【リレー連載 物欲道修行記】

リレー連載 物欲道修行記

第15講  テレコム道 家元:法林岳之

 家元はここのところめちゃくちゃに忙しく、買い物をする暇がなくてネタがない、とおおせだった。しかし最近愛車のLEGACYがちょっと変わったという。馬力がちょっと増えたりしたという。フジツボマフラーでも装着されたのかな、と思ってよくよく聞くと、なんとスバルの新型LEGACYGT-Bモデルに買い替えられたとのこと。発表になったころにスバルの営業所にチェックしに行かれたことは知っていたのだが、「高いからやめた」といって油断させて、実はさくっと注文されていたんですな(ちなみに編集担当のImprezaは、購入後数カ月で旧型となった……)。
 そういうわけで、家元の今回のネタは手持ちのシリアルカードとなりました。さすがにテレコム道家元、よくもこれだけというほどお持ちです。(編集部)

シリアルカードを探せ!!

●128KbpsでMP対応もいいけど……

 ここのところ、猛烈に忙しく、物欲をかますチャンスがない。お目当てのモノ(最初から買うつもりだったモノ)の手配はさっさと済ませたけど、秋葉原をBrowseしてヘンなものを探すヒマがない。おまけに、COMDEXにも行けなかった。今年は56kbpsモデムUSB関連製品WindowsCEマシンなど、見たいものがたくさんあったのに……。

 てなわけで、今回紹介するのはシリアルカードだ。ちょっとPCをバラしたことのある人ならご存じのように、現在、ほとんどのパソコンのシリアルポートには16550互換チップが使われている。この16550が何なのか……なんてことは説明しないけど、要するにWindows 95環境ではDTE速度(パソコン~モデムやTA間の速度)が最大115.2Kbpsまでしか設定できない。なぜ「……しか」と書いてしまうかと言えば、今や115.2Kbpsごときでは足りないからだ。

 これまた読者のみなさんもご存じのように、最近のISDNターミナルアダプタはBチャンネルを2本束ねて128Kbpsで通信をするMP(Multilink Protocol)が流行っている。今年の秋に発売された製品はすべてと言ってもいいほど、MPをサポートしている。ところが、128Kbps接続でフルにパフォーマンスを引き出すには、DTE速度を230.4Kbpsに設定しなければならない。つまり、現在のパソコンのシリアルポートは力不足というわけだ。「128KbpsはMPに対応!!」「28.8Kbpsモデムの5~6倍の高速通信が可能」なんてコピーで売り出してくれるのはいいんだけど、どこのメーカーもシリアルポートの話は置き去りにしている。

 まあ、将来的にはUSBIEEE 1394といった高速なシリアルデバイスを主流になるんだろうけど、とにかくモデムやTAが搭載しないことには使うことができない。第一、本体以上に価格競争が激しいと言われるモデムやTAにおいて、価格を引き上げてまで新しいデバイスを搭載してくるかどうか……。


●機種別に見る高速シリアルカード

 さて、グチはこれくらいにして(笑)、本題に入ろう。

 まず、機種別に見る高速シリアルカードだけど、国内市場に限って言えば、NECPC-9800シリーズ用が圧倒的に多い。ざっと見たところでも、メルコアイ・オー・データ機器、メディアインテリジェント、マイクロ総合研究所、緑電子 などが販売しており、価格も2ポート版で1万円程度と手頃なレベル(ホントはもっと安い方がいいけど)。旧機種の対応だけでなく、プライベートBBS(最近は少なくなりましたねぇ)などでの利用も多いことが原因かもしれない。

 これに対し、シェアの割に種類が少ないのがIBM PC/AT互換機用だ。16550互換チップを搭載した拡張I/Oカードはあるが、230.4Kbps以上の速度に対応したシリアルカードということになると、数えるほどしかない。詳しいことはあとで紹介しよう。

 これがMacintoshになると、さらに少ない。ボクの友人は、アメリカのCreative Solution製のHUSTLERというNuBus用シリアルカードを使っているが、これ以外となるとMEGAWOLF製のFenrisという製品があるくらいだ。ちなみに、FenrisはMacintoshのPCIバス用シリアルカードだが、8~64ポート版まで販売されているそうだ。今年3月に2ポート版の発売もアナウンスされたが、まだ製品は出荷されていないようだ。もっともMacintoshの場合、GeoPortアダプターもあるし、Serial Boosterのようなツールもあるので、高速シリアルカードが不要という見方もできる。


●921.6Kbpsなら安心?

 では、IBM PC/AT互換機用の高速シリアルカードにどんなものがあるのだろうか。

まず、通信機器メーカーがカタログやサポート情報などで紹介するのがアメリカのHayes Microcomputer製のESP Communication Accelerator(通称:ESPカード)だ。

ESPカードパッケージESPカード
 このカードは同社が独自に開発したCOMBICチップを採用しており、最大921.6Kbpsまで対応する。COMBICチップは1Kbytesのバッファを持っており、16550互換のUARTモードと本来の性能を引き出すEnhancedモードで動作する。ドライバもWindows3.1、Windows95、WindowsNT3.51及び4.0、NetWare3.x用などが提供されており、幅広い環境で使うことができる。これだけのスペックを持っていれば、MP/128Kbps接続もまったく苦にならないはずだ。

COMBICチップ  ESPカードは1ポート版と2ポート版が存在し、国内では緑電子が両方の製品を販売している。しかし、すでにアメリカでは2ポート版の製造が中止になっているため、国内在庫がなくなると、2ポート版は入手できなくなるかもしれない。

 スペック的には申し分のないESPカードだが、実際に使うとなると少々面倒だ。というのも、製品が設計された当時はまだPlug&Play機能がなかったため、IRQやI/Oポートアドレスをユーザー自身がソフトウェアで設定しなければならないからだ。Windows95用ドライバのインストールも希にうまくいかないことがあり、初心者にはあまりお勧めできないというのが本音だ。

 ボクは1ポート版と2ポート版のESPカードをアメリカから輸入し、3年以上愛用していた。Windows3.1時代は随分と活躍し、Windows95環境もドライバが配布されたため、まだまだ長く付き合えそうだなと考えていた。しかし、ひょんなことから我が家ではESPカードがお蔵入りになってしまった。

 今年のはじめ、TAで64Kbps同期通信のテストをしていたとき、妙なことに気づいた。パソコン本体のシリアルポートに接続したときと、ESPカードに接続したときで、64Kbps同期通信の速度が明らかに違うのだ。Windows95用ドライバの関係なのか、ESPカードに接続したときの方が10%ほど遅くなってしまうのだ。実用上は何ら問題ないが、MP接続時の転送テストには使えないため、シリアルカード探しを始めた。



●シリアルカードを集めるぞ

 まず、最初に目についたのがプラネットコミュニケーションズFast Serial460という製品だ。「あなたのPCは本当に128Kbpsで使えますか?」というキャッチコピーがなかなかイカしてる。

FastSerial460FastSerial460パッケージ
 これはアメリカのBoca ResearchI/O650のOEM品で、最大460.8Kbpsまでの高速通信に対応する。シリアルチップは上位互換の16C650(STARTECH製)を搭載し、IRQやI/Oポートアドレスはジャンパピンで設定する。パッケージにはWindows3.1及びWindows95用ドライバが添付され、マニュアルも日本語でわかりやすい。

 ただ、2ポート版のためか、価格が1万2800円と高め(しかもほとんどのショップで値引きがない!!)の上、IRQが3,4,5,9しか選べないのが難点。Plug&Playにも対応していないため、初心者にはちょっと面倒かな? とりあえず試用した範囲では、パフォーマンスは可もなく不可もなくといったところ。


 次に見つけたのがちょっとあやしいノーブランドの台湾製シリアルカードだ。秋葉原の某ショップで6800円で購入した。

PNP100カードPNP100パッケージ
 PNP-100というこの製品は、通常のシリアルポートと同じ16550互換チップを搭載しながら、最大1382.4Kbpsまで対応するという。しかも、MS-DOS上で動作するユーティリティしか添付されておらず、Windows95用ドライバなどは標準のものをそのまま使うというのだ。

 製品名通り、Plug&Playは機能し、IRQ(IRQは3,4,5,6,7,9,10,11,12,15に対応)やI/Oポートアドレスは自動的に割り当てられる。ただ、230.4Kbps以上の通信速度は16550に与えるクロック周波数を2倍、4倍、12倍にすることで実現しており、その変更はMS-DOS上でしかできない。まあ、2倍モードに設定しておけば、モデムのプロパティで指定する速度を115.2Kbpsにするだけで、勝手に230.4Kbpsになるのだが、その他の通信速度への対応が面倒なので、あっさり利用をあきらめた。


 この他にも、数枚のシリアルカードを購入し、最近ではシリアルカード探しがちょっとした趣味になりつつある(笑)。本来なら、ちゃんとした形でシリアルカードをレビューしたいところだが、アイ・オー・データ機器からも新製品が登場し、新たに入手したカードもいくつかあるため、今回は見送ることにする。もし、希望があれば、非同期通信レポートで紹介しよう。でも、その前に大仕事を片付けないと……。

[Text by 法林岳之]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp