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後藤弘茂のWeekly海外ニュース

Intelの次々世代チップセットCamino3/Almador/Tullochが引き起こす非互換問題


●Coppermine-TからFSBの電圧が変わる

IntelデスクトップCPUの
移行推測図
 Computexは、新チップセットや新Socketの登場もあって相当な盛り上がりぶりだった。しかし、これは序の口。来年になったら、Intelプラットフォームだけでも憶えきれないほどのチップセットと互換性のないソケットが混在することになる。

 まず、Pentium III/Celeronプロセッサとプラットフォームはどうなるのか。ここでは、まずCPUが世代交代をする。PC業界関係者によると、現在の0.18μm版Pentium III/Celeron(Coppermine:カッパーマイン)は、今年第4四半期に登場する「Coppermine-T」または「Coppermine-LV」と呼ばれる新チップに急速に置き換えられるという。CPUの移行に関しては、右の図をご覧いただきたい。


 LVはCPUの駆動電圧(Vcc)が低電圧(Low Voltage)になるという意味ではなく、バスの電圧(Vtt)が低い新しいFSB(フロントサイドバス)に対応するという意味らしい。新FSBになっても、クロック周波数やソケット形状(Socket 370)は変わらない。しかし、FSBの電圧は現在の1.5Vの「AGTL+」から1.2Vの「AGTL」へと下がり、クロッキングも現在のP6バスのシングルエッジクロッキングから、位相の異なるクロックを入力するディファレンシャルクロッキング方式に変わるという。Coppermine-Tは、現在のFSBとこの新FSBの両方に対応するらしい。

 Intelが、この新FSBを導入する理由は、0.13μm版P6「Tualatin(テュアラティン)」が来年後半に控えているからだ。情報筋によると、TualatinはAGTL/ディファレンシャルクロッキングにのみ対応するという。これは、製造プロセスが微細化したためかどうかはわからない。ひとつ確かなのは、Coppermine-TがTualatinへの移行をスムーズにするためのCPUということのようだ。


●やっかいなP6 CPUとチップセットの対応

 IntelがCoppermine-Tを必要とするのは、来年中盤に投入するTualatin対応のチップセット「Camino(カミーノ)3」と「Almador(アマドール)」では、AGTL/ディファレンシャルクロッキングしかサポートしないためと言われている。つまり、新チップセットのマザーボードには、同じSocket 370であっても、従来のCoppermineを挿しても動かない。Coppermine-TかTualatinでないと動かないようになる。この関係をもう少し詳しく説明しよう。

【P6系CPUとチップセットの推定対応図】
i820/i820E
i815/i815E
Camino3
Almador
Coppermine×
Coppermine-T
Tualatin×



 こうしてみると、なぜCoppermine-Tが必要なのかがよくわかる。というわけで、おそらく来年の第2四半期に発表され、第3四半期から普及するCamino3/Almadorを前に、IntelはCoppermineからCoppermine-Tへの移行を行なうことになる。そして、第4四半期と推測されるTualatinに備えることになる。

 ちなみに、来年のIntelのデスクトップチップセットは、おそらく表のように移行する。

【想定されるIntelのチップセット移行図】

2000年2001年
Intel 850(Tehama)Tulloch
Intel 820/820ECamino3
Intel 815/815EAlmador
Intel 810/810ETimna/Timna+
チップセット移行図(詳細版)

 Intelが2月の技術カンファレンスIDFで公開したチップセットロードマップでは、このAlmadorに当たる「Intel 815 Follow-on」はPentium IIIとCeleronの両方にまたがる形で示されていた。その図を信じるなら、Pentium IIIだけでなくCeleronもCoppermine-Tに移行すると思われる。実際、Intelは同じCoppermineの高クロック品をPentium III、低クロック品をCeleronとして投入しているため、Pentium IIIがCoppermine-Tへ移行したらCeleronも必然的にCoppermine-Tへと移行すると推測される。


●Willametteはソケット自体が変わる

 上の図の「Intel 850(Tehama:テハマ)」と「Tulloch」は、いずれもIntelの次世代CPU「Willamette(ウイラメット)」用チップセットだ。そして、このチップセットの移行でも、やはり注意しなければならない互換性の問題が発生する。というのは、同じWillametteでも、TehamaとTullochでは、サポートするパッケージが異なるからだ。

 業界関係者によると、Willametteは、まず「Socket-W」というコードネームで呼ばれている423ピンソケットに対応するFC-PGAパッケージで登場するという。このパッケージは、これまでもカンファレンス等でちらりと公開されているが、かなり大判で5cm角くらいはたっぷりある。Tehamaは、この423ピンのWillamette-423をサポートする。

 ところが、Intelは来年の中盤のTullochからは、今度はWillamette-479と呼ばれる479ピンの新しいWillametteをサポートするようになる。Willametteの0.13μm版で来年第4四半期から登場する「Northwood(ノースウッド)」も、やはりこの479ピンで提供されるようだ。423ピンソケットと479ピンソケットは、相互互換性がない。

 まだ詳しい情報はわからないが、TullochはWillamette-479しかサポートしない可能性が高い。Tehamaは両対応か、それともWillamette-423のみ対応かわからないが、Northwoodに対応しないのは確からしい。このややこしいCPUとチップセットの対応図は次のようになる。

【Willamette系CPUとチップセットの推定対応図】
Intel 850Tulloch
Willamette-423×
Willamette-479
Northwood×


 Willamette-479は、ピン数が多くなるだけでなく、ピンピッチが極めて狭いマイクロPGAになるらしい。これは、パッケージのサイズを小さくするだけでなく、電気的な特性も高める効果がある。おそらく、IntelはWillamette系CPUのクロックを予定よりもさらに引き上げることになったため、パッケージも再考したのではないだろうか。しかし、そのために最初のWillamette-423/Tehamaプラットフォームは、非常に短命で存在意義の薄いものになってしまった。Intelは、Willamette-423/TehamaをNorthwoodの登場(つまり来年第4四半期)まで継続して出荷する見込みだが、メーカーもユーザーもWillamette-479に流れてしまうのは必至だ。


●複雑怪奇な来年のPCプラットフォーム

 最後に注目したいのは、ローエンドのバリューデスクトップだ。この市場へIntelはCPUコアにグラフィックスとチップセットを統合した「Timna(ティムナ)」を来年第1四半期に投入する。ややこしいことに、このTimnaもSocket 370と物理的にはほとんどそっくりのソケット「Socket 370s」を使う。しかし、Timnaは統合CPUだから、もちろんCoppermineや0.25μm版Celeron(Mendocino:メンドシノ)とは互換性がない。ソケットも、他のSocket 370 CPUが挿せないようにはなっているのだが、ソケットがまたひとつ増えてしまうことだけは確かだ。

 というわけで、Intelの2001年のデスクトップCPUとチップセットを概観したわけだが、状況はかなり複雑だ。移行期である来年中盤には、チップセットだけでもTehama、Tulloch、Camino3、Almadorの4つが併存し、チップセット統合CPUもTimnaとTimna+がある。もちろん、前シーズンのi820/820Eだとかi815/815Eだとかi810Eだとかのプラットフォームも市場にはまだ残っているわけだ。そして、ソケットは423と479と370と370sがあり、しかもSocket 370には新旧があり、使えるCPUと使えないCPUがあるという有様。Intelだけでこの状態で、しかもこの上にAMDプラットフォームまであるというわけだ。

 Slot 1とSocket 7“しか”なかった、あのころが懐かしい!?



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(2000年6月9日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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