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MP3再生が可能なリージョンフリーDVDプレーヤー


 以前、韓国製のMP3対応ラジカセを紹介したが、今回またまた怪しい家電製品を手に入れた。今度は中国製のDVDプレーヤーだ。株式会社マローズが発売している「DVD-838」がそれだ。

 中国製ということで、いろいろと怪しい機能が盛り込まれている。その中でも大きな特徴が、MP3再生機能を備えているという点だろう。MP3再生機能を持つ中国製のビデオCDプレーヤーもいくつか存在しているが、DVDプレーヤーはまだ数は少ない。

 従来、このような中国製の怪しいプレーヤーは、香港などのオンラインショップで購入するか、中国で直接買うしかなかったが、これは日本の販売会社が販売しているため、この手の製品にしてはかなり入手しやすい部類にはいるだろう。しかも販売価格が29,800円(税、送料別)と驚異的といってもいい安さだ。もちろん筆者もすぐに予約して購入した。そこで今回は、この怪しいDVDプレーヤーを紹介することにしよう。


■とにかく何でもありのDVDプレーヤー

DVD-838
 まず最初に、このDVDプレーヤーの仕様を簡単に紹介しておこう。
 最も大きな特徴は、リージョンフリーであるという点だろう。一般的なDVDプレーヤーでは、プレーヤー側で設定されているリージョンコード(地域コード)と、DVDソフト側のリージョンコードが一致しない限り再生できないが、このプレーヤーではプレーヤー側のリージョンコードが「フリー」になっているため、ソフト側のリージョンコードに関係なく全てのDVDソフトの再生が可能となっている。手持ちのDVDソフトで確認してみたところ、リージョンコードが「1」に設定されているソフトも全く問題なく再生可能だった。

 DVDだけでなくビデオCDももちろん再生可能で、VCD3.0やSVCD、DVCDといった、中国オリジナルフォーマットのビデオCDの再生にももちろん対応する。ちなみにSVCDはMPEG-2形式のデータを収録したビデオCDだが、それ以外のフォーマットもそれに準ずるものと思われる。ただ、筆者はこれらオリジナルフォーマットのビデオCDを所有していないため、本当に再生できるのか、画質がどの程度なのかは不明だ。

 また、MP3データの再生が可能という点も大きな特徴だ。MP3データが書き込まれたCD-RまたはCD-RWを入れれば、書き込まれたMP3データを再生できる。MP3データの再生に対応した中国製のビデオCDプレーヤーも存在していたが、ついにDVDプレーヤーも対応してしまったわけだ。さすが中国といったところだろうか。

 再生コントロールは、再生、ポーズ、チャプタースキップ、最大4倍速の早送り・巻き戻しが可能。リモコンの10キーでチャプターや音楽CDの曲番を直接入力したり、任意区間・チャプター・1曲・全曲リピートも可能となっている。DVD再生時のオーディオトラックと字幕の選択や、ディスプレイモード(レターボックス・パンスキャン・ワイド)の選択などといった基本的な設定ももちろん可能だ。

 対応フォーマットの多さだけでなく、機能面も思ったより悪くない。音声出力は2チャンネルダウンミックスのステレオ出力だけでなく、ドルビーデジタルデコーダを内蔵し、5.1チャンネルのアナログ音声出力や、同軸と光のデジタル出力に対応する。デジタル出力ではドルビーデジタル信号だけでなく、DTS信号も出力できる。映像出力はコンポジットとSビデオ出力に対応。映像出力はコンポーネント出力がないためDVDプレーヤーとしてはやや弱いが、ドルビーデジタルやDTSに対応し、さらにドルビーデジタルデコーダを内蔵し5.1チャンネルのアナログ出力が可能という点は、価格を考えるとかなり魅力ではないだろうか。

 ところで、本体内部を覗いてみたところ、DVDデコードチップにはESS Technologyの「ES4408U」が、ビデオエンコーダにはANALOG DEVICESの「ADV7175」が採用されていた。また、DVDドライブおよびピックアップは日立製のものが採用されているらしい。

 DVDソフトの再生画質は、ソースの情報をほぼ忠実に再現しているようで、独自の絵作りはまったく行なわれていない雰囲気だが、十分満足できる画質といっていいだろう。筆者は既に松下電器産業製の据え置き型DVDプレーヤー「DVD-A770」と、先日発売されたばかりの「プレイステーション2」を持っているが、それらと比較しても大きく画質が劣っているとは感じなかった。

DVD-838の内部構造。中央部がDVDドライブで、右側手前の基板がデコードなどのデジタル処理を担当、右上の基板が映像・音声出力を担当しているようだ
中央がDVDデコードエンジンのES4408U、右上がビデオエンコーダのADV7175
裏面の端子。ドルビーデジタルAC3、5.1チャンネルのアナログ音声出力や2チャンネルミックス出力、同軸と光のデジタル音声出力、コンポジットとSビデオ出力の端子がならぶ
付属のリモコン。日本製のプレーヤーとはボタンの形や配列が大きく異なっており、慣れるまではかなり使いづらい


■MP3データの再生機能は未完成の部分が多い

 では、ここからはMP3再生機能について検証してみることにする。まず初めに、ファイルネームやフォルダ名に全角文字やロングファイルネームを使用しない状態で検証した。

 手持ちのMP3データを適当にCD-Rに焼き、きちんと再生されるかどうか検証してみた。筆者手持ちのMP3データは、ほぼ全て、Fraunhofer IIS製の「MPEG Layer-3 Producer」を利用し、ビットレート128bpsでエンコードしたものである。そのデータを、CD-Rライティングソフトに「WinCDR 5.00h」、CD-Rドライブにヤマハの「CDR400」を利用し、CD-Rメディアは日立マクセルの「CD-R74XL.C1P」に書き込んで試してみた。

 再生に大きな問題はなかった。MP3データをルートフォルダだけでなく、サブフォルダを作ってその中に入れても大丈夫だった。

 ただ、MP3データのファイル名やID3タグ情報などはテレビ画面に全く表示されない。MP3データを入れたCD-RをこのDVDプレーヤーに入れると、テレビ画面にフォルダ名(ルートフォルダを含む)の一覧が表示される。その中から再生させたいデータが含まれるフォルダを選択し「Play」キーを押すと、そのフォルダに移動するのだが、そこでテレビ画面に表示される情報は、そのフォルダに含まれるMP3データの数だけなのだ。再生時には、その中から何番目の曲を再生するか選択することになる。これでは、希望の曲を選択することは不可能といっていいだろう。ID3タグ情報はともかく、最低限ファイルネームぐらいは表示できるようにしてもらいたかった。

 ちなみに、再生の順番は非常に難解だ。基本的にはファイルネーム順のようで、サブフォルダがある場合には、現在のフォルダに含まれる曲を全て再生し終わると、次のフォルダ(フォルダの移動もフォルダの名前順)に移って再生が続いていくようだが、ファイルネーム順にならない場合もあったりするからややこしい。きちんと順番がわかるようにファイルネームを付けて書き込んだ場合でも、予期したとおりの順番で再生されないことがあった。かといって、ファイルを書き込んだ順番でも、ランダムで再生されているわけでもない(もともとランダム再生機能は用意されていない)。

 また、フォルダが3階層以上作られている場合は、階層の浅い順に移動していく。例えば、右に示したように、A、B、Cという3つのフォルダが作られていた場合、移動順は(ルート)→(A)→(C)→(B)となる。なんとも不思議な仕様だ。

 ところで、WEBでの説明や付属のマニュアルの記述によると、ISO9660フォーマットで作成された、「2チャンネルステレオフォーマット」のデータが含まれるCD-R/RWについて再生可能となっている。そこで、下に示したような様々なフォーマットのMP3データを用意し、そのデータをCD-Rに書き込んで、それらがきちんと再生できるかどうかも試してみた。利用したMP3エンコーダは、フリーのMP3エンコーダとして人気の高い「午後のこ~だ ver. 2.26」で、CD-Rライティングソフトは「WinCDR 5.00h」、CD-Rドライブはヤマハの「CDR400」を、CD-Rメディアは日立マクセルの「CD-R74XL.C1P」をそれぞれ利用した。


【用意したMP3データ】
ビットレート64kbps・2chステレオ
ビットレート96kbps・2chステレオ
ビットレート112kbps・2chステレオ
ビットレート128kbps・2chステレオ
ビットレート160kbps・2chステレオ
ビットレート192kbps・2chステレオ
ビットレート256kbps・2chステレオ
ビットレート320kbps・2chステレオ
ビットレート128kbps・2chステレオ・可変ビットレート
ビットレート128kbps・ジョイントステレオ
ビットレート128kbps・ジョイントステレオ・可変ビットレート
ビットレート128kbps・M/Sステレオ
ビットレート128kbps・M/Sステレオ・可変ビットレート
 結果は、どのデータも全く問題なく再生可能であった。また、データをCD-Rのルートフォルダに入れても、サブフォルダを作ってその中に入れても再生に問題はなかった。 最後に、ファイルネームに全角文字が含まれていたり、ロングファイルネームになっている場合の挙動だが、日本の販売元である株式会社マローズのホームページにあるWEB会議室の報告など見ると、再生が正常に行なわれなかったり、最悪の場合、DVDプレーヤー自体がハングアップ(!)してしまい、電源ケーブルを抜かない限り復帰できない、という症状が報告されている。実際に試してみたところ、確かにファイル名に全角文字が含まれていたりロングファイルネームのMP3データが正常に再生できない場合があり、再生できない状態でしばらく置いておくと、DVDプレーヤーがハングアップしてしまった(すぐにその曲をスキップすればハングアップを回避できる)。また、全角文字が含まれるフォルダは認識されなかった。

 ただ、ロングファイルネームや全角文字が含まれるデータでも中には問題なく再生できるものもあった。この点について規則性を探してみようと、いろいろなファイルネームを付けて試してみたが、はっきりとした規則性は確認できなかった。

 ちなみに、ファイルネームが半角8文字+拡張子3文字(ただし拡張子は「MP3」以外は不可)で付けられているデータであれば、少なくとも手持ちのデータに関してはトラブルなく再生可能であった。

DVD-838にMP3データを書き込んだCD-Rを入れた場合に最初に表示される画面。これはフォルダの一覧で、この中から再生させたいフォルダを選択する
MP3データの再生中は、フォルダに納められているMP3ファイルの数と、現在再生しているファイルの番号が表示されるだけで、ファイル名やID3タグ情報などは全く表示されない


■作り込みが甘く、日本製のプレーヤーにはかなわない

 MP3ファイルの再生機能には、上記のようにいくつかのトラブルが確認された。さらに、DVDプレーヤーとしてもいくつか気になる点があった。

 まず、一部のDVDソフトで再生画像にブロックノイズが生じるなどのトラブルが発生する点。手持ちのソフトのうち、宇多田ヒカルの「UH1」でその症状を確認した。ちなみに、マローズの会議室では、これ以外のソフトでもいくつかトラブルが報告されているものがある。

 また、リモコンやスクリーンメニューのユーザーインターフェイスがとにかくわかりづらい。電源がスタンバイ状態になっている状態で再生ボタンを押したりトレイのオープンボタンを押しても全く反応してくれない。スタンバイボタンを押して電源が入った状態でなければ、どのボタンを押しても全く反応しないのだ。日本製の家電製品では考えられない使いづらさである(こういったユーザーインターフェイスの問題はアジア製の家電製品では珍しいことではないが)。

 これ以外にも、5.1チャンネル出力のスピーカー設定が中途半端(ON、OFFの設定しかできず、スピーカーサイズを指定できない)だったり、5.1チャンネル出力時には2チャンネルミックス出力からセンターの音が出なかったり、デジタル出力時にはヘッドホン端子から音が出なかったり、といった具合である。

 いろいろと制限や問題点が多く、これを1台目のDVDプレーヤーとして購入するのはおすすめしづらい。しかし、MP3データも再生できるリージョンフリーDVDプレーヤーが29,800円で手に入るということを考えると、多少の問題点も我慢できなくはない。もし、MP3を利用した音楽の長時間再生や、海外のDVDソフトを再生したい、といった用途を求めているのであれば、検討に入れてみてもいいのではないだろうか。

 ちなみに、3月出荷分からファームウェアが変更され、ユーザーインターフェイスやDVDソフトなどの再生に関する問題が改善されるようだ。また、既に購入したユーザーに対しても、有償でアップグレードを実施するそうだ。この変更によってどれだけ完成度が上がっているのかは現状では不明だが、少なくとも悪くなることはないだろう。


□マローズのホームページ
http://www.dvdnow.co.jp/

[Text by 平澤 寿康@ユービック・コンピューティング]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp