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史上最強の3Dグラフィックスチップとなるか?
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3Dグラフィックスチップ市場をリードするNVIDIAは、2月のIntel Developer Forum(IDF)の会場近くにおいて、これまでNV20のコードネームで呼ばれてきたGeForce3を発表した。GeForce3の前世代にあたるGeForce2 GTSは、2000年4月のWinHEC2000の会場で発表されているので、約1年たって新しいアーキテクチャのチップへ移行したことになる。既に秋葉原では複数のビデオカードメーカーからGeForce3を搭載したビデオカードが発売されており、今回はその中の1つであるPROLINKのMVGA-NVG20Aを取り上げて、GeForce3の描画性能に迫ってみよう。
●全くの新アーキテクチャとなるGeForce3
NVIDIAは昨年のGeForce2 GTS以降、GeForce2 MX、GeForce2 Pro、GeForce2 Ultraという3製品をリリースしているが、GeForce2 MXはバリューPC向けの廉価版、GeForce2 Pro、GeForce2 UltraはGeForce2 GTSのコア/メモリ高クロック版となっており、ビデオチップ自体のアーキテクチャに手を入れたものではなかった。しかし、今回登場したGeForce3は、GeForce2 GTS/Ultraとはチップのアーキテクチャ自体が異なっており、大きな機能拡張がいくつか行なわれている。
その目玉となるのは、マルチメディア系のAPIであるDirectX 8で搭載された3Dの機能をサポートしていることだ。その代表的な機能が頂点シェーダとピクセルシェーダだ。頂点シェーダはハードウェアT&Lエンジンに、頂点データ(頂点の座標、頂点色、法線ベクトル)をプログラムして処理する機能を付加するもので、ピクセルシェーダとは、レンダリングエンジンにピクセルの陰影をプログラムして処理できるようにするAPIのことだ。
ゲームベンダはこれらを利用することにより、3Dゲームなどでより複雑な環境マッピング、水面、人の肌などをよりリアルに表現できるようになる。GeForce3では、この頂点シェーダやピクセルシェーダなどの機能がハードウェアレベルでサポートされている。NVIDIAではこれらの2つの機能をサポートしたエンジンを「nfiniteFXエンジン」と呼んでおり、これらを利用すれば大幅なパフォーマンス向上が期待できるとしている。
しかし、これらの頂点シェーダやピクセルシェーダは、DirectX 8から新たに追加された機能で、現在リリースされているゲームタイトルでサポートしているものは皆無といってもよい。これらの機能は、CPUの拡張命令セットと同じで、ソフトウェア側がサポートしていなければなんの意味もない。例えば、IntelのPentium 4プロセッサではストリーミングSIMD拡張命令2(SSE2)という命令セットをサポートしているが、ソフトウェアがサポートしていなければ、これらの特徴を生かすことはできない。GeForce3の頂点シェーダやピクセルシェーダも同じ事で、本当の意味でGeForce3の本領を発揮させるにはこれらの機能を利用したソフトウェアが必要になると言えるだろう。
●NVIDIAのリファレンスデザインを元にしたMGVA-NVG20A
MGVA-NVG20A |
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ところで、本ボードのデザインは、NVIDIAがリファレンスデザインとしてOEMメーカーに対して配布しているデザインガイドに沿ったもので、ミニD-Sub15ピン、Sビデオ端子、チップ、メモリの配置などは他製品と大きな違いはない。最近ではどのビデオカードメーカーもビデオチップメーカーのリファレンスデザイン通りに作ってくるので、どのカードを見ても金太郎飴のように同じデザインになってしまっている。ドライバもNVIDIAのリファレンスドライバをそのままバンドルしているところがほとんどで、本製品も例外ではない。これでは、各カードの差は、せいぜい付属ソフトと価格ということになってしまう。
そうした事情を反映してか、本製品には付属ソフトウェアとして、DVD再生ソフトウェアのCyberLink PowerDVD 3.0とビデオ編集ソフトウェアのUlead VideoStudio SE 4.0がバンドルされている。DVD再生ソフトウェアのPowerDVDはともかく、ビデオキャプチャポートがない本製品にVideoStudio SEがバンドルされているのは不思議に映るだろうが、おそらく他社と少しでも差をつけるべくこうしたソフトウェアをバンドルしたのだろう。
●DirectX 8対応/非対応のアプリケーションでも性能向上
今回はGeForce3のパフォーマンスを計測するのに、3つのベンチマークテストを利用した。2Dの描画性能を計測するためにWinBench99 Version 1.3に含まれるBusiness Graphics WinMark99とHigh-End Graphics WinMark99を利用し、現状でDirectX 8でサポートされた新機能(頂点シェーダ、ピクセルシェーダ)に対応した唯一のソフトウェアと言える3DMark2001、そしてQuakeIII Arenaのdemo001を利用したフレームレート計測という3つのベンチマークを行なった。
今回比較対象として用意したのはGeForce2 MX、GeForce2 GTS、GeForce2 Ultraの各チップを搭載した3枚のビデオカードだ。利用したドライバはGeForce3に関しては製品に添付されていたNVIDIAのリファレンスドライバ(バージョン4.13.01.1101、日付2001/4/12)を利用したが、GeForce2 MX/GTS/Ultraの各製品に関してはNVIDIAのWebサイトに公開されていたDetonator3の最新バージョンを利用した。
NVIDIAのビデオドライバはユニバーサルドライバになっており、基本的に最新のドライバであれば古い世代のビデオカードにも利用することができる。実際、今回本製品に付属していた最新リファレンスドライバをGeForce2 MX/GTS/Ultraで利用することも可能だが、NVIDIAがこのドライバを正式には公開していないため、ユーザーは本製品を買わなければこのドライバを入手することはできない。最新ドライバをGeForce2 MX/GTS/Ultraで使いたいために本製品を購入するというユーザーはいないだろうから、今回はGeForce2 MX/GTS/Ultraに関してはDetonator3の最新版でベンチマークを行なうことにした。
なお、繰り返しになるが本製品に添付されていたドライバをGeForce2 MX/GTS/Ultraに利用することは技術的には可能であるので、参考までに本製品に付属のドライバで計測した結果も掲載しておく。
【動作環境】
GeForce2 MX | GeForce2 GTS | GeForce2 Ultra | GeForce3 | |
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製品名 | GLADIAC MX | ABIT SILURO GF256 GTS | 3D Blaster GeForce2 Ultra | MVGA-NVG20A |
コアクロック | 175MHz | 200MHz | 250MHz | 200MHz |
メモリクロック | 166MHz | 333MHz | 460MHz | 460MHz |
ドライババージョン | 4.12.01.0650 | 4.12.01.0650 | 4.12.01.0650 | 4.13.01.1101 |
ドライバ日付 | 2000 12 4 | 2000 12 4 | 2000 12 4 | 2001 4 12 |
CPU | Pentium 4 1.7GHz | |||
マザーボード | Intel D850GB | |||
チップセット | Intel850 | |||
メモリ | PC800(256MB) | |||
ハードディスク | IBM DTLA-307030 | |||
OS | Windows 98 Second Edition+DirectX 8a |
結果は見てわかるように、2DのGraphics WinMarkに関しては差はほとんどない。3DMark2001の結果だが、明らかにGeForce3がGeForce2 MX/GTS/Ultraを上回った。3DMark2001には、DirectX 8でサポートされた新機能(頂点シェーダやピクセルシェーダ)をサポートしないと実行されないテスト項目があるが、GeForce2 MX/GTS/Ultraではスキップされたこれらの項目がGeForce3ではきちんと実行された。
また、QuakeIII Arenaでも、GeForce2 Ultraに比べてパフォーマンスアップがあることがわかる。どの解像度でもパフォーマンスアップが確認されており、DirectX 8に対応していないアプリケーションでも効果はないわけではないと言える。
【WinBench99 Version 1.3】
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Geforce2 MX GeForce2 GTS GeForce2 Ultra GeForce3 |
【QuakeIII】
以上のように、GeForce3の真価はDirectX 8の新機能に対応したアプリケーションを利用してこそ見えてくるが、既存の3Dアプリケーションでも性能向上が望めないのかといえばそんなことはなく、GeForce2のハイパフォーマンス版といってもよい描画性能を実現している。 ただ、問題となるのはGeForce3搭載ビデオカードの価格だろう。今回取り上げたMGVA-NV20Aをはじめ、GeForce3を搭載したビデオカードはいずれも5万円前後になっており、はっきり言って高い。現在、Intel、AMD両社の最も高クロックなCPUはPentium 4 1.7GHzとAthlon 1.33GHzだが、Pentium 4 1.7GHzは4万円台半ば、Athlon 1.33GHzに至っては2万円台半ばで購入できることを考えると、3Dだけでなくほかのアプリケーションでも高速化が期待できるCPUに投資をしたほうが、得られるメリットは大きいと言える。今回は見送って、次世代を待っていればその頃にはDirectX 8の新機能をサポートしたゲームも出そろうだろうし、あわてて今購入する理由はほとんどないと言える。そうした意味ではたまにゲームをやる程度の一般的なユーザーであれば、最新ドライバがNVIDIAから配布されるようになるのを待って、それで我慢するのが賢い選択だろう。 しかし、ヘビーゲーマーであれば、わずかなパフォーマンスアップでも、ゲームの快適度に与える影響は小さくない。PCの使用はほとんどがゲームというユーザーであれば、検討してみる余地があると言っていいだろう。
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(2001年5月11日)
[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング] |