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Platform 2000レポート

AMD、Athlon用AMD-760/770など2000年のチップセット計画を公開

1月26~27日 開催(現地時間)

会場:Silicon Valley Conference Center

 AMDは米国カリフォルニア州サンノゼで開催されたPlatform 2000で、同社の2000年のAthlon向けチップセットに関するセミナーを開催し、同社のチップセット戦略を明らかにした。今回はセミナーに登場したAMD コンピュテーションプロダクトグループ チップセットマーケティングマネージャのロン・ハッフ氏のインタビューも交えつつ、2000年のAMDのプラットフォーム戦略について紹介する。


●「Athlon 1GHzはThunderbirdをベースにしたものになる」とハッフ氏

AMDの2000年CPUロードマップ
 「AMD Athlon 2000 Update」と銘打たれたセッションで、ハッフ氏は2000年のAMDのCPUとチップセットに関するロードマップなどを公開した。CPUに関しては基本的に'99年11月のアナリストミーティングで説明されたものと大きな変化はない。若干異なっているのは、以前はThunderbirdとほぼ同等のタイムスケジュールになっていたSpitfireが、やや後になるというように変わっていることだ。これがThunderbirdの前倒しを意味するのか、Spitfireのスケジュールの遅れを意味するのかに関してはわからないが、気になる変更ではある。

 Thunderbirdの出荷時期に関しては、ハッフ氏は「2000年中頃」と答えるに留まった。なお、「1GHzのAthlonはThunderbirdコアで出荷されるのか、Mustangコアになるのか」という質問に対して、ハッフ氏は「おそらく」という前置きをつけてだが、「Thunderbirdコアをベースにしたものになる」と述べた。

 なお、日本で21日に開催された日本AMDのプレスミーティングで「無くなった」とされていたK6-III+だが、今回のハッフ氏のプレゼンテーションではちゃんと存在していた。このK6-III+はモバイル向けとして計画が進んでいるとハッフ氏は述べた。元々K6-III+はモバイルマーケット向けに展開されることになっており、11月のCOMDEX/Fallで配布されたモバイルCPUのロードマップでもそれは確認されていた。確かにK6-IIIの後継CPUはデスクトップのロードマップから消えており、どうやらそれが混乱の原因のようだ。従って、先日の日本AMDの発言は「(デスクトップPC向けのロードマップからは)K6-III+は消えた」という意味だったと考えればいいのだろう。


●デュアルCPUをサポートしたAMD-770を2000年後半に投入

AMDの2000年チップセットロードマップ。
 引き続いてハッフ氏はAMDの2000年のチップセットロードマップを公開した。それによると、2000年の後半にAMDはAMD-760とAMD-770と呼ばれる第2世代のAthlon用チップセットを公開するという。AMD-760は既に10月に開催されたMicroprocessor Forumで明らかにされていたチップセットで、266MHzのFSB、PC-2100/PC-1600とよばれるDDR SDRAMを搭載したメモリモジュールをサポートするのが大きな特徴だ。AMD-760とAMD-770の違いはサポートするチップセットの数で、AMD-760はシングルのみ、AMD-770はデュアル構成もサポートする。詳しい仕様は以下のようになっている。

AMD-760/770

 現時点ではAMDはシングルCPU用のチップセットしか持っていないため、デュアルCPUなどが必要とされるハイエンドワークステーションなどの市場には食い込めていない。しかし、このAMD-770が登場することでこの問題を解決することが可能であり、登場が待ち遠しいチップセットと言えるだろう。


●AMDのチップセットはハイエンドを、サードパーティはローエンドと役割分担

AMD コンピュテーションプロダクトグループ チップセットマーケティングマネージャ ロン・ハッフ氏
 また、セッション終了後にハッフ氏にインタビューする時間を頂いたので、以下にその模様を紹介していく。

★K6-III+は無くなったのではないのですか? 先週日本で行なわれたプレスミーティングではそうした説明がされましたが?

ハッフ氏:いいえ、K6-III+はモバイルマーケット向けに製品計画が進んでいます。確かにデスクトップ向け次世代K6-IIIの計画は無くなりました。しかし、モバイルマーケット向けに計画している0.18μmプロセスのK6-III+は予定通り製品計画が進んでいます。おそらく、モバイルマーケットとデスクトップマーケットを取り違えた間違いだと思われます。

★VIAがKX133などAthlon用のチップセットを計画しています。そちらとAMDチップセットとの違いを教えてください。

ハッフ氏:最初に当社のプロセッサをVIAなど多くのサードパーティがサポートしてくれることに感謝していることを述べさせてください。VIAやそのほかのサードパーティのチップセットの戦略は明確で、ローエンドからメインストリームを狙っていくということです。これに対して、当社のAMD-760に関してはハイエンドマーケットも狙っていきます。この点が大きな違いです。

★AMD-750のマザーボードはコスト高で知られていますが、解決できますか? 特に6層基板であることと、VRM(*1)周りのコストを指摘するマザーボードベンダが多いようですが?

ハッフ氏:確かに当社の初期のリファレンスマザーボードを含めて、6層基板が4層基板に比べてコスト高であったのは事実です。しかし、現在では4層基板向けの設計データを提供していますし、実際に4層基板のマザーボードを提供しているマザーボードベンダも存在します。

 VRMのコスト問題ですが、0.25μmのプロセスで作られたAthlonが消費電力量が多いなど電源周りの要求に関して厳しく、VRMのコストが高かったというのは事実です。しかし、既に当社は現在製造しているAthlonのすべてを0.18μmプロセスへと移行しています。0.18μmプロセスのAthlonでは0.25μmに比べて消費電力が低くなりますので、今後はそうした問題を解決できると考えています。

★IntelはIntel 810やIntel 820などで、ノースブリッジとサウスブリッジの接続にHub Interfaceと呼ばれるプライベートバスをサポートしています。そうしたプライベートバスをAMDのチップセットでサポートする予定はありますか?

ハッフ氏:ええ。我々はLDT(*2)と呼ばれる新しいシステムバスをサポートする予定です。LDTは実に1.6GB/秒と、Hub Interfaceの10倍近くのバンド幅を実現します。将来的にはこれをノースブリッジとサウスブリッジの間のバスとして採用する予定になっています。

★LDTはAMD-760/770でもサポートされますか? また、LDTはサードパーティのチップセットベンダがライセンスを獲得することも可能ですか?

ハッフ氏:いいえ。AMD-760/770の次世代からのサポートになります。サードパーティのベンダがLDTを利用する事は可能です。当社ではLDTをオープンスタンダードな規格と位置づけています。

【筆者注】
(*1)VRM:ほとんどのAthlon用マザーボードではCPUのスロットとI/Oコネクタの間に巨大なVRM(電圧変換装置)が装着されている。0.25μmのAthlonが消費電力が非常に多かったため、Pentium III用のマザーボードなどに比べてやや大きなVRMを必要としている。多くのマザーボードベンダはこのコストがネックとなりAthlonマザーボードのコストを下げることができないと主張している。

(*2)LDT:ピン当たり1.6GB/秒の高速バスでノースブリッジチップと各種I/Oチップ(サウスブリッジやIEEE-1394コントローラなど)間、あるいはノースブリッジチップ間を結ぶシステムバスアーキテクチャ。昨年10月にサンノゼで開催されたMicroprocessorForumで公開された技術。

(2000年1月28日)

[Reported by 笠原一輝]


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