CeBIT 2009レポート【ASUS編】
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ASUS 会長兼CEOのジョニー・シー氏 |
会期:3月3日~3月8日(現地時間)
会場:ドイツ共和国 ハノーバー市 ハノーバーメッセ
Eee PCの大ヒットで一躍大手PCメーカーの仲間入りを果たしたASUSTeK Computer(以下ASUS)は、CeBITの会場において記者会見を開催し、同社の新しいスローガンと、いくつかの新しい製品ラインナップについての説明を行なった。
会見で、同社の会長兼CEOのジョニー・シー氏は、同社のEee PCの最新モデルとなるEee PC 1008HAと、スリムタイプのノートPCとなるU/UXシリーズを発表した。Eee PC 1008HAは、10型の液晶ディスプレイを採用した軽量、薄型のネットブックで、Intelの新しいネットブック向けCPUとなるAtom N280(1.66GHz)を搭載している。
また、展示会場のASUSブースでは記者会見で紹介された製品の他、いくつかの新製品が展示され、ユーザーの注目を集めた。
●ASUSの新しいスローガンは“Inspiring Inovation-Persistent Perfection”
シー会長は、今後ASUSが対外的に使っていく新しいスローガンを披露した。その新しいスローガンは“Inspiring Inovation-Persistent Perfection”で、日本語に訳すとすれば“興せよ技術革新、目指せ完璧”あたりになるだろうか。
英語圏では、企業のCI活動の一環としてこうしたスローガンを作成し、それを企業ロゴの一部として利用することが少なくない。IT企業の例をとってみても、Intelの“Leap Ahead”(公式日本語訳だと“さあ、その先へ”)、AMDの“The future is fusion”(公式の訳はないが“未来はフュージョンと共に”あたり? )などが有名だろう。日本のメーカーを見ても、“Inspire the Next”の日立製作所、“Leading Innovation”の東芝、“ideas for life”のパナソニックなど、各社ともCIの一環としてスローガンをロゴマークに入れている例は少なくない。
ASUSも今や世界の大手PCメーカーの仲間入りを果たし、ヨーロッパでは2008年の結果ではHP、Acer、Dellに次いで第4位になっているだけでなく、第4四半期に限ればDellを抜いて第3位になっているのだという。それだけ急成長を遂げていることもあり、今ASUSはより本格的なPCメーカーへの脱皮を図っていて、それにあわせた新しいスローガンを制定したと考えることができるだろう。
同社の新しいスローガンとなる“Inspiring Inovation-Persistent Perfection” | 同社の新しいコーポレートロゴ。新しいスローガンが下に入る形になる |
●Intelの新しいAtom N280を搭載した薄型ネットブックのEee PC 1008HA
今回の記者会見では、シー氏は3つの新しい製品に焦点を当てた。それがEee Keyboard、新しい薄型ネットブックのEee PC 1008HA、薄型ノートブックPCのU/UXシリーズの3製品だ。このうち、Eee Keyboardに関してはInternational CESで発表されたものと同等であるので、本記事では割愛させていただく(International CESでの発表の様子はこちら)。
モデルがステージに持ってきたEee PC 1008HA |
Eee PC 1008HAは、厚さ25.7mmで重量が1.1kgとネットブックとしては比較的軽量薄型のボディを採用したネットブックで、LEDバックライトの10型液晶を採用している。液晶の天板はIMR(In-Mold Rolling)技術を利用して製造することで、プラスチックながら高い質感を実現していることが特徴だ。
そして最大の特徴は、CPUに現時点ではIntelからは未発表のAtom N280を採用していることだろう。Atom N280はクロック周波数がN270の1.6GHzから1.66GHzに若干引き上げられ、FSBも同様に400MHから533MHzに向上することで、性能向上が実現される。業界筋の情報によれば、IntelはN280用のチップセットとして、Intel 945GSE、Intel GN40という2つのチップセットを用意しているとのことだが、今回の1008HAではIntel 945GSEが引き続き利用されている。
その他のスペックとしてはメモリはDDR2/1GB(SO-DIMM)、ストレージは160GB HDDで10GBのオンラインストレージ利用権が付属している。無線関係はIEEE 802.11n準拠の無線LAN+Bluetooth 2.0、HSDPAないしはWiMAXをオプションとして選択することもできる。このほか、130万画素のWebカメラが用意されていて、リチウムポリマーバッテリで5時間駆動が可能になるという。なお、ボディカラーに関してはブラックとホワイトが用意されており、OSはWindows XP Home EditionのULCPC版となる。
ASUSのジェリー・シェン社長兼COOによれば、出荷時期は第2四半期が予定されており、価格などについては現時点では未定とのことだった。
IMR技術を利用して作られた曲線を利用した質感の高い天板を採用しており、薄さを演出している | 色はブラックとホワイトの2色となっている |
デバイスマネージャの表示、CPUはAtom N280、チップセットはIntel 945GSEであることがわかる | 本体の右側面、SDカードスロットなどが用意されている |
●Centrino2を採用した薄型ノートPCのUX/Uシリーズ
もう1つASUSが目玉製品として発表したのが、UX/Uシリーズと呼ばれる薄型ノートPCだ。シー氏が記者会見で公開したのは、UXと呼ばれる解像度は不明ながら17型の液晶を搭載したスリムノートPCで、Centrino2プロセッサテクノロジを採用している。ただし、実際には電源は入った状態は公開されず、詳細のスペックは不明。外見からわかることはスロットインの光学ドライブが用意されているという程度で、ASUSからはそれ以上の情報は公開されなかった。
UはUXシリーズに比べると若干価格を抑えめにした製品となるシリーズで、ASUSのブースではUX/Uシリーズのうち唯一動作する製品として、Uシリーズの15.6型のLEDバックライト液晶(解像度は1,366×768ドット)を搭載した製品が公開されていた。筆者がデバイスマネージャなどで確認したところ、CPUはCore 2 Duo T9550(2.66GHz)、メモリは2GBを搭載しており、GPUはNVIDIAのGeForce G 105M(コア640MHz、メモリ1GHz、SPは8個、ビデオメモリ256MB)が搭載されていた。なお、すべてのSKUにはAltec Lansingのスピーカーが搭載されており、マルチメディア用途の利用も考えられた設計になっている。
なお、現時点では価格、出荷時期などは不明で、15.6型液晶搭載モデル以外のSKU構成なども不明と、正式発表というよりは“とりあえず出す予定です”という感じの開発意向表明に近い発表だった。
●WEPC.comのプロジェクトで応募のあった理想のPCのモックアップも展示
最後にシー氏は、同社がIntelと共同で行なっているWEPC.comという、夢のPCを募集するプロジェクトで応募のあったコンセプトモデルを公開した。WEPC.comは一般のユーザーが考えた理想のPCを、ASUSのエンジニアがIntelのプロセッサを利用して作るというプロジェクトで、すでに興味深いコンセプトが多数寄せられたのだという。
今回ASUSのブースではこの中からコンセプトモデルが、公開されている。公開されたのは液晶が左右に開く形のPCで、両方をペンオペレーションで利用するPCとして利用したり、下側にソフトウェアキーボードを表示させて、クラムシェルのノートPCとして利用するなどの利用形態が考えられているという。もちろん、現時点ではモックアップであり、実際にこうした形で製造されるかどうかも未定とのことだが、これまでとは異なる考え方のPCという意味では興味深いものだと言える。
このほかにも、ASUSブースにはEeeブランドNAS、NVIDIAチップセットを搭載したAM3マザーボード、Intel P55搭載LGA1156マザーボードなどが展示されており、来場者の注目を集めていた。
ASUSとPNDメーカーとして知られるGerminのダブルブランドで発売される携帯電話のM20。HSPAに対応しており、GPSやオーディオプレイヤーの機能をなどを備えている | 同じくASUSとGerminのデュアルブランドになるG60 |
□CeBITのホームページ(英文)
http://www.cebit.de/
□ASUSTeK Computerのホームページ(英文)
http://www.asus.com/
□関連記事
【1月8日】【CES】ASUSTeK、将来のEeeソリューションをCESでデモ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2009/0108/ces05.htm
(2009年3月4日)
[Reported by 笠原一輝]