短期集中連載

MPEG-2 TVチューナ内蔵キャプチャカードレビュー
レビュー編その1:USB MPEG-2キャプチャユニットと
オールインワンビデオカード


 全3回でお送りしているMPEG-2キャプチャカードレビューの第2回です。
 今回は、USB MPEG-2キャプチャボックス「SmartVision Pro USB」と「エスケイネット WinTV PVR for USB」、オールインワンビデオカード「ATI Technologies ALL-IN-WONDER RADEON」のレビューをお送りします。また、記事の最後には実際にキャプチャした動画を掲載していますので、あわせてご覧下さい。(編集部)

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NEC SmartVisionPro USB エスケイネット WinTV PVR for USB ATI Technologies ALL-IN-WONDER RADEON


●ハードウェア環境

 TV受信・録画製品に限らず、ビデオキャプチャ製品は一般に動作環境について厳しい指定が加えられることが多い。その中でも最も顕著なのが、マザーボードのチップセットに対する制約である。たとえば「VIAやSiSのチップセットではうまく動作しない場合もある」、「Intelチップセット以外での動作は保証しない」という製品など、ほかの拡張ボード類には類をみないほど制約が多い。チップセット以外にも「ほかと共有しない単独のIRQが必要」、「UltraWide SCSI接続のHDDが必要」といった条件を持つ製品も存在する。ビデオキャプチャ専用にPCを組むならともかく、すでに持っているPCをキャプチャ用途として転用するような場合には、かなり厳しい制限だ。

 ここまで厳しい制約が加えられる原因は、ビデオキャプチャという作業の特殊性にある。ビデオキャプチャでは、1.キャプチャボード自身がバスマスタとなってキャプチャデータをメモリに転送する、2.オーバーレイ表示のためにキャプチャボードからグラフィックボードへのDMAが行なわれる、3.HDDへの書き込みのためにHDDコントローラがバスマスタとなってデータ転送を行なう、など多くのデバイスが同時にバスマスタとなる。しかも、これらが転送するデータは巨大であることがほとんどだ。特にPCIからAGPへのDMA転送などは、ビデオキャプチャ以外ではまず発生しない、特殊なデータの流れといえるだろう。つまりビデオキャプチャはPCIやAGP、あるいはディスク入出力インターフェイスなど、PCが持つバスシステム全体に対して非常に負荷が高く、しかも各デバイス間のバランスのよい転送が求められる作業なのである。

 これから先は筆者の想像の域を出ないが、おそらくこうした「極限状況」におけるバス調停のバランスは、Intel 440BXチップセットの頃が最も優れており、それ以降に登場したチップセットでは何らかのアンバランスな部分があるのではないだろうか。440BXはAGPの転送モードはAGP 2Xモードまでしかサポートしないし、PIIXEのIDEインタフェースは、ATA/33が上限だ。これに対して、最近のチップセットではAGP 4XモードやUltraATA/100といった高速な転送がサポートされる。だがPCIの速度は440BXと同様、32bit/33MHzでかわらない。

 ここから想像されるのは、最近のチップセットでは、一部のインターフェースを高速化するあまり、PCIなど旧来のバスの転送がおろそかになり、またバランスが崩れつつあるのではないか、という点だ。複数のデバイスが連動して動く環境では、ある特定のデバイスだけ高速化されることが、逆にシステム全体のパフォーマンスを落とすこともある。

 例えば以前に筆者が体験したトラブルでは、AGP 4Xモードでグラフィックボードが動作している際にはうまく動作しなかったキャプチャボードが、グラフィックボードの設定をAGP 1Xモードにしただけで問題なく動くようになったということがある。また似たような例で、HDDの転送モードをUltraATA/100からUltraATA/33に制限しただけで、キャプチャ時のコマ落ちが減ったという経験もある。いずれの対策も、転送速度を低下させる方向に変更しているわけで、感覚的には逆効果に思える。だが結果的にトラブルは解消しており、これはもはや、全体的なバランスが向上した点がよかったとしか(少なくとも筆者には)考えられない。

 現在のPCで一般的な、32bit/33MHzというPCIバス性能は、もはや現在のPC性能からすればかなり「鈍足」の部類に入るバスだ。大量のデータ転送が発生するビデオキャプチャ作業では、わずかなバランスが崩れるだけでシステムの動作が破綻する可能性も考えられないことではない。おそらくBXチップセットで安定する製品が多いのは、このチップセットが長期に渡って使われ、バランス的にベストにあるためではないかと思える。

 これはあくまで筆者の推測であり、確たる証拠があるわけではない。だが筆者の経験、メーカー技術者への取材結果、そして各製品の具体的な対応状況、いずれをとってみても、少なくともビデオキャプチャ作業において安定した動作を望むのであれば、440BXチップセットを使うのが最適であることは疑いようのない事実だ。

 こうした状況を踏まえて、今回各製品をテストする環境は、以下のようにした。

【テスト環境】
 マザーボード : ASUSTek P3B-F
 ビデオカード : カノープス SPECTRA 8400
 CPU     : Pentium III 800MHz (FSB=100MHz×8)
 メモリ    : PC100 512MB (256MB×2)
 SCSI H/A   : AHA-2940U2W
 HDD(システム): Western Digital WD272AW
 HDD1(単体)  : Maxtor 98196H8
 HDD2(RAID)  : Comtech VHR-6000MT(Maxtor 98196H8×6)

 マザーボード、CPU、メモリについてはもはや説明の必要もないだろう。440BXチップセットを用いたまさに磐石といってもよいシステムだ。マザーボードの設定も基本的だが、PCIバスのパフォーマンスに大きな影響を与える「PCIーBUS Latency Timer」についてはBIOS設定で64としてある。このLatency Timerとは、1つのバスマスタデバイスが1度のトランザクションでバスを占有し続けることのできる最大値のことである。これを大きくするほど1つのデバイスがバスを占有し続けられる時間が長くなる。結果としてバススイッチの頻度が低下し実効データ転送速度は向上するのだが、反面、ほかのデバイスへのバス明渡しが遅くなるので割り込みに対するレスポンスなどが低下するという欠点もある。

 キャプチャ先のHDDに関してはATA接続の単体HDDと、SCSI接続のRAIDユニット、2通りについてテストを行なった。これは440BXチップセットが最大でUltraATA/33までしか利用できないため、SCSI接続で超高速なHDDを利用した場合と差がでるかどうかを判断するためだ。

 ハードウェアRAIDユニットは、DV編集用として筆者が最近新たに導入した製品で、RAIDベンダーとしてよく知られる台湾InforTrendのATA to SCSIユニットだ。性能的にはUltraATA/66のHDDを6台内蔵可能、これをインターフェース変換してUltra160 SCSIでホストと接続する。特にビデオ編集向けに特化された製品で、サステイン性能で80MB/sを優に超える転送速度を叩き出す。これは複数ストリームのDVリアルタイム編集はもちろんHDTV(ハイビジョン)非圧縮ビデオストリームの転送にも利用できるということを示している。今回のようなTV録画には価格、性能ともに明らかなオーバースペックなのであるが、あえて各製品の実力が100%発揮できるように利用してみた(残念ながら筆者のテスト環境には、適当なSCSI-HDDが存在していなかったというのも一因であるのだが)。ただ今回のテストでは、やはり手持ちの機材の関係でUltra160ではなくUltra2 Wideでの接続となっている。

 各製品の画質比較用としては、DVカメラ「ソニー DCR-VX1000」で撮影した画像を素材として利用した。ただしTVチューナの画質評価もかねているため、素材はDVCAMデッキ「ソニー DSR-30」で再生し、これをVHSビデオデッキに内蔵されたRFコンバータを用いて2chのTV信号として出力したものを受信、キャプチャしている。


●SmartVision Pro USB

NEC SmartVisionPro USB
 NECのSmartVisionPro for USBは、製品名からもわかるようにUSBに接続するタイプのTV受信・録画機能ボックスだ。白とブルーという涼しげなカラーを基調にしたボディは、外見から想像されるよりもずっと重たい。縦横どちらでも設置可能となるよう、縦置き横置きそれぞれに対応した「足」が用意されている。

 ユニット前面には外部入力用の音声(RCAステレオ)、コンポジットビデオ端子、S入力端子、それにパワースイッチが用意されており、後部にはUSB端子、アンテナ入力用F型コネクタ、それにACアダプタ接続用の電源コネクタが配置される。USBバスパワードで動作しないのはやや残念なところだが、同様の構成を持つWinTVR for USBでもACアダプタが必須であるところをみると、おそらくこの構成はバスパワーでは電源容量が足りないのであろう。もっとも、ACアダプタやアンテナ線などはすべて背面にまとめられており、前面のビデオ外部入力を使わないのであれば、設置にはそれほど大きな面積は必要としない。

外部ビデオ入力端子を備えた本体前面(左)と、アンテナ、USBを備えた本体背面(右)

 テレビチューナは地上波のみ対応で1~62chの範囲で受信可能で、日本国内仕様の音声多重放送およびステレオ放送にも対応する。エンコードはもちろんハードウェア方式で、エンコードチップとして米GlobeSpan製iTVC12が採用されている。

図1 TV表示・録画ソフト「SmartVision/TV」。画面ははめこみ合成による
 TV放送の視聴および録画には、専用ソフト「SmartVision/TV」を使用する。やや装飾過剰な感のあるデザインのウィンドウだが、ウィンドウサイズは自由に変更することが可能で、TV画面だけをフルスクリーン表示することもできる。ただ、TV表示画面の下に一直線にならぶ操作ボタン群は、ウィンドウサイズを縮小することで右側から順に隠れていくようになっており、スクロールしなければすぐには押すことができない。常にウィンドウサイズを最大化している場合には良いが、そうでない場合には操作が面倒だ。

 スリップ再生(製品では「タイムシフト」と呼んでいる)はもちろん可能だ。というよりは、この製品の場合、再生は常にスリップ再生状態になっており、ユニットから送られたMPEG-2データは、どんな場合でもかならずHDD内の一時ファイルに蓄積されるようになっている。そのため、PC画面上に表示される画像は、リアルタイムのTV放送に比べて常に数秒程度遅れて表示される。

 このような構成のためか、ハードウェアエンコード方式でありながらHDDやCPUへの負荷は意外なほど高い。さらにTV視聴中にほかのアプリケーションを起動するなどしてHDDやCPUに負荷がかかり再生が間に合わなくなると、リアルタイム放送とPC画面上の表示の時間差は次第に大きくなってくる。こうした動きは、わかってはいてもかなり奇異な感じがする。

 録画時の画質は、このSmartVision/TVから設定することはできない。これには専用の「画質調整ツール」を利用する(図3)。ただこのツールでも「動き優先」「画質優先」など、感覚的な表現で4段階の設定が行なえるのみで、どの程度のビットレートになるのかは明らかにされていない。デフォルトは画質が最優先されるようになっているが、この状態でキャプチャされたファイルは、720×480ピクセル/MPEG-2/6Mbps相当となっているようだ。

図2:スリップ再生の設定。SmartVisionPro USBでは、常にスリップ再生モードになっており、リアルタイム再生モードはない 図3:画質調整ツール。ビットレートなどは明らかにされていない

 SmartVision/TVでの録画は、一度の録画でファイルが4つずつ作成されるようになっている。このうち3つはSmartVision/TVが用いる管理情報ファイルであり、残る1つがキャプチャされた動画ファイルの実体である。この実体ファイルは、拡張子がMPEG-2プログラムストリームを示す「m2p」となっており、もちろんこの状態でもSmartVision/TVを用いれば録画済みファイルの再生は可能だが、これを「mpg」に変更すれば(もちろん適当なMPEG-2デコーダが必要となるが)メディアプレーヤーなどでも再生可能なMPEG-2ファイルが得られる。また付属のビデオ編集ソフト、Ulead VideoStudio 4.0 SE Basicを使ったビデオ編集も可能だ。

 EPG機能は、ADAMS-EPG方式を採用する。EPGを用いた録画予約は非常に簡単で使いやすいが、やはり現状での最大の欠点はEPGデータが放送されている時間帯にPCが起動されており、かつEPG受信プログラムが動作していなければならないという点だろう。

図4:ADAMS-EPG機能で表示される番組表。録画したい番組をクリックすることで、録画予約ができる

 特にこの製品の場合、最低でも一度はEPG受信が行なわれていないと大部分の機能が利用できない。EPG放送は、日中なら1時間に1度程度、夜間は2時間に1度、深夜に至っては放送が行なわれない(23時の放送が最終)。筆者のように「夜間になってからおもむろに使い始める」といった場合には、なにも操作ができず途方に暮れることになる。もっとも、一度受信できればそれ以後は問題ないので、購入した当日に注意すればよいだけのことではある。キャプチャ画質はデータを見て判断していただきたいが、色にじみが多く見られ、またシャープネスが多少低めとなっているところが筆者の目には気になる。

 本製品の魅力は、なんといってもUSBという手軽さと、その多機能性にある。ここでは紹介できなかったが、単なるTV視聴・録画以外に、Bitcastブラウザによるデータ放送受信、文字放送受信、ビデオ編集ソフト付属によるビデオ編集機能など、付属ソフトは非常に充実している。こうしたさまざまな機能に興味を持つ場合には魅力的な製品といえるだろう。

 なお、本原稿執筆後、テレビ朝日データの方からご指摘を頂いた。曰く、ADAMS-EPGによるEPGデータは近日中にインターネットからも取得可能になる予定であり、本原稿で記述したような問題は解消する予定である。またADAMS-EPGデータを受信可能な人口は、現時点においてもCATV利用者も含めて人口カバレージ率で96%とのこと。従って、ADAMS-EPGを利用できない例は、0ではないとはいえほとんど存在しないとのことである。昨日の記載内容を訂正するとともに、ご指摘に感謝したい。


●WinTV PVR for USB

エスケイネット WinTV PVR for USB

 エスケイネットのWinTV PVRシリーズにはUSB版/PCI版の2製品があるが、これらはいずれも米国Hauppauge Computer Works, Inc.の開発による。このうちUSB版は、先に紹介したNECのSmartVisionPro USBと同様、外付けの単体ボックス品で、製品パッケージにはHauppaugeのロゴがそのまま印刷されている。

 ケースは丸みを帯びた薄型の箱状で、CDケースを3枚重ねた程度のサイズ。コネクタ配置は、背面にはUSB端子、ACアダプタ端子、アンテナ入力のF型コネクタが配置され、前面には外部ビデオ入力用のコンポジット端子、S端子、オーディオ端子が配置されており、はからずもNECの製品とほとんど変わらない構成になっている。ただその形状から、SmartVisionPro USBのような縦置き設置はできない。

SmartVisionPro USBと同様、前面に外部入力端子、背面にアンテナとUSB端子、ACアダプタ用端子を備える。本体の形状から縦置き設置は不可能

 TVチューナは、地上波放送およびCATVに対応するもので、日本国内仕様の音声多重およびステレオ放送に対応する。エンコーダーチップは、NEC製品と同じGlobeSpan製iTVC12で、ビットレートも最大6Mbpsであるから、ハードウェア仕様的には非常に似通っている。仮に画質に差が出るとすれば、チューナ部やアナログ回路部の差ということになるだろうか。

 TV視聴およびキャプチャは、WinTV2000と呼ばれるアプリケーションを使用する。

図1:WinTV 2000の画面。TV表示画面ははめこみ合成による

 ウィンドウの構成は、TV表示画面以外の各パーツがコンパクトかつダーク系の色調でまとめられており、相対的にTV画面が目立つようになっている。さらに設定によってTV画面以外のパーツを非表示にしたウィンドウ状態も利用できるし、もちろんTV画面だけをフルスクリーン表示にすることも可能だ。ウィンドウサイズも自由に変更できる。リサイズや移動といったウィンドウ操作に対するレスポンスはかなりよいのだが、USBユニットとのレスポンスが悪いためか、各種設定時の操作、チャンネル切り替え、ソフトの起動時などは、レスポンスが悪い。とりわけ起動時は毎回10秒ほどの時間かかかるため、かなりイライラさせられた。

 このWinTV 2000は、通常時にはリアルタイムでTVを表示する「TVモード」として動作しており、スリップ再生を行なう場合には「Pauseモード」、TV録画を行なう場合には「Recモード」にモード切替を行なう必要がある。TVモードとはいえ、ユニット内でMPEGエンコードしたものをUSBで転送、PC内でデコードしている関係上、リアルタイムのTV放送とPCでの表示には2~3秒程度のタイムラグがある。

 PauseモードとRecモードでは、ウィンドウ下部に専用のコントロールボタンが表示される。このモード切替時にも、毎回初期化を行なうために7~8秒程度の待ち時間が必要であり、こちらもかなり気になる。とはいえ、一度Pauseモードに入ってしまえば、一時停止や再生などは非常にスムーズで画質もかなり良好だ。

図2:PauseモードとRecモードでは、WinTV2000の下部に、専用の操作ボタンが現われる。TV表示画面ははめこみ合成 図3:Recモードで現われる操作ボタン

 特に気になるのが、Recモードでの録画の際、実際に録画ボタンを押してから録画が開始されるまでの時間だ。テスト環境では、なんと7秒程度ものタイムラグがあった。録画を終了する際にも多少のタイムラグが存在するため、キャプチャのタイミングを測るのには非常に苦労させられた。USB経由のMPEGキャプチャ製品にそこまでのレスポンスを期待するのは酷ではあるが、せめて録画開始時くらいはもう少しレスポンスを向上させてほしいと感じる。

図4:画質設定画面。ビットレートの表示が「MB/s」になっているのは修正してほしい
 録画時の画質はプルダウンメニューから選択する形式で、最高画質の設定は720×480ピクセル/MPEG-2/6Mbpsとなる。このほか720×480/4Mbpsや360×240/2Mbpsなど使用頻度の高い設定が揃っている。352×240/1.5MbpsというMPEG-1でのキャプチャも可能だ。細かいことだが、画質設定のプルダウンメニューで、ビットレートの表示が6.0MB/sとなっているのは、ぜひ修正してほしい。

 EPG機能は、現在のバージョンでは一切備わっていない。ただしiEPGに対応予定ということなので、早期の対応に期待したい。

 キャプチャ画質は、6MbpsのMPEG-2としてはかなり良好に感じられる。少なくとも筆者の目には、同様のハードウェア構成であるSmartVisionPro USBよりは良好に感じられる。付属ソフトもレスポンスが悪い点を除けば全体的な使い勝手も悪くない。手軽かつ高画質にTV視聴・録画を楽しみたい人にはお薦めできる製品だ。


●ALL-IN-WONDER RADEON

ATI Technologies ALL-IN-WONDER RADEON
 グラフィックボードにビデオキャプチャ機能を組み合わせた製品は多々あるが、さらにTVチューナ機能まで搭載した製品といえば、ATIのALL-IN-WONDERシリーズが有名だろう。ALL-IN-WONDER RADEONはシリーズ最新作にあたり、2D/3Dアクセラレータとしてもトップクラスの性能を誇るRADEONを搭載した製品だ。

 ATI TechnologiesのMPEG-2ビデオキャプチャボードとしては、昨年登場したALL-IN-WONDER 128や同128 Pro、あるいは昨年登場予定とされていながら発売が無期延期となってしまったVIDEO-WONDERがある。特にこのVIDEO-WONDERは、ハードウェアMPEG-2エンコーダを搭載する予定であったということでかなり期待されていた製品なのだが、その期待がフイになった分、今回のALL-IN-WONDER RADEONに期待する人も多いだろう。なお当然のことではあるが、本製品のテスト環境だけは、グラフィックボードとしてほかで使用しているSPECTRA 8400ではなくALL-IN-WONDER RADEONを使用した。

 ALL-IN-WONDER RADEONには、グラフィックチップであるRADEONと32MBのDDR SDRAMが搭載されており、ビデオ関連ではTVチューナ、それにNTSC/PALのエンコード/デコード機能を持つマルチメディアチップ「ATI RAGE THEATHER」が搭載される。接続コネクタ類は、グラフィック出力がDVI、アンテナ入力が通常のF型コネクタとなっており、ビデオ/オーディオ関連の入出力は複合コネクタによって、それぞれ一般的な入出力端子に変換されるようになっている。またALL-IN-WONDER自体には、アナログオーディオのキャプチャおよび再生能力はなく、PC本体のサウンド機能を利用する。そのためサウンドボードと内部接続するためのコネクタがボード上に用意されている。

カードエッジにはDVIコネクタとアンテナ端子、ビデオ入出力用の複合コネクタを備える ボックス型のビデオ入力用コネクタ ビデオ出力用はケーブル分岐したケーブルになっている

 ALL-IN-WONDERに搭載されたTVチューナはユニバーサル仕様であり、日本国内のTV放送はもちろんCATV受信にも対応する。ただし従来製品同様、日本国内仕様の音声多重放送およびステレオ放送には対応しない。そのためTV受信およびキャプチャは常にモノラル仕様となる。北米仕様の音声多重に対応しているため、ソフトウェアだけをみるとステレオ機能が使えるように感じられるだけに、余計に残念な仕様といえる。

 TV受信・録画機能には、専用ソフト「ATI TV」を利用する。このATI TVは今回のRADEON版からスリップ再生機能も新たにサポートするようになり、他製品と比較して見劣りしないようになった。今回紹介した他製品とは異なり、TV表示画面とコントロールボタン類は独立しており、TV画面と操作パネルとを別々の位置に表示させることもできる。またTV表示は、マルチメディア機能を得意とするATIだけあって、拡大してもかなりきれいで見やすい。チャンネル切り替えに対するレスポンスもよく、さすがにUSB接続の製品とは一味違うと感じさせる。通常再生モードとスリップ再生モードは、ユーザーが明示的に切り替える必要があるが、この切り替えも比較的高速な部類だと言えるだろう。

図1:ATI TVの画面。RADEONチップのおかげで拡大しても表示はきれいだ。画面ははめこみ合成による 図2:スリップ再生中は、操作パネルのデザインが変化する

 録画時のフォーマットは、MPEG-2のほか、MPEG-1やATI VCRと呼ばれる独自フォーマットなどさまざまなものが選択できる。MPEG-2フォーマットの場合でも、最大15Mbpsという高いビットレートでのキャプチャや、IBP各ピクチャの構成を自由に設定できるなど、カスタマイズ範囲は非常に広い。こうした点はやはりソフトウェアエンコード方式ならではのメリットだろう。高い圧縮率は望めないが、フレーム単位での編集が行ないやすいIピクチャのみのキャプチャも行なえる。

 もっとも、高いビットレートでキャプチャをしようと思うと、やはりCPUに対する要求は厳しくなる。テスト環境であるPentium III 800MHzでは、6Mbpsならば余裕でキャプチャできたが、8Mbpsや10Mbpsといった高いビットレートでは場合によってやや苦しくなる場面もあった。たしかに高いビットレートでは画像自体はきれいになるが、コマ落ちして動きがぎくしゃくしてしまっては元も子もない。このへんは、利用する環境によっていろいろ試してみる必要があるだろう。またコマ落ちするかしないかギリギリのあたりでは、やはりIDEよりもSCSI接続のHDDの方が有利であった。

図3:MPEG-2のパラメータ設定。編集に向くIピクチャのみのMPEGも作成できる 図4:設定可能なビットレートは最大15Mbpsにものぼる。ただし要求されるCPUパワーも高い 図5:スリップ再生で用いた一時ファイルを、MPEGファイルとしてエクスポートすることもできる

 サンプルファイルのキャプチャは、ほかと条件をあわせるため6Mbpsの設定で行なっている。この状態でもなかなかシャープで良好な画質ではあるが、Y/C分離の精度は他製品と比較してあまり良くないようで、ドット妨害がかなり目立つ。EPG機能は、北米仕様に対応するソフトが付属しているが、これも当然日本国内では使えない。ステレオ放送に対応しない点とあわせて大きなマイナスポイントだ。

 ALL-IN-WONDER RADEONは、良くも悪くもグラフィックボードと一体になっている点が一番のポイントだろう。TV受信・録画機能を利用するためにグラフィックまで交換することを良しとするか否かが、大きな選択ポイントとなる。


●キャプチャしたMPEG-2サンプル動画

 最後にそれぞれの製品で実際にキャプチャした動画を掲載する。動画はいずれも720×480ピクセル/6Mbps相当でキャプチャを行なった。本文とあわせてご覧頂きたい。

MPEG-2の再生環境はビデオカードや、ドライバ、OS、再生ソフトによって異なるため、掲載したMPEG-2画像の再生の保証はいたしかねます。また、編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。

SmartVisionPro USB
5.56MB
WinTV PVR for USB
5.43MB
ALL-IN-WONDER RADEON
5.78MB

(2000年12月26日)

[Reported by 天野 司]


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