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MP3付きカセットプレーヤーとCDラジカセが合体
「SAMSUNG mymy&WINGOレポート」


 MPMANをはじめ、多数のMP3プレーヤーを送り出している韓国。先日ソウルに訪れたときも、地下鉄車内にポータブルMP3プレーヤー「yepp」の広告があったりして、改めて韓国がMP3先進国であるという印象を強く受けた。

 その韓国でおもしろい製品を発見した。その製品とは、MP3対応のウォークマンタイプのポータブルカセットレコーダーが付属するCDラジカセである。既に韓国ではこのようなCDラジカセにまでMP3の波が押し寄せているとは驚きだ。今回その製品の入手に成功したので、どういったものなのか紹介することにしよう。


■ポータブルMP3カセットレコーダーが付属するCDラジカセ

韓国SAMSUNGが発売するMP3対応CDラジカセ、YM-MP540。MP3対応ポータブルカセットレコーダーYM-MP10とCDステーションRCD-C5がセットになった製品だ
 今回紹介する製品は、韓国SAMSUNGが発売している「MY-MP540」というものだ。SAMSUNGといえば、ポータブルMP3プレーヤー「yepp」(日本ではクリエイティブメディアがNOMADとして発売している)の開発メーカーとしておなじみだが、日本でいうところのソニーや松下電器産業にあたる韓国の最大手家電メーカーである。そのような大手メーカーがMP3対応製品を多数発売しているわけである。日本ではMP3関連製品はまだ一部のマニアだけが楽しむものというイメージがあるが、韓国では既に市民権を得ているようで、この製品やyeppなどのMP3対応製品が、ソウル最大のデパート、ロッテデパートの家電売場でも平然と販売されていた。

 この製品の特徴は、MP3に対応したカセットレコーダー部が本体と分離できるという点だろう。CDプレーヤーとAM/FMチューナー、スピーカーが用意されている本体に、付属するMP3対応ポータブルカセットレコーダーをドッキングさせればCDラジカセとして利用できる。もちろん、MP3対応ポータブルカセットレコーダーだけを切り離して持ち歩けば、ウォークマンとして利用できるというわけである。

ポータブルカセットプレーヤーは、FMラジオチューナーとMP3再生機能が搭載されている。クリップ型のリモコン、単3電池ホルダーも付属している
 ポータブルカセットレコーダー部は、MP3に対応しているだけでなくFMチューナーも搭載している。これだけで、カセット、MP3、FMラジオを楽しむことができるわけで、かなり高機能。また、ヘッドホンを接続するケーブルには液晶ディスプレイを搭載するクリップ型リモコンが用意されている。液晶ディスプレイには、再生状況やFMチューナーの周波数などの各種情報が表示されるが、MP3ファイルのファイル名やID3タグ情報などは表示されない。本体サイズは、78.5×23.9×109mm(幅×奥行き×高さ)。ポータブルカセットレコーダーとしてはやや大きいといった印象を受ける。電源にはウォークマンなどでもおなじみのガム型電池を1本利用する。また、乾電池ホルダーが付属しており、単3乾電池1本で動作させることも可能。重量はマニュアルに記載されていないが、ガム型電池2本を搭載したMPMANよりやや重いといった感じだ(正確な数字は今後計測して掲載することにする)。

 デザインも悪くない。録音ボタンなどの一部のボタンがかなり小さく、やや使いづらいものの、中心部に円形に配置された再生操作ボタン、その中央部は内部が透けて見えるようになっており、そこにはMP3再生関連のICチップが見えている。なかなかサイバーなデザインで、筆者は嫌いではない。ただ、CDステーションの、アンモナイトのような、折り紙の兜のようなデザインは、日本人にはあまり受け入れられないかもしれない。ただ、こういった円を多用するデザインは、他のSAMSUNG製品にも多く見られるため、韓国ではかなりポピュラーなデザインなのだろう。

サイズはMPMANより一回り大きく、厚さもかなりある。ただ、ウォークマンと比較すると、それほど大きいというわけではない 再生コントロールボタンは、中央の円形部分に配置されている。ただし、その下に3つ配置されている録音ボタンや機能設定ボタンなどが非常に小さく、やや操作しづらい 中央部円形の小窓の奥には、MP3再生用と思われるICチップが見え、なかなかサイバーな雰囲気だ。右はmpman。

 MP3部のスペックだが、MP3ファイルを保存するためのメモリは32MB搭載されており、外部メモリは利用できない。MP3ファイルの転送は、PCのパラレルポート経由で行なう。MP3プレーヤーとしてはほぼ一般的なスペックといえるだろう。メモリ容量がやや少ないという印象もあるが、この製品の場合カセットの方がメインと考えられるため、この程度の仕様になっているのだろう。また、再生機能としては1曲リピート、全曲リピートが用意されているが、ランダム再生、プログラム再生などの特殊再生機能は用意されていない。

 MP3の再生音質は悪くなく、かなり良い部類にはいるといっていいだろう。具体的には、yepp(NOMAD)とほぼ同程度の音質だ。ポータブルMP3プレーヤーの中でもトップクラスに位置する音質といっても過言ではない。MP3部分はおまけ的な存在ではなく、かなりしっかり作られているという印象だ。それだけに、搭載メモリ容量の少なさが残念である。

 ちなみに、この製品の愛称はよくわからない。製品パッケージとCDステーションには「WINGO」というロゴが大きく書かれているが、ポータブルカセットレコーダーには「mymy」というロゴが書かれている。また、双方に独立した型番が用意されている。どうやら、mymyという愛称のポータブルカセットプレーヤーをドッキングさせて利用できるCDステーションWINGOがセットになった製品のようだ。

 また、この製品は韓国向けのため、電源は220V、FMチューナーも周波数87.5~108MHzとなっている。日本で利用する場合には昇圧トランスが必要となり、FMチューナーは日本で割り当てられている周波数とずれているためほぼ利用できない。韓国内での販売価格は529,000ウォン。10ウォンは約1.1円ほどなので、かなりいい値段だ。

カセットを挿入する蓋は裏側にある。再生だけでなく録音もできる。もちろんオートリバースだ ウォークマンなどでおなじみのガム型電池を利用する。付属の単3乾電池ホルダーを利用すると、より長時間の利用が可能 クリップ型リモコンの液晶ディスプレイには、再生時間や再生モードなどの情報が表示される。リモコンでは再生コントロールや音量調整だけでなく、カセット、FMチューナー、MP3の機能切り替えも可能


■製品仕様は謎な部分がかなり多い

 さて、ここまでの紹介を見る限りでは、この製品はかなり魅力的な感じに映るかもしれない。しかし、細かな仕様を見ると、かなり謎な部分が多いのである。

 まず、ポータブルカセットレコーダーをCDステーションにドッキングさせると、それだけでカセットやMP3ファイルの再生音がスピーカーから流れたり、CDからカセットへの録音、MP3ファイルの転送などがおこなえるようになっているのではないか、と考えるのが普通だろう。おそらく、日本のメーカーが同じような製品を作った場合、上記のような仕様になると思われる。しかし、この製品の場合、ポータブルカセットレコーダーをCDステーションにドッキングさせただけでは、ガム電池の充電しかできない。

CDステーションのドッキング部には、電源供給用の端子しか用意されておらず、ポータブルカセットレコーダーを取り付けただけではバッテリの充電しかできない 奥のガム電池ホルダーを利用すれば、ガム電池1本を充電可能

 CDステーション上部に用意されているドッキング部分には、ポータブルカセットレコーダーに電源を供給する2つの端子しかない。つまり、ドッキングさせただけでは、どう考えてもカセットやMP3ファイルの再生、CDからカセットへの録音はできないのである。

 では、カセットやMP3ファイルの再生音をCDステーションのスピーカーから再生したり、CDからカセットに録音する場合にはどうするのか。それは、付属のケーブルを接続する必要があるのだ。

CDステーション背面のコネクタ。カセットやMP3を再生させたり、CDを録音したり、MP3データを転送するときには、これらコネクタとポータブルカセットレコーダーをケーブルで接続する必要がある
 CDステーション背面には、LINE IN端子とLINE OUT端子が用意されている。それらの端子と、ポータブルカセットレコーダー側のヘッドホン端子、LINE IN端子をそれぞれ接続することで、カセットやMP3ファイルの再生音がスピーカーから再生されたり、CDをカセットに録音したりできるのである。こういった仕様なので、CDをカセットに録音する場合でも、当然ながらCDとカセットレコーダーはシンクロなんかしてくれず、個別に操作する必要がある。

 ちなみに、ドッキング部にはガム型電池1本を充電できるスロットが用意されているので、ポータブルカセットプレーヤーをドッキングさせて利用しているときでも別途用意したガム型電池を充電できるが、だから何、という気がしないでもない。

 次にMP3ファイルの転送に関して。せっかくこういったCDラジカセのような形式になっているのだから、CDプレーヤーから直接MP3ファイルを作成して転送できればとても便利なのだが、残念ながらMP3ファイルを転送する場合にはPC経由で行なうしかない。つまり、PCでMP3ファイルを作成するなどして保存しておき、そのファイルを転送するしかないのである。

PCからMP3を転送する場合には、CDステーション背面のパラレルポートとPCのパラレルポートを接続する
 CDステーション側にはPCのパラレルポートと接続するコネクタが用意されており、パラレルケーブルも製品に付属している。そして、PC側に付属の「MP3 Explorer」という専用転送ソフトをインストールし、その転送ソフトを利用してMP3ファイルを転送することになる。しかも、CDステーションとポータブルカセットレコーダーをドッキングさせただけではMP3ファイルを転送できない。この場合も、専用のケーブルで接続する必要があるのだ。

 ちなみに、端子数から考えて、CDステーションからポータブルカセットレコーダーへの転送はパラレルではなくシリアルと思われる。PCからステーションへはパラレルで転送し、ステーションからプレーヤーへはシリアルで転送する。この仕様はMPMANやyepp(NOMAD)と同じだ。また、転送ソフトのMP3 Explorerは、日本語Windows 98上でも正常に動作するが、日本語のファイル名などは正常に表示されない。ファイル転送速度は約330kbpsほど出ている(転送ソフトに表示される)ため、速度は満足できる。

 しかしここで別の問題が発生した。それは、MP3ファイル転送時にはCDステーションのCDやラジオを全く利用できなくなるという点だ。MP3ファイルを転送するときには、CDステーションの機能切り替えスイッチを「AUX」、外部入力再生モードにしておかなければならないのである。ファイル転送時にCDやラジオを聞きたいと思っても、CDやラジオは利用できない。しかも、ファイル転送後も、一度電源を落とさないとCDやラジオの再生ができなかった。この仕様はちょっといただけない。ファイル転送時にCDやラジオが再生できないのはまだ我慢できるとして、転送終了後にCDやラジオを再生できないのは明らかな不具合といえるのではないだろうか(もともとこういった仕様なのかもしれないが、マニュアルはハングルで書かれているため確認できない)。

付属品。クリップ型リモコンとヘッドホン、単3乾電池ホルダーに加え、音声ケーブル、MP3データ転送用ケーブル、パラレルケーブルが付属している。また、専用転送ソフト(Windows 95/98用)が収録されたCD-ROMも1枚付属している WINGO17:CDステーションとPCのパラレルポートをケーブルで接続し、CDステーションとポータブルカセットレコーダーをMP3データ転送用ケーブルを接続。そして、前面の「FUNCTION」ボタンを「AUX」にあわせればMP3データ転送の準備完了 カセットやMP3を再生したり、CDを録音するときには、このように双方のLINE INとLINE OUTを接続する 付属の専用転送ソフト「MP3 Explorer」。転送したいMP3ファイルをドラッグ&ドロップするだけで転送可能。使い勝手は良い。ただし、日本語のファイル名が付いているファイルは、ファイル名が化けて表示される


■詰めの甘さ感じるものの、コンセプトは悪くない

 以上のように、細かな仕様を見ると、作り込みの甘さや謎な仕様が多数見えてくる。CDステーションとポータブルカセットレコーダーをドッキングできるにもかかわらず、ケーブルを接続しなければ録音・再生やMP3ファイルの転送ができないという仕様は、かなり手を抜いていると思われてもしかたがないだろう。流行のMP3機能を搭載することで話題にさえなればいいという考えで作られたのかもしれないが、製品のコンセプト自体は悪くないだけにかなり残念である。

 ところで、日本でも今年末から来年にかけて、多数の家電メーカーからMP3プレーヤーが発売される予定になっており、筆者としてもかなり期待している。ただ、既にあるPCに接続して利用するポータブルMP3プレーヤーと同じような仕様の製品ではなく、オリジナリティ溢れる製品の登場を期待しているのは筆者だけではないはずだ。もちろん、今回紹介したような製品を参考に、などということを言う気はないが、魅力のある製品の登場を期待したい。


[Text by 平澤 寿康@ユービック・コンピューティング]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp