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第34回 : Windows 2000よりも興味をそそられること



■ CESが証明する新しい時代

 新年あけましておめでとうございます……と言うには少々遅い日付ですが、本年も連載を続けていくことになっています。今後ともよろしくお願いいたします。
 と、型どおりの書き出しで始まってしまったが、盛んに報道が繰り返され、オイルショックの再来かと思うほど備蓄をする人まで登場したY2Kも、恐怖の大王が降らなかったように通り過ぎ、この問題に年末年始の時間を失った人たちの苦労とは関係なく、多くの人たちからは忘れられようとしている(もっとも、Y2Kは2001年への切り替わりでも問題発生の可能性はあるのだが)。

 それよりも業界は、年明け早々に「2000 International CES」の話題で持ちきりだ。CESはコンシューマエレクトロニクスの隆盛と共に大きくなったものの、PCがパーソナルツールとして盛り上がってからは押されっぱなし。その規模を縮小してきた。
 しかしここ2年ほどのCOMDEX報道でもわかるように、一度PCに向いてきたコンシューマの興味は、PC業界で標準化とインフラ整備が進んだことにより、再度、家電のようなアプライアンス製品へと移ってきた。何度進化を繰り返しても、なかなか簡単な製品にはなりにくいPCよりは、手軽に安く使えるアプライアンスの方が使いやすい。'99年11月のCOMDEX/Fallでは、PCをアレンジしてアプライアンス化した情報端末や、インターネット接続やPCとの相互運用を考慮しながらも、最初からアプライアンスとして設計された製品など、さまざまな製品が登場してきている。
 これは従来、新技術、新機能、新アイディア、新用途を提案し、毎年のように新しいイノベーションを捕まえようとしてきたCOMDEX/Fallとは、少々違う方向性を示している。COMDEXがCES化してきたと言っていいかもしれない。ということで、今回の2000 International CESが盛り上がるだろうことは、ずいぶん前から言われていたことだった。

 僕自身は年始早々の開催ということで、2000 International CESに出かけることはできなかったのだが、かつて隆盛を極めたCESが復活してきたことは、情報デバイス、特にモバイル系デバイスの流行が確実に変化していることを示すものと言えそうだ。


■ Windows 2000よりも期待するもの

 個人的にWindows 2000は待ち続けている製品だ。発売直後の対応状況がどうなるかは別として、それほど時間をかけずして、Windows 98と同等の環境をWindows NTベースのOSの上で利用できることは喜ばしい。友人の一部は、Windows 98でも充分に信頼性があると言うのだが、少なくとも我が家においてWindows 98は否定されている。なんにせよ、止まる(フリーズする)可能性が下がることは喜ばしい。

 世の中は、やれMac OS X(昔、PC版が出たころに使っていたNeXTSTEPが復活することで多少興味はある)だ、Linuxだと、相変わらずOS論争が続いているものの、最近はそうした「こっちの水は甘いぞ」論争には興味がない。目的を効率よく達成できれば、プラットフォームなんてなんでもいい。モンブランの万年筆は、確かにすばらしい逸品かもしれないが、かといって誰かに強制して使わせるものでも、使わさせられるものでもない。
 Windows 2000は自分にとって必須の製品になるだろうが、僕の環境が新しい世代へと切り替わるのは必然であって、待ち続けてはいるけれども、とりたてて胸をかき鳴らすような期待はしていない(その内容を十分知っているからというのもあるが)。

 それよりも面白いと感じているのは、やはりネットワーク上で提供されるアプリケーションサービス。無料のWeb電子メールがもっとも一般的だが、MSNの提供しているWebコミュニティなど、新しいコンシューマ向けのサービスが開始されつつあるのはウレシイ。
 また、一部のサービスベンダーがサービスを開始しつつある、ネットワーク上のカレンダリングサービス(スケジューラなどのサービス)も、GooやMSNなどがこの春のサービスインを目指している。どんなインターネットに接続可能なデバイスからでも、同じスケジュールデータにアクセスできるわけで、このサービスが発展すればPDAに大きな変化をもたらすだろう。
 MSNの担当者に話を聞いてみると、MSNの各種サービスは、すでに内部的にはXMLベースでアプリケーションを構築しているそうだ。コア部分をXMLで構築し、端末からのインターフェイスとなる部分をカスタマイズすることで、さまざまな種類の端末に対応するためだ。現在はPCのWebブラウザをフロントエンドとしたインターフェイスしか持たないが、今後の開発次第ではさらに幅広いデバイスへの対応が期待される。
 同様のサービスは、たとえばcdmaOneのEZ Webなどでも実現されており、PCと携帯電話で同じスケジュールやアドレス帳にアクセスすることが可能になっているが、同様のことが特定端末ではなく、好みの端末でできるサービスが、年内に登場することになるだろう。


■ PHSの巻き返しなるか

 このところ、携帯電話の話を何回もしていたら、DDIポケットの広報担当者からの年賀状に「もうPHSには興味ありませんか?」と書かれていた。だからというわけではないが、PHSにももちろん大きな期待をしている。特に2000年はPHSに大きな変化が起こる年になりそうだ。
 そもそも、携帯電話に注目していたのはパケット通信が行なえるからにほかならない。全くの私見だが、地方での通信が比較的行ないやすいとか、高速道路での通信が行ないやすい、というメリットはあるものの、モバイル用途での携帯電話はパケット通信以外に魅力を感じていない。
 昨年末、たまたまDDIポケットのH"(エッジ)を使う機会があったのだが、その性能に驚かされた。高速道路で巡航しながら、一緒に旅行をする仲間の車と連絡を取り合うのに全く不自由を感じなかったのだ。利用したのは関越道だったため、もう少し都心からはずれた高速道路での状況は不明なのだが、少なくとも移動しながらの利用で不満を感じることは全くないだろう。
 その上、DDIポケットは年内に128Kbps通信やパケット通信にも取り組む。見た目にも、機能的にも携帯電話との差を感じなくなったエッジ端末もカラー化が行なわれる。簡易携帯電話といった呼び名をされるPHSだが、少なくとも電波の届く範囲であれば、携帯電話よりも格段に使いやすい。
 PHSのパケット通信サービスが開始されれば、おそらく僕は(PHSの使えない場所に行く時以外)携帯電話を使うことがなくなるだろう。僕にとって今一番待ち遠しいのは、携帯電話を捨てることで、PHSと携帯電話の両方を持ち歩く生活から離れられるようになることだ。

[Text by 本田雅一]


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