元麻布春男の週刊PCホットライン

1.44MB FDを32MBで使える新しいSuperDisk


●新ドライブを試用

 昨年10月に開かれたWORLD PC EXPOで参考出品された240MB対応のSuperDisk(SuperDisk 240MB)が、1月31日正式に発表となった。2月23日から発売されるのは、USBに対応した外付けユニットであるLK-RF240UZ。専用の240MBメディアは、ドライブと同時に日立マクセルが発表を行なったほか、イメーションも同型のドライブとメディアの提供を発表している。

 ずっと、このコラムを読んでいただいている方なら、筆者がWORLD PC EXPO会場でSuperDisk 240について取材する機会があったことを覚えていることだろう。今回その縁で、LK-RF240UZを試用する機会があった。残念ながら、まだファームウェアが最終版でないこと、240MBメディアが手元にないことなどにより、ベンチマークテストは別の機会に譲るが、LK-RF240UZをちょっと触ってみた印象を述べたいと思う。


●ノートPC用に最適化された設計

 現物を手にとってのストレートな印象は、小さいなぁ、ということ。筆者は以前からSuperDiskドライブを多用しており、内蔵ドライブのほか、PCカード接続の外付けドライブも持っている。外付けドライブの上にLK-RF240UZを乗せると、かなり小型になっていることが分かる。白が膨張色ということもあって、あまり小さく見えないのだが、実際の投影面積はCDケースより小さい。厚みも、ほぼCDケース2個分である。

 外見上のもう1つの工夫は、極力外部から出っ張りを排除したことだ。インターフェイスケーブルも側面に埋め込み式に格納するため、邪魔にならない。電源もこのUSBインターフェイスからのバスパワーを利用するため、かさばるACアダプタも不要だ。全般にノートPCといっしょに持ち歩くのに最適化された外付けドライブといってよいと思う。

旧型機と重ねると小ささがわかる CDケースとほぼ同じ大きさ
ケーブルも収納式 隠れているATAインターフェイス

 以上のような小型化が可能だったのは、内蔵するドライブユニットが、USBインターフェイスチップまでも内蔵した専用タイプだからだ。既存の外付けドライブの多くは、ドライブユニットそのものはATA/ATAPI対応で、ブリッジチップを搭載した外部基板を組み合わせて、外付け用のインターフェイス(USB、IEEE 1394、SCSI等)に対応することが多かった。ブリッジチップまでドライブの基板に搭載し、外部基板を不要にすることで、ドライブユニットが専用になってしまうが、外付けドライブの小型化が図れる。

 ただ、ブリッジチップを搭載したからといって、ATAPIインターフェイス自体がなくなったわけではない。しかもLK-RF240UZにはATAPIインターフェイスも残されている。本機の背面にあるINTERFACEと書かれたコネクタを開くと、ATAPIインターフェイスが表われる。コネクタの左下に小さな穴が見えるが、ここにはネジが切ってあり、ATAPIインターフェイスを利用した外部拡張モジュール(たとえばUSB 2.0対応モジュールといったあたりだろうか)の企画があることがうかがえる(もちろん、本機が売れなければ、こうした企画も日の目を見ずに終わってしまうだろうが)。


●32MBメディアの使い心地

 さて、専用メディアがないなかでも試すことができる本機ならではの新機能というと、通常の1.44MB FDに32MBのデータを書きこむ「FD32MB」機能ということになる。この機能については、昨年WORLD PC EXPOで取材したおり、このコラムでも取り上げたのでここでは繰り返さないが、かいつまんで言えば、既存の1.44MB FD用ヘッドを用いて、ギャップの狭いSuperDisk用ヘッドで読めるだけの細いトラックを残すよう重ね書きすることで、トラック数を増し、記録容量を高める、という技術だ。

 メリットは、安価でおそらく机の中を引っ掻き回せば1枚やそこらは眠っているだろう1.44MB FDを32MBのメディアとしてリサイクルできること、デメリットは記録したメディアを読み書きすることができるのが、SuperDisk 240対応ドライブに限られること、ランダムな書き換えはできず、追記型の記録に限定されること、それが理由で書き込みに専用のライティングソフトが必要になることだ。既存の(120MBメディア対応の)SuperDiskドライブも、ハードウェア的にはFD32MBに対応可能だと思われるが、残念ながらそれを可能にするファームウェアがない。また、FDに書くという気軽さが、専用ソフトを必要とすることで若干敷居が高くなるのが惜しまれるが、これは原理的にやむを得ないところだろう。

ライティングソフトの操作画面

 その専用ライティングソフトだが、SuperWriter 32と呼ばれるものが製品に添付される。今回試用したドライブに添付されていたのは最終版ではないが、極端に大きな変更は行われないものと思われる。SuperWriter 32は、きわめてシンプルなインターフェイスの書き込みソフトで、下のウィンドウに書き込みたいファイルを上のウィンドウからドラッグして、書き込みボタンを押せばいい。すでにデータが書き込まれたメディアの場合、最初から下のウィンドウに書き込み済みのファイルが表示されるから、そこに追記したいファイルをドラッグして、書き込みボタンを押せば追記が行なわれる。CD-Rのライティングソフトに似た使用感だ。

 FD32MBにWMAのオーディオデータを書き込んだ様子だが、アナログLP時代のアルバム(おおむね収録時間は40分前後)なら96kbpsのWMAでほぼ1枚が収まる。もちろん、データ転送速度は、直接FDからの再生に十分な帯域が確保されている。

通常ドライブから見た際のエラーメッセージ
 こうして書き込んだFDは、上述の通り、新しいSuperDisk 240対応ドライブでしか読み取ることができない。それでは、既存のドライブ(通常の1.44MB FD、120MB対応のSuperDiskドライブ)で読むとどのように見えるのかというと、ルートディレクトリにREADME.TXTファイルのみが存在するメディアに見える。もちろん、このファイルはテキストファイルとして開くことが可能で、32MBでフォーマットされている旨のメッセージが記されている。このような配慮をすることで、FD32MBメディアが未フォーマットのメディアと誤認され、誤って消去される事故を防いでいる。

 今回試用したのは外付けのUSBドライブであるため、一般にシステムの起動を行なうことはできない。念のため、手元にあるマザーボードのうち、BIOSのBoot Deviceの項にUSB FDDという選択肢を持つGigaByteのGA-7ZXと組み合わせて、システム起動が可能かどうか試してみたが、やはり起動できなかった。USBストレージからのシステム起動は、そもそもMicrosoftがサポートしていない(単純にFDからDOSの起動などリカバリブートができるか、ということだけでなく、USBストレージにページングファイル等を置くことを認めるか、というレベルで)ことであり、欠点と呼ぶにはあたらないが、せっかくのFD互換を生かすには、システム起動が欲しいのも事実だ。本機をサポートし、BIOSからのリカバリブートをサポートしたノートPCの出現が待たれるところだ。

 というわけで、今回はベンチマークテストができなかったが、近い将来、OEM向けの内蔵ATAPIドライブも試用できる予定になっている。その時には、内蔵ドライブともども、ベンチマークテストも行ないたい。

(2001年2月7日)

[Text by 元麻布春男]


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