大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

第7回:2,000円台のOffice スイート「ThinkFree Office」が、日本上陸


 2,000円台の超低価格Office スイートが、国内販売されることになった。

 米ThinkFreeシンクフリー・ジャパンおよびインフォース(森田啓史社長)が、7月12日に発売を予定している「ThinkFree Office」がそれである。

 米国では昨年9月に、ダウンロードのみで販売を開始、これまでに40万本の出荷実績をもつ。

 すでに日本語版、韓国語版が用意されており、日本語版は、シンクフリー・ジャパンを通じて4,950円でネットワークによる販売が試験的に行なわれていたが、「10MB以上の容量があることから、ブロードバンド環境が整っていない日本でのダウンロードは現実的ではない」として、今回、新たにインフォースと販売契約を結ぶことで、パッケージ版を用意、価格は2,680円(予価)と戦略的な価格設定とし、市場でのシェア拡大を狙う。

 ThinkFree Officeは、ワープロソフトのThinkFree Write、表計算ソフトのThinkFree Calc、プレゼンテーションソフトのThinkFree Showの3本で構成される。いずれも、MicrosoftのWord/Excel/PowerPointに酷似したインターフェイスとなっており、Microsoft Officeの操作に慣れたユーザーはまったく違和感なく操作できるというメリットがある。

インフォース 森田啓史社長
 画面の雰囲気は、まさにOfficeそのもので、著作権問題にも抵触するのではと疑問を持ちたくなるほど。

 同社では、「米国においてすでに半年以上もの販売実績があるのにも関わらず、Microsoftから何も申し入れがないこと、WindowsとMacintoshの画面の類似性の訴訟問題をはじめ、操作画面の類似性という点で敗訴するという判決事例がないこと、さらに、米国において数多くの投資家などが、この点が問題とならないことを調査し認識した上で投資を行なっている事実などから、利用者は安心してもらっていい」とコメントしている。



ThinkFree Office画面キャプチャ

 ただし、機能的な制限がいくつかある。

 「基本的な機能は、Microsoft Office 95/97程度だと考えてほしい。必要な機能だけを低価格で提供するという点に開発コンセプトを置いた製品」(森田社長)としており、Office 2000やOffice XPで作成した図表や、テンプレートなどが一部表示できないといった問題もある。

 また、同製品は、Javaで書かれていることから動作速度が遅い点、インライン変換ができないなど、若干の「慣れ」が必要な部分もある。

 また、同ソフトには独自の拡張子として、「.wrf」、「.clf」、「.shf」を使用する一方、データセーブ時に、それぞれ、Microsoft Officeの拡張子設定をデフォルトで用意している。だが、Officeの拡張子でセーブした場合も、Microsoft Office上で完全に再現できないといった問題もあるという。

 いずれにしろ、2,000円台の低価格で、一通りのOfficeの機能を搭載しているという点は驚きだといっていいだろう。

 販売目標は、初年度10万本。パッケージ販売のほか、パソコンメーカーへのバンドルなどでも商談を開始したというが、一部の販売関係者の間では、「MicrosoftのOffice XPが、プロダクトアクティベーションの採用により、実質2台までのインストールしかできないため、3台以上利用しているパワーユーザーが補助的にThinkFree Officeを利用するといった使い方もできるのではないか」として、前向きな取り扱いを検討している例もある。

 動作環境は、Windows版がPentium 166MHz以上、Windows 95以降で動作。メモリは64MB以上、12MB以上のHDD空き容量(テンプレート集などを使用するにはさらに10MB程度の空き容量が必要)。Macintosh版は、Power PC G3以降およびMac OS 9以降、96MBメモリが推奨環境。Power PC、Mac OS 8、64MBメモリでも一応の動作は可能。

 インフォースでは、今年9月以降、Linux版の投入を予定、さらに将来的には、PDAや携帯電話でThinkFree Officeを利用可能とするブラウザなどを投入する予定。

 「次期製品では、Mac OS Xでの動作確認も済んでいる。Java2対応とすることで、さらに操作性も高まるだろう」という。

 ただし、次期製品では、若干価格が引き上げられるほか、データの格納が可能な20MBのサーバースペースの無償提供が行なわれる一方で、ダウンロード販売に移行する可能性もあるという。

□インフォースのホームページ
http://www.inforce.co.jp/
□シンクフリー・ジャパンのホームページ
http://www.thinkfree.co.jp/



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(2001年6月19日)

[Reported by 大河原 克行]


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