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特別レビュー
~ 6GBのHDDを備えた携帯型MP3プレーヤーのニューフェース ~
クリエイティブ「NOMAD Jukebox」

NOMAD Jukebox(59,800円)
 以前もこのPC Watchでレポートさせていただいたが、私は、MP3プレーヤーはCDタイプが本命だと思っている。特にここにきて、最長320分間の録音できるという新方式のMD、「MDLP」が発表されたため、さらに携帯型MP3プレーヤーの立場は微妙になっていると思うのだがいかがだろうか。

 ちなみにMDLPは、ソニーがメモリースティックウォークマンのために開発したATRAC3という圧縮アルゴリズムを流用することによって、録音時間を最大で従来の4倍にする仕組み。すでにMDコンポやウォークマン、車載システムなどがソニー、ビクターといったオーディオメーカーから発売されている。当然ながら録音再生には対応機器が必要だが、メディアは従来のものが使えるのが魅力で、従来の80分のメディアを利用すれば最大320分の録音が可能になる。つまり、メモリースティックウォークマンと同等の音質なら、数百円のMDメディア1枚にCD4枚分の曲を収めることができるわけである。

 さて、そんな中、NOMADシリーズを発売するPCミュージックプロダクツの雄クリエイティブがハードディスクタイプのプレーヤーを発売した。この記事では、その製品「NOMAD Jukebox」の概要と使用感をお伝えしよう。



●クリエイティブが投入した新型「NOMAD」はHDD搭載型

 NOMADはRioと並ぶMP3プレーヤーの人気シリーズ。今回の新製品「NOMAD Jukebox」は、外観だけ見るとCDプレーヤーかと思ってしまうが、6GBのハードディスクを内蔵し、CD約150枚分、およそ100時間相当の曲データを収納できるポータブルプレーヤーだ。ハードディスク搭載のシステムながら、8MBのバッファメモリを持っているため、多少のことで音とびが発生するようなこともない。

 サイズは縦横それぞれ約14cm、厚さは約4cm。重さは電池を入れて約440g。パソコンとはUSBで接続でき、WindowsでもMacでも使用できる。著作権保護のための仕組みとしてSDMI(Secure Digital Music Initiative)に対応しており、MP3のほか無圧縮のWAVEファイルも再生できる。

 バッテリは、単3型のニッケル水素充電池を4本使用する。乾電池は使用できないようだが、最初からバッテリが2セット(8本)同梱されるので不便はない。1セットで連続約4時間の再生が可能だ。

CDプレーヤーのような丸みを帯びた外観 バッテリは単3型のニッケル水素充電池を4本使用する

 ポータブル用途としてはちょっと大きめで重さもそこそこだが、とにかく6GBの大容量が圧倒的な魅力。さらに、このハードディスクに録音もできる(WAVEファイルとして)という、いままでにない製品に仕上がっている。



●機能は豊富なものの操作は煩雑

 この「NOMAD Jukebox」の機能は、それだけではない。ヘッドフォン出力のほかに外部出力を2系統持っておりサラウンドスピーカーを接続できたりもするし、そのほか、エフェクト(残響効果など)の調整や細かいイコライジングなどが自由にできるのはうれしい。変わったところでは、再生スピードをコントロールすることもできる。

ヘッドホン端子のほかに、入力1系統、出力2系統が準備されている。中央はUSB、向かって右はACアダプタ用のコネクタ
 クリエイティブでは、これらをまとめて「EAXオーディオテクノロジー」と呼んでおり、単なるオーディオの再生ではなく、好みに合わせたパーソナライズを可能にするためのものだと説明している。

 では、実際の使用感はどうだろうか。機能が豊富なこと、ハードディスクという大容量のメディアを扱う必要があることからか、操作はちょっと煩雑だ。
 たとえば、曲の再生だが、この「NOMAD Jukebox」では再生操作が、いったん再生キューにためたものをリストとしてプレイする、という2重構造になっている。どうしたら大量の楽曲を整理しユーザーにわかりやすく使ってもらえるか考えたのだと思われるのだが、ちょっと考えすぎのような気がする。直感的に操作できないため、かなりわかりにくく、操作も煩雑だ。慣れないうちは、ボタン操作と画面表示、再生されている曲がバラバラのように感じられ、混乱してしまうかもしれない。



 いちばん簡単な使い方は、あらかじめパソコン側でプレイリストを作っておき、再生はプレイリスト単位で行なうというものだろう。ボタンを11個も持ち、132×64ドットの液晶パネルを装備しているのだから、もう少し使いやすいインターフェイスを考えてもらいたいところである。



●パソコンソフトの使い勝手は及第点

バンドルされるPC用のソフト。こちらの使い勝手はよい
 私がWindowsのみでMacを所有していないため、ここでのレポートはWindows版のソフトのみであることはお許しいただきたいのだが、本体の操作感に対して、Windows側のソフトウェアは及第点の出来。音楽CDからのリッピングやMP3のエンコード、プレーヤーへの転送などはすべてこのソフトで行なうが、2つのウィンドウをそれぞれPCとプレーヤーとに見立てて操作を行なうことができるのはわかりやすい。デザイン優先のためかもしれないが、ウィンドウのサイズを大小2種類しか選べないため一覧性が悪くなっているのは残念だ。ただ、マニュアルに頼らずとも直感的な操作で目的が達せられるのはソフトの素性のよさを示している。

 もちろんCDDBにも対応しており、英語表記であるものの、海外作品だけでなく宇多田ヒカルの「First Love」などのJ-POP系のデータも取り込むことができた。


【転送時間(実測)】
ビットレート 転送時間
固定ビットレート 128kbps 約06分28秒
320kbps 約08分03秒
可変ビットレート 75% 約06分57秒
100% 約07分15秒
WAVE(無圧縮) 約24分07秒
 CDのリッピングやMP3エンコードは十分に高速で不満は起きなかった。念のためリッピングから転送完了までの時間を実測してみたので、参考にしてほしい。ここでサンプルとしたのはThe Beatlesの「LET IT BE」。全12曲、総演奏時間35分13秒のアルバムである(CPU:Celeron 533MHz、CD-ROM:東芝のDVD12倍速CD40倍速のATAPI DVDドライブを使用)。作業時間の差は、ほとんどがデータの大きさによるUSB転送時間の差のようである。



●オプションの追加とファームウェアのアップデートで進化する

 超多機能プレーヤー(録音もできるので、本来は録再機というべきかも)の「NOMAD Jukebox」だが、ファームウェアのアップグレードやオプションの追加でさらなる進化を遂げる予定もある。

 オプションで予定されているのは、赤外線リモコンとカーアクセサリ。これで車載用のシステムとして十分に使えるようになるはず。そして、ファームウェアのアップグレードだが、こちらも期待できる。

 現在予定されているのは、

 ・全トラックの閲覧
 ・高速先送り/巻き戻し
 ・トラックの検索
 ・液晶パネルでの日本語表示

など。さらに将来的には、ほかの圧縮フォーマットのサポートなども行ないたいとのことである。



●ポータブルだけでなくいろんなシーンで使いたい

 「NOMAD Jukebox」の機能や使用感をざっと見てきたわけだが、どんなシーンにお勧めなのだろうか。まとめの意味で少し考えてみたい。

 「NOMAD Jukebox」は6GBという大容量メディアを搭載している点と録音や再生コントロールなどを含む機能の豊富さがウリであることは間違いない。一方で、ポータブル用途としては、動作に軽快感がないのがちょっと気になる。

 先に挙げた再生操作もそうだが、たとえば、電源のON/OFFはそれぞれプレイボタン、ストップボタンの長押しになっているのもどうかと思う。OFFはともかくとしても、起動するのにボタンの長押しというのは、ちょっとじれったい。当然ながら、電源ONのあとにはシステムの起動ルーチンが数秒間続くことになる。ボタンを押しはじめてから電源が入り起動ルーチンが終了して再生操作が可能になるまで、実測で25秒ほどかかった。

 ちょっと辛口でコメントすると、機敏な動作とわかりやすくシンプルな操作性が要求されるポータブル用途には向かない感じがする。また、4スピーカーのサポートなどポータブルでは活かされない機能もある。

 CD 150枚分というと、よほど多くのCDを持っている人でない限りは手持ちのCDをすべて収めることができる大きさである。ポータブルに限らず、それらを外に持ち出せることに意味を見出せる人にはお勧めである。クルマの中や仕事場、もちろん電車の中でも聞くことができる。

 しかしながら、カーステレオでは、すでにKENWOODからMP3 CDを再生できるものが発売され人気を呼んでいるし、据え置き型としては最近になってAIWAから「XD-DV370」というMP3 CDの再生を可能とするDVDプレーヤー(34,800円)が発売された。ポータブル用途以外での使用を考えるなら、これらの製品と性能や価格を比較することになるだろう。


□クリエイティブのホームページ
http://japan.creative.com/
□製品情報
http://japan.creative.com/nomadworld/

(2000年10月11日)

[Reported by 宮澤 祥(Shou Miyazawa)]


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