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2002年までのIntelのCPUコア移行計画が明らかに


●Celeronの0.13μm化のスケジュールが明らかに

 Intelは、来年第4四半期の「0.13μm版Pentium 4(Northwood:ノースウッド)」で一気にPentium 4の生産量を増やし、2002年中盤までにメインストリームデスクトップを全てPentium 4に切り替える。同時期にCeleron系のバリューPC向けCPUも「Tualatin(テュアラティン、0.13μm版Pentium III)」コアに置き換える。また、TualatinベースのバリューCPU投入に合わせて、新しいグラフィックス統合チップセットもリリースする。Intelは、OEMメーカーに向けてCPUコアの長期的なロードマップをようやく示し始めた。

 IntelのデスクトップCPUのロードマップは、このところ霧がかかったように不鮮明だった。例えば、Celeronラインに関しては、OEMメーカーの多くにも0.18μm版の「Coppermine(カッパーマイン)」系コア以降のCPUコアのプランが伝えられていなかった。Tualatinベースに切り替わるのかどうかすらもはっきりしていなかったのだ。それどころか、今年後半はCeleronが圧倒的に不足。IntelがCeleronラインを継続する気があるのかどうかすらわからない状況だった。だが、IntelがCPUコアのロードマップを示し始めたことで、この状況は改善されつつあるようだ。

 IntelのCPUコアの移行は、「Intel CPUコアの移行推測図」を参照してもらうと把握しやすい。業界筋の情報によると、Intelは2002年の中盤までにCeleronをTualatinに切り替えようとしているという。だが、この時点でのブランドがCeleronになるのかどうかはわからない。というのはメインストリームデスクトップにPentium IIIがなくなるので、バリューPC向けCPUにPentium IIIのブランド名を持ってくることもできるからだ。しかし、いずれにせよCeleronのスペースにTualatinコアが来ることだけは確かだ。

 Intel関係者によると、デスクトップにTualatinを投入する主眼は製造コストを抑えることにあるという。TualatinになるとCPUのダイサイズ(半導体本体の面積)が大幅に縮小するため、Intelは製造コストを抑えることができるようになる。また、性能も上がり、クロックはCoppermineで1GHz前後なのが、Tualatinでは1.2GHz以上と見られる。Pentium 4のクロックも、この時点ではローエンドが1.6~1.7GHzになっているだろうから、競合はしないだろう。

●Tualatin投入に合わせてチップセットも

 Tualatinは現在のCeleronとFSB(フロントサイドバス)に互換性がない。そのため、IntelはCeleronをTualatinに切り替える段階でグラフィックス統合チップセットも新しい世代に切り替えるようだ。Tualatin版Pentium III向けチップセット「Almador(アマドール)」の機能を制約して下へ落とす可能性もあるが、DDR SDRAM対応の新チップセットになる可能性は高い。というのは、この時期の他社のグラフィックス統合チップセットが全てDDR SDRAMサポートになっているからだ。統合チップセットではメモリ帯域が性能の最大の制約になるため、DDR SDRAMを採用すると性能が大きく向上するため、DDR SDRAMのコストが下がればDDR化が進む可能性が高い。

 また、IntelはTualatinに切り替える前に、現在の0.18μm版Celeron(Coppermine-128k:カッパーマイン)も、同じ0.18μmプロセスだがTualatinとFSB(フロントサイドバス)互換の「Coppermine-T」に切り替えると見られる。Coppermine-Tは、現在のPentium III/Celeronと互換のFSBとTualatin互換のFSBの2つのFSBに対応する。おそらく、IntelのCoppermineは、来年前半にはダイ(半導体本体)そのものは全てCoppermine-Tに切り替わると思われる。つまり、Coppermineにするか、Coppermine-Tにするかは、後工程で選択できるようにするのではないだろうか。そのため、Intelがどの時点でCoppermine-Tに切り替えるかはまだ不鮮明だ。

 2002年のIntelのデスクトップCPUは、メインストリームがPentium 4、バリューがP6コア(Pentium III/Celeron系CPUコア)とアーキテクチャできれいに分かれることになる。Intelにとって差別化がしやすい状態だ。おそらく、しばらくこの状態に置いてから、Intelは次のフェイズNorthwoodの機能制約版と、グラフィックス統合チップセットを出してくるだろう。Intelは、少なくとも2002年中盤まではNorthwood対応のグラフィックス統合チップセットの計画を持っていない。

 今回から、この「Intel CPUコアの移行推測図」にはモバイルCPUの推測図も入れた。メインストリームモバイルCPUの0.13μm化はデスクトップよりやや早いと見られる。2002年の右端にはさらに次世代モバイルCPUコアがある。これは、モバイルに特化した設計のCPUコアで、投入時期はまだ不明だが、一応2002年の後半と推測している。ここからあとは、デスクトップとモバイルでCPUコアの設計が分かれることになる。

●深刻なIntelのCeleron不足

 以上が想定できるCPUコア移行の図式だが、AMDに追いまくられているIntelが、計画通りに動けるかは怪しい。また、0.18μmへの移行以来1年、ひたすら品不足を続けているIntelが、品不足を起こさずに0.13μmへ移行できるかどうかもわからない。だが、2002年になるとAMDも0.13μmへと移行してくると見られるので、Intelも計画を急がなければならない。

 また、Intelが現在抱えている問題は相次ぐ品不足だ。とくに今年後半のCeleron不足は著しく、PCメーカー各社は製品計画を変更したりCPU調達に奔走しなければならなくなっているという。特に、第3四半期の時点ではIntelはできる限りのCoppermineをPentium IIIへと振り向けたため、冬モデル向けの大口注文ではまったくCeleronが手配できないというケースも出たという。メーカーの中にはDuronに切り替えたり、CyrixIIIを検討したところも出た。そのため、今年の冬モデルではCeleronのシェアが大きく落ちると見られる。

 現在、この状況は改善されつつある(やや遅れて比較的少量を発注したメーカーは手配ができた)ようだが、現在のIntelは、ある製品の品不足が改善されると、今度はほかの製品で品不足が発生するという状態で、PCメーカーにとっては安心できない相手になってしまった。それに加えて、今後はCPUコアとプラットフォームも比較的短いサイクルで切り替わるわけで、OEMメーカーとしても対応に悩むところだろう。Intelが、かつての完璧な信頼を取り戻すには、道のりはまだ長そうだ。

□関連記事
「Intel CPUコアの移行推測図」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/intel/desktop.htm
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(2000年10月27日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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