会場:San Francisco Moscone Convention Center
Adobeは、出版、印刷、DTP、Web Publishingなどのプロフェッショナル向けイベント「SEYBOLD SEMINARS SF 2000」にあわせて、プレスカンファレンスを開催。同社の主力製品のひとつである「Photoshop6.0」のバージョンアップや、今後のeBook推進、さらにWeb Publishingなどに関する数々の戦略を明らかにした。
■Photoshop6.0は同社製品のいいとこ取りで機能強化
8月28日 (現地時間) 、SEYBOLD SEMINARSの会場であるMoscone Centerから道路を一本はさんだW Hotelの一室で、Adobeのプレスカンファレンスが催された。カンファレンスには、社長のBruce Chizen氏をはじめとする同社の首脳が顔を揃え、わずか一時間余りの会見の間、同社の今後の戦略について矢継ぎ早に発表を行なった。
エンドユーザーにとって最も大きなニュースは、定番のグラフィックアプリケーション「Photoshop」のバージョンアップだろう。「Photoshop6.0」となる今バージョンには、レイヤー機能の大幅な強化をはじめ、前バージョンではバンドルされたImageReadyのなかで使うことができたスライス機能、ベクターグラフィック機能の搭載 (簡易版のIllustratorが内蔵されたようなもの) 、GoLive形式のコード出力、さらにはAcrobatのような校正機能など、同社製品のいいとこ取りのような形で新機能が詰め込まれている。言い換えれば、同社のグラフィックアプリケーションの中核としてさらに際だつ製品になったとも言える。英語版は9月に出荷され、その後日本語版を含むローカライズ版が登場する予定。英語版の価格は609ドルで、アップグレード価格は199ドル。パッケージにはこちらもバージョンアップした「ImageReady3.0」がバンドルされるほか、「Adobe GoLive5.0」のトライアル版も添付される。このトライアル版は30日間に限ってすべての機能が利用できるもので、99ドルで正規版へのアップグレードが可能だ。
PDFをベースとする電子書籍 (eBook) の推進で中心となるのは、GlassBookの買収。GlassBookは電子書籍の出版側からエンドユーザー側まで、さまざまな電子書籍用のソリューションを開発中で、買収以後はPDFベースの電子書籍開発をAdobeのもとで継続することになる。また、電子書籍のコンテンツ面でiUniverse.comと、販売面でBarnes&Nobleと広範な提携を行うことで、Adobeは電子書籍に関する戦略で、製品、コンテンツ、販売の3つの柱を用意することになる。
さまざまな提携を中心にした戦略はeBookに限ったことではない。先日発表された「Adobe GoLive5.0」を中心としたWeb Publishingについても、数多くのパートナーシップを結んだことを明らかにした。この日発表されたのは、BlueWorld、Manna、Be Free、Web Trends、AvantGoの5社で、いずれもGoLive用のプラグインの提供などでWeb Publishingソリューションを推進していく。
さらには、MetaCreationsの子会社であるMetaStreamへ投資を行なってWeb3Dの技術開発を進めるほか、出版プロフェッショナル向けのソフト「InScope」を発表するなど、予定の1時間では各製品のデモンストレーションを行なう間もないほど、あわただしく発表が進んでいった。この日発表された製品やソリューションは、明日からはじまる展示会場のAdobeブースや関連のパビリオンなどで公開される。
Windows版 | Macintosh版 | |
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メニューの下に新しくツールバーが登場。これまでタブパレットに表示されていた機能の一部が移動したほか、使わないタブの収納などもできるようになった | ||
Windows版 | Macintosh版 | |
強化された機能でもっとも目立つのはレイヤー部分。レイヤーパレットに表示されている内容が従来版とは大きく変わっているのがわかる |
■明日、Job氏の基調講演に続いて展示会がオープン
SEYBOLD SEMINARSのコンファレンスやワークショップは、27日からすでに始まっている。会場のMoscone Centerは、コンファレンス参加者や、明日の展示会に向けて事前に登録を済ませておこうとする来場者などで、徐々に活気を見せ始めた。
Apple Computerは、昨年この会場でPowerMac G4を発表した。29日 (現地時間) の朝9時から行なわれるスティーブ・ジョブズ氏による基調講演で、今年は何が語られるのか注目したい。この基調講演に続いて、展示会場も10時からオープンする。
会場内は、明日の展示会オープンに向けたブースの設営であわただしいが、コンコースはのんびりムード。コンファレンス参加者が思い思いにくつろいでいる | 南側ホールのエントランスには、Think differentと、Apple製品の垂れ幕がずらりと並ぶ。Macworldのように何かを隠す思わせぶりな広告は、いまのところ見あたらない |
(2000年8月29日)
[Reported by 矢作 晃(akira-y@st.rim.or.jp)]