第119回:心はすでに電話のワイヤレスからPC LANのワイヤレスへ



 10月1日はNTTドコモの第3世代携帯電話サービス「FOMA」の運用開始日である。これまでも実験参加者のレポートが数多くあったが、これからはより多くのユーザーの厳しい評価にさらされることになるだろう。

 僕の場合、通信料金の高さもあって、あらかじめ敬遠するつもりだったが、直前になってやはり話のタネに……と、多少迷いながらこの日を迎えたが、結局は購入をパスしてしまった。データ通信専用に利用する場合、基本料金とパケットパック80の組み合わせで1万円超。携帯電話として利用するなら、シティフォン程度の使い勝手の携帯電話として、話のタネに買うのもいいと思うが、PC用の通信インフラとしては、まだC@rd H"やAirH"の方が遙かにいいと思ったからだ。


●なかなか高速? でも通信データ量が……

 とはいえ、全く興味がないと言ったら嘘になる。新宿京王プラザホテルで、無線LANインターネットを使って仕事をしている時、ちょっとした用事で会った友人にFOMAの使い心地を聞いてみた。すると、開口一番「いや、思っていたよりずっと速いよ」。PCからの通信は行なわなかったが、ちょっとしたiモードコンテンツを覗くだけでも確かに高速だ。すでにPCからのデータ通信時のパフォーマンスについてもいくつかの報告があるが、おおむね140K以上の速度が出ているようだ。電子メールやWebブラウズには十分な速度だと思う。速度が速くて料金が同じなら、誰もが諸手を挙げて喜ぶところだが、さすがにそうはいかない。

 ケータイWatchに「FOMAのパケット通信料を比較・検証」という記事があるが、この中のグラフを見ても明らかなように、PCで通信を行なうにはあまりにも通信料金が高い。

 自分がPCで通信しているデータ量を計測してみるとわかるが、PCからのインターネットアクセスは、専用ネットワークを使う携帯電話網で直接データをやりとりするiモードより、ずっと転送されるデータ量が多いのである。TCP/IPプロトコルのオーバーヘッドあり、POP3/SMTP、HTTPなどの通信手順ありで、これらのオーバーヘッドにも、当然パケット料金がかかっている。

 メールの量にもよるが、ちょっとした合間にメールをチェックして返信を行ない、Webもチェックしていると、見る間に数MBのデータ量になっていく。対してパケットパック40で料金が固定となる範囲(最大8万パケット)では、10MBにも満たない量しか通信できない。週に1~2回しか使わないという人でも、これで1ヶ月を過ごすのは辛い。少なくともパケットパック80は欲しいところだ。お得に見えるパケットパックだが、ヘビーなiモードユーザーにはお得な設定だとは思うが、PCからの通信を主に利用するユーザーにとっては、かなり高価なインフラだと思う。

 そんな事を考えながら、無線LANインターネットを使って電子メールで送っていたデジタルカメラの写真は、全部で3MBほどだった。TCP/IPのオーバーヘッドや、電子メールで送るときのbase64エンコードによるデータ量の増加などを全く勘案しなかったとしても、パケットパック80換算で約470円、パケットパック40換算で約1,170円、パケットパック20なら……と、これ以上はやめておこう。いずれにしろ、これ以上となれば気軽に使える数字ではない。それに、実際のデータ量は、オーバーヘッドでそれよりもずっと多くなるのだから。

 将来への期待を全くしていないわけではないが、とりあえず僕のFOMAへの気持ちは萎えてしまった。利用可能な場所もずっと多いC@rd H"を使いながら、AirH"の128Kbpsサービスが始まるのを待とうと思う。もっとも、そのときにはすでに新宿の量販店ではFOMA端末が売り切れていたようだが。


●PC向けにはPC向けのワイヤレスサービス

 そんな事を考えながら仕事をしていた京王プラザホテル。ご存じの方も多いと思うが、ここの3階レセプションロビー奥のラウンジは、無線LANによるインターネット接続サービスが無料で利用可能なホットスポットになっている。ラウンジはロビーからオープンなスペースになっているので、その気になればロビーにある椅子にでも座って電子メールを受信することが可能だ(もっともロビーは混雑していることが多いのだが)。ゆっくり仕事がしたければ、少々高めのコーヒー代(850円)を支払ってラウンジでPCをひろげてもいい。コーヒーは何杯飲んでも追加料金はかからない。待ち合わせで数時間の空きができた時などにはお勧めだ。ただしAC電源は利用できない。

 このサービスは日本IBMがワールドワイドで行なっているワイヤレスソリューションサービスの一環だが、同様のサービスは同じく新宿のセンチュリーハイアット東京のフロントロビーでも利用できる。センチュリーハイアット東京の場合、アクセスポイントはコンシェルジェの机の上に設置されているようだ。また、ホテルオークラでも、同様のサービスが利用できるようになると聞いている。詳しくは日本IBMのワイヤレス対応スポット紹介ページ( http://www-6.ibm.com/jp/pc/experience/wireless/solution.html )を参照していただきたい。

 このほか、NTTコミュニケーションズがモスバーガーの一部店舗や品川プリンスホテルで実験を行なっているハイファイブ( http://www.hifibe.net/ )も利用したことがあるが、いずれにしろ上限無く増える料金を気にせずに、高速なインターネットを利用できる環境を体験してしまうと、とてもとてもFOMAを使う気になれない。ホットスポットはまだ実験的なサービスが多く、都内でも利用できる箇所が非常に少ない。全国的な広がりまでを考えると、いつのことになるのやらといった感じだ。

 しかし、それでもPC向けにはPC向けの、つまりデータ通信にはデータ通信用のインフラが向いているという、ごく当たり前のことを改めて感じている。なぜ、携帯電話用の高価なインフラを使う必要があるのだろう。もちろん、それを言い出せばPHSも同じだが、PCでの通信に限れば、携帯電話よりもPHSの方が遙かに使い勝手がいい。ホットスポットがない場所で利用するだけなら、十分だと思えるのだ。

 僕は第3世代携帯電話サービスも、将来のためにぜひ成功への道を作って欲しいと思っているが、どこか他人の事のようにしか思えない。PC業界に身を置く者として、心は無線LANを使ったアクセスサービスの方に向かっている。


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[Text by 本田雅一]


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