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Rambusはどこへ行くのか--Rambus副社長Avo Kanadjian氏インタビュー (前編)

 Rambusは波乱の中にある。IntelのRDRAM推進戦略が次々にとん挫、Rambusの知的所有権を巡って大手DRAMベンダとは全面対決となっている。Rambusはどこへ行くのか、同社のAvo Kanadjian副社長(worldwide marketing)にうかがった。


●Pentium 4でRDRAMはデスクトップPCでも成功する

Rambus、Avo Kanadjian副社長
[Q]RDRAMはPC市場では成功できなかった。現在の採用状況をどう見ているか。

[A]今年は良い結果を得たと思う。プレイステーション2は300万を5カ月で出荷した。Rambusの大きな勝利だ。それから、ワークステーションスペースは、IDCの調査によると、第1四半期でRambusベースの製品が38%のマーケットシェアを獲得、さらに第2四半期には75%まで成長した。我々は、これらのアプリケーションでの大変な成功に満足している。成功の理由は、いずれもRambusをデュアルチャネルで採用したことだ。このレベルのパフォーマンスでは、競争できる相手がいない。

 唯一のセットバックは、指摘の通り、シングルチャネルのPentium IIIデスクトップだ。これは、Pentium IIIのFSB(フロントサイドバス)は1GB/secと狭いので、RDRAMの広帯域の利点が活きないからだ。しかし、デスクトップPCでも成功するだろう。それは、デュアルチャネルRambusメモリアーキテクチャのPentium 4の発表が迫っているからだ。Pentium 4ではFSBも3.2GB/secで、デュアルチャネルRDRAMの3.2GB/secと釣り合っている。この帯域は達成できる対抗技術がない。歴史的に見ると、PCは常にその前の世代のワークステーションのパフォーマンスを備えてきた。だから、デスクトップスペースでもデュアルチャネルRambusが主流になると信じている。

[Q]だが、現実にはDRAMベンダの多くはRDRAMを支持していないように見える。

[A]いや、Rambusは多くのDRAMメーカーから支持を得ている。それは、我々は開発した技術を、すべてのパートナーに同等に同時に提供しているからだ。だから、多くのパートナーは我々に成功し続けて欲しいと考えている。我々がいなければ彼らは多分、合併をしなければならなくなるだろう。すでに、DRAM市場はSamsung、Hyundai、Micronの3社だけでマーケットシェアの2/3を占めている。これは、これまでになかった寡占状態で、エンドカスタマにとっても望ましくない。だが、我々がいれば、下位のDRAMベンダも先端の製品を投入して、DRAMマーケットで重要な役割を果たすことができる。

[Q]RDRAMデュアルチャネルには技術上のハードルもある。常に2RIMMづつモジュールを装着しなければならないので、PCのように低コストが求められるアプリケーションでは問題がある。

[A]その問題は解決する方法がある。

[Q]じつはOEMベンダからRDRAM2チャネルをひとつのメモリモジュールでサポートする「Platte」というRIMMテクノロジがあると聞いている。これは、いつごろ登場するのか。

[A]なかなかいい情報源を持っているようだが、それはまだ公的アナウンスしていないのでコメントはできない。


●DDR SDRAMを立ち上げられるのはIntelだけ

[Q]ゲーム機などコンシューマ機器で、RDRAMのパケットプロトコル広帯域狭インターフェイス幅のメモリ技術が有利なのはよくわかる。しかし、インターフェイス幅が広く取れるPCでは対抗技術がある。DDR SDRAMについてはどう考えているか。

[A]最近、トップDRAMメーカーの人から、次のような面白いコメントを聞いた。彼は、DDR SDRAMを推進しているメーカーの人物なのだが、あと12ヶ月はDDR SDRAMはレディにならないという。しかも、DDRのためのインフラを立ち上げることができるのは、Intelだけだろうと言った。IntelはRDRAMインフラを立ち上げるために、多大な努力をしてきたが、それと同じだけの努力がDDR SDRAMの立ち上げにも必要だからだ。

 DRAMベンダはDDRチップを問題なく製造できるだろう。しかし、マザーボードレベルでの安定性や互換性を提供するのは、それとはまた話が別だ。DDRが登場しても当面は互換性の問題があるだろう。こうした問題を解決するには、多くの努力が必要となる。

[Q]しかし、DDR SDRAM推進メーカーはモジュールの共通ガーヴァー(基板設計データ)を作るなどの互換性確保の努力をしている。

[A]確かにその通りだ。しかし、DDR SDRAMシステムが登場したら、そのスペックを注意深く見てみるといい。きっと、異なるサプライヤのDDR SDRAMを混在させた場合には保証しないという注意書きがあるだろう。先ほど引用した彼がいいたかったのは、互換性の問題を解決するにはIntelのような存在が必要だということだ。多くの資金と多くのエンジニアリングリソースがあり、業界を支えることができる存在だ。Rambusを見ると、コンポーネント、モジュール、システムのすべてのレベルでバリデーションがあり、互換性が確保されている。

[Q]だが、それは業界の頭痛のタネでもある。

[A]かもしれないが、必要なことだ。


●Pentium 4のPC133サポートで、逆にRDRAMが離陸

[Q]Intelは8月末のIDFからは、RDRAMがSDRAMに置き換わるという説明をやめ、2001年の普及価格帯デスクトップPCのメインメモリはPC133 SDRAMになると説明し始めた。IntelはRDRAMをPCのメインメモリとして推進することを諦めたのではないのか。

[A]これが面白いことに逆の結果になる。Intelのこの発表の前までは、DRAMベンダはIntelに対して、RDRAMしか使えなくなるからプレミア価格になると言っていた。つまり、Intelには他に選択肢がないのだからと、RDRAMを高価格に設定していたのだ。しかし、来年の後半になると、IntelがPC133という選択肢も持つようになる。そうなると、トップDRAMベンダの態度は変わるだろう。

 それは、Pentium 4デスクトップの主流がSDRAMになると、トップDRAMベンダは後続のDRAMベンダと低価格のPC133で価格競争をしなければならなくなるからだ。そうすると、マーケットシェアが縮小してしまう。しかし、RDRAMがメインストリームになると、DRAMリーダーたちは(後続メーカーがRDRAMに簡単に参入できないため)シェアと利益を守ることができる。そのため、トップDRAMベンダはRDRAMに注力し、より安い価格でRDRAMを提供するようになるだろう。差別化はDRAMメーカーにとって非常に重要だ。トップDRAMベンダは、ローエンドの価格競争からは逃れたいと思っているからだ。

[Q]つまりIntelの本音はRDRAMであり、PC133サポートはそのための戦略だということか。

[A]結果としてはそうなるかもしれない。

[Q]しかし、IntelがPentium 4デスクトップでDDR SDRAMをサポートした場合にはどうなるのか。そうしたら、RDRAMは不要になる。その可能性はないと考えているのか。

[A]どんなこともありうる。しかし、Intelは4年間もRDRAMインフラの整備やアーキテクチャ開発に投資してきた。これを簡単にはムダにできないだろう。また、Intelはこの先、さらに広帯域のメモリ技術を必要としている。

[Q]Electronic Buyer's Newsは、IntelとRambusの契約で、IntelがRDRAM以外の1GB/sec以上の広帯域メモリ技術を採用できないと報じている。これは正しいのか。

[A]あなたが言っているのは、ジャック・ロバートソン氏の記事だな。合意では通常、何らかのマイルストーンの達成が義務づけられている。IntelとRambusの場合、これは、IntelがRDRAMをデスクトップPCのメインメモリに据えることとなっている。これを、Intelが他のメモリ技術を、デスクトップのメインメモリに使うことを禁じられていると言い換えることはできる。ジャック・ロバートソン氏が言っているのはこのことだ。

 だが、現実にはすべての合意はフレキシビリティを持っている。実際、あなたはIntelがいくつかのマーケットセグメントではSDRAMを採用しているのを見ることができる。それを、我々が止めることはできない。また、IntelとRambusのケースでは、IntelはRambusの株を100万株購入できるワラントを持っている。しかし、Intelは一定の基準を満たさなければ、このワラントを行使してカネ(割安なRambus株)を手に入れることができない。


●Micronは交渉の場にすらつかなかった

[Q]MicronやHyundaiなど、トップDRAMベンダがRambusとSDRAM/DDR SDRAMの知的所有権で法的に争っている。彼らはRambusの特許が無効だと言っている。この主張についてはどう考えているのか。

[A]面白いのは、彼らが最初、日立製作所と共闘することを拒否したことだ。(Rambusが日立を提訴した時)日立は彼らに、日立のクレームに加わることを求めた。ところが、彼らはこれを拒否したのに、今では、日立のクレームと同じような内容を含むクレームで、我々の特許は無効だと主張している。それなら、なぜ日立と一緒にクレームしなかったのか。

 我々は特にMicronには失望した。当社はディスカッションをしようとしたのだが、彼らはそれさえ拒否した。「infinionとの交渉を見ているとRambusは剛直なので、Rambusと会う必要はない」と彼らは言ったのだ。私は、他の誰かのデータを使う(提訴する)よりディスカッションをする方が賢かったと思う。特に、日立はすでに法廷を諦めているのだから。彼らの主張には、日立と比べて新しいものはない。

[Q]JEDECでの審議課程でRambusが義務を果たさなかったと言っているが。

[A]JEDECへの参加はメリットがなかったので、Rambusは'92~'96年の間だけしかJEDECのメンバーとして参加しなかった。そして、その間にSDRAM関連で投票したのはたった1回で、その1回も“No”だった。また、当社の知的所有権担当副社長が、9月にアナリストに説明をしたように、我々の特許は'90年に申請をしており、'99年から成立し始めた。つまり、成立したのは我々がJEDECを離れた後だ。だから、我々が、何かのスタンダードの策定への影響で告発されるいわれはなにもない。

[Q]これまで、DRAM業界はJEDECを中心として動いてきた。しかし、RambusはJEDECの外にいて、自社の技術をJEDECに提案しない。そのため、この法廷闘争は、“JEDEC対Rambus(非JEDEC)”の戦いだと言うDRAM業界関係者もいる。

[A]そう言えるかもしれない。多くのケースで、JEDECは大きな役割を果たしてきた。しかし、IntelがPCの標準を作るようになり、JECECの影響力はこの10年で大きく減少した。だから、これ(Rambusへの提訴)は彼らにとってチャンスなのだ。選挙運動のようなものだとも言える。だが、そうであっても、問題ではない。我々は、裁判に勝つ自信がある。だから、判事の前に進んで立つ。

[Q]DRAMベンダはDRAMに対してロイヤリティを払うということ自体に抵抗を感じている。

[A]ほとんどすべての企業は特許を持っている。そのため、多くの場合、企業同士でクロスライセンスを結ぶ。しかし、Rambusはクロスライセンスに興味はない。そこが唯一の違いだ。我々はIP(知的所有権)ハウスだ。チップもファブもないので、我々の付加価値はIPを売ることだ。ビジネスモデルが異なるのだ。

[Q]問題はそこにある。DRAM業界はIPビジネスに慣れていない。

[A]考えて欲しい、昔はPCメーカーが社内で様々な部品を開発していた。ところが、今は社外から買っている。そうすれば、最低のコストで調達できるからだ。Rambusがやろうとしているのは、それと同じことだ。つまり、すべての企業が、新テクノロジを導入できるもっともコストエフェクティブな方法を共有し、製品を迅速に出せるようにと考えている。

 この方法論はDDR SDRAMもADT(Advanced DRAM Technology:IntelとDRAMベンダ5社で結成した次世代メモリ策定団体)も同じだ。しかし、DDR SDRAMは'97年に発表されているのに、まだ市場に存在しない。RDRAMが多くの問題を抱えていると言うが、DDRだって問題を抱えている。ADTは、5社でコンセンサスを取るのが難しいだろう。どのモデルが成功するかは、時間が証明してくれる。

- 後編に続く (後編は17日に掲載いたします)


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(2000年10月16日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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