アップル、「iLife '09」の販売をスタート
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28日より出荷されたiLife '09とiWork '09のパッケージ |
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アップルは1月28日にマルチメディアスイート「iLife '09」の国内販売を開始した。あわせて、同社はプレス向けに製品説明会を開催し、そのデモンストレーションを交えて紹介した。
iLife '09は、年初にサンフランシスコで開催されたMacworldで「iWork '09」とともに発表された。iWork '09は先行する形で出荷されており、このiLife '09の販売開始でマルチメディアスイートと、ビジネススイートの最新バージョンが出揃ったことになる。
iLife '09は新規購入のMac本体には無償でバンドルされるため、店頭販売のパッケージは事実上、既存ユーザーのバージョンアップ用となる。出荷開始にともない、新たに出荷されるMac本体へのプリインストールも従来バージョンからiLife '09に切り替わる。店頭在庫など従来バージョンがプリインストールされたMac本体を1月7日以降に購入したユーザーには、980円の発送手数料のみでiLife '09が提供される。
既存のユーザーがiLife '09へバージョンアップする際はLeopard環境が必須。システム条件として現行では最新のMac OS X 10.5.6以降とされている。Tiger(Mac OS X 10.4.x)などで従来のiLife '08などを利用していたユーザーは、iLifeのバージョンアップとともにOSのバージョンアップも必要になる。
ちなみにiWork '09のシステム条件はMac OS X 10.4.11またはMac OS X 10.5.6以降となっているほか、ハードウェアの最低ラインなどもiLife '09とは動作条件がやや異なる(iWorkのほうが少し緩い)ので注意したい。今回、iLife '09/iWork '09/Mac OS X 10.5.6を含んだ安価な「Mac Box Set」が用意されているのは、Tiger環境のユーザーの需要にLeopardへの移行を促進する意図があると思われる。
●顔認識、ジオタグなどトレンドの技術で進化したiPhoto'09
iLife '09のデモは、iPhoto '09、iMovie '09、GarageBand '09の3つのアプリケーションで行なわれた。iLifeを構成するあと2つのアプリケーションであるiDVDとiWebも'09にはなっているが、これらはマイナーアップデートにとどまっている。
iPhoto '09は、これまでも何度か紹介してきたとおり、従来の「イベント」に加えて「人々」、「場所」という整理/分類の機能が加わったことがポイントになる。顔認識を利用した「人々」では、1枚の写真から1人の女の子の顔を選ぶことで、ライブラリ内にある写真から、同一人物と思われる女の子が写っている写真を抽出するデモが行なわれた。
抽出は自動的に行なわれるものの必ずしも正確ではないので、抽出結果をもとにさらに絞り込んだり他の人物を追加することで精度があがっていく。認識する“顔”の範囲は、いわゆる額から顎あたりまでの目・鼻・口を中心としたエリアで、髪の毛などは含まれない。また、正面のカットだけではなく、条件が揃えば横顔などでも認識は可能とのことで、必ずしも両目が同時に写っている必要はないという。子供の成長による顔かたちの変化や加齢による容貌の変化などにもある程度までは追従できるが、限界はあるという。ライブラリの精度アップには自動機能にたよるだけでなく手作業も必要で、このあたりはいろいろと試行錯誤してみたい要素である。
ちなみに認識可能な顔は「人間」のみ。残念ながら猫、犬といった動物の顔はこの機能を使って分類することはできないという。
分類結果は人物別にスマートライブラリになっているので、例えばA、Bの2人が一緒に写った写真などは、AのグループからもBのグループからも参照することができる。こうした情報が写真に付加されることで、「AさんかBさんのどちらかが写っている写真」、「AさんとBさんが一緒に写った写真」といった条件での写真の検索が可能になる。
顔の認識と情報の付加は写真をiPhotoに取り込む際に自動的に行なわれるので、取り込みには従来よりもやや時間を要する可能性がある。従来バージョンからライブラリを更新するときには、更新する写真すべてで自動的に顔認識が行なわれるということなので、すでに大量の写真をライブラリにもっているユーザーは、バージョンアップに際しては時間の余裕をもって行なうのがいいだろう。作業の進行状況は画面に表示されるとのこと。
「人々」の画面。人物ごとにグループ化されたスマートライブラリ。サムネールはグループに含まれる写真から自由に選ぶことができる | 新たな人物を設定。顔の部分が自動的に認識される。この顔に対して名前を付けると、同一の人物と思われる写真がライブラリから自動的に抽出される | 抽出結果をもとに絞り込んだり、間違いを修正していくことで認識の精度があがる |
新しい人物をさらに追加する | いわゆるOR検索をした状態。最初の人物(女の子)と次の人物(母親)のいずれかが写っている写真を抽出 | こちらはAND検索。ふたりが同時に写っている写真のみがライブラリから抽出されている |
人々と並んで新たに追加された整理分類の機能が「場所」である。基本的には写真に付加されるジオタグの情報をもとに、撮影場所ごとに写真を分類する機能だ。すでにジオタグが付加された写真がライブラリにあれば、自動的に地図上にマッピングされる。
現状、GPS機能を標準搭載するカメラは必ずしも多くはない。すぐにライブラリの写真すべてがきれいにマッピングされるというユーザーは極めてまれだろう。むしろ現時点で有力なのは、GPS付きの携帯電話で撮影した写真や、iPhone 3Gで撮影した写真の分類となる。
ジオタグのない写真でも自分で位置情報を付加することで分類が可能になる。イベント単位や写真単位で、撮影した地名やランドマークを入力することで、地図データから地名が検索されて分類することが可能。バージョンアップ組ならば、とりあえずこの作業をコツコツと行なっていけば「場所」はかなり充実したスマートライブラリとなっていくはずだ。
また、整理分類機能が強化されたことで、スマートライブラリをもとにしたフォトアルバムの作成やスライドショーなど、連動する機能の強化も図られている。
世界地図の上に、撮影地点を示すピンが付けられている。スケールに応じているので、このサイズではライブラリに写真のある都市が単位 | パリにズームすると、さらに細かい撮影位置がジオタグをもとに表示される | セーヌ川の上にピンが配置されていたのは、川の上で撮影したから |
ジオタグによる位置情報がない写真には、自分で撮影場所を入力することで情報を付加していくことができる | 同一の地点で撮影した写真を自動的にピックアップしてスマートライブラリ化する | フォトブックを作るためのテンプレートにも、人物単位、場所単位のテンプレートが加わっている |
位置情報をもとに、撮影場所(旅行先)の地図がフォトブックに自動的に挿入される | スライドショーにおけるトリミングでは、顔認識をもとに顔の部分が切れないように自動的に調整されている | 肌色の部分のトーンを変えることなく、衣服や背景などを高コントラストに補正する |
逆光の補正も、背景を飛ばすことなく被写体のみを明るくすることができるようになる |
iMovie '09はムービーの編集機能が特に強化されている。コンテキストメニューを使った編集機能では、ビデオクリップの中から音声トラックのみを他のクリップに合成したり、クリップの逆方向再生、あらかじめ用意されたテーマに沿ったトランジションやエフェクトの自動付加、そして地名を入力するだけでインディージョーンズ風のトラベルマップを挿入できる機能などがデモンストレーションされた。
また自動ビデオスタビライゼーション機能を使って、ビデオクリップの手ぶれを補正することもできる。こうした機能のいくつかは、これまでプロ向けのアプリケーションであるFinalCut Proに搭載されていたものだが、今回コンシューマ向けのiMovie'09の高機能化にともない追加されている。
ビデオクリップに、他のビデオクリップから音声トラックのみを合成する | インディージョーンズ風のトラベルマップを挿入する。出発地点、到着地点の地名を入力するだけで自動的に生成 |
テーマに沿ったエフェクトやトランジションを自動的に追加することで、連続したビデオクリップが簡単に作品風になる |
GarageBand '09はギターとピアノのレッスン機能が追加された。デモされた内容はすでに基調講演レポートで紹介した内容とほぼ同一のものだが、日本向けのローカライズについて、情報が更新された。この日のデモはプレゼンターが欧米人ということで英語でのレッスン画面が紹介されたが、プライマリランゲージが日本語の場合は、ギターとピアノの基本レッスンで日本語吹き替えが実施される予定。英語音声も選択可能。
また有料で追加購入できるアーティストレッスンは、日本国内においても一部アーティストのレッスンが購入可能となった。北米価格の4.99ドルに対して日本国内では480円と、Mac本体やソフトウェアの為替レートと比較してもかなり頑張った価格設定になっている。28日現在、ギターではJohn Fogerty、ピアノではNorah Jones、Sara Bareilles、Ben Foldsの計4名のアーティストレッスンが購入可能。アーティストレッスンの音声は英語のみで、日本語字幕が表示されるとのこと。
なお、iLife '09自体はPowerPC G4、G5を搭載した古いMacでも条件を満たせば利用できるが、GarageBandのレッスン機能については「デュアルコアプロセッサ以上を搭載したIntelベースのMac」が必要になる。
ピアノの基本レッスン。映像はこのままだが、プライマリランゲージが日本語の環境なら、吹き替えによる音声でレッスンができる。もちろん英語音声も選択可能とのこと | John Fogertyによるギターのアーティストレッスン。画面に表示される要素は、カスタマイズ可能で楽譜やTAB譜なども表示できる。日本語環境では英語音声に字幕表示になるという |
Norah Jonesによるピアノレッスン。ボーカルのON/OFFやバンドの各楽器のミュートなども設定可能。彼女のピアノに合わせて歌ったり、自分のピアノ伴奏でNorah Jonesに歌わせたりすることができる仕組み |
●導入を容易にすることでさらに普及を目指すiWork '09
すでに出荷済みのiWork '09についても、製品説明が行なわれた。冒頭に述べたとおり、iLife '09とは動作条件が異なり、システム条件はそれよりもやや緩くなっている。CPUの最低ラインがiLife '09のPowerPC G4 867MHzに対して、iWork '09はPowerPC G4 500MHz 、そしてLepoard必須のiLife '09に対して、iWork '09はTigerの現時点の最終バージョンとなる10.4.11でも利用が可能だ。
iWork '09は、アップルのサイトから30日間のフリートライアル版のダウンロードが可能。またMac本体との同時購入なら8,800円のパッケージ価格が5,800円にディスカウントされる設定も、今回はじめて導入されている。
iWork '09のデモは、Keynote '09、Numbers '09、Pages '09の順に行なわれた。すでに出荷済みの製品でもあり、それぞれ写真で紹介する。
「Keynote '09」。MacworldなどAppleのエグゼクティブによる講演では、最新バージョンが先行して利用されていることも多い | さらに進化したパイチャート | 写真ではわかりにくいものの、写真や文字の配置にあわせて矢印部分が自在に適切な形に変化、移動する。動きのあるプレゼンテーションが容易に |
「Numbers '09」。ソート機能や折りたたみ、セルの自動移動などが簡単に設定できる | グラフ作成機能がさらに強化され、より多彩なグラフ作成が簡単に行なえるようになった | Pages '09のドキュメントとグラフ部分を同期。Numbers側のデータを更新すると、Pages側に同期のアラートが表示され、更新することが可能 |
アウトライン機能が強化されたPages '09 | 背景を単色にしてドキュメントのみを表示する画面モードも追加された。この状態でもすべての機能が利用可能 |
またiWork.comのβサービスも現時点で稼働中。β期間終了後は有料サービスへと移行することになるが、β期間や有料サービスの料金などは現時点で未定となっている。
iWork '09のユーザーが利用できる「iWork.com」。iWork '09のドキュメントをインターネット上でシェアする。共有相手はドキュメントをブラウザベースで参照できるほか、注釈などの追加も可能。iWorkネイティブ、PDF、Wordの3形式でドキュメントのダウンロードも可能。参照や注釈の追加、ダウンロードはアクセスするユーザー単位で権限の設定が可能となっている |
□アップルのホームページ
http://www.apple.com/jp/
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【1月27日】アップル、「iLife '09」を28日に発売
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2009/0127/apple.htm
【1月8日】Macworld San Francisco 2009 基調講演詳報
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2009/0108/mw03.htm
(2009年1月29日)
[Reported by 矢作 晃]