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0.13μm版のPentium III-Mは来年頭に1.26GHzへ


●モバイルTualatinにはサブブランド「-M」がついた

 Intelは、昨日、米国ニューヨークでついにモバイル版Tualatinの概要も正式に明かした。「Intelが0.13μmプロセスのモバイルPentium III-Mや搭載ノートパソコンを世界初公開」( http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010626/pcexpo1.htm )で笠原一輝氏がレポートしている通り、製品名は「Mobile Pentium III Processor-M」となる。また、対応チップセット「Intel 830M(Almador-M:アマドール)」ファミリの概要や、次世代SpeedStep技術についても公開された。正式な製品発表はまだだが、これでモバイル版Tualatinの姿はほぼ明らかになった。そこで、今回は、モバイルTualatinについて、OEMメーカーなどからの情報をベースに、ロードマップをまず説明しよう。

 IntelのモバイルCPU全体のロードマップは、4月にこのコラムで紹介した時点からそれほど大きく変わっていない。若干のセットバックはあるが、なんとかスケジュールに沿って動いている。月曜のコラムで紹介したように、モバイルTualatinには以下の6種類の製品がある。

種別L2FSB電圧出荷
通常電圧版Pentium III-M512KB133MHz1.4VQ3前半
通常電圧版Celeron256KB133MHz?来年Q2
低電圧版Pentium III-M512KB100&133MHz1.15V9月頃?
低電圧版Celeron256KB100&133MHz1.15V来年頭?
超低電圧版Pentium III-M512KB100MHz1.1V9月頃?
超低電圧版Celeron256KB100MHz?来年頭?

 ニューヨークでの発表の通り、モバイルPentium IIIのTualatin版の名称は「-M」が後ろにつく。これは、低電圧版(LV版)と超低電圧版(ULV)版のモバイルPentium IIIでも共通らしい。サブブランドをつけたのは、対応チップセットが変わってしまうためで、ボックス品などでの混同を避けるためと思われる。つまり、モバイルPentium III-Mは、従来のIntelのモバイルチップセット(815EMや440BX)ではサポートされないし、従来のモバイルPentium IIIは新チップセット(830ファミリ)ではサポートされない。これは、815ファミリB-stepでTualatinがサポートされるデスクトップとはかなり事情が異なる。今のところTualatinベースのモバイルCeleronの名称に「-M」がつくかどうかはわかっていない。


●強気の価格設定のモバイルPentium III-M

 モバイルTualatinのうち、最初に登場するのはニューヨークでお披露目されたモバイルPentium III-Mの通常電圧版だ。これには、展示されていた1.13GHzのほか、1.06GHz、1GHz、933MHz、866MHzが登場すると言われている。モバイルPentium III-MのFSBはすべて133MHzになる見込みだ。

 OEMメーカーによると、価格はかなり強気の設定がされているという。1.13GHzで600ドルレンジ、1.06GHzで500ドルを切る程度、1GHzでようやく400ドルを切るらしい。それでも、現在のモバイルPentium III 1GHzのリストプライスは637ドルなので、そこからは価格がかなりスライドする。Intelは、まだパフォーマンスノートPCではAMDがライバルとして成長していないため、それなりに強気で攻めるようだ。

 このIntelの価格政策のため、当初は大手メーカーのTualatinノートPCはやや高付加価値品になる可能性がある。もっとも、OEMメーカーによると、同クロックの場合、CoppermineとTualatinで価格差はないという。それなのに、システムバスは100MHzから133MHzに上がり、L2キャッシュは256KBから512KBになるわけで、性能は確実にワンランク上がる。しかも、消費電力は下がる。

 そのため、同クロックだったら、Pentium III-Mの方がお買い得となる。これは、Intelが移行を積極的に促進するつもりでいることを意味している。ただし、チップセットには価格差があり、Tualatinをサポートする830M系は、440BXよりは高く設定されている。これは、デスクトップでの440BXと815系の当初の価格設定に似ている。

 Intelは、モバイルPentium III-Mのクロックを、1四半期ごとに律儀にアップさせる。秋冬商戦シーズンまでに1.2GHzを追加、さらに来年頭には1.26GHzが登場する。おそらく、第2四半期には1.33GHzが出てくるだろう。また、25Wまでの熱設計のノートPCなら、それ以上のクロックも可能だと思われる。ただし、来年第1四半期に登場するモバイルPentium 4(Northwood:ノースウッド)のクロックは1.5GHzからなので、IntelとしてはモバイルPentium III-Mのクロックをあまり上げすぎることができない。このあたりは、Intelがどう舵取りをするのかが注目される。

◎モバイルPentium 4
01Q301Q402Q102Q2
1.7GHz??
1.6GHz
1.5GHz

◎モバイルPentium III-M
01Q301Q402Q102Q2
1.33GHz?
1.26GHz
1.2GHz
1.13GHz
1.06GHz
1GHz×
933MHz×
866MHz×


●ややスローな移行ペース

 いずれにせよ、来年の第2四半期までに、モバイルPentium IIIはオールTualatinへと移行するようだ。つまり、3四半期かけて移行する。これは、2四半期程度で移行してしまった、前回の0.18μmシフトの時よりはペースが遅い。ただし、前回は0.18μm版モバイルPentium III(Coppermine:カッパーマイン)そのものがトラブルでスタートが遅れたため、急激な立ち上げになったという事情があった。新プロセス技術への移行であることを考えると、今回のシフト計画の方が正常なパターンだろう。

 また、Intelは、春頃まではTualatinと同時に、Tualatinとバスインターフェイス互換のPentium IIIであるCoppermine-Tを866/933MHzで投入するつもりだった。しかし、現在はモバイルPentium III-MはオールTualatinで提供されることになっているという。

 Intelは、モバイルPentium IIIをTualatin化してから、モバイルCeleronのTualatin化に入る。OEMメーカーによると、来年第2四半期の1GHz版モバイルCeleronからTualatinベースになるという。おそらく、来年一杯でモバイルCeleronも完全にTualatin化するだろう。それは、来年の秋冬までには、IntelベースのフルサイズノートPCが、10万円台のバリュー製品も含めてすべて1GHz化してしまうことを意味している。

 また、Intelは第3四半期からモバイルCeleronに、Coppermine-Tも投入して行く。具体的には、933/866/800/733MHzの133MHzシステムバスCeleronが登場し、それがCoppermine-Tになる。つまり、Tualatinに先行してCoppermine-Tが登場するわけだ。これは、Tualatinインターフェイスしかサポートしない830系チップセットに対応するためだと見られる。つまり、ノートPCベンダーが、同一システムでTualatinベースのPentium III-MとCoppermine-TベースのCeleronの両方を載せられるようにするということだ。

 低電圧(LV)版と超低電圧(ULV)版のPentium III-Mの投入は、通常電圧版からやや遅れて秋頃になる見込みだ。Pentium III-M LVはまず800MHzで登場し、やはり1四半期ごとにクロックを上げてゆくようだ。また、システムバスは133MHzと100MHzの2バージョンが用意される。これはチップセットとして830Mのほかに440MXでもTualatinをサポートするためだ。440MXはIntelチップセットの中ではもっとも消費電力が低いため、IntelはTualatin時代でもこれを継続して提供せざるをえない。そして、830Mは133MHzシステムバスのみ、440MXは100MHzシステムバスのみをサポートするため、Pentium III-M LVも2種類のシステムバスサポートになる。

 それに対して、Pentium III-M ULVは100MHzシステムバスのみとなる。これは、チップセットが440MXしか想定されていないためだ。クロックは9月に登場するのが700MHz、来年登場するのが750MHzになる見込みだ。また、モバイルCeleronのLV版とULV版は、どちらも来年頭にTualatinへと移行が予定されている。LV版とULV版については、次回のコラムで詳しく解説する。


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(2001年6月27日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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