リレーエッセイ「モバイル人集合!」第1回 ゲスト:本田雅一

操作性?それとも携帯性?

 飛行機の話をしたというのも、最近、すごく海外に出る機会が増えたからだ。数えてみたのだけど、プライベートの旅行を含めると、昨年は5回、60日間も海外で過ごしている計算になった。以前は海外の展示会なんて、行っても日本で製品が出るまでにはかなり時間がかかったり、もしくはまったく出なかったりした。しかし、近頃は海外で製品が発表されたら、日本でも使えるという図式が定着してきたように思う。
 そんなわけで、パソコンを持ち出して使うというチャンスは年々増してきている。

 しかし実のところ、僕はノートPCってあまり好きではなかった。家で使うデスクトップPCよりも、操作性が劣って、値段が高くて、しかも陳腐化するのも速い(アップグレードだってできないぞ)。そんなノートPCなんて、僕は一生(新品を)自分で買うことはないだろうと思っていたほど。
 そうした気持ちを揺さぶったのは、もう2年半も前になる日本DECのHi-NOTE Ultraのブリーフィングだった。結局、日本で発売されたのは次の年の3月ぐらいだったと思うけど、生まれて初めて予約してパソコンを買ってしまった。後にも先にも、あんなことはないだろうなぁ、と最近思う。
 なぜそんなに気持ちが揺さぶられ、ポリシーを曲げてしまったかといえば、キーボードの操作性が大きく落ちず、それでいてかさばらずに結構軽い。僕の中で使いたいと思っていたパソコンにかなり近いコンセプトの製品だったからだ。
 今はほとんどの人が知らない、シャープのAll in NoteというAX規格(ってAX自身を知らない人も多いだろうか)が欲しくてたまらなかったことがある。今から見ると、性能はどうしようもなく悪いのだけど、薄くて軽くて、それでいてキーボードを犠牲にしていない。Hi-NOTE Ultraの元祖のような製品だった。思えば、僕のノートPCに求める姿は、この時に決定されていたのかもしれない。

 このあたり、好みの個人差は非常に大きい。連載の次を担当していただくことになっている山田祥平氏とは、求めるノートPCのことでいつもお互いをけなし合っている(別に仲が悪いわけではないけど)。祥平さんが「そんな重いもの良く持ち歩くよなぁ。信じられないよ」と言えば、僕は「そんな世界一使いにくいポインティングデバイス、よく我慢できますねぇ」と返す。
 軽さはすべてに優先するという人もいる。そういう意見を否定するつもりはないけれど、僕の場合は操作性のプライオリティが、彼らよりも一段高いのかなぁと思う。同程度の価格ならば、操作性と軽さはお互いに相反する要素だ。両方を求めることは難しい。ならばどちらかを優先しなければならないのだが、これが一番の悩みの種。これから先も悩みつづけなければならないだろう。


 

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