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第83回:続・海外ローミングサービスで選ぶISP |
今回は頂いたメールを元に、さらに海外ローミングサービスについて調査をしてみた。国内のモバイルアクセスに関しては、さまざまなインターネット雑誌で取り上げられているが、海外情報となると実状が今1つ掴みきれないところもある。米国に関しては日本からAPに電話するなどして簡単なビジー率調査も行なってみた。
●本当にSo-netでいいの?
前回、僕は米国でのローミング接続が無料で、かつ350カ所のAPが米国内にあるSo-netを利用することにすると宣言した。So-netが米国で提携しているISPはXO Communicationsという会社で、(So-netの案内では350カ所だが)現在はAPの数も450カ所にまで拡大している。
XO Communicationsの米国での評判というのは、身近な米国居住者に利用者がいないためよくわからないのだが、ISPの規模としては決して小さなものではなく、自前のブロードバンドインフラを持つちゃんとした会社ではあるようだ(米国Yahoo!の株式情報などから同社の会社概況などを参照できる)。
しかし、本当にSo-netでいいの? というメールが届いた。内容は「実は12月9日から21日まで、ダラス、インディアナポリス、シアトル、タンパ等を歴訪したのですが、ベーシックサービスの電話が繋がらず、泣く泣くプレミアムを使用しました」というものである。
実はまだ無料になる前のこと、僕もSo-netのベーシックサービスを利用したことがあり、何度か話し中を経験したことがあった。しかし、無料化に伴ってローミングで利用する米国のISPを調査したところ大丈夫そうだと考えてSo-netを選んだ。だが、12月9日と言えばつい最近のことだ。もし、上記のような大都市圏でも回線数が足りていないのであれば、とても安心して利用できない。
ちなみにベーシックサービスというのは無料でアクセスできる米国ローミングのサービス名称で、1分50円かかるプレミアムサービスもSo-netでは利用できる。プレミアムサービスは非常に高価だが、以前に紹介したAT&T World Netと同じようにフリーダイヤルでインターネットに接続できるのが特徴である。が、高額すぎるため通常はあまり利用することはないだろう。ただ、APの電話番号を調べ忘れた時には便利なので、念のため電話番号だけは控えておいた方がいい。
そこでMSN Messengerの無料国際電話機能を使いAPへと電話をかけまくってみた(MSN Messengerを使うアイディアは山田祥平氏にアドバイス頂きました)。米国でAPが混むと思われる夜7時から11時ぐらいまでを目処に、ニューヨーク、サンフランシスコ、サンノゼ、ロサンゼルス、シアトル、ダラス、デンバー、オーランドといったところに、1時間ごとに電話をかける調査を平日と週末に行なってみた。
しかし、調査のためにかけた電話番号で話し中になることは一度もなかった。現在ラスベガスで開催中のCESには、So-netを海外で利用している友人が二人出かけているのだが、多くのダイヤルアップユーザーが集まっているだろうラスベガスでも話し中はないという。まだ断定するにはサンプリング数が少なすぎるかもしれないが、どうやらXO Communicationsは十分な回線数を用意しているようだ。
なお、実際に接続した時の快適度に関しては、13日からのオーランド取材で確かめてみることにしたい。So-netのほか、AOLとInfosphereについてもアカウントを取得し、接続してみるつもりだ。
●AOLも場合によってはベストかもしれない
一方、「当社でもAT&Tを利用しており、1月に出張に出る者(PCに弱く、自分で設定出
来ない)がいるため非常に助かりました。読んでいなければ、繋がらない、どうすれば良いのかと国際電話が掛かって来たことと思い、早めに(とは言ってもあと半月ありませんが)知ることができました。出張に出る者は自分で設定変更できないため(現在フリーダイヤルの番号1つに、外線用、内線発信用数種類を作ってダイヤルしています)、どうしたものかと途方に暮れているところです。」というメールも頂いた。
ちなみに、AT&T World Netからローミングサービス内容変更のお知らせが郵送で届いたのは、年末ギリギリのタイミング。前回の記事を書き終わった後である。年末年始の混乱した時期に、そんな案内がハガキで会社に届いても気付かないまま出かけてしまうケースもあるだろう。
と、今さら愚痴を言ってもしかたがないが、電話番号1つで全米をカバーできることは、個人利用で単に“便利”というだけではなく、インターネットへ接続のリテラシーレベルが高くない職場で利用する上でも非常に有用ということだ。
Windowsのダイヤルアップネットワークは、ダイヤルの仕組みや各国の事情をよく知っていれば、非常にわかりやすいと僕は思っているが、一方、そうした知識がない(そうした知識を普段利用する必要のない)人たちにとって、あまり使いやすいものではない。逆にそうしたユーザーには、初心者も対象にした専用ダイヤラーの方が親しみやすいのではないだろうか。
ということで、僕個人としては専用クライアントをできる限り排除するため避けているアメリカオンライン(AOL)も、今回のケースでは検討していいのではと思う。AOLは言うまでもなく米国最大のパソコンネットワークサービスで、アクセスポイントの数はおそらく米国で一番多いだろう。
またAOLは欧州にも現地法人が数多くあり、AOLのネットワーク内に設置されているAPならば、どこを利用してもローミング料金は無料だ(一部、AOLネット以外のAPも存在しており、それを利用する場合はローミング料金が必要)。
電話番号1つでアクセスできる旧AT&T World Netのローミングサービスよりは使い勝手に劣るものの、AOLクライアントであれば、初心者にも比較的説明しやすいのではないだろうか。
●利用頻度の低い人は完全従量制も
「海外出張が多いといっても、毎月行くわけではなく、月会費2,000円をはらう気にもなれないので、海外ローミングを目的として、完全従量制、または月定額が安い従量制のISPを探しました」と話す方もいらっしゃった。
この方は自宅にCATVによる常時接続環境を持っているため、国内からのアクセスはほとんど必要ないのだという。CATVやDSLの利用者でなくとも、現在利用しているISPを海外ローミングのためだけに変更できないという人は少なくないと思う。ISPのメールサービスを利用していると、メールアドレスまで変更しなければならなくなるからだ(余談だが、僕はメールアドレスでISP選択の自由が奪われるのがイヤでバーチャルレンタルサーバを借り、常に個人所有のドメインでメールが届くようにしている)。
そして月額固定部分が安価なISPとして海外接続用に選択したのが“ぷらら”だったそうだ。ぷららの海外APは41カ国206カ所とあまり多くはないが、料金は1分あたり5円と非常に安い。大都市はおおむねカバーされているので、ダウンタウンから大きくはずれた場所に宿泊しなければ大きな問題はなさそうだ。また、欧州のAPも毎分5円で利用できるため、欧州での利用頻度が高い人もお得と言えるだろう。
このほか、ぷららはワールドワイドでインターネット接続のインフラを提供しているiPassのAPも利用可能で、これを利用する場合の料金も5~25円(利用する国により異なる)と比較的安価だ。米国で繋ぎっぱなしで利用する、という使い方はできないものの、ちゃんと電話を切るのであれば、ぷららの海外ローミングサービスも、なかなか優れていると言えそうだ。
なによりぷららには月額固定料金がない完全従量制の契約が用意されているため、利用しなければ一切料金が必要ない。海外ローミングサービスの利用頻度が低い人で、とりあえず契約をしておいて必要なときだけ利用する人には向いている。
ただし、メールをくださった方はThinkPad 570+Linuxからのダイヤルアップ接続でインターネットを利用しており、その環境ではAPのモデムとの相性が悪く接続できなかったり、あるいは接続できても非常に低速で利用に耐えなかったそうだ。
もっとも、これはぷらら側の問題というより、LinuxのWinModemドライバにあると思われる。ThinkPad 570の内蔵モデムは一部をソフトウェアで処理する半ソフトウェアモデムのため、互換性の面で不安を感じるからだ。
モデムの互換性はさておき、メールの彼がセカンドチョイスとして選んだのは、意外にも@NIFTYだったそうだ。意外というのは、あまりに身近だったからだが、@NIFTYには月額固定部分が250円の契約が用意されている。ローミング料金は毎分10円と倍増する上、固定部分も250円ながら存在するので前述のような互換性の問題がないのであれば、ぷららの方がお得だが、セカンドチョイスとして心に留めておくといいかもしれない。
[Text by 本田雅一]