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後藤弘茂のWeekly海外ニュース

Intelの戦略からCamino3が消え、Pentium IIIはSDRAMプラットフォームオンリーに


●大きく変わったIntelのチップセット戦略

 先週、Intelのチップセット戦略の分析をしたが、実はあの記事を書いた後、状況がかなり変わったことがわかった。そのため、記事の20%くらいは“ウソ”になってしまった。どうやら、Intelはチップセット計画に、かなり手を入れたようだ。
 結論からいえばIntelの2001年のチップセット戦略はずいぶんとすっきりしたものになった。その最大の理由は、事態を複雑にしていた新チップセット「Camino(カミーノ)3」が消え、次世代CPU「Willamette(ウイラメット)」用の初代チップセット「Intel 850(Tehama:テハマ)」の寿命がさらに短くなったからだ。このあたりはPC Watchのサイトに推定図をアップしたので参照してほしい。

 まず、Camino3だが、IntelのOEMメーカーからの情報では、Intelは来年のPentium III用の新チップセットとして「Almador(アマドール)」しか用意していないと説明したという。どうやら、Camino3はキャンセルになったようだ。
 先週説明したように、Intelは、そもそも来年の第2四半期に、Intel 820/820E後継でRDRAMベースのCamino3とIntel 815/815E後継でSDRAMベースのAlmadorの2系列のチップセットを投入する計画でいた。これは、RDRAMの供給量が十分ならCamino3、そうでなかったらAlmadorを主軸にするという、RDRAMの供給不足に備えた戦略だった。これがAlmador一本になったことは、IntelはPentium IIIプラットフォームはSDRAMで行くという結論を出したことを意味する。
 この決定により、i820ファミリはニッチのチップセットで終わることがほぼ確定した。Pentium III向けチップセットでは、i815/815E→Almadorラインが本流となってしまったからだ。


●i820ファミリの位置づけが大きく後退

 Intelは、これまではi820/820Eの普及を継続し、それをCamino3につなげてPentium IIIプラットフォームでもRDRAMをある程度普及させようとしていた。しかし、市場を見てもわかる通り、現状ではi820は浸透していない。それが、Camino3という後継が見えなくなったことで、さらにi820ファミリの位置は後退した。i820でSDRAMの利用を可能にするMTH(Memory Translator Hub)チップ回収・キャンセル騒ぎでダメージを受けていることもあり、ほとんど「i820さようなら」状況だ。業界関係者によると、Intel自身のチップセット出荷計画でも、i820は今年後半のシェア10%以下しか見込まれていないという。また、チャネル向けにはi820ファミリではなくi815ファミリで行くと通知したという。つまり、Intelも、もうi820はハイエンドのニッチと半ば認めてしまった格好らしい。
 i820の後退にともなってi815のポジションは拡大された。あるOEMメーカーによると、Intelは今年後半に出荷するチップセットの40〜50%をi815にする計画だという。
 ただし、今の状態を見る限り、i815へとすんなり移行するとは思えない。OEMメーカーのi815に対する反応はそれほどいいわけではない。その理由のひとつはi815の価格設定だ。同じメインストリームデスクトップ向けチップセットであるIntel 440BXが20ドル台なのに対して、i815は40ドル台だという。そのため、i815でAGPグラフィックスチップを外付けするのなら、20ドル近くi815の方がコスト高になってしまう計算だ。30ドル台のi820よりも高い。これでは、PCメーカーがi815へシフトするというのは難しい。

 もっとも、Intelはさまざまなディスカウントをするので、リストプライスだけを見ていてもわからない。それでも、i815の出足はそれほどよくないことだけは確かだ。もっとも、Intelにしても、出だしはi815の供給には制約があり、それほど大量に出荷できないわけで、高めの価格設定はそれを反映しているだけなのかもしれない。ちなみに、IntelはICH2から台湾ファウンダリのTSMCに生産委託を行ない、生産量の確保を図る。
 こうした事情から、i440BXはi815が登場したあともまだ消えない。そもそも、PCメーカーはi440BXベースの製品ラインナップを抱えており、そのうちのある程度は年内も維持するからだ。Intelのチップセット出荷計画でも、今年第4四半期の20%程度はi440BXが占めることになっていると言われる。つまり、100MHz FSBがまだ残ってしまうことになる。
 ただし、全体を概観すると、i815は最近のIntelのチップセットにしては、“比較的”長期にわたって(といっても1年だが)Intelのメインとなるプラットフォームであることがわかる。i815は、Intelの次期Pentium III(Tualatin:テュアラティン)には対応していないが、それまでは現役で使うことができるわけで、もしIntelが戦略的に価格を落としてくれば魅力的な選択だろう。


●WillametteでRDRAMを立ち上げ直す

 Intelは、Pentium IIIプラットフォームはSDRAMと決着したが、WillametteプラットフォームはRDRAM路線を堅持している。Willamette用に計画されているチップセットヘ、いずれもRDRAMベースだ。そのため、来年になると、Willamette+RDRAM、Pentium III/Celeron+SDRAMで、CPU毎に対応するメモリアーキテクチャがきれいに分かれることになる。
 これは、IntelがWillametteでRDRAMの立ち上げを再度まき直すことを意味していると思われる。Pentium III+RDRAMでは、性能の優位性を訴えにくいが、Willamette+RDRAMなら、Willametteのハイパフォーマンスのおかげで性能の優位を説明しやすい。つまり、Intelは「Willamette+RDRAM=高性能」という図式で、もう一度RDRAM戦略のまき直しを図るつもりのようだ。

 また、Willametteの性能をフルに活かすためには、原理的には広いメモリ帯域が必要であるため、RDRAMで性能差が出やすい。実際、Intelはベンダーに対してWillametteでRDRAMを使った場合とSDRAMを使った場合、あるいはDDR SDRAMを使った場合の性能シミュレーションを示してRDRAMの必要性を訴えているという。それによると、RDRAM対PC133 SDRAMでは最大で30%程度、RDRAM対PC200 DDR SDRAMでは最大14%程度の性能差が、同じWillametteで出るという。しかも、Willametteのクロックが上がるほどこの差は開く可能性が高い。


●Willametteは早期にSocket-Nへと移行

 Willametteプラットフォームではi850(Tehama)の位置づけも変わり、急激に第2世代のチップセット「Tulloch」に取って代わられることになったようだ。もしそうだとすると、Willametteのソケットの混乱は最小限に抑えられることになる。
 どうしてかというと、Willametteは最初は「Socket-W」というコードネームで呼ばれている423ピンソケットに対応するFC-PGAパッケージで登場、その後、「Socket-N」と呼ばれる479ピンソケットに対応するμPGAパッケージへと変わるからだ。i850がサポートするのがSocket-Wで、TullochがサポートするのがSocket-Nだと見られている。

 また、OEM関係者によると、IntelはTullochでRDRAMがシングルチャネルのマザーボードデザインガイドも提供するつもりだという。つまり、ハイエンドのWillametteマシンではRDRAMが2チャネルでメモリ帯域が3.2GB/sec、ミッドレンジデスクトップ向けのWillametteマシンではRDRAMが1チャネルでメモリ帯域が1.6GB/secの2段構成になる。
 これは、ミッドレンジ以下のデスクトップでは、RDRAM2チャネルが高コストにつきすぎるための措置だ。RDRAM2チャネルでは、マザーボードも6層でRIMM(RDRAMのメモリモジュール)も2つづつ増設しなければならない。ところが、1チャネル構成なら、マザーボードは安価な4層でRIMMも1個単位で増設できる。Willametteは、このTulloch+1チャネルRDRAMのシステムでようやく手頃な価格帯に降りてくることになる。
 こうした状況にあるため、短命なi850+Willametteには、PCメーカーはそれほど積極的になるとは思えない。Willamette自体は、1.4GHz版で900ドル以下(1,000個時)と、常識的な価格だが、こうした事情からWillametteマシンは、当初は割高なものになりそうだ。



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(2000年6月15日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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