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Intelが来年第3四半期にPentium 4ベースのCeleronを投入


●CeleronもPentium 4アーキテクチャへと変わる

 Intelは、来年後半にPentium 4アーキテクチャベースのCeleronプロセッサを投入する。

 複数の情報筋によると、IntelはCeleron戦略を大きく変えたという。当初、Intelは2002年中はCeleronをPentium IIIアーキテクチャのまま、つまり「Tualatin-256K(テュアラティン,0.13μm版P6コア)」で行くつもりだった。だが、今回、Intelはその予定を大幅に前倒し、来年第3四半期に「Willamette-128K(ウイラメット,0.18μm版Pentium 4コア)」を投入することにしたらしい。これで、来年の終わりには、Celeronを含めてほとんどのIntelのデスクトップCPUは、Pentium 4アーキテクチャに移行してしまうことになった。

 前倒しされるのはデスクトップだけではない。Intelはモバイル版Celeronも来年後半にはPentium 4アーキテクチャにするという。そのため、全プラットフォームでPentium 4シフトが加速すると考えていい。じつは、先週は台湾にいたのだが、週の終わりごろから業界関係者がPentium 4がCeleronスペースにも入ると言い始めている。このことから、ロードマップのアップデイトは先週中になされたと見られる。


●IntelはNorthwoodの発表を来年に遅らせた

 今回のロードマップ変更の概要は、ロードマップ図にまとめてPC WatchのWebサイト( http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/intel/index.htm )にアップした。まず、デスクトップのロードマップから概観しよう。

 パフォーマンスデスクトップでは、Intelは0.13μm版Pentium 4(Northwood:ノースウッド)の発表を、当初予定していた今年第4四半期から来年1月にずらした。これは、以前からウワサがあったもので、実際にいくつかの前兆もあった。例えば、Intelは9月の段階でNorthwoodのラウンチウインド(発表の可能性のある期間)を、11月から来年1月と異常に広く取っていた。また、一部のベンダーに対しては量産前サンプルであるB0ステップの出荷が遅いなどの兆候があった。

 今のところ、この遅れの原因が、技術上のものか、それとも生産計画上のものか、マーケティング上のものなのか、あるいはそれらがミックスしているのかよくわからない。

 技術面では478ソケット(パッケージではなくソケットそのもの)の供給が予定より少なくプラットフォームが整わない上に、Northwoodのステッピングアップも遅れがちだったという背景がある。生産計画では、Intelが0.13μmのウエーハ投入で、TualatinをNorthwoodより優先させた可能性が高い。IntelはTualatinのCeleronへの投入を2四半期早めたが、そのためにまだ数が限られる0.13μmのウエーハのほとんどをTualatinに割かなければならないはずだからだ。マーケティング的には、この延期によってNorthwoodはDDR版845(Brookdale-D)とリンクしてスタートさせることができるという利点がある。


●Northwoodは来年中盤に533MHz FSBへ

 Northwoodは発表は遅れたものの、基本的な内容は以前のレポートから変わっていない。0.13μm銅配線で、L2キャッシュは現在の256KBの倍の512KBに増える。コア電圧はVcc(Max)で0.18μm版Pentium 4(Willamette:ウイラメット)が1.75Vなのに対して、Northwoodは1.475V。TDP(Thermal Design Power:熱設計消費電力)はWillametteの2GHzが69W(423ピン)なのに対して、Northwoodは同じ2GHzならNorthwoodは41.2W(478ピン)と約60%に下がるという。ただし、TDPを下げた分、Northwoodではプロセッサパッケージ温度の上限であるTcaseを下げた(なんと2GHzなら63度)ので、熱設計はちっともラクにはならない。自作ユーザーにとっても、冷却は要注意ポイントのままだ。

 また、IntelはNorthwoodのパフォーマンスアップのロードマップも崩していない。業界筋によると、Northwoodは来年第1四半期早期に2.2GHzと2GHzで登場、第2四半期には2.4GHz、さらに第3四半期には2.53GHzと2.5GHzへとクロックグレードをアップするという。ちなみに、第3四半期からはNorthwoodには533MHz FSB(フロントサイドバス)版が追加される。533MHz FSBは133MHzベースクロックとなり、帯域が広がるだけでなくDDR266メモリとの同期性はよくなる。2.53GHzが533MHz FSBで、この他、2.4GHzでも533MHz FSB版が追加されるという。おそらく、来年末までには533MHz FSBベースでNorthwoodのクロックは最高2.66GHzか2.8GHzに達するものと思われる。


●Celeronは0.13μmのTualatinから0.18μmのWillametteへ

10月3日に発表されたTualatinコアのCeleron 1.2GHz。256KBのL2キャッシュを搭載する

 一方、バリューデスクトップセグメントでは、IntelはTualatinベースのCeleronを1.2GHzで投入した。以前レポートした通り、今後、Intelは一気にTualatin比率を高めて、来年第2四半期には、オールCeleronをTualatinにしてしまう計画だ。ちなみに、このTualatin版Celeronは、100MHz FSBでL2キャッシュは256KBとなる。

 Intelは、TualatinベースCeleronのクロックを、律儀に1四半期に100MHzずつ上げて行く。ただし、それも1.5GHzまでの話。Intelは第3四半期の1.5GHzでTualatinのクロック向上は止めて、その先はPentium 4アーキテクチャのWillamette-128KBに引き継がせる予定だという。

 Willamette-128KBは、現行の0.18μm版Pentium 4の、L2キャッシュ制限版と見られる。Willamette版Pentium 4は256KBのL2キャッシュを搭載しているが、Celeronへ持ち込む時はL2キャッシュの半分を使えない状態にするようだ。FSBは400MHzのみ。つまり、Pentium 4とは、L2キャッシュの量とFSBで差別化されることになる。

 Intelは、ここでも律儀にTualatinとの間で300MHzのクロック差をつける。すなわち、Willamette-128KBは1.8GHzと、Tualatinの最高クロックの300MHz上で投入される。これは、IntelがPentium 4アーキテクチャの場合、Pentium IIIアーキテクチャに対してクロックで300MHz程度の差をつけないとパフォーマンスのアドバンテージを得られないと考えているからのようだ。

 ここで面白いのは、0.13μm世代のTualatin版Celeronの後継が、0.18μm世代のWillamette-128KBになること。つまり、プロセス世代だけを見ると、古い世代へ逆行してしまう。これは異例なことで、通常はバリューセグメントへ、次期アーキテクチャが入ってくる時には、ダイ(半導体本体)が小さい新しいプロセスの製品が入ってくる。もちろん、Willamette-128KBのあとには、おそらく来年早々にもNorthwood-256KBが来ると思われるが、取りあえず、それまでの間はWillametteがCeleronに来る。この異例なシフトには、いくつか理由があると思われる。


●クロックを上げるためにWillametteを

 まず、基本的な姿勢としてIntelは今夏前に大きな決断をした。それは、CPUのパフォーマンスをできる限り上げ続けることだ。今、ロードマップが加速されているのは、その路線変更を反映したものだ。

 そして、単純にクロックで考えた場合、TualatinとWillametteでは、プロセス世代では1世代古いにも関わらずWillametteの方がクロックを上げられる。Tualatinだと、おそらく1.6GHz以上に上げるには、またかなりのエンジニアリングが必要なのに対して、Willametteコアはすでに2GHzに到達している。つまり、クロックで考えた場合、Tualatin→Willamette→Northwoodと以降させる方が順当だというわけだ。

 これは、対AMD戦略としても妥当だ。AMDの新Duron(Morgan:モルガン)コアだと、0.18μmではおそらく1.5~1.7GHzが十分な歩留まりで採れる限界になる。Morganは、今は「Guardband」がはめられて1.2GHzに抑えられている。しかし、Athlon系がより高クロックな0.13μmの「Thoroughbred(サラブレッド)」に移行すれば、AMDはMorganのクロックを抑える必要がなくなるため1.5GHzクラスまで一気に迫ってくるだろう。

 Intelとしては、まず、AMDの0.13μmのキャパが限られ、Duronラインまでは0.13μm版(Appaloosa:アパルーサ)に持ってこられないうちはTualatinで対抗。Appaloosaにシフトしてきたら、Willamette-128KBで対抗するという戦略だと思われる。AMDも現実的に考えれば、0.13μmシフトが終了するのは来年後半になる(1FabだけなのでIntelよりもシフトが終わるのは早い)と思われるので、このスケジュールで行けると踏んだのだろう。

 ちなみに、Pentium 4対Palomino/Thoroughbred/ClawHammerでは、Intelは生クロックではAMDプロセッサに勝てると考えていると思われる。実効性能は、Hyper-Threading技術のデスクトップへの導入で巻き返すというストーリだろう。


●0.13μmのキャパ不足をWillametteで補う

 それから、製造計画から見ても、Intelにとってこれは妥当な戦略だと思われる。というのは、Intelは経済状況が悪化したことなどもあって、0.13μm Fabの計画を多少セットバックさせているからだ。そのため、Intelの0.13μmへの移行は、当初の計画よりなだらかなものになっている。おそらくIntelは2002年末の時点でも、PC向けプロセッサの全てを0.13μmへとシフトさせることができないだろう。

 しかも、NorthwoodコアとTualatinコアを比べると、Northwoodコアの方が大きい(Tualatinが約80平方ミリメートルに対してNorthwoodはおそらく120平方ミリメートル程度)。つまり、同じウエーハ上から採れる個数はNorthwoodの方が少ない。そのため、0.13μm版Northwoodの生産量を増やそうとすると、ますます0.13μmのキャパがタイトになってしまう。

 このキャパ不足を解決する手段は簡単だ。それは、0.13μmのキャパでNorthwoodの割合を増やすと同時にTualatinを減らし、それで足りない個数を0.18μmのWillametteコアで埋めることだ。「Intel Desktop CPUコアの移行推測図」を見ると、そうしたキャパの調整がよくわかる。

 こうすると、最先端プロセスのキャパの不足の問題は解決できる。Intelは今回の0.13μmへの移行では、0.18μmのFabを全部0.13μmに移行させるのではなく、0.18μmのキャパをある程度は保ったままで移行しようとしている。例えば、この春に見学したサンタクララのD2 Fabでは、0.13μmラインのために、従来の施設と同規模のクリーンルームを増設していた。そのため、今回は、こうした調整も容易だと思われる。



□関連記事
【10月3日】Intel、0.13μmプロセスのCeleron 1.2GHz
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20011003/intel.htm

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(2001年10月9日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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