Click


元麻布春男の週刊PCホットライン

TVチューナ一体型ビデオカードの草分け
「ALL-IN-WONDER RADEON」


●3Dグラフィック性能は高くても困らない

 筆者が日常的に使っている仕事マシンにインストールされているビデオカードは、ATI TechnologiesのALL-IN-WONDER 128(AIW128)である。すでに2世代前になるビデオチップRAGE 128ベースにTVチューナ機能を統合したAIW128は、この種の製品としてはおそらく初めて、ソフトウェアによるリアルタイムのMPEG-2キャプチャを実現した製品だ。

 3Dグラフィック性能は、現在の最新のチップとは比べものにならないが、これで特に不満はない。筆者は決してゲームが嫌いなわけではないが、日常的にプレイするゲームといえば、Spider(PLUS!98収録のトランプゲーム)や風来のシレンといったところ。3Dグラフィック性能など全く無縁だ。バリバリの3Dゲームをやりたい時は、仕事マシンよりはパワフルな実験マシン等を使うため、とりあえず用が足りるのである。

 だが、これは常に複数台のPCが手元にある筆者の勝手な言い分かもしれない。もし手元にあるPCが1台しかなかったとしたら、もっと高い3Dグラフィック性能を持つカードが欲しくなるだろう。もちろん筆者としても、3Dグラフィック性能が高くて困るわけでは決してない。

 というわけで今回取り上げるのは、ATI TechnologiesのALL-IN-WONDER RADEON(AIW RADEON)だ。言うまでもなく、同社の最新ビデオチップであるRADEONをベースにしたTVチューナ一体型のビデオカードである。ビデオチップが変わったことに伴ない、メモリ(フレームバッファ)も、DDR SDRAM(333MHz)に変更された。また、AIWシリーズとしては、おそらく初めてファン付きのカードとなっている。

●DVI出力になったALL-IN-WONDER

 これらに増して大きな変更は、ディスプレイ出力がVGA互換の15ピンコネクタから、DVIのマイクロクロスコネクタになったことだろう。このコネクタにはデジタル信号とアナログRGB信号の両方が出力されており、そのままDVI対応のLCDディスプレイ、あるいは付属の変換アダプタ(DVI-Shrink D-Sub 15pin)を用いてアナログRGBディスプレイを接続する。変換アダプタを介すとなると、画質への影響が気になるところだが、1,600×1200ドットの解像度でも若干、文字等がやせて見える気がするが影響は極めて小さかった。

【AD-DVT15X】
 一方のDVI出力だが、残念ながら筆者の手元にDVIに対応した液晶ディスプレイがない。そこで、編集部に依頼して1台借りることにした。借用したのはADTECAD-DVT15Xだ。ADTECというと、増設メモリという印象が強いが(実際主力製品なのだろうが)、無線LANやUSB対応のストレージなど、多彩な周辺機器を発売している。液晶ディスプレイも複数ラインナップしており、DVI対応品の投入も、比較的早い時期だった。

 AD-DVT15Xは、デジタルインターフェイスのみをサポートしたスパルタン? な仕様。変換アダプタ等を用いて、アナログRGB対応のビデオカードを接続することはできない。DVIの普及度を考えると、現時点ではあまりおいしいビジネスとは思えないのだが、新しいものを先取りしようという姿勢は評価したい。現時点でAD-DVT15Xの対応確認機種はPC本体ばかりで、単品のビデオカードはリストアップされていないのだが、AIW RADEONで問題なく利用することができた。

 実際にAIW RADEONとAD-DVT15Xを接続しての感想だが、何せ筆者にとって初めて使うDVI対応の液晶ディスプレイだけに、良し悪しを論じることはできない。だからといって悪い点があったというわけではなく、むしろアナログインターフェイスの液晶ディスプレイと異なり、接続するだけで無調整で済む点は楽チンだ。前述した通り、DVIの普及は緒についたばかりだが、CRTディスプレイも含め、真のPlug and Playを実現するという点で、望ましいように感じた。

●Windows 2000も正式にサポート

 話をAIW RADEONに戻すと、ビデオチップがRADEONになったことで、前作のRAGE 128 Proを用いたAIW 128 Proに比べ、3Dグラフィック性能はおおよそ2倍に引き上げられており、3Dゲームにも十分対応できる。もう1つ、AIW RADEONで追加された新しい機能は、S/PDIFによるドルビーデジタルオーディオの出力だが、サポートしているのは同軸出力のみ。筆者の手元にあるドルビーデジタルプロセッサは光入力しか備えていないため、今回はこの機能を試すことはできなかった(付属のATI DVDプレーヤーは、サウンドカード側のS/PDIF端子によるドルビーデジタル出力はサポートしていないようだ)。なお、DVD再生に関するRADEONの新機能は、必要に応じてライン単位でBobとWeaveを使い分けるAdaptive De-Interlacing(適応逆インターレース)だが、Windows Meではこの機能をATI DVDプレーヤーがサポートしていることが確認できたものの、Windows 2000ではサポートされていないようだ。

 ソフトウェアの点で大きく変わったのは、TVプレーヤーだ。AIW RADEONに添付されているTVプレーヤーは、十分実用に堪える安定したタイムシフト再生機能を備える。タイムシフト中、あるいはいつでもタイムシフトできるタイムシフトレディ状態では、ハードディスクへの書き込みが生じるわけだが、以前紹介したNECのSmartVision Pro for USBとほぼ同じ程度の帯域(800KB/sec弱。デフォルト設定時)を消費しているにもかかわらず、AIW RADEONの方がシステムへの負荷が軽いように思う。画質の点ではSmartVisioh Pro for USBに分があるようにも思うが、PCを家電にしてしまうのではなく、PCをPCとして使いながらTVを見たりキャプチャをする、という点ではAIW RADEONの方が好ましく感じる。タイムシフト中は、画質、音質ともに、ライブ状態に比べ若干低下するものの(特に後者が顕著)、タイムシフト状態はワンタッチで解除できるため、必要に応じて使い分ければ良いだろう。

 ソフトウェアにおけるもう1つの改善点は、Windows 2000のサポートだ。これまでAIWシリーズについては、Windows 2000対応のベータ版(AIW RADEONの発売に合わせてか、このベータ版ドライバも更新された)はあったものの、正式なサポートの対象から外されていた。しかしAIW RADEONには最初からWindows 2000対応のドライバやMultimedia Centerが付属しており、上述した適応逆インターレースのサポートなど細かな点を除き、Windows 2000でほぼすべての機能を利用できる。これを待望していたユーザーも結構いるのではないだろうか。

 AIWシリーズは、TVチューナ一体型ビデオカードの草分けであると同時に、最も完成度の高い製品だ。残念なのは、最新作であるAIW RADEONでも、米国版で提供される全機能を日本語版で利用できないことだ。TV音声は米国ではステレオなのがモノラルのみの対応だし、添付されているInternet対応のEPG(ビデオ録画予約のGコードで知られるGemstarのGUIDE Plus+)も国内では利用できない。TVチューナのステレオ対応や、国内で提供されているEPG(On TV Japan等)への対応が望まれる。

 さて、3週間前に取り上げたRio 600の記事で、筆者はRio 600のバッテリについて、バックパックを装着している限り、電源スイッチを切っておいても電池が消耗する、と記した。これに対しS3の代理店から、おそらくそれは初期不良品であるせいではないか、とのご指摘をいただき、交換していただいた。その結果、電源スイッチを切っておけば、バックパックを装着していても電池が消耗することはない、ということが確認できた。ここに訂正させていただく。

バックナンバー

(2000年11月1日)

[Text by 元麻布春男]


【PC Watchホームページ】


ウォッチ編集部内PC Watch担当pc-watch-info@impress.co.jp