元麻布春男の週刊PCホットライン

2009年にさらなる盛り上がりを見せるSSD




 2008年にブレイクした製品の1つがSSDであることに異論を挟む人はほとんどいないだろう。当初は16GBや32GBという、メインストリームのPCにはやや不足気味の容量で価格も高かったが、128GB級が3万円を切るようになって、一気に火が付いた。年末には250GB級の製品も登場し、ノートPC向けとしては十分な大容量が確保された。

 このSSD人気は2009年にも間違いなく持ち越されるだろう。むしろ、現在のSSD人気が秋葉原の店頭におけるベアドライブを中心としたものであることを考えると、安価になってきたSSDがメーカー製のメインストリーム向けノートPCに搭載される2009年が、本当の意味でのSSD人気の出発点となるのかもしれない。

 というわけで、多くのベンダ/メーカーがSSD市場に参入している。現在、秋葉原で中心的な存在となっているのは主に台湾系のベンダで、IntelやSamsungといったチップから製造している大手の存在感は、その企業規模に比べればそれほど高くない。しかし、それも2009年には変わる可能性がある。

 1月上旬にラスベガスで開催されたCESでも、SSDは大きなトピックの1つだった。中でも注目されたのは、フラッシュメモリ製品、特にメモリカード製品で高いシェアを持つSanDiskの発表だ。もちろんSanDiskはすでにSSDを製品化しており、HP mini 1000にはSanDisk製のSSDモジュール(pSSD)が採用されている。だが、SanDisk製のメモリカード(CF/SD等)のように、同社製のSSDがポピュラーかというと、そうではなかった。

●43nmプロセスや独自コントローラを採用するSanDisk

四日市工場で量産される43nm NANDフラッシュメモリの300mmウェハ(CES東芝ブース)

 CESでSanDiskが発表した「SanDisk SSD G3」は、その名前でも明らかなように、同社として第3世代となるSSDだ。東芝と共同出資する四日市工場の最新43nmプロセスで量産されるMLC NANDフラッシュメモリを採用したもので、SanDiskが特許を持つABL(All Bit Line)技術により3bit/セルを実現、従来のMLC NANDフラッシュに比べ2倍の速度と低い消費電力を実現したとする。

 組み合わせるコントローラもSanDiskが独自に新規開発したもので、11のコア、64MBのキャッシュ用DRAM、NANDフラッシュメモリチップへの128bit幅のインターフェイスを備える。さらにPCの起動デバイスとして利用する際に極めて重要なランダムライト性能を高めるため、ExtremeFFSと呼ばれる管理システム(フラッシュファイルシステム)を開発し、ストレージデバイスとしての耐久性も向上させている。

 NANDフラッシュメモリは書き換え回数に上限があるため、同じブロックに繰り返し書き込むと短期間で利用できなくなってしまう。SSDに限らずNANDフラッシュメモリを用いたデバイスでは、特定のブロックに繰り返し書き込むことを避けるウェアレベリングアルゴリズムを採用すると同時に、スペア用のブロックを用意したり、書き込みをDRAMにキャッシュすることで、書き込みサイズがNANDフラッシュのブロックサイズに対して最適になるようにするといった工夫を行なう。ExtremeFFSは、こうした管理を総合的に行なうアルゴリズムであると同時に、コントローラーからの書き込みをブロックしない(他の動作と並行して書き込みを処理できる)ようにすることで、ランダムライト性能を高めている。

 こうした工夫により、G3は性能と耐久性を高めているわけだが、現状、こうした特徴を他の製品と比較する業界標準の指標がない。そこでSanDiskでは、性能を比較する指標としてvRPM、耐久性を比較する指標としてLDEを提案している。

 vRPMはVirtual RPMの略で、一言で表すとSSDの性能が何回転のスピンドルを持つHDDに相当するかで示そうというもの。現在、SSDの性能として広く使われているのは、シーケンシャルリードとシーケンシャルライトの性能をMB/secで表したものだが、これはファイルコピー等の際の性能を知る目安となるものの、OSやアプリケーションを起動するシステムドライブとしての性能比較には適さない。OSやアプリケーションの起動の際に重要なランダムリード/ライト性能も含めたSSD全体の性能をHDDに見立てて示すのがvRPMの狙いだ。

SSD G3を手にするSanDiskのSSD部門担当のRich Heye上席副社長 SSD G3はvRPMで40,000rpm相当、すなわち7,200rpmのHDDの5倍以上の性能を持ち、PCの起動速度は2倍になるとSanDiskは主張する

 一方、LDEは、そのSSDの製品寿命の間に何TBのデータを書き込むことが可能かを示すことで、耐久性の目安にしようというもの。たとえば60GBのSSDであっても、その製品寿命の間に、データを消しては書く、ということを繰り返すため、容量以上のデータを書き込むことになる。LDEはその可能な総計を示そうというわけだ。こちらは、耐久性を示す業界標準の指標として採用するよう、SanDiskからJEDECに提案中である。

 さて、こうした特徴を持つG3だが、残念ながら発売は少々先で、2009年半ばを予定している。現在示されている価格(米国内における同社直販サイトでのもの)は、60GBモデルが149ドル、120GBモデルが249ドル、240GBモデルが499ドルとなっている。フォームファクタは2.5インチと1.8インチで、接続インターフェイスはSATA 3Gbpsだが、既存のノートPCのアップグレード用にPATA版も予定されている。

●Imationもこの市場に参入

 SanDiskのほかに、消費者向けのSSD製品を発表したのがImationだ。TDKのメディア事業を買収したImationは、従来からのメディア事業に加えて、USBメモリやSSDなどへ事業を拡大している。

ImationのS-Class SDDによるアップグレードキット

 同社が発表したSSDは、M-ClassとS-Classと呼ばれるもの。某高級外車を思わせるようなネーミングだが、おそらくはMLCとSLCからとったものだろう。いずれも容量は32GB/64GB/128GBの3種で、2.5インチと3.5インチ両方のフォームファクタが用意される。

 M-Classはメインストリームデバイスとして、PCのブートデバイスを置き換えることをターゲットにした製品で、シーケンシャルリードとランダムライト性能を強化している。インターフェイスはSATA 1.5Gbpsで、公称スペックはシーケンシャルリード150MB/sec、シーケンシャルライト90MB/secとなっており、2年保証が付与される。

 S-Classはエンタープライズのデータベース用途を意識したもので、シーケンシャルライト性能とランダムリード性能が高い。インターフェイスはSATA 3Gbpsで、公称スペックはシーケンシャルリード130MB/sec、シーケンシャルライト120MB/secとなっている。こちらはエンタープライズ向けということもあり、5年保証が付与される。

 販売時期と価格はM-Classが2月からで、32GBモデルの希望小売価格が179.99ドル。3月以降に発売となるS-Classの価格は明らかにされていない。また、両製品には、USB-SATA変換アダプタやACアダプタ、Acronis True Imageなど、既存のHDDをSDDに置き換える際に必要なアクセサリやソフトウェアをセットにしたアップグレードキットも提供されることになっている。

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【1月13日】【CES】容量240GB、読み込み速度200MB/secで500ドルを切るSSDなど
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2009/0113/ces13.htm

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(2009年1月16日)

[Reported by 元麻布春男]


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