大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

ネットブックの構成比は今後高まるのか?




 BCNは、全国25社2,135店舗の大手家電量販店のPOSデータを集計したBCNランキングをもとに、年末商戦におけるミニノートの需要動向について明らかにした。

 同社では、10.2型以下のディスプレイを搭載したノートPCを「ミニノート」と定義しており、ここにネットブックが含まれることになる。これによると、昨年12月の集計では、ノートPCのうち、ミニノートの構成比は25.6%となり、ノートPC市場全体の4分の1を占めたことがわかった。

Eee PC 901-X

 ASUSTeKのEee PCが日本に上陸した昨年1月には4.4%だったミニノートの構成比は、6月までは1桁台で推移していたが、7月に入り、ASUSTeKがEee PC 901を投入したことで構成比は17.3%に一気に拡大。さらに、8月には日本エイサーからAspire oneが発売されたことで、構成比は20%台に突入していた。

 12月の集計で25.6%に達したのは、10月の25.0%を超え過去最高の構成比となっており、年末商戦でも、ミニノートが台風の目となっていたことを示すものだといえよう。

 今回の調査結果のなかで、ミニノートの動向がいくつか明らかにされた。1つは、単価下落が依然として続いていることだ。12月のミニノートの平均単価は46,900円。11月と比較して1,600円も下落している。2007年1月には、62,800円であったことに比べると16,200円、すなわち25%もの価格下落率となっている。

 こうした価格下落は、PC市場全体の動向にも影響している。PC市場全体の台数ベースの成長率は、12月実績で、対前年同月比で23.4%と高い成長を維持している。だが、金額ベースでは、8.4%減の前年割れの実績となっている。ノートPC全体では、台数ベースでの成長率がさらに高く、前年同月比36.1%増となっているのに対して、金額ではやはり1.4%減の前年割れとなっている。

 ミニノートの構成比拡大および価格下落は、販売台数の拡大には寄与しているものの、金額ベースでは縮小につながっている。市場構造が大きく転換しはじめていることを示すものといっていいだろう。

 一方で、ミニノートの大画面化や大容量化が進展していることも浮き彫りになった。12月における画面サイズ別構成比は、10〜10.2型が41.4%となり、11月の32.1%から大幅に拡大した。一方で、これまでの主流であった8.9型は49.3%へと縮小。初代のEee PCで採用されていた7型の構成比は8.9%にまで縮小している。

 7型搭載モデルの平均単価は34,500円まで下落。さらに、10〜10.2型も12月には50,500円と、11月の54,500円から急速に価格が下落し、5万円割れ直前となっているのだ。

ノートPC全体の台数と価格の推移 ノートPCのサイズ別構成比と単価の推移 ミニノートのサイズ別構成比と単価の推移

 大容量化という点では、メモリ容量で1GBモデルの構成比は90.6%となり、512GBの構成比はわずか7.7%しかない。また、HDDに160GBを採用したミニノートの構成比は54.0%に達し、120GBは16.2%、4〜32GBのSSDモデルは23.4%にそれぞれ縮小している。

 さらに、オフィスアプリケーションを搭載したミニノートの構成比が上昇しているのも特筆される。2008年9月時点では、24.3%と4台に1台だったオフィスアプリケーション搭載モデルの構成比は、12月の調査では37.4%と、3台に1台を上回る実績となっているのだ。

Aspire one

 とくに、12月になって増加したのが、Microsoft Officeの搭載製品。11月まではわずか1%台で推移していたものが、12月には8.6%と急増した。日本エイサーのAspire oneに同オフィスを搭載した製品が追加されたことなどが影響している。これにより、これまでMicrosoft Office搭載のミニノートの平均単価は、11月実績で78,100円だったが、12月には56,900円と急激に下落している。また、サン・マイクロシステムズのオフィスアプリケーションであるStarSuiteを搭載した製品の構成比は、12月実績で28.8%、平均単価は49,700円となっている。

 もう1つ明らかになったのが、ミニノート市場における国産勢の苦戦だ。ミニノートの市場シェアを見ると、ASUSTeKが38.2%と首位を獲得。続いて、日本エイサーが29.5%となり、この2強体制は崩れていない。そして、3位には、ソーテックブランドで展開するオンキヨーが6.7%、4位には日本ヒューレット・パッカードが6.2%、5位には工人舎が4.4%で入った。

 東芝、NECもネットブック市場には参入しているが、それを下回る実績に留まっているのだ。また、注目を集めたレノボも、発売日が12月中旬であったことも影響し、まだ存在感を発揮できないままだ。

ノートPCとミニノートのメーカーシェア

 ノートPCのメーカー別シェアでは、NECが18.8%、東芝が17.8%、富士通が14.1%、ソニーが12.2%と国産勢が続いているのに比べると、その差は明らかだ。ただし、ミニノート市場をリードするASUSTeKがノートPC市場全体でも9.7%、日本エイサーも9.0%となり、それぞれ5位、6位と、国産勢に続いている。2桁シェアまであと一歩といったところにまで到達している。25%の構成比を占めるミニノート分野における台湾勢のシェア拡大が、ノートPC市場全体のメーカー勢力図にも大きく影響しはじめているのだ。

 では、今後、ネットブックの構成比は高まっていくのだろうか。BCNの森英二アナリストは、「ミニノートを利用したいユーザーにはほぼ行き渡った」としながらも、「今後、画面が大きくなることで、A4ノートPCのユーザーを取り込む可能性があること、進入学需要も期待できる」との見方を示す。

 進入学にあわせて、子供に自分用のPCを与えるという点でのプレゼント需要が、ミニノートには期待されている。そして、A4ノートPCユーザーの取り込みは、今後加速する可能性がある。

 実は、年末商戦の店頭では、興味深い動きが見られていた。イー・モバイルとの同時契約で最低100円から購入できるミニノートの存在を知って、PC売り場に足を運ぶ来店客は、この年末商戦ではかなり多かった。その点では、ミニノートが寄び水になっていたのは明らかだ。

 だが、店頭で店員と交わされていた会話にはこんなものが多かった。「これで年賀状を作りたいのだけど」。もちろん作成できないことはない。しかし、デジカメで撮影した画像や、数多くの画像テンプレートを利用することになる「はがき作成ソフト」は、現行のミニノートでは、決して快適な環境を実現できるとはいえない。店員の立場からすれば、商品を勧める責任上、やはりA4ノートPCを購入すべきだとの提案を行なうことになる。

 つまり、呼び水になったミニノートを横目に、A4ノートPCに購入機種をシフトさせるといった動きが見られていたのだ。

 ミニノートの価格と大きさに興味を持って来店するユーザーが多いのは明らかで、その多くは、これまで自分のPCを持っていないというユーザーともいえる。もし、ミニノートに、あまりストレスを感じることなく年賀状を作成するだけの性能があったら、ミニノートが3割を超える構成比にまで達していた可能性は十分ある。

 ネットブックは、その性格上、一部スペックが固定されたものになっているが、ミニノートという領域でみた場合、HDDの容量はかなり大容量化されているし、メモリも増えている。今後、次世代Atomプロセッサへの進化などによって、これまで以上の性能を持ったミニノートが製品化されれば、こうした問題も解決されることになるはずだ。

 さらに、モバイルWiMAXのサービス開始も、ミニノートの利用促進をドライブする可能性がある。インテルのアシスタント・ジェネラル・マネージャーの宗像義恵氏は、「ネットブックの利用者は、またまだ拡大の余地がある。モバイルWiMAXのインフラが整うことで、可搬性の点でメリットがある小型のネットブックやMID(モバイル・インターネット・デバイス)を購入するユーザーが増加するだろう。個人的には、1人3台のPCを持ってほしい、自宅用、会社用、そして持ち運び用。持ち運び用途のデバイスは、新たな市場を創出するものといえ、そこに、ネットブックやMIDが利用されることになる」と予測する。

 もちろん、セカンドマシンとして、ミニノートを購入していたユーザーたちが、今後、さらなる小型化が促進され、ラインアップが増えることになるMIDへと流れる可能性はあるだろう。

 だが、ミニノートの高機能化は、A4ノートPCあるいはB5ノートPCのユーザーを取り込むことになり、市場構成比が拡大する可能性がある。

 また、ソニーのVAIO type Pのように、話題性のあるミニノートの投入や、性能面での進化、可搬性の強化、長時間駆動を実現する製品の投入によって、ミニノートの構成比は高まるはずだ。

 今は25%台で横ばいとなっているミニノートだが、その構成比は、これから高まっていくと見た方がいいだろう。

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【1月9日】2,360店舗のPOSデータによるランキング「BCN AWARD 2009」発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2009/0109/bcn.htm

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(2009年1月19日)

[Text by 大河原克行]


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