短期集中連載

MPEG-2キャプチャユニットレビュー
第1回:Windows 2000に新たに対応したSmartVision Pro for USB


 2000年12月に掲載したビデオキャプチャカードレビューの第2弾です。今回は、新たにWindows 2000に対応したNECの「SmartVision Pro for USB」と、USBに対応したアイ・オー・データ機器の「USB-MPG2TV」、クリエイティブメディアの「VideoBlaster MovieMaker」を紹介します。

 全3回予定の第1回は、Windows 2000に対応した「SmartVision Pro for USB」を解説します。(編集部)


●新たにWindows 2000に対応

 NECの「SmartVisionPro for USB」といえば、USBインターフェイス、TVチューナ、ハードウェアMPEG-2エンコーダを搭載という、最近ではあたりまえとなったTVキャプチャ製品の基本スペックを初めて実現した製品だ。同種の製品が数多く登場した現在でも、なお製品としての競争力を失っていないことからもわかるように、その登場時から製品としての完成度は非常に高く、魅力的な製品であった。PC Watchでもすでに何度か紹介されている製品ではあるが、最近になってまた、いくつかの機能アップがなされた新しいソフトウェアが登場したので、この新機能について紹介しよう。

 今回の新機能はいくつかあるが、なんといっても最大の目玉は、動作環境としてWindows 2000が新たに加わった点にある。言うまでもないことだが、USBはWindows 98/MeばかりでなくWindows 2000でもサポートされるインターフェイスだが、ことTVキャプチャ製品に関して言えば、Windows 2000に対応した製品はこれまでは決して多いとは言えなかった。たしかにビジネス向けを標榜するWindows NT/2000系列に、パーソナル用途であるTV視聴・録画が必要かという議論はある。だがタイマー録画や長時間録画など、信頼性を要求されることの多いTVキャプチャ製品では、Windows 2000というプラットフォームは、Windows 98/Me系列よりもむしろ適していると言える。


●セットアップは面倒

 Windows 2000対応ソフトであるが、NECが公開するダウンロードサイト(http://121ware.com/download/module/)から、モジュール番号「2911」でダウンロードできる(2001/4/25現在)。モジュールは2つ用意されており、1つはSmartVision Pro for USBの付属ソフトをセットアップする前に実行して、レジストリ等のクリーンアップを行なうモジュール(仮にこれを[1]とする)。もう1つは、インストール済みの付属ソフトをWindows 2000対応にアップグレードするためのモジュール(これを[2]とする)である。

 インストールの手順としては、(1)の実行、SmartVision Pro for USBのCD-ROMをインストール、(2)の実行という3ステップになる。インストール手順を説明するHTMLファイルもダウンロードできるので、この指示の通りに進めていけばトラブルは発生しないが、この手順は正直言ってかなり面倒だ。

 インストールする際は、Administrator権限をもつユーザーで実行することが必要だ。またインストールに使用したユーザーID以外のユーザーは使用できないので、一般的なWindowsアプリのように、Administratorでインストールして、ほかの一般ユーザーIDで使用する、といったスタイルは使えない。多少不満も残るとはいえ、パーソナル用途という製品の性格を考えれば、なんとか許容できる範囲ではある。

 付属ソフトウェアは、基本的にはWindows 98対応版と同様だ。ただ同製品の場合、PCIボード版はすでに製品自体がバージョンアップして「SmartVisionPro2 for PCI」になっているわけだが、今回のアップグレードではこの「2」相当の機能を新たに含んでおり、アップグレード後は「SmartVisionPro2 for USB」とでもいうべき機能に変化する。

 この「2」で加わった新機能とは、

 ・SmartVision/EPGの機能強化(EPGウィンドウの最大化に対応)
 ・遠隔録画予約サービスによるインターネットまたはiモード経由での録画予約

 の2点がメインだ。EPGウィンドウの最大化はともかく、iモード経由での遠隔地からの録画予約は、使い勝手の向上には役立つだろう。この部分以外のソフトの外見、使い勝手に関しては基本的にこれまでとまったく変わらない。よって詳細については、昨年末の拙稿(http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20001226/tvcap2.htm)を御参照いただきたい。

TV視聴ソフト、SmartVision/TVの画面。常にスリップモードにあるという伝統は変化していない。文字放送による字幕を画面内に表示することも可能(画面ははめこみ合成) 機能が強化されたSmartVision/EPG画面。ウィンドウサイズの設定が自由になり、一覧性が向上している


●サスペンド状態からの自動復帰録画が可能

SmartVision/EPGにおける電源管理の設定。予約実行後サスペンドまたは休止状態に移行できる。もちろん録画予約時刻の5分前には自動復帰する

 ただ、同じとはいってもプラットフォームがWindows 2000になったがゆえの変化もある。たとえばキャプチャ先のフォルダは「My Pictures」の下がデフォルトとなるといったOSならではの変化もあるが、特筆したいのは、動作の安定性と軽快性だ。特にこの製品の場合、TV視聴は常にスリップ再生モードになっているため、負荷の軽さと安定性とは、まさに死活問題となる。Windows 98で評価した際には、TV視聴中にほかのアプリを起動したりして負荷が高くなると、TV画面の動きが悪くなったりすることがあったが、Windows 2000で使った場合には、そういった現象はほとんど発生しない。

 今回テストした環境は、基本的には年末に行なった評価記事の執筆時と同じ環境であり、マザーボードがP3B-F、CPUはPentium III 850MHz、HDDはUltra DMA/33接続と、もはや前時代のものといっても良い環境だ。にもかかわらず、軽快かつ安定して動作するというのは、おそらくWindows 2000のタスクスケジューリングの効率の良さによるのだろう。ただし、SmartVision/TVの起動時間(約30秒)や、録画ボタンを押してから録画が開始されるまでの時間(約11秒)というのは、あいかわらず遅い。

 Windows 2000の恩恵はもう1つある。録画予約の際、サスペンドからの自動復帰と録画予約後のサスペンドモードへの移行がサポートされた点だ(この機能はWindows Me上でもサポートされる)。サスペンドからの復帰は、録画予約時間の5分ほど前に行なわれ、録画が終了すると再びサスペンド状態に入るように設定できる。ADAMS-EPG方式の場合、決まった時間にEPG受信を行なわなければならないが、このEPG受信もサスペンドからの自動復帰、受信後再びサスペンドという設定が可能であり、常にPCの電源が入りっぱなしになることはない。

 筆者が試した限りでは、サスペンドからの復帰や録画は正常に行なえたのだが、録画開始時間が、本来設定したものより若干遅くなり、先頭15秒ほどが録画できずに欠けてしまった。これはSmartVision/TVの起動の遅さが主な原因であると思われる。もっともこれは、録画開始時間を多少早めてしまえばよいだけの話なので、それほど問題になるとは思えない。実際、録画予約の動作は確実で、かなり信頼できそうな印象であった。

 ハードウェアは変化していないので、キャプチャ画質については基本的に前回と同等と考えて良いだろう。そのため今回はTVチューナ経由でのサンプルムービーは用意せず、外部ビデオ入力(S端子接続)からキャプチャした画像のみを用意した。

MPEG-2の再生環境はビデオカードや、ドライバ、OS、再生ソフトによって異なるため、掲載したMPEG-2画像の再生の保証はいたしかねます。また、編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。

SBUSB.MPG(6MB)


●BIGLOBEアカウントが必要となる遠隔予約

 iモードおよびインターネットからの遠隔予約だが、これはPCI版と同様、利用するにあたってはプロバイダであるBIGLOBEのアカウントが必要となる。また録画予約データは、1日最大3回、BIGLOBEにアクセスして取得する。この場合問題になるのは、ダイアルアップルーターやフレッツISDN/ADSL, CATVインターネットなどは使用できず、かならずPCから直接BIGLOBE宛てにダイアル接続しなければならない点だ。

 すでにBIGLOBEにアカウントを持っているのならいいが、TV録画のためだけにBIGLOBEのアカウントを取得しなければならない上、接続形態まで限られ、さらに1日3度のアクセスによる電話料金の負担までかかってしまうのでは、筆者としてはあまり魅力を感じない。

遠隔予約は、BIGLOBEのIDを使って、1日3回ダイアルアップする。直接ダイアルアップ以外使えないので、IP常時接続できる環境を持っていても、電話料金が必要になるのは残念 文字放送受信など、多彩な楽しみ方ができるのも魅力


●総合的には魅力的なアップグレード

 前回、各社のTVキャプチャ製品を評価した際のまとめとして、筆者はこの種の製品に求められる以下の4つの条件を挙げた。

 1. Windows 2000で動作する
 2. 普段はスタンバイ状態で、タイマー録画の際には自動復帰して録画できる
 3. 録画予約ごとに、録画時の画質を設定できる
 4. 録画した結果は、アナログビデオ出力もできるので大画面TVで視聴できる

 これらの中でも1と2の条件が、今回実現されたのは非常に大きい。この条件は使い勝手に大きな影響を与えるからだ。実際、これだけの機能と信頼性が実現されていれば、筆者としても安心して薦めることができる。最古参ではあるが、まだまだ後出の製品には負けない、そんなメーカーからのメッセージを感じさせる、非常に価値のあるアップデートといえるだろう。

□関連記事
【2000年12月26日】MPEG-2 TVチューナ内蔵キャプチャカードレビュー
導入編:MPEG-2のエンコード方式とTV録画機能
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20001225/tvcap1.htm
レビュー編その1:USB MPEG-2キャプチャユニットとオールインワンビデオカード
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20001226/tvcap2.htm
レビュー編その2:ソフトウェアエンコーダとハードウェアエンコーダ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20001227/tvcap3.htm

(2000年4月25日)

[Reported by 天野 司]


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