リレーエッセイ「モバイル人集合!」第1回 ゲスト:本田雅一

僕のノートPC最大公約数

 まぁ、夢物語ばかりを考えていても仕方がない。もっとも、僕レベルの描いている夢物語なんて、きっと実現してしまうんだろうけどね。いずれにしろ、今仕事に使うノートPCを選ぶには、自分に合った最大公約数を探さなければならない。
 ここまで読み進めてくれた読者なら、僕の好みはわかってくれているものと思う。
 まずは操作性が良いこと。単にフィーリングがいいだけではなく、デスクトップPCと境目なく利用できるところがポイントだ。フルサイズのキーボードに、無理のないキー配列、そしてストレスのないポインティングデバイスだ。
 次は重さだけど、もちろん軽いに超したことはない。しかし、この部分では多少妥協できるかなとも思っているし、実際、あきらめてもいる。まぁ、2kgを切れば御の字だろう。液晶パネルが壊れてしまって引退させたThinkPad 701Cなんて2.1kgもあったんだから。

ThinkPad 560
 で今使っているノートPCを買うときに候補に上がったのが、ThinkPad 560、535、そしてLet's NOTEという非常に無難なラインナップ。HiNote Ultraが入っていないって? それには理由がある。
 HiNote Ultraは決して悪いノートPCじゃないけれど、キーのレイアウトが悪すぎる。英語版キーボードに交換するという手もあるけど、[無変換]キーを多用する癖のある僕にはそれも困難な道。レイアウトの問題さえ解決すれば、真っ先に検討したい機種だけに実に惜しいと思う。
 さて、なんでキーボードを重視するのに、535やLet's NOTEが候補に入っているのかと疑問に思うかもしれない。しかし、よほどキーピッチが狭くなければ、キーピッチは大きく生産性に影響しないというのが僕の意見だ。両者ともキー配列にはまったく問題がないし、タッチもサイズを考えれば良好だ。560といっしょに検討してもおかしくはないと思う。

 これらの選択肢から最初にもれたのはLet's NOTE。実はこのLet's NOTE、山田祥平氏の愛機でもある。祥平さんは「重さには変えられない」というけれど、どうしてもあの小型タッチパッドが我慢できない。小さいだけではなく、フィーリングが悪いのだ。133MHz版になってからは改良されたらしいが、それでも僕にとっては我慢のできないレベル。多分、ポインティングデバイスさえもっと使いやすければ、Let's NOTEを買っていたと思うのだが……。
 結局残ったのはThinkPadの2台。実に面白くない選択肢が残ったと起こっている読者もいるかもしれないが、やっぱり絶妙のキー配列とTrackPoint IIIの使いやすさは別格だと思う。某PCベンダーの人に聞いたところでは、ThinkPadのような長方形に収まらない配列を採用すると、かなりのコストアップにつながるのだという。だからだろうか。ThinkPadと同じ配列は、三洋やコンパック(一部機種)などごく少数のメーカーしか採用してない。あの東芝でさえもだ。
 話が横道にそれたけど、キーのサイズにこだわらないのであれば、535のほうが価格も安く、しかも軽い。パフォーマンスやバッテリーの持続時間などはほとんど同じだけに、カーボングラファイトきょう体や大型液晶パネルなどの採用で高価な560よりも選びやすい。

 でも、僕は最終的に560を選択した。理由は2つある。
 ひとつは535のキーサイズがLet's NOTEよりも若干狭いこと。ほんの0.何ミリといったレベルなのだが、入力時のストレスが大きく違った。前モデルの530と比較するとずいぶん良くなったのだけど、あと半歩踏み出して欲しい。
 もうひとつはMWAVEを採用したマシンであることだ。MWAVEは535のウリのひとつではあるし、魅力的な機能も多い。コンセプトとしてはすばらしいものだけど、3つの大きな欠点がある。それは、28.8Kbpsモデムの安定度が低いということと、モデムとサウンド機能を同時に利用することができないこと、そしてOSが変わるたびにドライバで苦労することが多いということだ。

 結果としてごく当たり前だけど、最終的に購入したのはThinkPad 560。結構なお値段で買ったのだけど、なんでもパーソナルユーザーをターゲットにした560のソリューションモデルが出るそうだし、そうすると値段ももう少し安くなるんじゃないだろうか。発売から十分に時間の経ち、価格の下がった今が買い時かもしれない。


 

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