元麻布春男の週刊PCホットライン

第3世代の内蔵型SuperDiskを試す


●筆者には必須のSuperDisk

 今さら言うまでもなく、筆者のAドライブはATAPI接続のSuperDiskドライブだ。サーバーなどごく一部の例外的なマシンを除き、ほぼすべてのマシンにSuperDiskドライブが搭載されている。その最大の理由は、システムのメンテナンスに使う起動ディスクを120MBのSuperDiskで作成しているからだ。このディスクには、FDISK、FORMAT、CHKDSKといったDOS(実際にはWindows 98 SEのコマンドモードだが)の標準コマンドに加え、Drive Imageのようなサードパーティ製ユーティリティが収められている(合計25MB程度)。要は、1枚のメディアに必要なツール類を全部入れておこうとすると、1.44MBのFDでは全く話にならず、大容量でシステム起動が可能なリムーバブルメディアが必要になった、ということである。

 もちろん、この条件を満たすのはSuperDiskに限らない。たとえばZipドライブはこの条件を満たすし、CD-Rで実現することも不可能ではないだろう。だが、FDとの互換性(今もリテールパッケージのWindows Me等にはブートフロッピーが添付される)、気軽に少量の書込み(たとえばBIOSアップデート)を行なうという使い方を考えると、SuperDiskが一番使いやすいと感じたのである。ほかにもフロッピー互換の大容量リムーバブルドライブがないわけではないが、この種のものの中ではSuperDiskが最も安定しており、OSのサポートもきちんとしているように思う。

 以上のような理由で、筆者の手元には内蔵用のATAPI版だけで、7台ほどのSuperDiskドライブ(うち5台が第2世代の倍速ドライブ)があり、今もマシンの組替え等が発生する度に、少しづつ第1世代ドライブから第2世代ドライブへの置き換えを行なっている。

 第2世代ドライブはデータ転送レートが倍になったことが最大の特徴だが、データ転送モードがPIOモードのみのサポートだった第1世代ドライブ(PIO Mode 2)に対し、第2世代ドライブはDMAモード(Multiword DMA Mode 1)がサポートされているなど、細かな改良も行なわれている。筆者にとってSuperDiskドライブ、とりわけ第2世代のドライブは、欠かせない常用デバイスとなっている。

 SuperDiskドライブで一番残念なのは、内蔵ATAPI版の入手性がそれほど良くない、ということだ。筆者の自宅から近い新宿エリアではほとんど購入できず(PCカードやUSB経由の外付けドライブなら買える)、秋葉原まで出かけねばならない。秋葉原でも、扱っている販売店は限られる、というのが実状だ(その理由の1つは、内蔵ATAPI版のSuperDiskがリテールパッケージとしてはほとんど流通しておらず、もっぱらバルク扱いになっていることだろう)。そこで、筆者は常時1台は予備をストックしておくことにしていた。

 ところがある時、実験マシンを1台増やした関係で予備を使ってしまった。次に秋葉原に出かけた際に、予備を補充しようと思ってSuperDiskドライブを探したのだが、どうしても見つからない。秋葉原から内蔵ATAPI版SuperDiskドライブが消えてしまった。

 この理由は、すぐにピンときた。昨年秋に発表された第3世代の薄型ドライブ(1/2インチ厚)に製造が切り替わってしまい、1インチ厚の第2世代ドライブ(LKM-F934-1)の供給がストップしてしまったのである。昨年秋のWorld PC Expoで、製造元の松下寿電子工業の方にお会いした時、ゆくゆくは第3世代の薄型ドライブを用いた内蔵モデルがリリースされる予定であるとは聞いていた。が、1/2インチ厚の薄型ドライブを、通常の3.5インチベイにインストールするにはアダプタが必要になる。そのアダプタの製作に若干時間がかかるだろう、ということだった。

 もし、内蔵ATAPI版のSuperDiskが入手できないというのであれば、内蔵Zipに切り替えるということも考えられる。が、それにはすべてのマシンに取り付けられたSuperDiskドライブを全部切り替えねばならず、無視できないコストがかかる。そのうち必ず出てくる、ということを信じて、しばらく待つことにした。

●ようやく内蔵型のドライブを試用

外観は通常のドライブのように見える ベゼルをはずすとドライブの薄さがわかる 背面のコネクタは通常のタイプに変換されている

 その内蔵ATAPI版の第3世代SuperDiskドライブをようやく試用する機会が得られた。今回試用したのは、まだ製品ではないものの、限りなくそれに近いものとのこと。残念ながらパナソニックブランドで提供される予定は今のところないものの、近いうちにサードパーティからパッケージとして販売される見込みとのことである。

 この内蔵ATAPI版ドライブだが、そんなわけで現時点では名前が分からない。BIOSで認識するデバイス名は「LS-120/240」だが、上述のLKM-F934-1もBIOS的には「LS-120 Ver5」と認識されており、おそらくドライブとしての型番ではないハズだ。しかし、呼び名がないのは不便なので、ここでは内蔵ATAPI版の第3世代SuperDiskを“LS-120/240”と仮称することにしたい。

 LS-120/240だが、外見はごく普通のドライブのように見える。が、フロントベゼルを外すと、ドライブ自体は半分の厚みしかないことが分かる。ドライブ背部のコネクタも、変換基板を用いて、ごく一般的なものに変えられている。

実験マシンの構成
MotherboardIntel D850GB (BIOS P13)
CPUPentium 4 1.4GHz
Memory256MB PC800 RIMM
GraphicsWinFast GeForce3 TD
LAN3COM 3C905-TX
SoundYamaha YMF744B
HDDDiamondMax Plus 60 40GB
DVDPioneer DVD-116
OSWindows 2000 SP2
 早速、このドライブを別表のような構成の実験マシンにインストールしてみたのだが、LS-120/240をLS-120ドライブとして正しく認識してくれない。ATAPIデバイスとしては認識しているのだが、システム起動可能なARMD-FDD(FDD互換のATAPI RemovalMedia Drive)として認識しないため、システムを起動することができないのである。

 同様な問題は、第2世代のSuperDiskドライブが出た時も経験しており驚きはしないが、困ったものだ。可能なら、Intelのサポートに問題を報告したいところだが、まだ市販されておらず、型番さえ分からないデバイスでは、それもできない。ただ、OSが立ち上がってしまえば、普通に使えることから、今回はこの状態でテストすることにした。ただしOSでの認識も、「3.5インチFD」ではなく、「リムーバブルメディア」になってしまう。なお、LS-120/240のデータ転送モードは、Multiword DMAMode 2であった(Intel ATA Driver 6.1を組み込み、付属のCompanionユーティリティで確認)。

 まずテストしたのは、とりあえずデバイスドライバやユーティリティを組み込まない状態(OSはWindows 2000 SP2)だ。現状では必ずしも条件を満たしていないものの、基本的にはブートデバイスである以上、デバイスドライバがないと動かない、というのでは役に立たない。比較には、第2世代のSuperDiskドライブ(倍速、LKM-F934-1)と、第1世代のSuperDiskドライブ(等倍速、MF357G)の2台を用意した。

デバイスドライバを組み込まない状態でのテスト
ドライブLS-120/240LKM-F934-1(第2世代)MF357G(第1世代)
240MBメディア *1186秒(3分6秒)N/AN/A
120MBメディア *1525秒(8分45秒)363秒(6分3秒)562秒(9分22秒)
1.44MBメディア*241秒45秒87秒(1分27秒)

*1 65個のCABファイル(Windows 98)約109MB(114,426,842byte)のコピー
*2 Windows 98 Second EditionのMINI1.CAB(1,457,664byte)のコピー

 その結果だが、ちょっと困ったことになった。120MBメディアを用いたテストで、LS-120/240の成績が振るわないのである。何度か試してみたが、明らかに第2世代のドライブより遅い。ストップウォッチで計測しなくても、体感できるレベルの差がある。ところが、通常のFDのテストでは、ほぼそれぞれのドライブのスピンドル回転数にほぼ比例した結果が出ている。LS-120/240のスピンドル回転数が1,500rpmなのに対し、LKM-F934-1は1,440rpm、MF357Gは720rpmである。

 これに対し、LS-120/240のみが利用できる240MBメディア(実際の記録容量は229MB)を用いると、また違う結果となる。120MBメディアの時と同じ量のデータのコピーが半分以下の速度で完了する。というより、120MBメディアの時に最速だった第2世代ドライブの半分といって良い時間だ。しかし、240MBメディアの記録密度(99.5kbpi)が、120MBメディアの記録密度(45kbpi)の倍であることを考えれば、これくらいの性能が出て当たり前。逆に言えば、LS-120/240での120MBメディアの成績が悪すぎる、ということになる。

 そこで、今度はドライバやユーティリティ類をちゃんと組み込んでみることにした。また、せっかくドライバを組み込むのだから、動作にドライバが不可欠な外付けUSBドライブ(LK-RF240UZ)もテストしてみた。だが、結果はデバイスドライバを組み込まない状態でのテストより、わずかに良くなる(ドライバのキャッシュによるものと思われる)ものの、劇的な改善は見られない。120MBメディアの読み書きは、かなり時間がかかっている(念のためメディアのフォーマットも行なってみたが、「劇的」というほどの改善はなかった)。また、USBの外付けドライブは、なぜか240MBメディアの成績が極端に悪く、120MBメディアと結果が逆転してしまった。

デバイスドライバを組み込んでのテスト
ドライブLS-120/240LK-RF240UZ (USB)
240MBメディア *1183秒(3分3秒)570秒(9分30秒)
120MBメディア *1516秒(8分36秒)483秒(8分3秒)
   〃460秒(7分40秒) *3 
1.44MBメディア*241秒45秒 *4

*1 65個のCABファイル(Windows 98)約109MB(114,426,842byte)のコピー
*2 Windows 98 Second EditionのMINI1.CAB(1,457,664byte)のコピー
*3 メディアをターゲットドライブで再フォーマット
*4 明らかに書込みキャッシュが有効なため、アクセスランプ消灯までの時間を計測した

 ひょっとすると、こうした結果になっている理由の1つはマザーボード(BIOS)にあるのではないか。そう考えてマザーボードをAOpenのAX4T(Intel 850)に変えてみたが、やはり結果は同じ。120MBメディアの結果が極端に悪い、という傾向はやはり変わらなかった(ちなみにAX4TでもWindows 2000での認識はリムーバブルメディアのままだが、システムブートは可能)。

異なるマザーボードでのテスト(AX4Tドライバなし)
240MBメディア *1194秒(3分14秒)
120MBメディア *1500秒(8分20秒)
1.44MBメディア*241秒

*1 65個のCABファイル(Windows 98)約109MB(114,426,842byte)のコピー
*2 Windows 98 Second EditionのMINI1.CAB(1,457,664byte)のコピー

 というわけで、現時点でのLS-120/240は、必ずしも筆者の要望をすべて満たしてくれるものではない。システム起動の問題は、いずれBIOSの対応により解消すると思うが、120MBメディアでの性能が第1世代のドライブと大差ないというのは、結構痛い。筆者のように第1世代からずっと使ってきたユーザーは、手元に120MBメディアのストックがあるからだ。240MBのメディアが使えれば、15分程度の動画も書き込めるなど、新しい用途も考えられるものの、手持ちのドライブを全部LS-120/240に切り替えるには、結構なお金と時間がかかる。ほかに選択肢がない以上は、このドライブに切り替えていくしかないのだが、移行のプロセスはゆっくりとしたものにならざるを得ないだろう。

 逆に、これから新規に購入するユーザーなら、120MBメディアで性能が振るわないことは問題にならないかもしれない。現時点で240MBメディアと120MBメディアの実売価格は100円程度しか変わらないため、わざわざ120MBメディアを購入する理由がないからだ。また、今回は触れることはできなかったが、第3世代のドライブには一般的な1.44MBのFDに、追記式に32MB のデータを書き込む32MB FDと呼ばれる機能が追加されており、付加価値は高まっている(問題は、このフォーマットが第3世代のSuperDiskでしか読めないことだが)。BIOSの問題さえ解消すれば、大容量のリムーバブルメディアでシステムを起動する必要のあるユーザー(あまり多くはないかもしれないが)には、悪くない選択だと思う。

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【元麻布】1.44MB FDを32MBで使える新しいSuperDisk
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010207/hot128.htm

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(2001年7月25日)

[Text by 元麻布春男]


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