Microsoftのノルマンディ上陸作戦

●オンラインサービス市場に乗り込むMicrosoft

 真珠湾攻撃の日(12月7日)にインターネット市場への奇襲攻撃を開始した米Microsoft社が、今度は、ノルマンディ上陸作戦(6月6日)の直前に、新しい戦線への進攻を開始した。「Normandy」と、そのものズバリのコードネームがつけられた製品群で同社が狙うのは、オンラインサービスのプラットフォーム市場。Normandyには、メール、ニュース、チャット、オンラインパブリッシング、サーチエンジン、ユーザー管理、セキュリティといったオンラインサービスに必要なすべての機能が、インターネット上で利用できるモジュールとして用意される。そして、同社は、これをインターネットプロバイダやケーブル会社や商業Webサイト向けに提供して行くという。
 これは、かなりいい線をついた商売だ。というのは、米国では2月の通信法改正以来、プロバイダ事業への参入が活発化している電話会社やケーブル会社が、顧客向けの独自サービスを提供したいと考えているからだ。また、パソコン通信もインターネットとサービスを融合させようと図り、大手商業Webサイトも付加価値をつけた独自サービスを提供したいと願っている。つまり、インターネット上でBBSを構築するソリューションパックへのニーズはかなり高いわけだ。そして、そのなかで晴れてNormandyの顧客の第一号となったのは、米国第2位のパソコン通信CompuServeだ。
 CompuServeがNormandyを採用したのには、かなり切迫した理由があるようだ。CompuServeは4月に上場したのだが、新サービスの「WOW!」の不振やプロバイダ事業の競争激化などが響き株価は低迷、方針転換を迫られていた。そこで、先月21日にCompuServeのコンテンツをHTMLベースに移行させるコードネーム「Red Dog」という計画を発表したわけだが、年内という限れた時間のうちに、このプロジェクトを完成させるには、Normandyのようなお手軽パックが必要だったというわけだ。
 CompuServeは、ちょうど一年前、America Online(AOL)やProdigyなど他の大手米国パソコン通信とともに、Microsoftのパソコン通信市場参入に対して激しい抵抗を試みた。しかし、「MSN(The Microsoft Network)」を気にしているうちに、インターネットの大波に足もとを崩され、結局はMicrosoftの技術を借りることになってしまったわけだ。
 もちろん、MSNだってインターネットの荒波の前に無事ではない。こちらも独自のデータ形式でのサービスから、HTMLベースへ移行することがアナウンスされている。おそらく、Normandyはその内容から見て、以前からウワサされていたMSNのHTML版である「MSN 2.0」を外販仕様にしたものだろう。
 つまり、Microsoftもインターネットの急成長でMSN戦略の見直しを迫られたが、こちらは転んでもタダでは起きず、それを商売にしてしまったというワケだ。さすが。

Normandyについてのニュースリリース
CompuServeとの提携のニュースリリース
wow!のWWWサイト

('96/6/10)


[Reported by 後藤 弘茂]


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