でNV-1を購入すると、TCP/IPネットワークの知識が無いかたは辛い思いをしてもしょうがないだろう。多分、メーカに対して電話での質問をすれば、丁寧に設定方法を教えてくれるのかもしれないが、それも夜間や週末にパソコンライフを楽しむ方々にはできない相談だ。せめて、ユーザが多いと思われるWindows95、MacOSに関しては、マニュアルの形での設定方法の説明を掲載する必要があったのではなかろうか。
 逆にマニアの立場から、このマニュアルを読んでみると、自分がやりたい設定はどうすれば実現できるのか、どこまでの設定ができるのかなどの情報がなく、まったく役にたたない。どっちにしろダメなのは、かわらない。


手探りでの設定

NetVehicle-1はモトローラのMC68EN360を搭載

 私はある程度のネットワークの知識はあるものの、ダイヤルアップルータを実際に設定するのは、まったく初めての体験だ。一般的にルータの設定というものは、telnetやシリアルケーブルを使ってルータにログインしたり、設定ファイルをFTPでアップロードするといった方法で実現されることが多い。NV-1では、これらの設定手段は公開されておらず、Webブラウザを使った、初心者でも取り付きやすい設定方法が採用されている。マニュアルでわからない設定内容も、Webブラウザを利用するために、ある程度はNV-1に関する設定は手探りで行うことができるのだ。
 NV-1とメインで使用するWindows95マシンの設定を終え、さっそくインターネット接続を試みた。一度設定してしまえば、快適このうえない。メーラで受信ボタンをクリックすれば、何も意識しなくてもNV-1が自動的にダイヤルアップを行い、数秒後にはメールを読むことができるし、NetScape Navigatorを起動すれば、一呼吸おいた程度の感覚でホームページが表示される。もちろん、ページをぼーっと眺めていて、インターネットとのトラフィックが無くなると、設定時間後に自動的に回線を切断してくれる。最初のうちは、意味も無く楽しくてしょうがなかった。
 ルータ自体のパフォーマンスは非常によく、満足できる通信速度が実現されている。外付けTAでの高速通信でネックになるシリアルポートの速度も気にすることなく、極めて快適にインターネットを楽しむことができる。
 さっそく、LAN上にあるMacintoshなども設定を始めて、全てのパソコンからNV-1を使ってインターネット接続できるような環境を作り上げるには、1時間もかからなかった。
○自動ダイヤルの恐怖
 それから数日経って、いつものようにパソコンで原稿を書いていた。何気にNV-1に目をやると、回線接続のLEDが光っているではないか。特に何をしているわけでなく、エディタを開いて、文章を打っているだけなのに....
 そのまま眺めていると1分足らずでそのLEDは消えた。そのまま、原稿を打っていて、しばらくするとまたLEDが光っている。すかさず、手元の時計をチェックし、NV-1の動作の観察を始める。1分後にLEDが消え、ほぼ15分後に再びLEDが光り始めるのが確認できた。
 そこですぐにMS-Network関連のパケットで、ルータがタイヤルアップしているとの予測がつき、IPフィルタリングの設定を行おうとして、Webブラウザを起動した。そこまでは、ダイヤルアップルータの初心者にありがちなミスを犯してしまったと反省していたのだが、どこを探してもフィルタリングの項目はない。
 そこで思い出したのが、NV-1のページに書いてあった内容だ。IPフィルタリングが現状ではサポートされていなかったのだ。さすがに、WindowsでLANを構築しているSOHOなどをターゲットにしているNV-1が、MS-Network関連のパケットがフィルタリングされていないなどとは思いもよらなかった。私が勝手に、IPフィルタリングのサポートがないということを、IPフィルタリングが自由に設定できないと勘違いしていたのだ。
 さっそく富士通のサポートに対して質問メールを送ったところ、今回の問題を回避するには自動ダイヤルを手動ダイヤルに切り替えるか、NetBIOSを使用しない設定にするしかないとの返事をもらった。NetBIOSが使えないとなると、MS-Networkは使用できず、プリンタやファイルの共有なども、あきらめないといけないわけだ。
 結局、自動ダイヤルの魅力には勝てず、通常はMS-Netwokは使用しない環境になっている。個人的にはフィルタリングのできない製品をルータを呼んでいいのかと、不満はあるものの、それは私の認識不足から発生した勝手な意見であることがわかるだけに、チョット悔しい(笑)。


NetVehicle-1への期待

 NV-1を使用して数週間経ったが、いくつかの機能上の問題点も、6月末に予定されているファームウェアのバージョンアップにて解消されることになっている。肝心の通信速度も申し分なく、同様な内容を持つ他社の製品と比べても購入価格が低く押さえられているため、NV-1への注目度は高く、バージョンアップに対しての期待はかなり大きくなっている。せめて、NetBIOS over TCP/IP特有のパケットに対してのフィルタリングだけでも、早急に実現して欲しいと希望しているものの、6月末のバージョンアップまで待ってもいいかなと思わせる内容の製品になっている。
 ただ、マニュアルに関しては、どこかの時点で是非ともリファレンス的なものを用意していただきたい。これから、OCNなどの普及で個人でもルータを検討する人たちが増えてくることは間違いなく、使用する本人だけでなく、それをサポートするショップやインテグレータの方々のためにも、内容の充実したマニュアルが必要なのではないだろうか。

[Text by 一ヶ谷兼乃]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp