第125回:Windows XP Q&A



 昨日、コンパックから超低電圧版モバイルPentium III-M/700MHzを搭載したファンレスのB5サブノートPC「Evo N200」が発表されたが、これを今週いっぱい試用する機会を得た。ファンレスという事で心配される熱も、AC電源で最高速モードで動作させても、底面がほんのりと暖かくなる程度。まだバッテリ負荷の高い使い方をしていないためレポートは来週、今週末から試用予定のソニー新バイオSRと比較しながら取り上げることにしたい。

 今週は“モバイル”というテーマからは逸脱してしまうが、先々週のコラムでお約束していたWindows XPに対する読者の疑問を取り上げよう。



●マルチディスプレイへの対応は行なわれているのでしょうか?

マルチディスプレイが可能に

 Windows 2000では、単一チップによるマルチディスプレイをサポートするディスプレイドライバを開発しにくく、そのためWindows 9xではマルチディスプレイをサポートしているにもかかわらず、Windows 2000では利用できないという機種が多かった。この1年ほどのトレンドとして、ノートPCにはS3とATIのチップが採用される例が多かったが、いずれもWindows 2000でのマルチディスプレイをサポートしていない。

 ビジネス向けと位置付けられているはずのWindows 2000でサポートされないことで、困っているというメールも何通か頂いたことがある。プレゼンテーションに利用する際、マルチディスプレイが利用できるかどうかは、使い勝手に大きな影響を与えるからだ。

 この春に開催されたWindows向けハードウェア開発者向け会議のWinHECでも、Windows XP用ディスプレイドライバのセッションで同じ議題が取り上げられたようだ。残念ながらそのセッションを聞くことはできなかったが、資料によるとディスプレイドライバ用のクラスドライバに相当する部分(ディスプレイドライバはすべてがカーネルモードで動作するため、厳密には他ドライバのクラスドライバとは異なる)を書き直したため、1チップでマルチディスプレイに対応するドライバを書きやすくなったのだという。

 ただし、僕の知る限りWindows XPのCDに同梱されているドライバで、マルチディスプレイに対応したものはない。我が家にあるノートPCはATIのチップを採用したものばかりで、S3のチップに関する情報はまた聞きになるが、いずれもマルチディスプレイ機能は利用できない。

 だがWindows Updateで提供される最新ドライバであれば、利用できるものもある。従来のWindows Updateにおけるドライバ更新機能はドライバがほとんど登録されておらず、全く機能していなかった。しかし、Windows XP用のWindows Updateはきちんとメーカー製の最新ドライバがアップロードされている。それをインストールすることで、ThinkPad X21やEvo N400cに採用されているRAGE MOBILITYでマルチディスプレイを利用できるようになった。

 S3やNVIDIAのチップに関しては対応機種を所有していないため確認できないが、少なくとも一切サポートされていなかったWindows 2000よりは可能性が高いと言えそうだ。


●HomeからProfessionalにアップグレードするときも、アップグレード版を購入するだけでいいのでしょうか?

 問題ない。マイクロソフトの公式なアナウンスでもHome EditionはProfessinalにアップグレードできる。Home Editionのライセンスを所有しているなら、Professinalのアップグレード版を購入すれば、利用することが可能だ。

 Home EditoinはProfessinalへ上書きアップグレードできないのでは? というメールもあった。ずっと以前(β2前後)にそのような話を聞いたことがあったが、自分でトライしたことがなかったため、事の真偽は定かではない。少なくともメーカー製のWindows XP Home Editon搭載機にProfessinalのアップグレードインストールを行なったところ、きちんとインストールを行なうことができた。

【11月13日追記】
 Home EditionからのProfessionalへのアップグレードは、技術的には可能であるが、アップグレードインストールはサポート対象外となる。

□Windows XP Home Edition からWindows XP Professional へのアップグレード方法
http://www.asia.microsoft.com/japan/windowsxp/pro/evaluation/upfromhome


●プリインストール機でBIOSをアップデートした場合は、次の起動からアクティべーションが要求されるのでしょうか?

 明確な基準は不明だが、細かなBIOSのアップデートを行なっても、再アクティベートが必要にはならない。マイクロソフトが想定していないほど明らかに異なるBIOSを入れてしまうと異なるPCと認識されるが、その場合も電話によるアクティベートを行なうことができる。また前回の話とも重なるが、BIOSとの組み合わせで認証されたWindows XPはハードウェアをいくら変更しても(BIOSさえ変わらなければ)再アクティべーションの必要はない。


●マイクロソフトが来年以降にWinXPの次のバージョンを出荷すると、有料バージョンアップを促すためにインターネット経由や電話によるアクティべーションを、予告無く中止することが考えられますが、そのあたりのことについて記事にするのは“タブー”なのでしょうか?

 タブーではないが、有償バージョンアップのためにアクティベートサーバーを止めるというのは、あまりに考え方が飛躍しているように思う。仮にそうした行動をマイクロソフトがとったならば、世界各所で裁判が起こることだろう。アクティベートサーバーを止めるということは、ユーザーに与えたはずの使用権を一方的に取り上げることになるからだ。マイクロソフトは将来、OSのアップデートサポートをやめる可能性について使用許諾契約の中でうたっているが、一方的に使用権を剥奪することがあるとは明記されていない。マイクロソフトが倒産し、Windows資産の引受先もなく解散してしまえば話は別だろうが、それ以外の原因でアクティベートが行なえなくなることはないと考えられる。

 ただし、将来にわたるアクティベートの保証に関しては、他にもいくつかメールが届いており、マイクロソフトに対してどのようなスタンスでいるのかを公式に確認している。


●Windows 2000でおなじみの自動ログオンを利用することはできますか?

Tweak UIを使えば簡単に自動ログオンを設定可能

 できる。レジストリを操作してもいいが、一番簡単なのはマイクロソフトが無償で配布している「PowerToys for Windows XP」(現在のところ英語版のみ)を利用する方法だ。PowerToysに含まれている「Tweak UI」を用いて、“Logon”項目の下にある“Autologon”にユーザー名とドメイン名、パスワードを入力すればいい。ドメインに参加していないコンピュータの場合、ドメイン名にはマシン名を入力しておく。

 なお、Windows XPの初回起動時、利用者を1名だけしか登録しなかった場合は、そのユーザーで自動ログオンされるようになっている(ただしパスワードを作成すると自動ログオンは解除される)。


●デュアルブートは可能でしょうか?

 Windows 9x/Me/NT/2000とのデュアルブートが可能。インストール時に新規インストールを選択し、既存Windowsフォルダとは異なるフォルダへのインストールを指定すればいい。ただし、プログラムフォルダなどの関係上、別パーティションにインストールすることが望ましい。


●アップグレード版の購入を予定していますが、新規インストールは可能ですか?

 新規インストールも行なえる。CDブート可能なPCであれば、CDからの起動で新規インストールするといい。ただし、アップグレード対象となっているWindowsのCDを、インストール中に1度だけ挿入する必要がある。基本的にはWindows 2000と同じであるため、Windows 2000用のノウハウ集が役立つはずだ。


●現在、メインOSにWindows 2000を使用しており、Windows 2000の使用許諾に則り1ライセンスで2台のPCにインストールして使用しています(多分、間違いないと思いますが……)。今回、Windows 2000からの特別アップグレード版の購入を検討しているのですが、これら2台のマシンにインストールする場合、それぞれ2パッケージ分の特別アップグレード版を購入したらいいのか、1ライセンス1アップグレードであれば、通常版1パッケージと特別アップグレード版1パッケージの購入が必要なのかが解りません。

 この場合、元々のライセンスの認識が間違っている。Windows 2000も、Windows XPも、ライセンスに関しては同じである。したがって、残念ながら現在所有しているWindows 2000は1台のPCでしか利用できない。

 2台で利用可能なのはOffice XPの方で、こちらは1台のデスクトップPCと1台の移動しながら利用するPC、合わせて2台で利用できる。しかし、これはあくまでOfficeのライセンスであって、Windows XPとは異なるので注意してほしい。したがって、このケースで2台ともWindows XPにしたい場合は、1本の通常版と1本のアップグレード版が必要になる。

 もっとも、それほど急ぐ必要はないと思う。一度にアップグレードを行なうのではなく、足りていない1ライセンスをWindows XPを購入することで満たし、1台にインストールして機能や使い勝手を確認してから、もう1本を購入することをお勧めしたい。


●Windows 2000を多言語環境(日本語と韓国語)で利用しています。Windows XPはシステム言語の設定を変えれば機能は完全にその言語のWindowsになりますか? (2000の場合なりきれなくて、設定した言語のアプリケーションで動かないものがあります)

非UNICODEアプリケーションのデフォルト言語が設定可能になった

 おっしゃっている機能に該当するかどうかはわからないが、Windows XPではコントロールパネルの[地域のオプション]が[地域と言語のオプション]に名称変更され、いくつかの設定項目が増えた。ひとつは現在いる地域(サービスを受けられる地域を判別するために選ぶ)の選択、もうひとつがユニコード非対応の言語に対してどの言語を割り当てるかだ。

 この部分を変更することで、国際化対応が行なわれていないソフトウェアも正常に動く可能性が高くなっていると思う。僕は日本語版ではなく英語版のWindows XPを使用しているが、現在のところ問題を感じていない。ただし、ごく一部には文字化けを起こすアプリケーション(といっても実害がないのであまりこだわっていない)がある。

 この現象に対応するためには、企業向けのボリュームライセンス契約者が利用できるMultilanguage User Interface(MUI)というパッケージが必要になる。MUIは多国籍企業が本社で一括購入したライセンスを世界中で利用することを想定したもので、英語版を元に各言語のパッケージをインストールすると、ユーザーごとに設定した言語で起動するようになる。これまでOffice 2000、Windows 2000、Office XPでも使われていた技術だ。

 このMUIをインストールする際、デフォルトフォントとして指定した言語のフォントを割り当てるインストールオプションがある。問題が発生しているというアプリケーションが不明だが、おそらく、そのオプションを利用すれば解決できるのではないだろうか。


●Windows XPはシステム言語の設定を変えたときリブートしなければなりませんか? (Windows 2000はこれが不便です) また、Windows 2000はシステム言語の設定を変えるとすると文字化けが少し起こりますがWindows XPはどうでしょうか?

 設定を変更後、ユーザーをログオフさせて再ログインすれば、設定した言語へと切り替わる。Windows XPはユーザースイッチング機能があるため、言語設定を変えた二つのユーザーを作っておき、ユーザーを切り替えることで利用するのもいいと思う。また今のところ文字化けは経験していないが、Windows XPで韓国語を利用した経験がないため確認はできない。


 このほかにも、「3つのパーツにバンドルされたOEM版Windows XPを購入し、そのパーツをばらばらに使うことができるか?」など、ユニークな質問も残っているのだが、今回はここまで。残りの宿題をすべてこなすためには、あと2本ほどの記事にしなければならなそうだが、本連載とは別に順次掲載していくことにする。

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(2001年11月6日)

[Text by 本田雅一]


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