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Pentium III Dステップの正体は「Coppermine-T」
--いよいよ始まる0.13μm移行の準備


●Dステップへ移行するCoppermine

 IntelがPentium III/Celeron(Coppermine:カッパーマイン)のステッピングアップを行なう。現在のC0ステップから、D0ステップへ第1四半期から第2四半期にかけて移行して行く見込みだ。OEMメーカーによると、Intelはこれまで同様、全てのPentium III/CeleronをDステップに替えるつもりだという。すでにサンプルはOEMに渡っているそうだ。

 このあいだ、C0ステップに替えたばかりなのに、またメジャーステッピングチェンジ? その理由は、Intelが今年中盤に0.13μm版Pentium III(Tualatin:テュアラティン)の投入を予定しているからだ。すでに、一部のCPUウオッチングサイトではレポートされているが、Coppermine Dステップの正体はTualatinとインターフェイス互換のCoppermine-Tだ。Coppermine-Tのフィーチャが組み込まれたのがDステップであり、従来のCoppermineとはシステムバスの設計が異なっている。

 Intelは、Tualatinからシステムバスのアーキテクチャを変更、バスの電圧を現在の1.5Vの「AGTL+」から1.2Vの「AGTL」へと下げ、クロッキングも現在のシングルエッジクロッキングから、位相の異なるクロックを入力するディファレンシャルクロッキング方式もサポートできるように変える。Coppermine-T(=Dステップ)は、このTualatinへの移行のために開発された。つまり、従来のCoppermineのシステムバスと、Tualatinバスの両方をサポートするのがCoppermine-Tだ。Coppermine-Tは、TualatinバスのマザーボードでもCoppermineバスのマザーボードでも、どちらでも自動認識して動作する。


●もともとはAlmadorとセットだったCoppermine-T

 本来Coppermine-Tの目的は、チップセットがTualatinインターフェイスベースに移行してしまった時にも対応できるCoppermineを作ることだった。もともとのプランでは、Tualatinが登場する時には、チップセットはTualatinしかサポートしない「Almador(アマドール)」に移行してしまっているはずだったからだ。Almadorマザーボードには従来のCoppermineを挿すことができない。だから、両対応のCoppermine-Tをリリースして架け橋にしようとしていたのだ。

 ところが、デスクトップでAlmadorプランが中止になり、Tualatinには815系チップセットのBステップに対応することになってから状況が違ってきた。815 BステップではCoppermineとTualatinにいちおう両対応(クロッキングはシングルエッジになる?)する「ユニバーサルマザーボード」を作ることができる。そのため、Coppermine-Tは不要になってしまったのだ。ユニバーサルマザーボードにCoppermine Dステップを挿しても、Coppermineとして動作するという。

 ところが、モバイルとサーバー&ワークステーションではそうではない。この2つのエリアでは、チップセットがTualatinしかサポートしないものへ移行してしまう。だからCoppermine-Tがやはり必要となる。そのため、Dステップは、デスクトップでは単なるCoppermine Dステップだが、モバイルとサーバー&ワークステーションではCoppermine-Tになるという変則的な展開となる。Coppermine-Tになるというのは、Coppermine-Tとしてバリデイトされるという意味だ。


●複雑なCPUとチップセットの対応

 このCPUとチップセットの関係はちょっとごちゃごちゃしてわかりずらいので整理してみよう。下が推定される対応マトリックスだ。

◎プラットフォーム別Tualatin対応
CoppermineCoppermine-TTualatin
デスクトップ
i810系×
i810系Q1'02以降版
i815系×
i815系B-Step
モバイル
i440系×
i440MX(マイナーチェンジ)
i815系×
i815系B-Step○?
i830M(Almador-M)×
サーバー&ワークステーション
i820×
ServerWorks LE3○?
ServerWorks HE-SL×○?
Micron Copperhead×○?

 ?マークがついているのは不明な部分で、機能的にはサポートしているはずだが、バリデイトされるかどうかはわかっていないものも含まれる。これを見ると、Coppermine-TならなんでもOKで、またi815系B-Stepならデスクトップは何でもOKだということがわかる。市場流通しているCoppermineも挿せるようにしようと思ったら、デスクトップでは815系B-Stepというソリューションが確かに便利だ。

 一方、モバイルではTualatinバスしかサポートしないチップセット「Intel 830M(Almador-M:アマドールM)」が登場するため、様相は異なる。i815系は急速にi830Mに置き換えられ、Tualatinバスが主流となるようだ。そのため、Pentium IIIもCeleronも、Coppermine-Tへ急速に移行する。これは、Tualatin化を急ぐのと、インターフェイス電圧の低いTualatinバス(AGTL)の方がモバイルにはいいと判断しているためかもしれない。


●バリューPC向けにはIntel 815G/EGが登場

 デスクトップでは、このほか、Intelは今年の秋冬モデル向けに「Intel 815G」と「Intel 815EG」チップセットを投入するという。これはAGPインターフェイス抜きの内蔵グラフィックスしか使えないi815のバージョンで、IntelはこれをバリューPC向けに投入するつもりでいるようだ。下のチップセットの機能表を見ればわかる通り、i815G/EGの基本機能はi810E/E2をカバーする。とすると、最終的にはi810E/E2を置き換える役目を果たすことになるだろう。

 i815G/EGは当初はTualatinのサポートはバリデイトされない。これは、低価格につけるi815G/EGをPentium IIIプラットフォームに使ってほしくないためもあるだろう。Tualatinをサポートするのは来年第1四半期以降となる。もっとも、i810E/E2も来年第1四半期以降はTualatinサポートのバージョンが登場する。遠からずi815G/EGに取って代わられるのに、わざわざこんなバージョンを作るのは、おそらく組み込み市場への提供もにらんでの話なのだろう。

◎デスクトップチップセットの機能比較
Tualatin対応内蔵ビデオAGPICH2FSB 133MHz
i815E×
i815××
i815EP××
i815E B-Step
i815 B-Step×
i815EP B-Step×
i815EG××
i815G×××
i815EG Q1'02以降×
i815G Q1'02以降××
i810E2××
i810E×××
i810××××
i810E2 Q1'02以降×
i810E Q1'02以降××


●早まったCeleronのTualatin化

 こうしてみると、Celeronプラットフォームは来年第1四半期にはTualatin対応が済むことがわかる。そのため、遅くとも第2四半期にはCeleronはTualatinへと切り替わり始めると見られる。IntelはPentium 4の普及を当初の計画よりかなり前倒しにしているため、来年第1四半期にはPentium系はすべてPentium 4に切り替わる見込みだ。おそらく、Pentium III→Pentium 4の切り替えが完了次第、CeleronをTualatinコアに切り替え始めるのだろう。バリューPC市場の競争もそれだけ激しくなっているからだ。逆を言えば、このTualatinベースCeleronのスケジュールが早まったために、i815G/EGが登場してきた可能性が高い。

 ちなみに、PC業界関係者によると、Intelは来年前半にバリューPC向けのグラフィックス統合チップセットの次期バージョンを投入する計画も持っていたという。もともと、TualatinベースCeleronは、この次期チップセットで対応する予定でいたようだ。この次期チップセットがどういう内容でいつ登場するのかはまだわからない。しかし、機能的にはAlmador(i830)のAGP抜き版相当のものになる可能性が高いと思われる。i810もi815もグラフィックスコアの設計は古くなりすぎているため、Intelは早急にAlmadorに搭載する予定の新グラフィックスコアを、ローエンドまで持ってくる必要があるからだ。


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(2001年2月13日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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