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Macintosh Business Unitのリーダーに
Office 2001とMac OS Xへの展望を聞く
米Microsoft、Kevin Browne氏インタビュー

米Microsoft、Kevin Browne氏


アップルコンピュータブースのすぐそばに、Office 2001専用のブースを構えたマイクロソフト。新登場のEntourageを中心に、Word、Excel、PowerPointのプレゼンテーションを行っている
 既報のとおり、マイクロソフト株式会社はMacintosh用Officeの最新バージョン「Office 2001 for Mac」を、11月17日に発売する。それにあわせて、現在開催中のWORLD PC EXPO 2000でもWindowsプラットフォームを中心にした同社ブースの他に、Office 2001に特化したブースをアップルコンピュータブースのそばに設営して同製品を公開。来場者の注目を集めている。

 今回、開催にあわせて来日した米Microsoft、Macintosh Business UnitのGeneral ManagerであるKevin Browne氏にインタビューをする機会を得たので紹介しよう。約1時間のインタビューは、Office 2001の概要とMac OS Xに対するMacintosh Business Unitの取り組みなどを中心としたものだ。なおインタビューには、同製品のProduct ManagerであるIrving Kwong氏と、日本における同製品の担当者でパーソナルシステム事業部のシニアプロダクトマネージャー、鶴淵忠成氏も同席した。

■ OfficeのCarbon化は次期バージョンで

Q:Office 2001のマーケティングについてお聞かせください

Kevin Browne氏:Microsoftは、Macintoshの発売以来、継続してアプリケーションを提供してきましたが、Macintosh Business Unitを設立したのは'97年です。最初のステップになったのは'98年に発売した「Office 98」で、この製品の顧客からのさまざまなニーズをヒアリングしたうえで作り上げたのが「Office 2001」ということになります。ご存じのように、ここ3年間におけるパーソナルコンピュータを取り巻く状況の変化は非常に大きく、以前は趣味の一部でしかなかったインターネットが一般ユーザーまで広く普及し、さらにデジタルカメラやカラープリンタ、そしてスキャナなども一般の方が普通に所有している機器になっています。こうした状況を踏まえて提供する今回の製品は、より一般的なユーザーが使いやすいように、限りなくMacライクな仕様で、きわめてシンプルに操作ができ、そして生活のなかで発生するニーズをスムーズに実行できるような工夫を加えています。

Q:日本でのOffice 2001発売にともなったキャンペーンなどは企画されていますか?

Kevin Browne氏:この質問は鶴淵さんに回答してもらったほうがいいですね。お願いします。(以下、鶴淵忠成氏)米国においては発売時にサンフランシスコの「COMP USA」で発売記念のイベントを行ないました。日本でも、発売時になんらかの形でイベントをするようなプランを考えています。通常Office関連の製品ですと、発売開始の数ヶ月前から従来バージョンを購入された方に向けての優待キャンペーンがあるのですが、今回は価格を下げたこともあり、こうしたフリーアップグレード的なものは見送っています。それ以外では、発売のタイミングでプレゼントを用意しています。ハーマン・カードンのスピーカーが301名に、そしてTシャツが1,700名に当たります。つまり当選者は合計で2001名ということで、もちろんこれはOffice 2001のネーミングに合わせたものです。

Q:Windowsプラットフォームでは、WordやExcelをプリインストールした製品が数多くありますが、Macintoshにおいてはこうしたアプローチはとられないのでしょうか?

Kevin Browne氏:おっしゃるとおり、これは我々としてもぜひ実行したいことで、Apple Computerに対しても提言を出しているのですが、現時点では共通の意見に達する段階にはなっていません。バンドルが実現するよう、なんとか合意にたどりつきたいと考えています。

Q:Office 2001がMac OS Xに適したCarbon化がなされず、従来環境であるClassicベースのアプリケーションとなった理由を教えてください

Kevin Browne氏:Office 2001の開発は2年半ほど前から始まっています。その時点でMac OS Xはまだ存在していませんでした。Mac OS Xの発表後、Appleともさまざまな相談を続けてきましたが、Office 2001は発売がMac OS Xよりも先行することもあって、現在のプラットフォームであるMac OS 8と9に最適な製品としてリリースする決断をしました。もちろん次期バージョンはMac OS Xに最適化されたものになると思います。

Q:その次期バージョンについて、単純にOffice 2001をCarbon化した製品になるのか、それとも全く新しい視点でOfficeを作り上げていくのか、現時点での考えを聞かせてください

Kevin Browne氏:Office 2001は2,500万ものコードでプログラミングされています。ですから、おっしゃるようにCarbon化というアプローチで、Mac OS Xへの対応を検討しています。しかし、Carbon化というのは最初のステップにすぎません。例えばMac OS XのインターフェイスであるAQUAの持っている機能についてもOfficeに盛り込もうと考えていますし、そのほかにもさまざまな高いゴールを設定しています。ですから完成が具体的にいつになるかは、まだ決まっていません。

Q:AppleのWWDC(世界開発者会議)などのセッションでは、既存製品をCarbon化する作業は極めて短期間で済むと説明されています。しかし、御社をはじめソフト開発の各社はいずれも、ある程度の期間が必要であったり時間がかかる作業という見方をしています。こうしたAppleとの温度差はどこからくるものでしょうか?

Kevin Browne氏:単純にCarbon化といってもさまざまな要素があります。コードレベルはもちろんのこと、コンポーネント単位でも対応していかなければなりません。アプリケーションも小さなものから大きなものまでいろいろあります。それだけでも時間的な違いは生まれてきますね。またMac OS Xへ対応するということは、ダイアログボックスのデザインやルック&フィールをMac OS Xに合わせて開発することも含まれるわけです。私どもを含め製品のCarbon化を行なっている各社は、コードベースでのCarbon化は進められても、Mac OS X向けアプリケーションとしてのAQUAインターフェイスへの対応や、その新機能を取り入れるといった作業で時間がかかっているのではないでしょうか。しかし、実際に私どものInternet ExplorerのCarbon化は今年の1月に終了しています。今後もOfficeを含めてCarbon化の作業は進めていきますよ。

■ Mac OS Xに含まれるInternet Explorerについて

終始にこやかにインタビューに応じてくれたKevin Browne氏。今度来日するときには、もっと日本語を勉強してくると話してくれた
Q:Mac OS Xに含まれるInternet Explorerのバージョンを教えてください

Kevin Browne氏:まだ決まっていません(笑)。しかし、現在Mac OS 8あるいは9向けに提供しているInternet Explorerの機能をすべて含んだものになっています。今後も改良を続けて機能を追加しますが、最終的にMac OS Xに添付されるバージョンを5.1と呼ぶのか、あるいは5.5と呼ぶのかは社内でもいろいろな考え方があるのが現状です。

Q:Mac OS X正式出荷後の製品についてお聞きします。たとえばInternet Explorerの将来的なバージョンは、Mac OS X向けの製品として出荷されるのでしょうか? それともMac OS Xと従来OSの両対応になるのでしょうか?

Kevin Browne氏:Mac OS 8あるいは9に対するサポートは必要だと考えています。ただ、具体的にどうするかについては、まだ検討段階に過ぎません。

Q:Mac版のOutlook Expressは今後どうなっていくのか教えてください

Kevin Browne氏:(Office 2001に含まれる)Entourageは、Outlook Expressのスーパーセットです。現在Outlook Expressを利用されている方には、積極的に利用してもらいたいと考えています。Mac OS Xへの対応については(Mac OS Xには、Apple製のメールソフト「Mail.app」が標準添付されていることもあり)、メールクライアントとしてのOutlook Expressにニーズがあるかどうかを確認してから検討をしたいと思います。現時点では未定です。

Q:Macintosh Business Unitについて簡単な紹介と、Internet ExplorerやOfficeのようなWindowsと共通するアプリケーションについて、Windows側の開発チームとどのような連携を図っているか教えてください

Kevin Browne氏:Macintosh Business Unitは、フルタイムワーカーの社員にパートタイム契約のメンバーを加えた約200人で構成されています。その約3分の1がカリフォルニア州のマウンテンデュー、3分の2がワシントン州のレドモンドで働いています。プロダクトごとにチームを作っていますが、必要に応じた人員の配置替えなども随時行なっています。Windows側の開発チームとの関係ですが、非常に密接した関係であるといっていいでしょう。考え方としては、ひとつの製品をふたつのグループで見ていると思っていただければいいと思います。例えば、MacintoshのOffice98のときに開発された自動リペア機能は、Windows版のOffice 2000にも採用されました。もちろん、さらに改良されたものが今回のOffice 2001にも用意されています。このように、一方で開発された技術はもう一方のプラットフォームに対応する製品も確実に反映されています。

Q:以前Macintosh Business Unitを統括していたBen Waldman氏から、現在のトップであるKevin Browne氏にUnitは引き継がれたわけですが、それによって体制やUnitの方向性などに変わった点はありますか?

Kevin Browne氏:変わってきていることは事実ですが、これはトップである私たちが変わったためではなく、顧客のニーズに対応して変わり続けているということです。Waldman氏とは以前からMacintoshユーザーの嗜好やニーズに対応して、そのためにフレキシブルにUnitの方向性を変えていくようにしていこうという考え方で一致していました。それが今でも継続しているということです。

□マイクロソフトのホームページ
http://www.microsoft.com/japan/
□プレスリリース
http://www.microsoft.com/japan/presspass/releases/101600offi.htm
□関連記事
【7月21日】Macworld Conference & Expoリポート「Office 2001 for Macintosh」記者会見
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000721/macw04.htm

(2000年10月20日)

[Reported by 矢作 晃 (akira-y@st.rim.or.jp) ]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp