鈴木直美の「PC Watch先週のキーワード」
第175回:7月16日~7月19日


■■キーワードが含まれる記事名
●キーワード


7月16日

■■ アイ・オー、TVチューナ搭載MPEG-1/MPEG-2キャプチャカード
   -赤外線リモコン付属、3種類のEPG予約に対応(AV Watch)
http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20010716/iodata.htm

●D1
 ディーワン

 業務用デジタルビデオの標準フォーマットの1つ。

 SMPTE(Society of Motion Picture and Television Engineers~映画テレビ技術者協会)によって策定されたビデオフォーマットで、ITU-R(International Telecommunication Union Radiocommunication Sector~国際電気通信連合無線通信部門)の国際規格(BT.657)にもなっている。

 D-1規格は、3/4インチテープ(テープ幅19mm)に、コンポーネントビデオと4チャンネルのオーディオを、非圧縮のデジタル信号のまま記録する規格である。扱えるビデオ信号は、4:3の標準テレビ用のものだけだが、NTSC用の525/60i方式(走査線が525本で毎秒60フレームのインタレース方式)とPAL/SECAM用の625/50i方式の両方をサポート。水平解像度は、720(色差信号を輝度信号の半分でサンプリングする「4:2:2」方式なので色差信号のサンプル数は360)。垂直解像度は、525(有効ライン数は480本でフィールドあたりのライン数はその半分)もしくは625(同じく576本)で、量子化ビット数は8bit。オーディオ信号は、サンプリング周波数が48kHz、量子化ビット数が20bitの4チャンネルで、ビデオ、オーディオともに非圧縮で記録するのがD-1の大きな特徴である。家庭用のDVカメラの場合には、ビデオ信号にDV圧縮を使用しているが、こちらは非圧縮記録なので、227Mbpsと約5倍の記録レートになっている。

 D-1規格の主体は、これら信号をビデオテープ記録するための仕様を規定したものだが、PCのハードやソフトでいう場合には、このD-1のビデオ信号やオーディオ信号、あるいはその一部のパラメータを差した、D-1相当という意味で使われる。ちなみに、SMPTEが規定するデジタルビデオ用のフォーマットには、このほかに以下のようなものがある。

・D-2 3/4インチテープにコンポジットビデオを記録
・D-3 1/2インチテープにコンポジットビデオを記録
・D-5 1/2インチテープに10bitのコンポーネントビデオを記録
・D-6 3/4インチテープに720/60p~1,152/50iまでのコンポーネントビデオを記録
・D-7 1/4インチテープにコンポーネントビデオをDV圧縮で記録
    (業務用のDV規格である「DVC PRO」のこと)
・D-9 S-VHSカセット(テープ幅は1/2インチ)に、コンポーネントビデオをDCTベースのフレーム内圧縮で記録
    (ビクターの業務用フォーマットである「Digital S」のこと)
・D-10 12.65mm幅のテープを使い、MPEG-2ビデオを記録。

1/2インチは、VHSビデオと同じ12.65mm幅。1/4インチは、Mini DVカセットやオーディオカセット、DATなどと同じ6.35mm幅。

□SMPTE
http://www.smpte.org/
□D-1規格
http://www.smpte.org/standards/
・SMPTE 224M-1996
 Television Digital Component Recording - 19-mm Type D-1 - Tape Record
・SMPTE 225M-1996
 Television Digital Component Recording - 19-mm Type D-1 - Magnetic Tape
・SMPTE 226M-1996
 Television Digital Recording - 19-mm Tape Cassettes
・SMPTE 227M-1996
 Television Digital Component Recording - 19-mm Type D-1 - Helical Data and Control Records
・SMPTE 228M-1996
 Television Digital Component Recording - 19-mm Type D-1 - Time and Control Code and Cue Records
□ITU-R
http://www.itu.int/ITU-R/
【参考】
□NTSC
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990204/key63.htm#NTSC
□PAL
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000622/key124.htm#PAL
□コンポジット/コンポーネント
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980603/key32.htm#component
□家庭用ビデオの規格
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000824/key132.htm#video


7月18日

■■ 後藤弘茂のWeekly海外ニュース
   Intelが欲しかったのはCompaqの持つAlpha EV8のテクノロジ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010718/kaigai01.htm

●Alpha
 アルファ

 DEC(Digital Equipment Corporation)が'92年にリリースした64bitプロセッサ「DECchip 21064」および、その後継21x64ファミリーのファミリー名(当初はアーキテクチャ名)。

 '57年に設立され、後にミニコンの最大手ベンダーとなったDECは、16bitのPDP-11、32bitのVAXに続く新しいRISCマシンの開発に着手。'88年に、最終的なターゲットを64bitプロセッサに定め、翌'89年からAlphaの正式な開発プロジェクトがスタート。'92年2月に、世界最初の64bit RISCプロセッサとしてデビューを飾る。スーパースカラー(※1)やスーパーパイプライン(※2)といった最先端の技術が実装され、150MHzや200MHzといった高クロック(※3)で動作するのが大きな特徴。対応OSは、同社のVMS、UNIX、後にWindows NTも加わり、一時は最速のWindowsマシンともてはやされたこともある。

 DECは、'98年にCompaq Computerに買収されるが、第2世代のマイクロアーキテクチャEV5(21164)を経て、現在は第3世代のEV6(21264[※4])シリーズをリリース。このプロセッサバスは、AMDのAthlonにも採用されている。さらに、2002年には次世代のEV7、2003年にはその後継のEV8も予定されていた。が、Compaqは、Alpha関連の技術をIntelに移転し、2004年までには全ての64bitサーバーをItaniumに統合することを発表しており、EV7が最後のAlphaChipになるとみられている。

※1 複数のパイプラインを使い、命令を並列実行する機能
※2 段数の多い深いパイプライン
※3 当時は、倍クロックのDX2でようやく50MHzや66MHzに達したところ。
※4 EV6コアの最速チップは、1GHzのEV68(21264B)。

□Alpha System(コンパックコンピュータ)
http://www.compaq.co.jp/products/alphasystems/index.html
□History of DIGITAL(コンパックコンピュータ)
http://digital.compaq.co.jp/history/
【参考】
□EV6バス
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/991224/key103.htm#EV6


●IA-32(Intel Architecture-32)
 アイエーさんじゅうに、アイエーさんにー

 Intelが80386以降のCPUに採用した、32bitの命令セットアーキテクチャ。

 CPUのアーキテクチャは、命令セットやレジスタなどのプログラミングに関わる基本仕様と、実際にそれをチップ上に実装するためのCPUコアの内部構造とに大別でき、前者を「命令セットアーキテクチャ」、後者を「マイクロアーキテクチャ」という。

 IA-32は、Intelが'85年にリリースした80386(後にIntel 386に改称)に初めて採用された命令セットアーキテクチャで、それまでの16bitレジスタをそのまま継承し、上位に16bit分を追加し全て32bit化(※1)。管理できるメモリや扱えるデータは32bitベースになり、従来のx86命令セットの32bit版と32bit専用命令が用意される(※2)。このような設計のCPUを、一般に32bit CPUといい、Intelは後に、この命令セットアーキテクチャをIA-32と呼ぶようになった。その後の486や一連のPentiumシリーズ(無印、Pro、II、III、4、Celeron)では、次々に新しいマイクロアーキテクチャが採用され、MMXやSSE、SSE2などの拡張命令の追加とそれに伴なう新しいレジスタの追加も行なわれたが、基本的な命令セットアーキテクチャはこの386からの流れを汲んだ、いずれもIA-32ファミリーの一員である。

 このIA-32は、単に16bitアーキテクチャの「x86」を32bitにスケールアップしただけではなく、メモリ保護機能や仮想メモリ、ハードウェアによるタスク切り換え(機能自体は既に80286で追加されていた)などもサポートする。ハードウェア的には、これら全ての機能が利用できるネイティブな実行モード(メモリ保護機能が働くことから、プロテクトモード、あるいは保護モードという)と、従来のx86 CPUとして動作する実行モード(リアルモード、あるいは実アドレスモードという)を持っており、2つの実行モードを自由に切り換えることができる。プロテクトモードではさらに、独立した複数のx86環境があるかのように振る舞う、「仮想86モード」という機能も提供。これらを備えたIA-32が、現在の一般的なWindowsの設計ベースとなっている。

※1 例えば演算の主体となるアキュームレータ(accumlator~累算器という意味)というレジスタは、32bitではEAXといい、このEAXの下位がAXという従来の16bitのアキュームレータである。ちなみにAXは、さらにAHとALという2つの8bitレジスタになっており、8008や8080といった8bit時代からの資産を受け継いだ形になっている。

※2 x86時代からの命令は、レジスタと同様に新旧が渾然一体となった仕様で、例えば加算命令(ADD)は、演算対象に応じて、8、16、32bitの演算を行なう。16bitコードをそのまま実行する機能も提供しているが、最小限のコストで32bitコード化が行なえるようになっている。


●IA-64(Intel Architecture-64)
 アイエーろくじゅうよん、アイエーろくよん

 IntelがItaniumに採用した、64bitの命令セットアーキテクチャ。

 CPUのアーキテクチャは、命令セットやレジスタなどのプログラミングに関わる基本仕様と、実際にそれをチップ上に実装するためのCPUコアの内部構造とに大別でき、前者を「命令セットアーキテクチャ」、後者を「マイクロアーキテクチャ」という。

 IA-64は、Intelが2001年にリリースしたItanium(コード名Merced)に初めて採用した新しい命令セットアーキテクチャで、名前の通りの64bit仕様。つまり、管理できるメモリや扱えるデータが全て64bitベースになり、広大なメモリ空間を使った大量のデータ処理を実現する。システムには、従来のプログラムがそのまま実行できるように、IA-32の命令セットも組み込まれており、ネイティブなIA-64システム環境と、IA-32 CPUとして機能するIA-32システム環境の2つの実行モードを持つ。この辺りは、従来のIA-32がネイティブなプロテクトモードと、x86互換のリアルモードをサポートしていたのとよく似ており、IA-32システム環境では、プロテクトモード、リアルモード、仮想86モードをサポートするPentium(無印~III)相当のCPUとして動作する。一方のIA-64システム環境の方は、64bit化された本来の機能が全て利用できるのはもちろんだが、IA-32アプリケーション(リアルモード、プロテクトモード、仮想86モードの全て)を、このIA-64システム上で実行することもできる。こちらは、IA-32上でx86アプリケーションが実行できるのと同じだ。ただし、x86の延長で32bit化したIA-32と違い、IA-64は新たに設計しなおされたアーキテクチャであり、レジスタや命令セットは全く異なったものになっている。

 IA-64は、IntelがHP(Hewlett-Packard)と共同で開発したEPIC(Explicitly ParallelInstruction Computing~明示的並列命令コンピューティング)技術が基盤となっている。IA-32には命令の並列実行という概念はなく、基本的には一列に並んだ命令を順に実行して行くスタイルである。後期のCPUには、スーパースカラーやアウトオブオーダーなどの技術が採り入れられ、命令を同時に実行したり、プログラムに書かれた命令の順番を変えたりといったことも行なってる。が、これはあくまでCPUの判断のもとに、動的に実行スケジュールを組みたてて行くスタイルであり、実行効率には自ずと限界がある。IA-64では「並列実行する命令を明示する」とあるように、あらかじめ同時に実行する命令を明示した、並列実行のスケジュールを命令レベルで組んだ形でプログラムを記述するのが大きな特徴で(※1)、従来とは全く違ったプログラミングが要求される。命令を同時に実行することが前提なので、レジスタも大幅に強化されており、整数レジスタ(64bit)や浮動小数点レジスタ(84bit)は、従来の8個から128個に増大している。

※1 IA-64では、IA-32の1命令に相当する実行単位をバンドルといい、1つのバンドルには、グループ化した3命令を格納。バンドルは、1クロックで複数発行できるようになっており、命令テンプレートや分岐ヒント、キャッシュヒントなどの情報を使ってCPUにスケジュールを伝える。

[Text by 鈴木直美]


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