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不定期連載 ゼロ・ハリのホームノマドへの道
~真のロードウオーリアが使う「王様のパソコン」(前編)~


 「ケータイ Watch」で連載中の「モバイル一宿一飯」などでおなじみのゼロ・ハリ氏による不定期連載です。今回は、IBMのビジネスユース向けノートPC「ThinkPad X20」をご紹介します。(編集部)


■ ファッショナブルなモバイルPCはもういらない

 情報が溢れ、その情報をいつでも的確に管理運用したいと考えると、いつでもどこでも場所を選ばず、気に入った愛用のパソコンを使いたくなる。筆者はまだ世界のモバイルPCの代表が「ラップトップPC」と呼ばれ、重さも7kg前後もあった頃から、世界中を持ち歩いていた。その反動か、米国に比べて日本ではそこそこ人気のある「ミニノートPC」や、多少ミーハーなピカピカした軽薄な「サブノートPC」も大好きだが、「オン・ザ・ウエイ」で実際の仕事をオフィスと全く同じように意識することなく行なうには、これらの製品では少し無理がある。
 古くからモバイルPCをビジネスマンの「真の道具」と考える米国市場では、日本のように携帯性とファッション性に重点を置く余り、機能を削ったり、キーボードを縮小したり、厚化粧に凝ったりすることには余り熱心では無い。モバイルパソコンの本場である米国で生まれた「ウルトラポータブルPC」や「ノンコンプロマイズドPC(妥協の無いパソコン)」という言葉はこれらの発想から生まれて来ている。「どんなに小さくて、ファッショナブルで、軽くても、仕事が普段の感覚でナチュラルにできなければ意味が無い」と言うのが根底に流れるモバイル・コンピューティングのコンセプトなのだ。


 遅ればせながら、日本のモバイルPC市場でも、モバイルPCを単にマニアの玩具では無く「真のビジネスツール」として考えようと言う企業やビジネスピープルが増えてきている。日本のサラリーマンも含め、男女年齢を問わず、真のプロフェッショナルの使う道具に「妥協」や「見せかけだけのファッション性」は無用なのだ。ビジネスピープルにとって、モバイルPCは、ある時はダーティハリーの選んだ「マグナム44」であり、モバイルPCは「TOY」では無く「WEAPON」なのだ! 真のプロフェッショナルなら「機能」の後を自然と追いかけてくるクールなデザインを評価できる経験と知識を持ち合わせていなければならない。

 例えスターバックスのカウンター席で使おうが、駅のベンチで使おうが、入力のしやすさはモバイルPCにとって最重要項目だ。欧米人に比較して、体格の小さな日本人だからといって同じレイアウトの極端に小さなキーボードでも大丈夫だと考えるのは勘違いだ。オフィスのパソコンとは異なる小さなキーボードを使いこなすまでの時間や気配りは、もっとクリエイティブなアイデアやイマジネーションの創造や拡大に向けるべきだろう。

 モバイルPCの総携帯重量は重要だが、これもビジネス・プロフェッショナルがそのモバイルPCを何の目的に使うかで基準は変化する。日本のモバイルシーンを見ていると、往々にして、特にさしたる目的も無く毎日ただ単に運んで「モバイルごっこ」している「モバイラー」に限って、「モバイルシーンに於けるモバイルPCの軽量性」を懇々と説くことが多いと感じるのは筆者だけだろうか? 自分の仕事の目的や結果と、それを引き出すことのできるモバイルPCの価値関係を明確に説明できないが故の自己矛盾なのだ。

 昨今は、iモード携帯だけでは長文の返事は億劫だが、見るだけなら十分にビジネス用途にも利用可能だ。今やモバイルPCの目的は、クライアント先におけるプレゼンテーションやオフィスや自宅同様の慣れ親しんだ「環境を持ち歩く」ことなのだ。環境を持ち歩き、モバイルPCでビジネスの可能性を拡大し、そのモバイル効果を明確に数字の上で価値判断できなければ、例え100gの超軽量モバイルPCでも、その存在をジャスティファイすることは不可能なのだ。

 一方、例え3kgを越えるヘビーモバイルでもビジネスの結果が伴うなら、その重さは取り立てて騒ぐレベルでは無いのである。目指すべきは「モバイル・ビジネスマン」であり、ただのPC運搬屋「モバイラー」では無いのである。


■ 「王様のパソコン」としてのThinkPad X20

ThinkPad X20は真のプロフェッショナルの為のウエポンだ
 できればデスクトップPCを持ち歩きたいプロフェッショナル・モバイル・ビジネスマンにとって、とりわけ世界の最先端のモバイルPCは理想的な変化を遂げてきている。もはやこれ以上凝縮できないテクノロジーの時代に、機能や操作性を削って一挙に軽さだけを狙った国内市場中心のメーカーと異なり、グローバルなPCメーカーの多くは、重量と機能のバランスを上手くとったモバイルPCを続々と発表している。筆者がこのところ毎日愛用しているIBM ThinkPad X20もそんなグローバルビジネスマン、ビジネスウーマンの為のモバイルPCの最右翼だ。

 デスクトップPC同様のパフォーマンスと操作性を詰め込んでも、重量は1.5キロ台に押さえ、必要に応じて豊富な拡張オプションを組み合わせることにより、デスクトップPCをも凌駕する拡張性と操作性を実現できる。超軽量だが、何かを妥協することで作り上げた軽量のサブノートPCやミニノートPCをモバイル専用の2台目のPCとして、オフィスや自宅の一般的なデスクトップPCと組み合わせることも1つの解決策だが、2台の性格の異なるパソコンの情報を常時、矛盾の無いように管理するには、それなりの知識とテクニックと根気が必要なのだ。

 Ethernetによるネットワーク接続や、ファイル間の同期を取る「ブリーフケース」や同様の商用ソフトウエアを組み合わせても、日々蓄積するEメールや仕事上の多くのファイルを確実に管理把握することは相当緻密な能力を持ったビジネスマンでもタフな仕事なのだ。しかし、既に1.5kgの妥協の無いプロフェッショナル・モバイルPCが存在するなら、今使っているデスクトップPCの利用を即止めて、オン・ザ・ウエイでもオフィスでも、自宅でも、全てをたった1台のモバイルPCで、実現するのが新しい「パーソナルコンピューティング」の姿なのだ。
 モバイル環境だけでは無く、オフィスでも自宅でも全く遜色のないビジネスワーキングができる。筆者は、そんな新しいパソコンシステムを「王様のパソコン」と呼ぶことにしている。

一般的にはレガシーポートやFD・CDドライブは「ウルトラベース×2」で実現する
 eXtreme 20(極限の)と名付けられたThinkPad X20は昨今のモバイルPCのスタンダードと同じくレガシーフリーな構造を採用しており、モバイルPC本体にはプリンタポートやシリアルポートは無い。しかし、ビジネスプレゼンテーションのシーンを考慮しRGBビデオ出力は標準のプロジェクターや大型ディスプレイに変換ケーブルを使用することなく接続できるD-Sub15ピンの標準端子を装備している。内部にはミニPCI規格の100Base-TX対応Ethernetと56KbpsFAXモデムのコンボカードが封入され、ハードディスクは20GB、12.1インチのXGA TFT液晶を備え、標準のPCカードスロット1個に加え、コンパクトサイズのType2 PCカードスロットを併設する。本体にはUSBポートが2個と、第3のUSBポートである「ウルトラポート」が液晶パネルのトップ位置に設置されている。


 現在はビデオ会議や、一般のデジタルカメラとして使用するウルトラポートカメラを接続することになるが、年内には、このウルトラポート対応のBluetoothモジュールが発売される予定である。Bluetoothは現在のところ、PCカードのものが数社から発売されているが、設置位置がPCカードスロットに限定される為、モバイルPCをスチール製の机の上で使用した場合、金属表面の影響を受けやすく、電波の到達距離にも少なからず影響を与えると考えられている。ウルトラポート専用のBluetoothは、これらの影響を受けにくく、安定した通信が期待できる。

 また、液晶背面には、全てのThinkPadで用いられているF1レースカーの車体材料である「カーボンファイバー」に加えて、電波に余分な影響を与えない配慮として、チタンを複合させた新素材が用いられ、一層の強度と安定した通信を実現している。常に人間の手が置かれるパームレストには同じくカーボンファイバーを用い、高速のCPUが出す高熱を伝わりにくしており、X20の背面全体は、軽量化のためマグネシウムを採用している。チタンを含んだカーボンファイバー素材のトップは、よく見ると星屑のような小さなガラス繊維がキラキラと光り、「チタン・スターフレーク・カーボン・ファイバー」と呼ばれるその素材は、まさにテクノロジーのこだわりとクールなルックスを兼ね備えた「王様のパソコン」の雰囲気がある。

X20本体をケーブル接続の煩雑さから忘れさせてくれるポートリプリケーター
 X20の底面前方部には、オプションのケーブルマネージメントが目的の「ThinkPadポートリプリケーター」や、より高機能な「ThinkPadドック」に接続する為のドッキングポートがあり、極限のX20を更に、完璧なる「王様のデスクトップ」仕様に豹変させることが可能になっている。

 筆者は、RGBケーブルやその他のレガシーポートをレガシーフリーなX20に復活させる「ポートリプリケーター」と、PCIカードのスロットや、ウルトラベイ2000用に販売されているCD-RW装置やZIP、DVDドライブなどを必要に応じて収納できる大型の「ThinkPadドック」の両者を比較検討したが、今回は「王様のパソコン」に相応しい後者を選択した。


 現在、ウルトラベイ2000にはCD-RWドライブを収納し、ThinkPadドックの背面には、2個のUSBポート、2個のPCカードスロット、シリアルポート、パラレルポート、PS/2キーボードポート、PS/2マウスポート、RGBビデオポート、モデムポート、100Base-TX対応Ethernetポート、オーディオ入出力ポート等々、普通に考えられる全てのポートが装備され、正に自宅ではデスクトップPCとして活躍している。しかし、いざ出かけるときには、たった一つだけボタンを押せば、X20はヘビーデューティーなThinkPadドック母艦から一瞬にして発艦し、ロードウオーリアの軽量でタフなウエポンとなってアウトドアで活躍できるのだ。

筆者は、ThinkPadドックにCD-RWを入れて使用している X20をデスクトップPCとして使用するのに必要なモノ全てが揃っている 企業内での使用も考慮して安全錠などの装備も確実だ

 妥協の無い「王様のパソコン」を構築するにあたり、注意するべきことは多くあるが、まず第1に、スケルトン仕様やカラフルな安っぽいカラーリングモデルでは無く、ミーハーで無いこと。第2に、目的達成の為に「セコイ節約」を前提条件と考えないこと、第3に、持ち歩き時の周辺やアクセサリーにも絶対に自分流のこだわりを失わないこと、の3点があげられる。ExcelやWordをごく人並みに使うためだけなら、組み立て互換機やメーカーの発売している10万円以下のキットモデルでも目的を簡単にクリアできる時代だ。もはや、先進のテクノロジーやCPUクロックの大小だけが商品の価格を決定する時代では無くなってきているのだ。

 *明日はX20をベースに最高のPC環境の構築を目指す「王様のパソコン」後編をお届けいたします(編集部)


□日本IBMのホームページ
http://www.ibm.co.jp/
□製品情報
http://www.ibm.co.jp/pc/thinkpad/tpx2008/tpx2008a.html
□関連記事
【8月28日】IBM、チタン複合素材を採用したB5ファイルサイズノート
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000828/ibm.htm

(2000年10月10日)

[Text by ゼロ・ハリ]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp