UQ WiMAXアダプタ購入レポート
UQコミュニケーションズによるモバイルWiMAXのサービスが始まり約1月が経過した。現在は、お試し期間となっており、モニター当選者はアダプタが無償貸与され、月額料金なども無料でサービスを試用できる。 すでに各メディアでもレビューなどが掲載されており、7月の本サービス開始時には自分も利用したいと考えているユーザーもいるだろう。しかし、意外と知られていないことだが、実はモニターに外れた人や応募しなかった人でも、すでに同社から通信アダプタを購入できるようになっており、6月いっぱいまではモニター当選者同様、月額料金なしで利用できる。というわけで、本レポートでは、アダプタ購入までの道のりと、検証結果についてお伝えしたい。 ●購入申し込みは電話経由のみ UQのサービスが開始されたのは2月26日だが、モニター募集同様、アダプタ購入の申し込みもそれに先んじで開始されていた。筆者が購入申し込みを行なったのは2月20日だった。なお、個人のクレジットカードを持つ成人であれば、対象地域外(東京23区と神奈川の横浜市/川崎市)在住のユーザーでも購入できる。価格は12,800~13,800円。当然だが、対象地域内でないと利用できないので注意されたい。 まずちょっと面食らったのが、アダプタの購入は電話経由のみという点だ。これは今でも変わりない。ISPへの申し込みや、ショッピングもオンラインに慣れきった身には、やや面倒くさく感じてしまう。 なにはともあれ、それ以外の方法がないので、同社のサイトに掲載されている番号に電話をかける。当時はモバイルWiMAXへの期待がかなり高まっていたが、電話はすんなりとつながった。 そこで、アダプタを購入希望であることを伝えると、自宅住所および主な利用場所を聞かれた。これは、それらの場所における電波状況から、サービスを利用できるかどうかをその場でチェックするためである。 筆者の場合、自宅は板橋区大谷口で、今回は検証が主な目的であることから、主な利用場所というのはないのだが、ひとまず会社の住所(千代田区三番町)を伝えた。すると、この2カ所では、基本的に利用できるが、周囲に電波状況の悪いところも散在しているとのことだった。また、それ以外のお試し期間対象地域でも、一部利用できない場所があり、その点について了承を求められた。 そして最後に告げられるのが、自宅に購入申し込み用紙が送られてくるということだ。つまり、この時点でも購入申し込みは完了しておらず、用紙に記入して返送する必要がある。参考までにと、アダプタがいつ頃届くのか目処を聞いてみたのだが、申し込みが殺到しており、いつになるかは未定とのことだった。 そして24日に申込用紙が到着。これに氏名、住所などの情報とともに、クレジットカードの情報を書き添え、25日に投函したところ、3月3日に新規申し込み手続きが完了した旨を知らせるメールが届いた。 ここでもう1つ驚いたというより、不満に思ったのが、契約日が3月3日になっていた点だ。というのも、この時点ではアダプタが手元に届いておらず、利用できないからだ。通常こういった手続きでは、商品が後に届くことを想定して、契約日はそれ以降になっているものだ。現時点では、月額利用料金は発生しないので、実害はないものの、有料サービスの時にはこの点を改めて欲しい。 そうしてアダプタが届いたのは3月5日だった。同社にとってもっとも繁忙と思われる2月末の申し込みであることを考えると、思ったより早く届いたというのが率直な感想だが、もっと前に申し込んだBB Watch編集部では2月26日にはカードが届いていたので、このあたりの手際は良いようだ。 ●ドライバのインストール 今回購入したのは、USBコンパクトタイプの「UD01SS」だ。このアダプタは、本体サイズが27×62×11mm(幅×奥行き×高さ)、重量が18gと軽量コンパクトで、外付けとはいえ、持ち運びに不便さを一切感じない。
本製品のドライバは、本体内のメモリに収録されている。ただし、接続ユーティリティは別途CD-ROMで提供されており、それぞれをインストールする必要がある。発表会で聞いた話では、このユーティリティから契約サイトにすぐ接続できるようになっているので、別途回線がなくても契約可能とのことだった。実際にはすでに契約が完了しており、電波の届いている場所なら、自動的に接続され、すぐにインターネットを利用できた。 ただし、このユーティリティは、権限の昇格ができていないようで、Windows Vistaでは、起動時にUACによる警告が出る。それだけならまだしも、スタートアップに登録されるので、再起動の際には自動的に起動しようとするのだが、Windows Defenderにブロックされてしまい、明示的に起動を許可する必要がある。この点は、早急に改善を望みたい。
また、接続する度に、接続した日付の名前のフォルダがシステムドライブのルートディレクトリ下に生成されるのも気になった。フォルダの中身は空で、削除しても不具合はないため実用上問題はないが、バグであることには間違いない。 さらに試した個体の問題かもしれないが、アクセスポイントが変更される度にWindows Vistaの「ネットワークの場所」がポップアップ表示されて、設定を促される不具合もあった。あっちこっち移動していたら、最終的に10カ所目の設定をするハメになってしまった。 最初はこれは、アダプタを問わずそういう仕様なのかと思っていたが、モバイルWiMAXをMVNOにてサービス提供している、ニフティ株式会社から借用したコネクタ可動式USBタイプの「UD01NA」では、そういった不具合はなかった。また、ユーティリティも本体内に収録されており使いやすかった。 それぞれ製造元が違うので、このような事態になっていると思われるが、ユーティリティぐらいは統一すべきだろう。ちなみに、対応OSはアダプタのタイプを問わずWindows XP/Vistaの32bit版のみとなっている。 ●場所によって利用状況に大きな違い まず、板橋区の大谷口で試した結果は、1DKのアパート1階で全くといっていいほど電波が入らなかった。いろいろ場所を変えてみたところ、ノートPCを手に持って、窓にくっつけるくらいにすると辛うじてつながったが、これでは利用可能とは言い難いので、利用不可と判断した。自宅の外であれば、一応つながったがアンテナはゼロ本の状態だった。どうやら、不遇な場所にあるらしい。
というわけで、PC Watchのほかのスタッフが別の場所でテストをしてもらった結果を紹介する。以下の結果はVAIO type Pで、仕様はAtom Z540(1.86GHz)、メモリ2GB、64GB SSD、Windows Vista Business。利用したスピード計測サイトはRBB Speedだ。WebブラウザはInternet Explorer 7。 まずは定点計測ということで、一歩も歩かずに静止したまま3回計測した。会社付近の靖国通りの東郷公園入り口交差点で試してみたところ、1回目と2回目は下り760Kbps前後、上りは180Kbps前後となった。一方3回目は下り276Kbps、上り48Kbpsと著しく落ちた。ソフトウェアで確認できるアンテナ状況は2本程度だったので、どうやらこの近辺のアンテナ状況は思わしくないようだ。 次に千代田社会保険事務所で計測した。1回目と2回目は下り11Mbps前後、上りは1回目が707Kbps、2回目が320Kbpsだった。3回目は下り5.54Mbps、上り270Kbpsに落ちた。靖国通りと比較するとアンテナは3本程度で、スピードは向上したが、通信が不安定な印象だ。 そして有楽町駅前のビックカメラ南口で計測した。こちらは3回ともに下りは12Mbps前後、上りは600Kbps前後と、安定して通信が行なえた。どうやら基地局に近いらしく、アンテナは5本立っている。基地局までの距離が通信速度と安定性に大きく関係するようだ。 次に同じ屋内で異なる場所に移動したときに計測したものを紹介しよう。機材はEndeavor Na01 miniで、仕様はAtom N270(1.60GHz)、メモリ2GB、HDD 160GB、OSはWindows XP Professionalといったものだ。 場所は東京都台東区にある鉄骨鉄筋マンションの10Fで、東南向きの部屋だ。いずれも1回のみ計測した。 南向きの窓付近では、下り8.89Mbps、上り713Kbps。東向きの窓付近では、下りが5.33Mbps、上りが693Kbps。部屋のほぼ中央にある洗面台では下り7.3Mbps、上りが471Kbpsとなった。一方、窓が見えない鉄扉がある玄関では接続ができなかった。どうやら窓があるかどうかによって接続性が左右されるようだ。 最後に電車に乗って移動しながら計測した結果を紹介する。機材は先述のVAIO type P。千代田線に乗って常磐緩行線に乗り入れをした。 地下では当然接続不可だったが、北千住~綾瀬間のトンネルを抜けてから電波が入るようになった。ただし綾瀬~亀有~金町間は列車が高速移動していたためか、バンドオーバーがうまく行なえず、通信ができなかったため、計測できた結果のみを掲載する。いずれも1回のみのテストだ。 北千住~綾瀬間は下り13.81Mbps、上りは568Kbps。綾瀬駅は下り7.85Mbps、上り435Kbps。金町駅は下り914Kbps、上り423Kbpsだった。接続できた駅ではアクセスポイントに近いためかアンテナは4本から5本前後だったが、金町から先はだんだんと電波が弱くなり、外環を過ぎ千葉に入ったあたりから接続できなくなった。 【表】計測できた場所の速度
現時点における接続性に関しては、「電波がそれなりによく接続できれば速度は出るが、そうでない場合は速度は出ないこともある」、「電波が入るかどうかは、窓が見えるかどうかでほぼ決まる」、「提供エリア内でも繋がらない場合があり、その場合は諦めた方がよい」と結論づけられるだろう。 いずれもNiftyから借用したUD01NAでも大差のない結果であった。端末ごとのユーティリティはやや異なり、使い勝手に変化があるが、接続性や性能には影響しないようだ。 ●室内や移動中は不得意。アクセスポイントの増加に期待 以上試してみたが、試験サービス提供の現時点においては、使えるところが制限されているのが最大のネックだと感じた。いったん繋がれば高速通信が可能なものの、基本的にWiMAXが使えるところは、屋外か窓に近い屋内で、なおかつ高速移動中ではないことが前提であることを考えると、利用シーンがかなり限られ、やや非現実的な印象だ。 だがこれは携帯電話などのサービス開始当初は同じような状態であり、現在のWiMAXが黎明期であることを考えれば妥当だろう。今後のアクセスポイント増加とエリア拡大に期待したいところだ。 □UQコミュニケーションズのホームページ (2009年3月27日) [Reported by PC Watch編集部]
【PC Watchホームページ】
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